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振動工学シミュレーター

振動絶縁器シミュレーター — 伝達率TRと周波数比

基礎の振動から設備への伝達率TRをリアルタイム計算。質量・ばね定数・減衰比・強制角振動数を変えると、周波数比√2を境に絶縁領域へ移行する様子をTR-r線図で確認できます。

パラメータ設定
質量 m
kg
ばね定数 k
N/m
減衰比 ζ
強制角振動数 ω
rad/s

絶縁が有効になる条件は周波数比 r=ω/ω_n が √2≈1.414 を超え、かつ TR<1 のときです。

計算結果
自然振動数 f_n
周波数比 r=ω/ω_n
伝達率 TR
絶縁率 IE=1-TR
TR-r線図(減衰比別カーブ群)

横軸=周波数比 r(対数)/縦軸=伝達率 TR(対数)/緑領域=絶縁有効域(r>√2 かつ TR<1)/赤丸=現在点

理論・主要公式

基礎の正弦振動が、ばね・ダッシュポットを介して設備に伝わる比を「変位伝達率 TR」と呼びます。1自由度の粘性減衰系の周波数応答から導かれます。

自然角振動数 ω_n、自然振動数 f_n。k はばね定数、m は質量:

$$\omega_n = \sqrt{k/m},\qquad f_n = \frac{\omega_n}{2\pi}$$

周波数比 r と減衰比 ζ。c は粘性減衰係数:

$$r = \frac{\omega}{\omega_n},\qquad \zeta = \frac{c}{2\sqrt{km}}$$

変位伝達率 TR と絶縁率 IE:

$$TR = \sqrt{\frac{1+(2\zeta r)^2}{(1-r^2)^2 + (2\zeta r)^2}},\qquad IE = 1 - TR$$

r=1 が共振点で TR は最大。絶縁効果が現れるのは r>√2≈1.414 のときに限られ、それ未満では TR≥1 で絶縁ではなく増幅されます。

振動絶縁器シミュレーターとは

🙋
「振動絶縁」って、要するに機械の下にゴムを敷くやつですよね?それで本当に振動が止まるんですか?
🎓
ざっくり言うとその通り。でも実は「振動を消す」のではなく「伝わる比率を下げる」装置なんだ。基礎が揺れている量に対して、機械に伝わる揺れの比を「伝達率TR」と呼ぶ。TR=0.13なら13%しか伝わらない、つまり87%絶縁ということ。上のシミュレーターで質量と剛性を初期値(m=100kg, k=100000N/m)にしてみて。TRが13%くらい出ているはずだ。
🙋
なるほど。でも「周波数比 r」のスライダー…じゃなくて、ωを動かすと曲線が左右に動きますね。なんで真ん中(r=1)あたりで赤い縦線が引いてあるんですか?
🎓
そこが共振点だ。強制周波数 ω が機械系の自然振動数 ω_n と一致する点で、振動が一番増幅される。式 $TR=\sqrt{(1+(2\zeta r)^2)/((1-r^2)^2+(2\zeta r)^2)}$ の分母 $(1-r^2)^2$ が r=1 でゼロになるからね。減衰がゼロだと無限大に発散する。シミュレーターでζを0に近づけて r=1 にしてみると、TRがすごく大きい数字になるはずだ。
🙋
あ、ほんとだ!じゃあ減衰は大きいほど良いんですか?ζを1.0にすると山がなだらかになります。
🎓
それが落とし穴で、ζを大きくするとカーブの右側、つまり絶縁領域(r>√2)ではTRが上がってしまう。各ζのカーブが r=√2 あたりで1点に集まり、その先で交差するのが見えるでしょ。実機では起動・停止時に共振点を通るから共振抑制も必要、でも常用域では絶縁効果が欲しい。だからζ=0.05〜0.15くらいの「ほどよい減衰」で妥協するんだ。
🙋
緑の縦線 r=√2≈1.414 が「絶縁境界」なんですね。これより右じゃないと意味がないと?
🎓
そう、ここが振動絶縁の鉄則だ。r<√2 では TR≥1、つまり絶縁ではなく増幅。実務では「強制周波数の0.5倍以下に自然振動数を設計する(=r≥2)」のが目安。例えば50Hzのモータなら ω_n=2π·25 rad/s 以下、つまり f_n≤25Hz になるよう mass と剛性を選ぶ。ばねを柔らかくして f_n を下げるのが基本戦略だよ。

