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振動工学

軸の危険速度(危険回転数)シミュレーター

円板を取付けた回転軸の「危険速度」を求めるツールです。軸径・支持間距離・円板の質量・運転回転数を変えると、軸の曲げ剛性・静たわみ・曲げ固有振動数からふれまわり共振が起きる危険速度がリアルタイムで分かり、共振を避けた安全な回転機械を設計できます。

パラメータ設定
軸径 d
mm
支持間距離 L
mm
2つの軸受の間隔(スパン)
取付け円板の質量 m
kg
スパン中央に付くロータの質量
運転回転数 N
rpm
機械が定常運転する回転数
支持条件
軸端の軸受・継手の固定度合い
計算結果
断面二次モーメント I (m⁴)
軸の曲げ剛性 k (N/m)
静たわみ δ (mm)
危険速度 N_c (rpm)
運転速度/危険速度比
危険速度の判定
回転軸のふれまわり(ホイール)アニメーション

2つの軸受に支えられた軸とスパン中央の円板を表示。運転速度が危険速度に近いほど軸は大きく弓なりにふれまわります。

危険速度 vs 軸径
ホイール振幅の応答曲線
理論・主要公式

$$N_c=\frac{60}{2\pi}\sqrt{\frac{k}{m}},\qquad k=\frac{48EI}{L^{3}}\ \text{(両端単純支持)}$$

危険速度 N_c [rpm]。k:軸の曲げ剛性 [N/m]、m:ロータ質量 [kg]。両端固定では k=192EI/L³。剛い軸(太径・短スパン)や軽いロータほど危険速度は高くなり、機械はこの速度での運転を避ける必要がある。

$$I=\frac{\pi d^{4}}{64},\qquad \delta_{st}=\frac{mg}{k}$$

円形断面の断面二次モーメント I [m⁴] と、ロータ自重による静たわみ δ_st [m]。E:縦弾性係数(鋼 206 GPa)、g:重力加速度。

$$\omega_n=\sqrt{\frac{k}{m}}=\sqrt{\frac{g}{\delta_{st}}}$$

横(曲げ)方向の固有角振動数 ω_n [rad/s]。静たわみ δ_st が小さいほど固有振動数は高く、危険速度も高くなる。

軸の危険速度とは

🙋
「危険速度」って物騒な名前ですね。回転軸にそんな速度があるんですか?
🎓
あるんだ。どんな回転軸も——モーターでもポンプでもタービンでも工作機械の主軸でも——弾性体だから、横方向(曲げ方向)の固有振動数を持っている。その固有振動数とちょうど同じ回転数で軸を回したとき、軸が激しく弓なりにふれまわる。この回転数を「危険速度(危険回転数)」と呼ぶんだよ。
🙋
でも、ただ回しているだけなのに、なんでそんなに激しく振れるんですか?力を加えているわけじゃないのに。
🎓
いいところを突くね。原因は「どんな軸も完全には釣り合っていない」という避けられない事実なんだ。製造誤差で、軸と円板(ロータ)の重心はわずかに回転中心からずれている。この小さな偏心が、軸が回るたびに回転する遠心力を生む。その遠心力の周波数は回転数そのものだ。回転数が危険速度まで上がると、この回る力が軸の曲げ固有振動数と共振して、たわみがどんどん大きくなる。これが「ふれまわり(ホイール)」だよ。
🙋
共振すると、具体的にどうなるんですか?
🎓
軸が大きく弓なりになって振れまわり、軸受に過大な荷重がかかる。激しい振動と騒音が出て、最悪の場合は疲労破壊したり、回転体がケーシングに擦れて機械を壊す。だから設計では危険速度を絶対に避ける。左の運転回転数を上げて、危険速度に近づけてみて。下のキャンバスで軸が大きくふれまわり始めるはずだ。
🙋
じゃあ危険速度を高くしておけば安心ですよね。どうやって高くするんですか?
🎓
危険速度は N_c ∝ √(k/m) で、軸の曲げ剛性 k とロータ質量 m だけで決まる。だから軸を太くする、支持間距離を短くする、端部を固定支持にする、ロータを軽くする——どれも危険速度を上げる。便利な近道もあって、危険速度は軸が自重でたわむ「静たわみ」と密接に関係している。たわみが小さいほど危険速度は高い。だから自重たわみを見れば、すぐに当たりがつくんだ。
🙋
でも大きなタービンとかは、危険速度より速く回しているって聞きました。それは大丈夫なんですか?
🎓
よく知ってるね。機械には2つの設計流派がある。危険速度より十分低い速度で使う「亜臨界(剛性軸)」と、十分高い速度で使う「超臨界(たわみ軸)」だ。大型蒸気タービンは軽量化のため超臨界にすることが多い。ただし起動・停止のたびに危険速度を「素早く通り抜ける」必要がある——共振が成長する前に駆け抜けるんだ。亜臨界でも超臨界でも、危険速度のちょうど近く(運転速度比0.75〜1.3)で連続運転するのだけは絶対に避ける。

