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熱伝達シミュレーター

ビオ数 シミュレーター — 過渡熱伝導の集中容量モデル判定

対流熱伝達率 h・固体熱伝導率 k・特性長 L_c・熱拡散率 α から、ビオ数 Bi = hL_c/k、集中容量モデルの適用領域、時定数 τ = ρc_p L_c/h、t = τ における無次元残差 T/T_0 = exp(−1) をリアルタイムに計算します。固体断面の温度勾配と Bi-領域マップで、集中容量近似が使えるかどうかを直感的に判定できます。

パラメータ設定
対流熱伝達率 h
W/m²·K
熱伝導率 k
W/m·K
特性長 L_c
mm
熱拡散率 α
×10⁻⁶ m²/s

既定値は鋼塊(h = 100 W/m²K の自然対流、k = 50 W/mK、L_c = 25 mm、α = 13 × 10⁻⁶ m²/s)。ρc_p = k/α で内部的に算出。判定基準は Bi < 0.1(集中容量)、0.1 ≤ Bi ≤ 10(分布解析)、Bi > 10(表面集中近似)。

計算結果
ビオ数 Bi = hL/k
適用領域
時定数 τ
t=τ での T/T_0
固体内部の温度勾配(断面図)

固体(球の断面)に色グラデーションで表現/Bi が小さいほど均一色(lumped 近似)/Bi が大きいと中心と表面で色差が顕著/矢印 h(外部対流)と k(内部伝導)の比が Bi。

ビオ数の領域マップ(Bi-応答)

横軸=Bi(対数、0.01〜100)/縦軸=無次元残差 ε = T/T_0 at t=τ/緑=集中容量領域(Bi<0.1)/黄=分布解析領域(0.1<Bi<10)/赤=表面集中領域(Bi>10)/黄縦線=現在の Bi。

理論・主要公式

過渡熱伝導において、固体内部の温度分布が均一とみなせるかどうかをビオ数で判定します。

ビオ数(内部 vs 表面熱抵抗の比):

$$\mathrm{Bi} = \frac{h\,L_c}{k}$$

集中容量モデルの時定数(ρc_p = k/α):

$$\tau = \frac{\rho c_p\,V}{h\,A_s} = \frac{\rho c_p\,L_c}{h} = \frac{k\,L_c}{h\,\alpha}$$

フーリエ数(無次元時間):

$$\mathrm{Fo} = \frac{\alpha\,t}{L_c^{\,2}}$$

集中容量モデルの温度応答:

$$\frac{T(t)-T_\infty}{T_0-T_\infty}=\exp(-\mathrm{Bi}\cdot\mathrm{Fo})=\exp\!\left(-\frac{t}{\tau}\right)$$

$h$ は対流熱伝達率 [W/m²·K]、$k$ は熱伝導率 [W/m·K]、$L_c=V/A_s$ は特性長 [m]、$\alpha=k/(\rho c_p)$ は熱拡散率 [m²/s]。判定基準: Bi < 0.1 で集中容量、0.1 ≤ Bi ≤ 10 で分布解析、Bi > 10 で表面集中近似。