よくある質問

防振ゴムは小型・安価で減衰比が0.05〜0.10とほどよく、空調機・小型機械に広く使われます。金属コイルばねは減衰がほぼゼロで低周波まで効きますが共振時に大きく揺れるためダンパー併用が前提です。エアサスペンションは固有振動数を1Hz前後まで下げられ、精密機器や大型車両に使われます。固有振動数を加振周波数の√2以下に設定できる方式を選ぶのが基本です。
いいえ。共振点(r=1付近)では減衰が大きいほどピークが抑えられ有利ですが、絶縁領域(r>√2)では減衰が大きいほど伝達率TRが高くなり絶縁効果が悪化します。シミュレーターでζスライダーを動かすとカーブが交差するのが分かります。実機では起動・停止時に共振点を通過するため、共振抑制と高周波絶縁のバランスでζ=0.05〜0.15程度に設定されます。
強制周波数(運転回転数や加振源の周波数)と機械系の固有振動数が近いと共振で振動が増幅し、装置損傷や騒音、周辺への影響が深刻になります。設備計画段階で ω_n=√(k/m) を計算し、運転周波数の0.7倍以下に収まるようマウント剛性 k を設計します。これが「ω/ω_n>√2」の絶縁条件を満たすための第一歩です。
基本原理は同じで、建物の固有周期を地震動の卓越周期より十分長くする(=ω_nを小さくする)ことで伝達率を下げます。積層ゴムや滑り支承で剛性を意図的に下げ、固有周期を3〜5秒に伸ばすのが免震ビルです。ただし減衰が小さすぎると免震層が大変位を起こすため、オイルダンパーや鉛ダンパーで適切な減衰を加えます。設計思想は機械振動絶縁とほぼ同じです。

実世界での応用

空調機・冷凍機の機械基礎:ビルの屋上に置かれる空調機や冷凍機は、コンプレッサの回転による振動が下の階に伝わると居住性を損ねます。装置の運転回転数(例:1500rpm=25Hz)に対し、防振ゴムや防振ばねで固有振動数を5〜10Hzに下げ、r=2.5〜5の絶縁領域で動作させます。シミュレーターで f_n=5Hz、ω=25Hz×2π を試すと、絶縁率90%以上が得られるのが分かります。

精密機器の除振台:電子顕微鏡や半導体露光装置、光学定盤などは、床から伝わるμmレベルの微振動でも性能を損ねます。エアサスペンション式の除振台は固有振動数を1〜3Hzまで下げ、5Hz以上の床振動を90%以上絶縁します。高度なものではアクティブ制御で位相を反転させた力を加え、低周波域でも絶縁効果を出します。

自動車のサスペンション:路面の凹凸(5〜20Hz相当)に対し、車体の固有振動数を1〜1.5Hzに下げる設計です。これが「乗り心地」の正体で、ばね定数と質量とダンパー減衰比の絶妙なバランスで決まります。スポーツカーは固有振動数を上げて路面追従性を優先し、高級車は下げて乗り心地を優先します。トレードオフの典型例です。

建築物の免震・制振:免震ビルは積層ゴムで固有周期を3〜5秒に延ばし、地震動の卓越周期(0.5〜2秒)から外して伝達率を下げます。制振ダンパー(オイルダンパー、粘弾性ダンパーなど)で減衰を加え、共振時の大変位を抑えます。建物全体を1自由度系として近似する考え方は、機械振動絶縁と本質的に同じです。

よくある誤解と注意点

最も多い誤解は、「やわらかいばねの方が絶対に絶縁効果が高い」と考えてしまうことです。確かに固有振動数を下げれば周波数比 r が大きくなり絶縁が効きますが、ばねが柔らかすぎると静的たわみが大きくなり装置が傾いたり、起動時に大きく揺れたりします。実務ではマウントの静的たわみが10〜50mm程度に収まるよう、ばね定数を「絶縁性能」と「装置の安定性」のバランスで決めます。シミュレーターでk=100に下げてみると f_n=0.16Hzと現実的でない値が出ます。

次に多いのが、共振点(r=1)を「とにかく避ければよい」と考えることです。実際の機械は起動・停止時に必ず共振点を通過します。例えば60Hz運転のモータでも、起動の0〜数秒間は0Hzから60Hzまで連続的に変化するため、途中で必ず r=1 を通ります。このとき減衰が小さすぎるとピーク振幅が極端に大きくなり装置損傷の原因になります。シミュレーターでζ=0と r=1 を試すとTRが発散する様子が確認できます。常用域だけでなく過渡応答も考慮した設計が必要です。

最後に、このシミュレーターが扱うのは「変位伝達率」であり「力伝達率」も同じ式になる点に注意してください。基礎の変位振幅が機器に伝わる比、もしくは機器に作用する強制力が基礎に伝わる比、どちらも1自由度系では同じ式 TR=√((1+(2ζr)²)/((1-r²)²+(2ζr)²)) で表されます。一方、加速度伝達率や2自由度系(ザイサー型ダイナミックダンパー)では式が異なります。複雑な系では複数モードを考慮した有限要素解析(FEA)が必要になります。