サーマルビア

カテゴリ: 熱解析・電子機器冷却 | 2026-10-01 改稿
CAE visualization for thermal via theory - technical simulation diagram
サーマルビア

理論:銅の筒で熱を通す

概要

🙋

パワーICの放熱パッドの下にたくさん小さな穴が開いていますが、あれはどれくらい効くんですか?

🎓

あれがサーマルビアで、非常によく効く。基板の材料のFR-4は、厚さ方向の熱伝導率が約0.3 W/mKしかなく、ほとんど断熱材だ。ビアの壁の銅めっきは厚さ25 µmほどの薄い筒だが、銅の熱伝導率は約1,300倍あるので、細い筒でも大きな熱の通り道になる。本数、めっきの厚さ、穴の埋め方でどれだけ熱抵抗が変わるかを、5 mm角のパッドで計算してみよう。

並列の熱抵抗

$$ R_{via} = \frac{t_b}{k_{Cu}\,\pi\left[r_o^2 - (r_o - t_p)^2\right]},\qquad \frac{1}{R_{total}} = \frac{n}{R_{via}} + \frac{n}{R_{fill}} + \frac{k_{FR4}\left(A_{pad} - n\pi r_o^2\right)}{t_b} $$

$t_b$ は基板の厚さ、$r_o$ は穴の半径、$t_p$ はめっきの厚さ。ビアの銅、穴を埋めた材料、残りのFR-4が並列につながる。基板の面方向の広がり(銅箔での熱拡散)は含めない1次元の見積もり。

Coffee Break よもやま話

基板が放熱部品になった

かつて部品の熱は、主にパッケージの上に付けたヒートシンクから逃がしていた。2000年代になると、裏面に放熱パッドを持つQFNなどの小型パッケージが広まり、熱の大部分を基板へ流す設計が普通になった。こうなると基板そのものが放熱器で、パッドの下のサーマルビアと内層の銅ベタが熱の通り道になる。LED照明や車載電子では、さらに熱伝導の良いアルミ基板や、銅で埋めたビアが使われるようになった。

計算例:5 mm角パッドの下のビア

基板厚さ1.6 mm、FR-4の厚さ方向の熱伝導率0.3 W/mK、ビアの穴径0.3 mm・めっき25 µm(銅390 W/mK)。ビア1本の熱抵抗は190 K/Wで、5 mm角のFR-4全体(213 K/W)とほぼ同じになる。

ビアの本数

本数熱抵抗実効熱伝導率1 Wでの温度差
0213 K/W0.3 W/mK213 K
438.9 K/W1.6 W/mK38.9 K
919.2 K/W3.3 W/mK19.2 K
1611.3 K/W5.7 W/mK11.3 K
257.4 K/W8.7 W/mK7.4 K
365.2 K/W12.4 W/mK5.2 K
642.9 K/W21.8 W/mK2.9 K

穴埋めとめっき(25本)

条件熱抵抗
穴埋めなし7.35 K/W
樹脂で埋める(0.6 W/mK)7.33 K/W
はんだで埋める(50 W/mK)5.74 K/W
銅で埋める2.30 K/W
穴径0.5 mm・めっき35 µm3.17 K/W
めっき18 µm(薄い)9.85 K/W
🙋

細い穴1本で、パッドの下のFR-4全部と同じだけ熱を通すんですね。

🎓

めっきの銅の断面積は0.022 mm²しかないが、熱伝導率がFR-4の1,300倍あるので、25 mm²のFR-4と同じくらいの熱を通す。だからビアの本数を増やすと熱抵抗はほぼ反比例して下がり、25本で約30分の1になる。めっきを18 µmに薄くすると熱抵抗は3割以上悪くなるので、めっき厚の指定も大事だ。樹脂で穴を埋めるのは、はんだが吸い込まれるのを防ぐなど製造上の理由で、熱の面ではほとんど効果がない。熱のために埋めるなら、銅で埋めるビアが必要になる。実際には、ビアを通った熱が裏面や内層の銅ベタで横に広がれるかどうかも大切で、銅ベタが小さいとビアの効果は生かせない。

設計のポイント

  1. パッドの下にできるだけ多くのビアを並べる(ピッチ1 mm前後が多い)。
  2. めっき厚を図面で指定する。薄いと効果が大きく落ちる。
  3. 裏面と内層に十分な銅ベタを設け、熱が横に広がるようにする。
  4. はんだの吸い込みを防ぐには、穴の小径化・テンティング・穴埋めを検討する。
  5. 基板全体の熱解析では、ビアの領域を実効熱伝導率の異方性材料として扱う。
Coffee Break よもやま話

「ビアはあるのに熱い」

ある電源基板で、パッドの下に36本のサーマルビアを入れたのに、ICの温度が想定より20 K以上高かった。調べると、ビアの裏側には部品の配線を通すために小さな銅パッドしかなく、ビアを通った熱が広がる場所がなかった。裏面に大きな銅ベタを設けて他の層ともビアでつなぐと、温度は想定どおりに下がった。ビアは熱の通り道でしかなく、行き先がなければ働かない。

よくある間違い

間違いと対策

間違い起きること対策
FR-4を等方性で扱う厚さ方向を過大評価面方向と厚さ方向を分ける
ビアをモデルから省く温度を過大評価実効熱伝導率で表す
めっき厚を確認しない3割以上の差仕様を明記
樹脂埋めで改善を期待効果がない銅埋めを使う
裏面の銅ベタ不足熱が広がらない銅ベタを広く
🙋

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