よくある質問

危険速度とは、回転軸の回転数が軸の横振動(曲げ振動)の固有振動数とちょうど一致する回転数のことです。どんな軸も完全には釣り合っておらず、わずかな質量の偏り(偏心)が回転とともに回る遠心力を生みます。回転数が危険速度に近づくとこの遠心力が軸の固有振動数と共振し、軸が大きく弓なりにふれまわって、軸受荷重・振動・騒音が急増します。本ツールは N_c = (60/2π)√(k/m) で危険速度を計算します。
危険速度は軸の曲げ剛性 k と回転体(ロータ)の質量 m だけで決まり、N_c ∝ √(k/m) です。剛性 k は軸径の4乗に比例し、支持間距離の3乗に反比例します。つまり危険速度を高めるには、軸を太くする・支持間距離を短くする・端部の支持を固くする(単純支持より固定支持)・ロータを軽くする、のいずれかが有効です。本ツールでは軸径を変えたときの危険速度の感度をグラフで確認できます。
運転回転数が一次危険速度より十分低い領域で使う設計を「亜臨界(剛性軸)」、十分高い領域で使う設計を「超臨界(たわみ軸)」と呼びます。一般の機械は危険速度を運転速度の1.3倍以上に取って亜臨界で運転します。大型蒸気タービンや高速ロータは軽量化のため超臨界とし、起動・停止のたびに危険速度を素早く通過させて共振が成長する前に通り抜けます。いずれの場合も危険速度の近傍(運転速度比0.75〜1.3)での連続運転は避けます。
便利な近似として、危険速度は軸がロータ自重で生じる静たわみ δ_st と密接に関係します。N_c ≈ 946/√δ_st(δ_st は mm、N_c は rpm、ダンカレーの式の基礎)で、たわみが小さいほど危険速度は高くなります。これは固有角振動数 ω = √(k/m) と静たわみ δ_st = mg/k から ω = √(g/δ_st) が導かれるためです。設計初期に自重たわみを測れば、危険速度をすばやく見積もれます。

実世界での応用

ポンプ・送風機・電動機:遠心ポンプの羽根車軸、ファンやブロワのロータ、汎用モーターの回転子は、ほとんどが一次危険速度より十分低い「亜臨界」で運転されます。設計では運転回転数に対し危険速度を1.3〜1.5倍以上に取り、共振を避けます。羽根車を片持ちで取付けるオーバーハング形のポンプでは、片持ち分のたわみが危険速度を下げるため、軸径と軸受間隔を慎重に決めます。

蒸気タービン・ガスタービン:発電用の大型タービンロータは、長く重いため一次危険速度が運転速度より低くなることが多く、あえて「超臨界」で運転します。起動・停止のたびに危険速度を通過しますが、加減速を速くして共振が成長する前に通り抜け、危険速度近傍での連続運転は避けます。実機ではダンパー軸受や弾性支持で危険速度通過時の振幅を抑えます。

