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材料試験シミュレーター

ブリネル硬さ試験シミュレーター — HBW と圧痕径

タングステンカーバイド球圧子による塑性押込みを可視化。荷重・圧子径・圧痕径から HBW・圧痕深さ・適正判定をリアルタイム計算し、d/D 比と F/D² 荷重定数の意味を学べます。

パラメータ設定
試験荷重 F
N
圧子径 D
mm
圧痕径 d
mm
材料 (F/D² 判定)

材料コード: 0 = 鋼/鋳鉄 (F/D²≈30)、1 = 銅合金/アルミ (F/D²≈10)、2 = 軟金属 (F/D²≈5)。圧痕径 d は d < D の範囲内で設定してください。

計算結果
Brinell 硬さ HBW
圧痕深さ h
d/D 比 (推奨 0.24-0.60)
適用判定 (d/D + F/D²)
圧子と圧痕、HBW vs d/D

上=球圧子と試料の断面(圧痕を赤色で強調)/下=HBW vs d/D 曲線(緑帯=推奨範囲 0.24-0.60、黄点=現在値)

理論・主要公式

ブリネル硬さは、球圧子による塑性圧痕の球冠面積で荷重を割った値です。圧痕径 d から圧痕深さ h を求めるのが計算の核心になります。

HBW(伝統単位 kgf/mm²)。F は荷重 [N]、D は圧子径 [mm]、d は圧痕径 [mm]、係数 0.102 = 1/9.81 は N → kgf 換算:

$$\mathrm{HBW} = \frac{0.102 \cdot 2F}{\pi D \left(D - \sqrt{D^2 - d^2}\right)}$$

圧痕深さ h と球冠面積 A:

$$h = \frac{D - \sqrt{D^2 - d^2}}{2}, \qquad A = \pi D h$$

荷重定数 F/D² と適正範囲:

$$\frac{F}{D^2} \approx 30,\ 10,\ 5\ [\mathrm{kgf/mm^2}], \qquad 0.24 \le \frac{d}{D} \le 0.60$$

同じ F/D² を選べば、異なる D で測った HBW を相互に比較できます。弾性域での接触応力は hertz-contact.html、線接触は hertz-line-contact.html、楕円接触は contact-ellipse-hertz.html、軸受疲労寿命は bearing-life.html を参照してください。

ブリネル硬さ試験シミュレーターとは

🙋
硬さ試験ってビッカースやロックウェルもありますよね。ブリネルって何が違うんですか?
🎓
ブリネルは「大きい球で大きく押し込む」のが特徴だ。直径10mmのタングステンカーバイド球に3000kgf(約29.4kN)の荷重をかけて、できた数mmの圧痕の直径 d を顕微鏡で測る。シミュレーターの初期値(F=29420N、D=10mm、d=4mm)はちょうど典型的な鋼材のテスト条件だよ。HBW≈229と出ているね。
🙋
圧痕径 d を動かすと HBW が大きく変わりますね。d を 3mm にすると硬さがぐっと上がる。
🎓
そう、同じ荷重なのに圧痕が小さい=硬い、ということ。式 $\mathrm{HBW}=0.102\cdot 2F/(\pi D(D-\sqrt{D^2-d^2}))$ の分母は球冠面積。圧痕が浅いと面積が小さく、荷重を割った値(応力)が大きく出る。だから d を測れば硬さがわかるんだ。下のグラフで d/D を動かすと、HBW が指数的に下がっていくのが見えるだろう。
🙋
グラフに緑の帯がありますね。0.24〜0.60の範囲。これはなんですか?
🎓
それが「適正 d/D 比」だ。狭すぎる圧痕(d/D<0.24)は弾性回復で誤差が大きく、広すぎる圧痕(d/D>0.60)は塑性流動が複雑になって HBW が下振れする。この範囲では HBW が荷重にほぼ依存しない安定領域になる。シミュレーターで d を 1mm(d/D=0.1)にすると HBW がとんでもなく大きく出るけど、これは「使ってはいけない領域」だと覚えておくといい。
🙋
材料スライダーで「軟金属」にすると判定が「F/D²ずれ」になりました。これは?
🎓
それが荷重定数 F/D² の話だ。鋼なら F/D²≈30、銅・アルミなら10、軟金属なら5(単位は kgf/mm²)を選ぶのが規格の推奨。同じ材料を異なる D で測っても、F/D² を揃えれば同じ HBW が出る「相似則」がある。軟金属を3000kgf・φ10mmで押すと圧痕が深すぎてダメ。実務では F/D² を先に決めて荷重を逆算するんだよ。

