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解析ツール

流体潤滑・ストライベック曲線計算

ジャーナル軸受のSommerfeld数・最小油膜厚さ・油膜厚さ比Λをリアルタイム算出。ストライベック曲線で潤滑体制を可視化。

軸受パラメータ
軸径 D
mm
軸受幅 L
mm
半径すきま c
μm
荷重 W
N
回転速度 N
rpm
動粘度 η
Pa·s
VG32≈0.03 / VG68≈0.06 / VG100≈0.09 Pa·s
合成粗さ σ
μm
研削仕上:0.2〜0.5 / 旋削:0.5〜2.0 μm
計算結果
Sommerfeld数 S
hmin [μm]
Λ = hmin
潤滑体制
摩擦係数 μ
ストライベック曲線(μ vs ηN/P)
油膜厚さ比 Λ vs 荷重 W
理論・主要公式

Sommerfeld数(無次元軸受数):

$$S=\frac{\eta N}{P}\left(\frac{D}{2c}\right)^2, \quad P=\frac{W}{D\cdot L}$$

最小油膜厚さ(近似式):

$$h_{min}\approx c\left(1 - \varepsilon\right), \quad \varepsilon \approx \frac{1}{\sqrt{1+4S^2\pi^2}}$$

油膜厚さ比:$\Lambda = h_{min}/\sigma_{composite}$, $\sigma_{comp}=\sqrt{\sigma_1^2+\sigma_2^2}$

ストライベックパラメータ:$\eta N/P$ (N: rev/s,P: Pa)

流体潤滑・ストライベック曲線とは

🙋
ストライベック曲線って何ですか?グラフの形が変わってる部分があるみたいですが。
🎓
大まかに言うと、回転軸の摩擦がどう変わるかを示す地図みたいなものだよ。左側(低速・高荷重)は境界潤滑で金属同士が接触して摩擦が大きく、右側(高速・低荷重)は流体潤滑で油膜が完全に分離して摩擦が小さくなる。真ん中の谷の部分が混合潤滑だね。このシミュレーターで「回転速度N」のスライダーを動かすと、点が曲線上を移動して、その時の潤滑状態がリアルタイムで分かるよ。
🙋
え、そうなんですか!じゃあ、油が完全に金属を離す「流体潤滑」になるにはどうすればいいんですか?
🎓
実務で多いのは、回転速度を上げるか、油の粘度を高めるか、荷重を減らすかだね。例えば、自動車のエンジン始動時は低速・高荷重で境界潤滑に近く、高速回転時は流体潤滑になる。上のパラメータで「動粘度η」を大きくしたり「荷重W」を小さくしてみて。ストライベック曲線上の点が右に移動して、グラフ右下の「流体潤滑」領域に入るはずだよ。
🙋
なるほど!でも、設計では「油膜厚さ比Λ」ってのも出てきますよね。これって何を見てるんですか?
🎓
良いところに気が付いたね!Λ(ラムダ)は「最小油膜厚さ」を「表面の合成粗さ」で割った値だよ。これが3以上だと、油膜が表面のデコボコより十分に厚いから流体潤滑と言える。逆に1以下だと接触が起きる。シミュレーターで「合成粗さσ」を大きくしてみると、Λの値が小さくなって、混合潤滑や境界潤滑に近づくのが確認できる。これが摩耗寿命の目安になるんだ。

よくある質問

一般的にS≧0.1で流体潤滑が成立しやすく、Sが1以上なら安定した流体潤滑状態です。ただし、軸受の設計や用途により適正範囲は異なります。本ツールではストライベック曲線でSと油膜厚さ比Λの関係を可視化できるため、リアルタイムで潤滑体制を確認しながら設計値を調整できます。
Λは最小油膜厚さを合成表面粗さで割った値で、Λ≧3なら完全流体潤滑、1<Λ<3は混合潤滑、Λ≦1は境界潤滑とされ摩耗リスクが高まります。本ツールではΛの値をリアルタイム表示し、ストライベック曲線上に現在の動作点をプロットするため、危険領域に入る前にパラメータを修正できます。
cを小さくするとSが増大し油膜形成には有利ですが、熱膨張や加工誤差による焼付きリスクが高まります。また、異物混入時の摩耗や組立時の精度要求が厳しくなります。本ツールではcを変更した際のSとΛの変化を即座に確認できるため、適正すきまの設計に役立ちます。
本ツールは材料や油種に依存しない無次元パラメータ(S、Λ)を扱うため、ホワイトメタル、銅合金、樹脂など様々な軸受材料や、鉱油、合成油、グリースなど任意の潤滑油に適用可能です。ただし、実際の摩耗寿命や温度上昇を評価するには、材料特性や油の粘度温度特性を別途考慮する必要があります。

実世界での応用

自動車エンジンのクランクシャフト軸受: 始動・停止時に混合潤滑領域を通過するため、適切な油膜設計が摩耗寿命を決定します。高荷重でも耐えられるよう、軸受幅Lやすきまcが最適化されます。

発電用タービンや大型ポンプの軸受: 連続運転で流体潤滑状態を維持することが必須です。ストライベック曲線を用いて、常用回転速度Nが十分に右側(流体潤滑領域)にあることを確認します。

産業用ギアボックスの歯車・ベアリング: 歯面や転がり軸受でも同様の考え方が適用されます。高粘度の潤滑油(η大)を選定することで、高面圧(P)下でも十分な油膜厚さ(hmin)を確保します。

CAE(EHD弾性流体潤滑解析): ストライベック曲線による初期設計後、ANSYSやOpenFOAMを用いた高度な連成解析で、荷重による固体変形と油膜圧力の相互作用を精密に計算し、信頼性を高めます。

よくある誤解と注意点

まず、このシミュレーターでよくあるのが「パラメータを極端に動かしても曲線の形が変わらない」という疑問です。ストライベック曲線自体は、摩擦係数とゾンマーフェルト数の「関係性」を示す普遍的な形です。ツールで変えているのは、現在の運転条件が曲線上のどこに位置するか(赤い点)と、その時の具体的な油膜厚さやΛ値です。例えば、粘度を10倍にしても曲線の形は変わりませんが、点が大きく右に移動して流体潤滑領域に入り、Λ値が跳ね上がるのが確認できます。

次に、「Λ>3なら絶対安全」と短絡的に考えないこと。Λは静的な評価です。実際の機械では、荷重変動や軸のたわみ、始動停止の繰り返しで油膜が瞬間的に薄くなります。例えば、設計時にΛ=4を算出しても、変動荷重を考慮して「最低でもΛ>2.5は確保しよう」といった安全マージンを設けるのが実務の知恵です。

最後に、入力パラメータの単位と現実感覚。動粘度ηの単位はPa・s(パスカル秒)ですが、よく使われるcSt(センチストークス)とは異なります。例えば、一般的なエンジンオイル(SAE 30)の動粘度は約0.1 Pa・s(40°C時)程度です。ここに100 Pa・sといった現実離れした値を入力しても、学習ツールとしては面白いですが、実設計では役に立ちません。まずはツールのデフォルト値のオーダー(0.01〜0.1 Pa・s)を基準に考えるクセをつけましょう。