工作機械の主軸・高速スピンドル:マシニングセンタや研削盤の主軸は数万 rpm で回ることもあり、危険速度の管理が加工精度に直結します。主軸は太く短く、剛い軸受で支えて危険速度を運転域より十分高く保つのが基本です。工具を長く突き出すと実効的なスパンが伸びて危険速度が下がるため、工具長と切削条件も合わせて検討します。

回転機械のトラブル解析と現場診断:「特定の回転数で急に振動が増える」「軸受が早期に傷む」といった不具合は、運転点が危険速度に近すぎることが原因のことが多くあります。本ツールのような簡易計算で危険速度の見当をつけ、振動測定で回転数を掃引して共振ピークの位置を確認します。実務では軸受剛性やジャイロ効果も影響するため、詳細にはロータダイナミクス解析(FEM)で裏付けを取ります。

よくある誤解と注意点

まず多いのが、「危険速度は1つだけだと思い込む」誤解です。本ツールはスパン中央に1つの円板を付けた最も単純なモデル(一自由度近似)を扱い、一次危険速度を求めます。しかし実際の軸は連続体なので、一次・二次・三次……と複数の危険速度を持ちます。複数のロータを付けた多段ポンプやタービンでは、各次数の危険速度をすべて運転域から外す必要があります。本ツールの値はあくまで一次の見積もりで、高次のモードや複数ロータの相互作用は別途ロータダイナミクス解析で確認してください。

次に、「軸受は完全に剛だと仮定してよい」という思い込み。本ツールの単純支持・固定支持は、軸受や支持構造が無限に剛いという前提です。実際の転がり軸受・すべり軸受・支持台は有限の剛性を持ち、これが軸自体の剛性と直列にはたらくため、実機の危険速度は計算値より低めに出ます。とくに油膜で支えるすべり軸受では、軸受の剛性・減衰が回転数で変わり、ふれまわりを不安定にする「オイルホイップ」という現象まで起こり得ます。軸受剛性は無視できない設計因子です。

最後に、「危険速度を一度通り抜ければ安全」だと過信すること。超臨界運転では起動時に危険速度を通過しますが、ジャイロ効果(円板の傾きによる復元)や軸の内部減衰、片持ち質量の有無で、前進ふれまわりと後退ふれまわりに分かれ、挙動は単純ではありません。加減速が遅いと危険速度近傍に長くとどまり、共振振幅が成長します。超臨界機械の起動・停止シーケンスは、危険速度を素早く通過するよう設計し、危険速度近傍での連続運転・長時間停留は必ず避けてください。

使い方ガイド

  1. 軸径(mm)を入力:一般的な鋼製回転軸ではφ20~φ100を想定。断面二次モーメントI=πd⁴/64で自動計算
  2. 支持間距離(mm)を入力:軸受間隔L=500~2000mmの範囲で、曲げ剛性k=3EI/L³に影響
  3. 中央円板の質量(kg)を入力:ポンプインペラ、ファン羽根、クラッチなど実装部品の総質量
  4. 運転予定回転数(rpm)を入力:電動機定格回転数(1450、3000、3600rpm等)を参考値として設定
  5. 「計算実行」で危険速度Nc=(1/2π)√(k/m)を求め、運転速度との安全余裕を評価

具体的な計算例

ポンプ駆動軸:φ30mm鋼軸、支持間隔L=800mm、中央にインペラ質量m=2.5kg、運転予定3000rpmの場合。E=206GPa、I=π×30⁴/64=39,760mm⁴、k=3×206×10⁹×39.76×10⁻¹²/0.8³=120,400N/m。危険速度Nc=60/(2π)√(120,400/2.5)≈2,330rpmと計算され、3000rpmは危険速度比1.29となり共振リスク高。軸径φ40への強化またはL短縮で危険速度を3500rpm以上に引き上げる設計変更が必須。

実務での注意点