よくある質問

圧痕は球冠(球の一部)の形をしており、その表面積は厳密に πDh(D:球径、h:圧痕深さ)で与えられます。投影円面積 πd²/4 ではなく球冠面積を使うのがブリネル流で、これにより球の押し込み量に対する荷重比が幾何学的に明確な意味を持ちます。h を測るのは難しいので、d を測って h = (D−√(D²−d²))/2 で換算します。
かつては焼入れ鋼球(HBS)が使われていましたが、450 HB を超える硬い材料では鋼球自体が変形して誤差が出ました。タングステンカーバイド球(HBW)は弾性係数と硬さが高く、最大 650 HB 程度まで安定して測定できます。現行の ISO 6506 や JIS Z 2243 ではタングステンカーバイド球が標準で、表記も HBW に統一されています。
読み取り顕微鏡で、互いに直交する2方向の直径を測り、その平均を d として採用します。圧痕が楕円状になる場合(試料表面が傾いていたり、異方性がある場合)に2方向の差が大きければ、試料の再準備が必要です。最近は光学画像処理による自動測定機も普及しており、エッジ検出で正確な d が得られます。
あります。試料厚さは圧痕深さの10倍以上が必要で、これより薄いと裏面の硬い土台や弾性床の影響を受けます。圧痕の中心は試料端から d の2.5倍以上、隣接圧痕の中心同士は d の3倍(鋼は4倍)以上離す必要があります。これらが守られないと塑性場が干渉して HBW が変動します。

実世界での応用

鋳鉄・鋳鋼の品質管理:ブリネル試験は圧痕が大きいため、組織が粗く不均質な鋳物の平均硬さを評価するのに最適です。自動車のクランクシャフト・エンジンブロック・鉄道車輪などの鋳鉄部品では、製造現場の標準受入検査として HBW の規格値(例:FC250 で 180〜250 HBW)が広く使われています。

圧延・鍛造品の熱処理確認:厚板や大型鍛造品の焼鈍・焼ならし後の硬さ確認には、表面の限られた点ではなく代表的な平均硬さが必要です。φ10mm の大きな圧子は表面粗さや脱炭層の影響を受けにくく、鍛造ロール・歯車素材の硬さ管理に向きます。

金属材料の規格・受入試験:JIS・ISO・ASTM の各材料規格には HBW の許容範囲が明記されており、納品時の検査証明書には硬さ試験結果が添付されます。「SS400 鋼板は 120 HBW 以下」「S45C 焼入焼戻し材は 217〜277 HBW」など、設計者は HBW を使って機械的性質をおおまかに推定できます。

引張強さの推定:鋼材では引張強さ σ_B [MPa] ≈ 3.45 × HBW という経験則が成り立ちます(HBW 200 で約 690 MPa)。引張試験が困難な大型部品や、非破壊で強度を把握したい場合に、HBW から強度を逆算する用途があります。ただし冷間加工材や非鉄金属では係数が異なるため注意が必要です。

よくある誤解と注意点

最も多い誤解は、HBW の値を投影円面積で割ったものと考えてしまうことです。実際には球冠の表面積 πDh で割ります。シミュレーター下部のグラフで d/D を 0.5 から 0.8 まで動かしてみてください。d が D に近づくにつれて球冠面積が急速に増え、HBW が劇的に下がります。投影面積で割っていたらここまで急峻ではありません。「面積はどの面積か」を常に意識することが、ブリネル試験を正しく扱う出発点です。

次に多いのが、適正範囲 0.24〜0.60 を「目安」と考えて無視してしまうことです。実際にはこの範囲外で測った HBW は、同じ材料でも荷重を変えれば数十単位ずれることがあります。シミュレーターで d=1mm(d/D=0.1)にすると HBW が数千の大きな値になりますが、これは球が試料に乗っただけの「弾性域」を測っているだけで、塑性硬さとしての意味を持ちません。範囲外の値を製品検査に使うと、合格すべきものが不合格になったり、その逆が起きます。

最後に、荷重定数 F/D² を考えずに「同じ荷重で全部測る」現場運用に注意してください。鋼用の 3000kgf を軟質銅合金に使うと、圧痕が深すぎて d/D が 0.7 を超え、HBW が低く出ます。逆に鋳鉄の小試片に φ2.5mm の球で 187.5kgf(F/D²=30)を使えば、φ10mm の試験と同じ HBW が得られる——これが「相似則」の威力です。材料スライダーで設定を切り替えて、判定カードが「適正」になる F の範囲を確かめてください。鋼材なら 7500N 程度から 30000N まで広く許容され、軟金属では 1500N 前後が適正範囲になります。