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振動工学

基礎加振の振動伝達率シミュレーター

床から伝わってくる振動を、ばねダンパ式の防振マウントでどれだけ遮断できるかを体験するツールです。系の固有振動数・減衰比・加振振動数・基礎の振幅を変えると、振動数比・伝達率・絶縁効率・共振増幅率がリアルタイムで分かり、機器を振動から守る防振設計を検討できます。

パラメータ設定
系の固有振動数 fₙ
Hz
機器をばねダンパで支持した系の固有振動数。低いほど防振に有利
減衰比 ζ
防振マウントの減衰の大きさ。共振ピークの抑制に効く
加振振動数 f
Hz
基礎(床)が揺れる外乱の振動数
基礎の振動振幅
mm
床が上下に揺れる変位振幅
計算結果
振動数比 r
振動伝達率 T
質量側の振動振幅 (mm)
絶縁効率 (%)
共振増幅率(参考)(倍)
絶縁の判定
防振マウントと振動伝達 — アニメーション

ばねダンパで支持された質量と、揺れる基礎を描画します。絶縁域では質量が基礎より小さく揺れ、共振付近では大きく揺れます。横には伝達率カーブと現在の動作点を表示します。

伝達率 vs 振動数比
伝達率 vs 減衰比
理論・主要公式

$$T=\sqrt{\frac{1+(2\zeta r)^{2}}{(1-r^{2})^{2}+(2\zeta r)^{2}}},\qquad r=\frac{f}{f_n}$$

変位伝達率 T と振動数比 r。f は加振振動数、fₙ は系の固有振動数、ζ は減衰比。質量側に伝わる振幅 = 基礎の振幅 × T。

$$\eta=(1-T)\times100\,[\%],\qquad T_{\text{res}}=\frac{\sqrt{1+(2\zeta)^{2}}}{2\zeta}$$

絶縁効率 η(T < 1 のときのみ意味をもつ)と、共振点(r = 1)での共振増幅率 T_res。

絶縁(T < 1)が成立するのは振動数比 r が √2 ≈ 1.414 を超えたときだけです。ばねを柔らかくして固有振動数 fₙ を下げ、r を大きくすることが防振設計の鍵となります。

振動絶縁と伝達率とは

🙋
「床から伝わる振動を防振ゴムで止める」ってよく聞くんですけど、ゴムを挟めば振動って勝手に減るものなんですか?
🎓
それがね、必ずしも減るとは限らないんだ。たとえば精密顕微鏡を、振動する建物の床に直接ボルト止めすると、床の揺れがそのまま機器に届いてしまう。そこで機器をばねとダンパの「防振マウント」の上に載せる。どれくらい振動を防げたかを表すのが「振動伝達率」だ。床の揺れの振幅に対して、機器側に伝わった振幅が何分の一になったか、という比のことだよ。
🙋
なるほど、揺れの比なんですね。じゃあ柔らかいゴムを使えば使うほど、伝達率はどんどん小さくなるんですか?
🎓
そこが面白いところで、話は3つの領域に分かれるんだ。カギになるのは「振動数比」、つまり床の揺れの振動数を、機器+ばねの系の固有振動数で割った値 r だ。r が 1 より小さい、つまり加振がゆっくりだと伝達率はだいたい 1。機器は床と一緒に動くだけで、ゴムはほとんど仕事をしない。r が 1 の近く、つまり共振だと伝達率が 1 をはるかに超えて、ゴムがかえって振動を増幅してしまう。これは初心者がよく驚くポイントだね。
🙋
えっ、防振のつもりで入れたゴムが振動を増やすこともあるんですか?じゃあ、ちゃんと振動が減るのはどこなんですか?
🎓
本当の絶縁が始まるのは、振動数比 r が √2、つまり約1.414 を超えてからなんだ。それを超えると伝達率がやっと 1 を下回り、r を大きくするほどぐんぐん下がっていく。だから防振設計の鉄則は「ばねを柔らかくして系の固有振動数を、床の加振振動数よりずっと低くする」こと。このツールの初期値だと床が25Hz、固有振動数が5Hzで r = 5。伝達率は約0.06、振動の94%を遮断できている計算だよ。上のキャンバスで、質量が床よりずっと小さく揺れているのが見えるはずだ。
🙋
じゃあ減衰、つまりダンパは大きいほどいいんですか?共振のピークを抑えてくれるなら、たっぷり入れたくなります。
🎓
それが減衰の二面性なんだ。たしかに減衰を大きくすると、共振点 r = 1 の危険なピークは低くなる。機械が起動や停止のたびに共振を通り抜けるなら、これは命綱になる。でもね、√2 を超えた本来の絶縁域では、減衰が大きいほど伝達率がわずかに悪化する。下の「伝達率 vs 減衰比」のグラフを動かすと、絶縁域では減衰が増えるほど線が上がるのが見えるよ。だから減衰は「共振ピークを抑える」と「絶縁域の性能を保つ」の妥協点で選ぶ、というのが実務の感覚だね。
🙋
なら、固有振動数をとにかく下げて、ばねをどこまでも柔らかくすればいいんですか?
🎓
理屈の上では絶縁は良くなる。でも柔らかすぎると静たわみ、つまりばねが自重で沈む量が大きくなりすぎて、機器がぐらついて安定して載らない。エアマウントを使うような半導体露光装置でも、固有振動数は1〜3Hzあたりが限界で、それより下げると今度は姿勢制御が難しくなる。だから現場では「絶縁性能」「支持の安定性」「許容できる静たわみ」の3つをにらみながら、防振ゴムやばねのばね定数を選ぶんだ。このツールで r をいろいろ変えて、伝達率がどう動くか手を動かして掴んでみるといいよ。