ビオ数 シミュレーターとは

🙋
焼入れの伝熱計算で「Bi が 0.1 以下なら集中容量モデル」って習いましたが、Bi って一体何の比なんですか?
🎓
ざっくり言うと、Bi = hL_c/k は「固体内部の熱伝導抵抗 L_c/k」と「表面の対流抵抗 1/h」の比だ。Bi が小さい=表面抵抗が支配的=表面で熱がボトルネックになるから内部はほぼ均一になる。本ツールの既定値は鋼塊(k=50, L_c=25mm)が自然対流(h=100)で冷える状況で、Bi=0.05 となり集中容量モデルが安心して使える領域だね。
🙋
時定数 τ が 16.0 分って出てますが、これは何分で冷めるって意味ですか?
🎓
τ は「初期温度差の 1/e ≈ 36.8% に減衰するまでの時間」のことだ。t=τ で T/T_0 = exp(-1) = 0.368、t=3τ で約 5%、t=5τ で 1% 以下まで冷える。実務では「3τ で実用的に冷却完了、5τ で完全冷却」と覚えると便利。鋼塊 25mm が空気自然対流で冷えるなら 1 時間強で 95% 冷却ということだね。
🙋
右の領域マップで Bi が大きくなると赤の「表面集中」になりますが、これは何が起きてるんですか?
🎓
Bi が 10 を超えると、表面の対流抵抗が内部の伝導抵抗の 10 分の 1 以下になり、表面が瞬時に冷却流体と平衡になる。例えば油焼入れ(h ≈ 1000)の銅塊 100mm(k=400)でも Bi=0.25 だが、断熱性の高いセラミック(k=2)にすると Bi=50 で、表面だけ冷えて中心が遅れる現象が顕著になる。本ツールで k=2、h=5000、L_c=200mm に設定すると Bi=500 と完全な表面集中領域に入るのが見えるよ。
🙋
L_c はスライダーで直接 mm 入力ですが、自分のケースに合わせるにはどう決めればいいですか?
🎓
標準は L_c = V/A_s(体積を表面積で割る)だ。具体的には、無限平板なら半厚 t/2、長円柱なら半径 r/2、球なら r/3 になる。例えば直径 30mm の球なら L_c = 5mm(= 30/2/3)、厚さ 30mm の板なら L_c = 15mm。同じ素材・同じ対流条件でも、球の方が表面積/体積比が大きく Bi が約 3 倍小さくなるので、集中容量近似が成立しやすい。本ツールでは L_c を直接入力するから、形状ごとに V/A_s を事前計算して入れてね。

よくある質問

Bi = hL_c/k は「固体内部の熱伝導抵抗」と「表面の対流伝熱抵抗」の比です。Bi < 0.1 だと内部抵抗が表面抵抗の 10 分の 1 以下となり、内部温度差が外部との温度差の 5% 未満に抑えられます。この閾値は球の厳密解で「表面と中心の温度差 ≤ 5%」を満たす実用基準として 1950 年代から教科書に採用され、ASME 等の伝熱便覧でも標準値です。本ツールで L_c を変えて Bi=0.1 を跨ぐと、固体断面の色グラデーション(中心と表面の温度差)が顕著に変わるのが見えます。
集中容量モデルでは τ = ρc_p L_c/h で、これは固体全体が空気から熱を抜かれる「対流冷却の時間スケール」です。一方 L_c²/α は「熱が内部を拡散する時間」で、Bi で結ばれます(τ_diff/τ = Bi)。Bi=0.05 なら拡散時間が対流時間の 5% なので、内部は瞬時に平衡 → 集中容量妥当。Bi=10 では拡散時間の方が 10 倍長く、表面が冷えても中心は遅れる → 分布解析が必要です。既定の鋼(L_c=25mm)では τ ≈ 16 分。
Bi > 10 は表面の対流抵抗が内部抵抗の 10 分の 1 以下、つまり表面が瞬時に流体温度になる極限です。固体内部は表面温度を境界条件とする純粋な熱伝導問題に帰着し、対流係数 h は計算式から消えます。焼入れ(油冷で h ≈ 1000 W/m²K)の鋼塊などが典型例で、表面が即座に油温に到達した後、内部の冷却は α・L_c² のみで決まります。本ツールで h=5000、L_c=200mm に設定すると Bi=20 となり、領域マップ上で赤の表面集中領域に入るのが確認できます。
L_c = V/A_s(体積/表面積)が標準定義で、無限平板は半厚 t/2、長円柱は半径 r/2、球は r/3 になります。これにより形状によらず Bi の値が「内部抵抗 vs 表面抵抗」を 1 つの数で表現できます。例えば直径 30mm の球と厚さ 30mm の平板では、同じ h・k でも Bi が約 1/3 倍違い、平板の方が集中容量近似から先に外れます。本ツールでは形状に依らず L_c を直接スライダーで入力するため、自分のケースに合わせた V/A_s を事前計算してください。

