LED熱設計
理論:熱抵抗の連なり
概要
LEDは省エネで熱くならないと思っていましたが、熱設計が大事なんですか?
とても大事だ。LEDは白熱電球より効率がよいが、それでも入力の半分以上が熱になることが多い。しかも小さな発光部に熱が集中し、赤外線ではなくほとんどが伝導で基板へ流れる。ジャンクション温度が上がると光の量が減り、寿命も短くなる。熱の通り道を熱抵抗の連なりで表せば、どこがボトルネックかが分かる。3 WのLEDを10個並べた照明で、基板とヒートシンクの選び方による違いを計算しよう。
ジャンクション温度
$R_{j\text{-}sp}$ はジャンクションからはんだ付け点までの熱抵抗(データシートの値、ここでは4 K/W)、$R_{board}$ は基板の厚さ方向、$R_{hs}$ はヒートシンクから空気まで。ヒートシンクはN個のLEDで共有するので、全体の発熱がかかる。
基板の熱抵抗
MCPCBでは薄い絶縁層が熱抵抗の大半を占め、下のアルミは熱をよく広げる。FR-4ではサーマルビアの銅めっきが主な通り道になる。どちらもパッドの下の1次元の見積もりで、銅箔による横への広がりは含めていない。
白熱電球からLEDへ
白熱電球は入力の9割以上が熱になるが、その大部分は赤外線としてガラス球の外へ放射されるので、熱は照らす方向へ逃げていく。LEDは効率がずっと高いのに『熱設計が難しい』と言われるのは、熱が数mm角の発光部に集中し、放射ではなく伝導で背中側へ逃がさなければならないからだ。2000年代に照明用の白色LEDが広まると、アルミ基板やヒートシンクと一体の照明器具が作られるようになった。
計算例:3 W LEDを10個並べた照明
1個あたり入力3 W・電力効率35%(発熱1.95 W)、パッド3 mm角、周囲40℃。
基板とヒートシンクの組み合わせ
| 基板 | 基板の熱抵抗 | 強制空冷 2 K/W | 自然空冷 4 K/W |
|---|---|---|---|
| MCPCB(絶縁層0.1 mm) | 5.1 K/W | 96.6 °C | 135.6 °C |
| FR-4+サーマルビア9本 | 20.4 K/W | 126.6 °C | 165.6 °C |
値はジャンクション温度。ビアのないFR-4では、パッドの下だけで見積もると数百K/Wになり、横への広がりを考えても実用にならない。
Tj ≤ 105℃のためのヒートシンク
| 基板 | 必要なヒートシンクの熱抵抗 |
|---|---|
| MCPCB | 2.43 K/W 以下 |
| FR-4+ビア9本 | 0.89 K/W 以下 |
効率の効果(MCPCB・強制空冷)
| 電力効率 | 1個の発熱 | ジャンクション温度 |
|---|---|---|
| 35% | 1.95 W | 96.6 °C |
| 50% | 1.50 W | 83.6 °C |
基板を変えるだけで30 Kも違うし、ヒートシンクの条件はFR-4だと3倍近く厳しくなるんですね。
LEDの熱は数mm角のパッドに集中しているので、そこを通る薄い層の熱抵抗が効く。MCPCBは絶縁層が0.1 mmと薄く、熱伝導率もFR-4の7倍ほどあるので約5 K/Wで済むが、FR-4は厚さ1.6 mmをビアの細い銅で通すしかなく、20 K/Wになる。発熱1.95 Wに対して、この差は約30 Kになる。ヒートシンクは10個分の発熱を受けるので、全体の温度予算から基板で使った分を引いた残りで決まる。FR-4では基板で予算を使いすぎて、ヒートシンクに残る余裕が小さい。効率の改善も効き、35%から50%にすると発熱が23%減り、ジャンクション温度は13 K下がる。
設計のポイント
- データシートの熱抵抗と、許容ジャンクション温度・寿命の条件を確認する。
- 発熱は入力から光の出力を引いた値で見積もる(入力全部を熱としない場合は効率を確認)。
- パッドの下の薄い層(絶縁層・はんだ・TIM)の熱抵抗を最初に見直す。
- 複数個を並べるときは、ヒートシンクの共有と、隣のLEDからの熱の重なりを考える。
- 器具の中では空気がこもりやすいので、周囲温度は器具内の温度を使う。
「天井に埋めたら暗くなった」
あるLEDダウンライトは、試験室では十分な明るさと寿命を示したが、断熱材の入った天井に埋め込むと、数か月で明るさが目立って落ちた。器具の背面のヒートシンクが断熱材に囲まれ、周囲の温度が40℃を大きく超えていたのだ。熱抵抗の式で言えば、Ta そのものが上がり、ヒートシンクの熱抵抗も悪化していた。断熱材の上に置ける器具では、それを想定した周囲温度で熱設計し直す必要がある。
よくある間違い
間違いと対策
| 間違い | 起きること | 対策 |
|---|---|---|
| 入力全部を光と考える | 発熱を過小評価 | 効率から発熱を計算 |
| 基板の熱抵抗を無視 | Tjを過小評価 | パッド下の層を計算 |
| 試験室の周囲温度で設計 | 実使用で過熱 | 器具内の温度を使う |
| 1個分のヒートシンク | 全体で過熱 | 合計の発熱で |
| TIMやはんだのボイド | 局所過熱 | 実装品質を確認 |
関連する内容も知りたいです。
LEDジャンクション温度ツールで試せるよ。関連するページはサーマルビア、ジャンクション温度、ヒートシンク設計、熱伝導材料(TIM)が参考になる。
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