免震化による固有周期シフトと応答低減シミュレーター 一覧へ
対話型シミュレーター

免震化による固有周期シフトと応答低減シミュレーター

地震動で揺れる「固定基礎の建物」と「免震建物」を並べて描画。長周期化が応答スペクトル上で加速度を下げる様子をリアルタイムで確認します。

パラメータ入力
固定基礎周期
s

免震前の建物固有周期です。

免震周期
s

免震後の目標周期です。

等価減衰
%

免震装置を含む等価減衰です。

入力PGA
g

地震入力の最大加速度です。

有効質量
t

応答に関与する建物質量です。

計算結果
加速度低減
免震層変位
ベースシア低減
周期倍率
地震時の応答(固定基礎 vs 免震)
固定基礎(大きな揺れ) 免震建物(上部は小さく揺れる) 免震層の変形
応答スペクトルと周期シフト
スペクトル加速度の比較
理論・主要公式

$$T=2\pi\sqrt{\frac{M}{K}},\qquad V=M\,S_a(T,\xi),\qquad D=S_a\left(\frac{T}{2\pi}\right)^2$$

$T$は固有周期、$M$は有効質量、$K$は水平剛性、$\xi$は減衰比。応答スペクトル $S_a$ は短周期側で台地(プラトー)を持ち、卓越周期 $T_c$ を超えると概ね $1/T$ で減衰します。免震で $T$ を 2〜3 秒へ伸ばすと $S_a$ が下がり、ベースシア $V$ と上部加速度が低減します。代償として免震層変位 $D$ は $T^2$ に比例して増大します。減衰補正は $\eta=\sqrt{0.10/(0.05+\xi)}$ を用いています。

免震化による固有周期シフトとは

免震(base isolation)は、建物と基礎の間に水平方向に柔らかい免震装置(積層ゴム支承や滑り支承など)を挿入し、建物全体の固有周期を意図的に長くする技術です。固定基礎の建物の周期は概ね 0.3〜0.8 秒で、これは地震の応答スペクトルが最も大きくなる「台地(プラトー)」の領域に重なりやすいため、地動の加速度がそのまま大きく増幅されて上部構造に伝わります。

免震で周期を 2〜3 秒まで伸ばすと、スペクトルの右下がり(概ね 1/T で減衰する)領域へ移動します。そこではスペクトル加速度 $S_a$ が大幅に小さく、ベースシア $V=M\,S_a$ も同じ割合で下がります。つまり「揺れにくくする」のではなく「揺れの周期をずらして地震エネルギーの大きい帯域から外す」のが本質です。

このシミュレーターは、固定基礎の建物と免震建物を同じ地動で並べて揺らし、上部構造の加速度差・免震層の変形・応答スペクトル上での周期点の移動をリアルタイムで可視化します。

読み取り方

アニメーションでは、左の固定基礎建物が大きく揺れる一方、右の免震建物は上部がほとんど傾かず、代わりに底部の免震層(黄色のせん断変形)が大きく動きます。これが「加速度を下げる代償に変位が増える」関係の可視化です。

応答スペクトル図では、固定基礎の周期点(赤)がプラトー付近に乗り、免震の周期点(青)が右下の低加速度域へ移動します。周期を長くすると加速度が下がる領域を見ます。

バー図では固定基礎と免震のスペクトル加速度を直接比較し、ベースシア低減率を読み取ります。

会話で学ぶ免震化による固有周期シフトと応答低減

🙋
アニメーションを見ると、左の建物だけ大きく揺れて、右の免震建物は上があまり動かないですね。これって地震が弱くなってるんですか?
🎓
いや、地震入力(地動)はどちらも同じだよ。違うのは建物の「周期」なんだ。免震建物は底に柔らかい免震層を入れて周期を2〜3秒に伸ばしてある。応答スペクトルって覚えてる?短周期だと加速度が大きい台地に乗っちゃうけど、周期を長くすると右下がりの低い領域に移る。だから上部に伝わる加速度=揺れが小さくなるんだ。
🙋
なるほど、揺れを止めてるんじゃなくて周期をずらしてるんですね。でも右の建物、底のところ(黄色)がすごく動いてます。あれは大丈夫なんですか?
🎓
いいところに気づいたね。それが免震の代償だよ。スペクトル変位は $D=S_a(T/2\pi)^2$ で、周期の2乗で効くから、加速度は下がっても免震層の変位は大きくなりやすい。例えば3秒の免震だと数十cm動くこともある。だから実務では擁壁との隙間(クリアランス)や、エキスパンションジョイント、配管が追従できるかを必ず確認するんだ。
🙋
減衰を上げると変位は減りますか?スライダーで等価減衰を大きくすると数字が変わりますね。
🎓
そう、減衰を増やすと $S_a$ も $D$ も下がる。鉛プラグ入り積層ゴムや滑り支承で減衰を稼ぐんだ。ただし減衰を上げすぎると上部に伝わる加速度がやや増える側面もあるから、変位を抑えたいのか加速度を抑えたいのかで最適点が変わる。バー図と免震層変位の数値を往復しながら、ちょうどいい所を探すのが設計だよ。
🙋
じゃあ周期を伸ばせば伸ばすほど良いんですか?免震周期を6秒くらいにしたら?
🎓
そこが落とし穴。周期を伸ばしすぎると今度は変位が爆発的に増えるし、長周期地震動(遠地の大地震や堆積平野で卓越する成分)と共振するリスクが出てくる。軟弱地盤だと特に危険だ。だから実際は2〜3.5秒あたりに収めることが多い。最終判断では規格値、実測値、詳細な時刻歴解析、メーカーの装置条件で確認するのが鉄則だよ。