実世界での応用

金属熱処理(焼入れ・焼戻し)の冷却設計:SUS304 円柱(k=15 W/mK)を油冷(h ≈ 1000 W/m²K)する場合、L_c=10mm では Bi=0.67 で分布解析が必要、L_c=2mm ピンなら Bi=0.13 と境界、L_c=0.5mm 細線なら Bi=0.033 で集中容量モデルで OK。本ツールで自分の部材寸法を入力すれば、簡易モデルで設計してよいか CAE(FEM)が必要か即座に判定できます。誤って Bi=1 で集中容量を使うと中心温度の予測が 30% 以上ずれ、焼入れの硬度ムラに直結します。

電子部品・LED の熱解析:シリコンチップ(k=130 W/mK)の 1×1×0.5 mm のダイは L_c ≈ 0.17 mm、空気対流(h=10)で Bi=1.3×10⁻⁵、強制空冷(h=100)でも Bi=1.3×10⁻⁴ と圧倒的に小さく、集中容量モデルが完璧に通用します。一方ヒートシンク本体(アルミ、k=200、L_c=10mm)はファン冷却(h=50)で Bi=0.0025 で OK だが、安価なプラスチック樹脂筐体(k=0.3、L_c=20mm)になると同条件で Bi=3.3 と急変し、筐体内部の温度勾配を無視できなくなります。

食品・医薬品の熱処理:豆腐(k≈0.5、L_c=20mm)を 100℃ の湯(h=300)でゆで殺菌する場合、Bi=12 で表面集中近似の領域 — 中心まで殺菌温度に達するには表面到達から長時間を要する。これがレトルト食品の調理時間が驚くほど長い理由です。逆に薄いハム(L_c=2mm)なら Bi=1.2 と分布解析、ベーコン(L_c=0.5mm)なら Bi=0.3 と境界です。HACCP(食品衛生管理)の殺菌温度・時間規定はこの伝熱解析に基づいて決められています。

地球科学・建築熱貫流:地表の岩盤(k=2.5、α=1e-6)が日射で温まる現象では、表層 L_c=10cm の岩で h=10(夜間放射冷却)として Bi=0.4 と分布解析領域。表面と 10cm 下の温度差が日変動の 30〜50% 残ることが現地測定とよく合います。建築では断熱材(k=0.04)厚さ 100mm の壁で h=8(室内側)として Bi=20 と完全な表面集中で、断熱材内部の温度勾配が外気と室内の温度差をリニアに分割します(定常状態の典型例)。

よくある誤解と注意点

最も多い誤解は、「Bi が小さければ冷却が速い」というものです。Bi はあくまで「内部均一性の指標」であって冷却速度ではありません。冷却速度を決めるのは時定数 τ = ρc_p L_c/h で、h を上げれば τ は小さくなる(速く冷える)が Bi は逆に大きくなります。本ツールで h を 100 → 1000 に上げると τ は 16 分 → 1.6 分(10 倍速い)だが Bi は 0.05 → 0.5(集中容量から分布解析へ)と変化します。両者は別物として捉えてください。

次に多いのが、「Bi の式に出てくる k は流体の熱伝導率」という間違いです。k は 固体の熱伝導率、h は 表面における対流熱伝達率で、両者は全く別の物性値です。流体側の k(例えば水の k=0.6)を入れると Bi が大幅にずれます。スライダーには「固体の熱伝導率 k」と明記しているので、空気や水ではなく対象固体(鋼・銅・断熱材等)の値を入れてください。

最後に、「Bi=0.1 ちょうどなら集中容量で OK」と境界値に頼りすぎる誤解。実は Bi=0.1 で表面と中心の温度差はおよそ 5% で、用途によっては不十分(例えば精密熱処理では 1% 以下が必要)。本ツールの色グラデーションを見ると Bi=0.1 でも僅かに非一様性が見えます。安全側を取るなら Bi=0.01〜0.05 を「安心して集中容量を使える領域」と覚え、Bi=0.05〜0.2 は「条件次第」、Bi>0.2 は「分布解析を強く推奨」と段階的に判断するのが実務的です。