よくある質問

振動伝達率とは、ばねダンパで支持された機器に伝わる振動の振幅を、基礎(床)が揺れる振幅で割った無次元の比です。床が振幅 2mm で揺れているとき、機器側が 0.12mm しか揺れなければ伝達率は 0.06 となり、振動の 94% を遮断できたことになります。伝達率が 1 より小さいほど防振が効いており、1 より大きいときは防振どころか振動を増幅しています。この値は振動数比と減衰比だけで決まります。
振動絶縁(伝達率が 1 を下回る状態)は、振動数比 r = 加振振動数 / 固有振動数 が √2 ≈ 1.414 を超えたときに初めて始まります。r が √2 より小さい領域では伝達率は 1 以上で、防振ゴムを入れても振動を遮断できず、共振点(r = 1)付近では逆に大きく増幅します。したがって防振設計の鉄則は「ばねを柔らかくして固有振動数を加振振動数より十分に低くし、r を √2 よりはるかに大きくする」ことです。
いいえ、減衰には二面性があります。減衰を大きくすると共振点(r = 1)の危険なピークは下がるため、機械が起動・停止で共振を通過するときには有効です。しかし振動数比が √2 を超えた本来の絶縁域では、減衰が大きいほど伝達率がわずかに悪化します。これは伝達率の式の分子に減衰の項 (2ζr)² があるためで、高周波ほど影響が出ます。したがって減衰は「共振ピークの抑制」と「絶縁域の性能」の妥協点として選びます。
ばねを柔らかくすると系の固有振動数が下がり、与えられた加振振動数に対する振動数比 r が大きくなるからです。絶縁が始まるのは r が √2 を超えてからで、r が大きいほど伝達率は小さく、絶縁効率は高くなります。例えば床が 25Hz で揺れている場合、固有振動数を 5Hz まで下げれば r = 5 となり伝達率は約 0.06、振動の 94% を遮断できます。ただし柔らかすぎると静たわみが過大になり、機器が安定して載らないため、防振ゴムの選定では絶縁性能と支持安定性のバランスをとります。

実世界での応用

精密機器・計測機器の除振:電子顕微鏡、原子間力顕微鏡、半導体露光装置、超精密加工機などは、建物の床がわずかに揺れただけでも像が乱れたり加工精度が落ちたりします。これらは空気ばね(エアマウント)やコイルばねの上に載せ、固有振動数を1〜3Hz程度まで下げて、床から来る数十Hzの振動に対する振動数比を十分大きくします。本ツールで固有振動数を下げると伝達率が急減するのは、まさにこの除振台の設計思想です。