実世界での応用

病院・データセンター・半導体工場など、地震後も機能維持が求められる施設で床応答加速度を抑えるために採用されます。

免震レトロフィット(既存建物への後付け免震)の初期効果説明と、免震周期・減衰の候補比較。

詳細時刻歴解析へ進む前の、免震層変位オーダーとクリアランス計画の概算確認。

よくある誤解と注意点

「免震=地震を消す」ではありません。周期をずらして加速度を下げる代わりに、免震層では大きな変位が発生します。クリアランス不足は擁壁衝突(ポンディング)につながります。

軟弱地盤や長周期地震動が卓越する地域では、過度な長周期化(4秒以上)がかえって応答を増幅することがあります。地盤卓越周期との共振を避けます。

本ツールは等価線形の概算です。免震装置の非線形履歴・ハードニング・速度依存性・限界変形は、最終的に詳細解析とメーカー条件で確認してください。

よくある質問

加速度低減と免震層変位を先に見ます。次に免震応答スペクトルで前提の状態を確認し、免震層変位で分布や変化の偏りを読みます。スペクトル図では周期を長くしたとき加速度が下がる領域を見ます。
固定基礎周期を単独で動かしたあと、免震周期も同じ幅で動かして加速度低減の変化量を比べます。ベースシア低減を見ると、どの組み合わせで余裕や性能が急に変わるかを把握できます。
応答スペクトルは短周期側で加速度がほぼ一定の台地(プラトー)を持ち、卓越周期Tc(おおむね0.5〜0.8秒)を超えると概ね1/Tで減衰します。固定基礎の建物(0.3〜0.8秒)はこの台地に乗りやすく、免震で2〜3秒へ周期をずらすと右下がりの領域に移り、スペクトル加速度Saが大きく下がります。これがベースシアV=M·Saの低減につながります。
免震層の変位が増えます。スペクトル変位はD=Sa·(T/2π)²で、周期Tの2乗に比例して伸びます。加速度は下がってもD自体は大きくなりやすく、クリアランス(擁壁との隙間)やエキスパンションジョイント、配管の追従性が設計の要点になります。長周期地震動が卓越する地盤では特に注意します。
本ツールは等価線形(等価周期・等価減衰)で応答スペクトルを評価する概算です。実設計では免震装置の非線形履歴、限界変形、ハードニング、風応答、上下動、ねじれ、地盤との相互作用を時刻歴解析で確認します。最終判断では規格値、実測値、詳細解析、メーカー条件を確認してください。

使い方ガイド

  1. 固定支持建物の固有周期(秒)と減衰率(%)を入力し、基準地動加速度(PGA)を設定する
  2. 免震化後の周期とダンパー減衰を入力して、応答スペクトル上での周期シフト効果を確認する
  3. シミュレーション実行後、加速度低減率・免震層最大変位・ベースシア削減率・周期倍率を比較検証する

具体的な計算例

鉄骨造オフィスビル(固定時T=0.6秒)を対象に、免震化(免震周期T=3.2秒、等価減衰18%、入力PGA=0.4g)を本ツールで評価する場合:周期倍率は3.2/0.6≈5.3倍となり、固定基礎はスペクトルの台地(Sa≈2.5×PGA=1.0g)に乗る一方、免震側はSa≈0.12gまで下がるため加速度低減は約88%と算出される。免震層変位はD=Sa·(T/2π)²より約0.32m規模となり、加速度低減の代償として大きく出る。これはオーダー把握用の概算であり、実設計では非線形履歴を含む時刻歴解析で確認する。

実務での注意点