LED熱設計

カテゴリ: 熱解析・電子機器冷却 | 2026-10-01 改稿
CAE visualization for led thermal theory - technical simulation diagram
LED熱設計

理論:熱抵抗の連なり

概要

🙋

LEDは省エネで熱くならないと思っていましたが、熱設計が大事なんですか?

🎓

とても大事だ。LEDは白熱電球より効率がよいが、それでも入力の半分以上が熱になることが多い。しかも小さな発光部に熱が集中し、赤外線ではなくほとんどが伝導で基板へ流れる。ジャンクション温度が上がると光の量が減り、寿命も短くなる。熱の通り道を熱抵抗の連なりで表せば、どこがボトルネックかが分かる。3 WのLEDを10個並べた照明で、基板とヒートシンクの選び方による違いを計算しよう。

ジャンクション温度

$$ T_j = T_a + Q_{LED}\left(R_{j\text{-}sp} + R_{board}\right) + N\,Q_{LED}\,R_{hs},\qquad Q_{LED} = P_{in}\,(1-\eta) $$

$R_{j\text{-}sp}$ はジャンクションからはんだ付け点までの熱抵抗(データシートの値、ここでは4 K/W)、$R_{board}$ は基板の厚さ方向、$R_{hs}$ はヒートシンクから空気まで。ヒートシンクはN個のLEDで共有するので、全体の発熱がかかる。

基板の熱抵抗

$$ R_{MCPCB} \approx \frac{t_d}{k_d A_{pad}},\qquad R_{FR4+vias} = \left[\frac{n\,k_{Cu}A_{Cu}}{t_b} + \frac{k_{FR4}(A_{pad}-nA_{hole})}{t_b}\right]^{-1} $$

MCPCBでは薄い絶縁層が熱抵抗の大半を占め、下のアルミは熱をよく広げる。FR-4ではサーマルビアの銅めっきが主な通り道になる。どちらもパッドの下の1次元の見積もりで、銅箔による横への広がりは含めていない。

Coffee Break よもやま話

白熱電球からLEDへ

白熱電球は入力の9割以上が熱になるが、その大部分は赤外線としてガラス球の外へ放射されるので、熱は照らす方向へ逃げていく。LEDは効率がずっと高いのに『熱設計が難しい』と言われるのは、熱が数mm角の発光部に集中し、放射ではなく伝導で背中側へ逃がさなければならないからだ。2000年代に照明用の白色LEDが広まると、アルミ基板やヒートシンクと一体の照明器具が作られるようになった。

計算例:3 W LEDを10個並べた照明

1個あたり入力3 W・電力効率35%(発熱1.95 W)、パッド3 mm角、周囲40℃。

基板とヒートシンクの組み合わせ

基板基板の熱抵抗強制空冷 2 K/W自然空冷 4 K/W
MCPCB(絶縁層0.1 mm)5.1 K/W96.6 °C135.6 °C
FR-4+サーマルビア9本20.4 K/W126.6 °C165.6 °C

値はジャンクション温度。ビアのないFR-4では、パッドの下だけで見積もると数百K/Wになり、横への広がりを考えても実用にならない。

Tj ≤ 105℃のためのヒートシンク

基板必要なヒートシンクの熱抵抗
MCPCB2.43 K/W 以下
FR-4+ビア9本0.89 K/W 以下

効率の効果(MCPCB・強制空冷)

電力効率1個の発熱ジャンクション温度
35%1.95 W96.6 °C
50%1.50 W83.6 °C
🙋

基板を変えるだけで30 Kも違うし、ヒートシンクの条件はFR-4だと3倍近く厳しくなるんですね。

🎓

LEDの熱は数mm角のパッドに集中しているので、そこを通る薄い層の熱抵抗が効く。MCPCBは絶縁層が0.1 mmと薄く、熱伝導率もFR-4の7倍ほどあるので約5 K/Wで済むが、FR-4は厚さ1.6 mmをビアの細い銅で通すしかなく、20 K/Wになる。発熱1.95 Wに対して、この差は約30 Kになる。ヒートシンクは10個分の発熱を受けるので、全体の温度予算から基板で使った分を引いた残りで決まる。FR-4では基板で予算を使いすぎて、ヒートシンクに残る余裕が小さい。効率の改善も効き、35%から50%にすると発熱が23%減り、ジャンクション温度は13 K下がる。

設計のポイント

  1. データシートの熱抵抗と、許容ジャンクション温度・寿命の条件を確認する。
  2. 発熱は入力から光の出力を引いた値で見積もる(入力全部を熱としない場合は効率を確認)。
  3. パッドの下の薄い層(絶縁層・はんだ・TIM)の熱抵抗を最初に見直す。
  4. 複数個を並べるときは、ヒートシンクの共有と、隣のLEDからの熱の重なりを考える。
  5. 器具の中では空気がこもりやすいので、周囲温度は器具内の温度を使う。
Coffee Break よもやま話

「天井に埋めたら暗くなった」

あるLEDダウンライトは、試験室では十分な明るさと寿命を示したが、断熱材の入った天井に埋め込むと、数か月で明るさが目立って落ちた。器具の背面のヒートシンクが断熱材に囲まれ、周囲の温度が40℃を大きく超えていたのだ。熱抵抗の式で言えば、Ta そのものが上がり、ヒートシンクの熱抵抗も悪化していた。断熱材の上に置ける器具では、それを想定した周囲温度で熱設計し直す必要がある。

よくある間違い

間違いと対策

間違い起きること対策
入力全部を光と考える発熱を過小評価効率から発熱を計算
基板の熱抵抗を無視Tjを過小評価パッド下の層を計算
試験室の周囲温度で設計実使用で過熱器具内の温度を使う
1個分のヒートシンク全体で過熱合計の発熱で
TIMやはんだのボイド局所過熱実装品質を確認
🙋

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