建物・床への振動伝達の遮断:逆に、振動源となる機械(ポンプ、コンプレッサ、空調機、発電機)を防振ゴムやばねの上に据え付け、機械の振動が建物の床や壁に伝わるのを抑える用途もあります。考え方は同じで、機械の運転回転数より固有振動数を十分低くすれば、床に伝わる力が小さくなります。集合住宅や病院では、上下階への振動・固体音の伝達を防ぐためにこの設計が欠かせません。

輸送・車載機器の防振:救急車に積む医療機器、トラックで運ぶ精密部品、車載のハードディスクやカメラなどは、走行で生じる路面振動から守る必要があります。防振ゴムやゲルマウントで支持し、走行振動の主成分(数Hz〜数十Hz)に対して振動数比が √2 を超えるよう固有振動数を設定します。ただし輸送中は加振振動数が広い帯域に分布するため、共振点を通過する成分の増幅にも注意が必要です。

CAEによる防振設計の事前検討:詳細な多自由度モデルや有限要素解析を行う前に、本ツールのような1自由度の伝達率計算で「固有振動数をいくつにすれば伝達率が目標値以下になるか」の当たりをつけます。防振ゴムのカタログにあるばね定数から固有振動数を求め、伝達率を概算すれば、製品選定の初期判断が一気に進みます。FEM結果がこの概算と大きく食い違えば、質量や剛性の入力ミスを疑うサニティチェックにもなります。

よくある誤解と注意点

まず最大の誤解が、「防振ゴムを入れれば必ず振動が減る」という思い込みです。本ツールで振動数比を1付近に設定すると分かるように、加振振動数が系の固有振動数に近いと伝達率は1をはるかに超え、防振ゴムは振動を増幅します。安価な防振ゴムを「とりあえず」挟んだだけで、固有振動数が加振振動数とたまたま一致してしまい、対策前より激しく揺れるようになる――これは現場で実際によく起きる失敗です。防振ゴムを選ぶときは、必ずそのばね定数と機器質量から固有振動数を計算し、加振振動数の √2 倍以下、できれば 1/3 以下に収まっているかを確認してください。

次に、「減衰は多ければ多いほど良い」という誤解です。共振点のピークだけを見れば減衰は大きいほど安心に見えますが、振動数比が √2 を超えた絶縁域では減衰が大きいほど伝達率が悪化します。伝達率の式の分子に (2ζr)² があるためで、高周波ほどこの劣化が効いてきます。常に共振点を通過する機械(起動・停止を繰り返すモータなど)では減衰を厚めにし、定常的に高い振動数比で運転される機器では減衰を控えめにする、というように、用途に応じて減衰を使い分けるのが正しい考え方です。

最後に、「このツールの1自由度モデルがそのまま実機に当てはまる」と考えないこと。ここで扱っているのは、剛体質量が1方向に動く理想化された1自由度系です。実際の機器は上下・前後・左右の並進3方向と回転3方向、合わせて6自由度をもち、それぞれに固有振動数があります。また、防振ゴムには周波数や振幅で変わる動的ばね定数や、温度・経年での特性変化があり、カタログ値どおりに振る舞うとは限りません。本ツールは「どの方向にどれくらいの絶縁が見込めるか」の初期検討と原理理解には最適ですが、最終的な防振設計は実機の固有値解析や加振試験で裏付けてください。

使い方ガイド

  1. 固有振動数fnNum(Hz)と減衰比zetaNum(0.05~0.3)を入力します。ばねダンパ式防振マウントの場合、天然ゴム製で固有振動数5~10Hz、減衰比0.1~0.15が標準です
  2. 励振振動数excNum(Hz)と基礎加振振幅ampNum(mm)を設定します。機械工場の床振動は10~30Hz、振幅0.5~2mmが一般的です
  3. 振動数比r、振動伝達率T、質量側振幅、絶縁効率を確認し、伝達率が0.5以下(絶縁効率50%以上)であれば防振効果が十分です

具体的な計算例

800kg機械装置を天然ゴム防振マウント4個で支持する場合:固有振動数fn=8Hz、減衰比ζ=0.12、励振源の床振動20Hz・振幅1.5mmを入力すると、振動数比r=2.5となり、振動伝達率T≒0.35、質量側振幅≒0.53mm、絶縁効率65%が得られます。共振増幅率は4.17倍ですが、励振が固有振動数より十分高いため実害なし

実務での注意点