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電気工学

変圧器の電圧変動率シミュレーター

配電用変圧器(トランス)の電圧変動率を求めるツールです。定格容量・百分率抵抗・百分率リアクタンス・負荷率・力率を変えると、無負荷電圧・電圧降下・銅損がリアルタイムで分かり、進み力率では二次電圧が逆に上昇する現象まで確認できます。

パラメータ設定
定格容量 S
kVA
二次定格電圧 V
V
全負荷時の二次端子電圧
百分率抵抗 %R
%
巻線抵抗による定格電流時の電圧降下割合
百分率リアクタンス %X
%
漏れリアクタンスによる定格電流時の電圧降下割合
負荷率
%
定格容量に対する実負荷の割合
力率 cosφ
力率の種類
遅れ=誘導性、進み=容量性
計算結果
電圧変動率 VR (%)
無負荷電圧 (V)
負荷時電圧 (V)
電圧降下 ΔV (V)
銅損(現負荷) (kW)
判定
フェーザ図 — I·R降下と I·X降下

負荷時端子電圧 V を基準に、力率角 φ の負荷電流、電流方向の I·R 降下、それと直角の I·X 降下を足し合わせて無負荷電圧に達します。色は変動率の大きさ(緑→橙→赤)を表します。

電圧変動率 vs 負荷率
電圧変動率 vs 力率
理論・主要公式

$$VR\%\approx \frac{S}{S_{rated}}\,\bigl(\%R\cos\varphi\pm\%X\sin\varphi\bigr)$$

電圧変動率の近似式。+ 符号は遅れ力率、− 符号は進み力率(進み力率では負の変動率=電圧上昇になりうる)。S/S_rated は負荷率、φ は力率角。

$$VR\%\;+\;\frac{\bigl[(S/S_{rated})(\%X\cos\varphi\mp\%R\sin\varphi)\bigr]^{2}}{200}$$

小さな2次補正項。これを第1項に加えると、より精度の高い電圧変動率になる。

$$V_{nl}=V\Bigl(1+\frac{VR\%}{100}\Bigr), \qquad P_{cu}=\frac{\%R}{100}\,S_{rated}\,\Bigl(\frac{S}{S_{rated}}\Bigr)^{2}$$

無負荷電圧 V_nl と負荷時銅損 P_cu。銅損は負荷の2乗に比例する。V:負荷時電圧。

変圧器の電圧変動率とは

🙋
変圧器(トランス)って、入力した電圧をそのまま比率どおりに変換してくれるものだと思っていました。「電圧変動率」って何ですか?
🎓
理想の変圧器ならそのとおりなんだけど、実物はそうはいかないんだ。変圧器の巻線には抵抗と「漏れリアクタンス」があって、負荷電流がそこを流れると内部で電圧が落ちる。だから、負荷をつなぐと二次側の電圧がちょっと下がるんだ。逆に言うと、負荷を外した「無負荷」のときの電圧は、全負荷のときより高い。この差を全負荷電圧で割った割合が「電圧変動率」だよ。
🙋
なるほど、負荷をつなぐと電圧が「たれ下がる」んですね。それって悪いことなんですか?
🎓
変動率が小さいほど「硬い電源」、つまり負荷が変わっても電圧をしっかり保てる電源だ。家庭の照明や精密機器は電圧が安定していてほしいから、変動率は小さいほうがいい。左の「百分率リアクタンス %X」を上げてみて。VR がぐっと増えるはずだ。%X は漏れリアクタンスの大きさで、これが変動率の主役なんだよ。
🙋
本当だ、%X を上げると変動率が大きくなりました。電流の量だけじゃなくて、何かほかにも効いてくるものはありますか?
🎓
それが「力率」だ。負荷が誘導性(モーターなど)だと電流が電圧より遅れる「遅れ力率」になって、リアクタンス降下が電圧降下に上乗せされる。下の「電圧変動率 vs 力率」のグラフで力率を動かしてみて。同じ電流でも力率によって変動率がぜんぜん違うのが分かるよ。
🙋
え、力率の種類を「進み力率」に変えたら、変動率がマイナスになりました!これはバグですか?
🎓
いや、バグじゃなくて物理的に正しい結果だ。進み力率(コンデンサのような容量性負荷)だと、リアクタンス降下が逆向きに働いて、引き算になる。すると変動率が負になって、負荷をかけたほうが二次電圧が「上がる」んだ。実際、力率改善コンデンサをたくさんつないだ軽負荷の配電線では、端のほうの電圧が上がりすぎる「フェランチ効果」というトラブルが起きる。このツールはその現象もちゃんと再現するよ。
🙋
電圧変動率を小さくしたいときは、どこをいじればいいんですか?
🎓
一番効くのは %X の小さい変圧器を選ぶことだね。あとは負荷を軽めに使う、力率を改善する、という手もある。ただし %X を小さくすると、短絡したときに流れる電流が大きくなって保護が大変になる。だから変動率と短絡保護はトレードオフなんだ。現場では、変圧器のタップを切り替えたり、負荷時電圧調整器(LTC)で電圧をその場で補正したりして対応するよ。

よくある質問

電圧変動率は、変圧器の二次側で負荷を取り去ったときに二次電圧がどれだけ上昇するかを、全負荷電圧に対する割合(パーセント)で表したものです。理想変圧器なら出力電圧は一定ですが、実際の変圧器は巻線に抵抗と漏れリアクタンスがあり、負荷電流がそこを流れると内部で電圧降下(I・Z降下)が生じます。その結果、負荷をかけると二次電圧が下がり、無負荷電圧のほうが全負荷電圧より高くなります。この差の割合が電圧変動率で、小さいほど電圧が安定した「硬い」電源です。
百分率抵抗%Rと百分率リアクタンス%Xを使った近似式で、遅れ力率では VR% ≒ (S/S_rated)(%R·cosφ + %X·sinφ) + 高次補正項、進み力率では VR% ≒ (S/S_rated)(%R·cosφ − %X·sinφ) + 高次補正項 で求めます。第1項が支配的で、第2項は小さな2次補正です。遅れ力率ではリアクタンス降下が加わって変動率が大きくなり、進み力率では引き算になって変動率が小さく、場合によっては負(電圧上昇)になります。
進み力率(容量性負荷)では、負荷電流が電圧より位相が進むため、リアクタンス降下の作用が逆向きになります。式の第1項 %R·cosφ − %X·sinφ が負になると、変動率全体も負になり、負荷をかけたほうが二次電圧が高くなる「電圧上昇」が起こります。これは力率改善コンデンサを多く接続した軽負荷の配電線で実際に観測される現象で、フェランチ効果とも関係します。負の変動率は計算ミスではなく物理的に正しい結果です。
電圧変動率は百分率インピーダンス(%Rと%X)と負荷率、そして力率で決まります。変動率を小さくするには、(1) %Xの小さい変圧器を選ぶ(漏れリアクタンスが小さい設計)、(2) 負荷を軽めに使う、(3) 力率を改善する(遅れ力率を1に近づける、または進み側にする)が有効です。ただし%Xを小さくすると短絡電流が大きくなるため、変動率と短絡保護はトレードオフの関係にあります。実務ではタップ切替や負荷時電圧調整器(LTC)で電圧を補償します。

実世界での応用

配電用変圧器の選定:柱上変圧器や受電設備のキュービクル内変圧器は、需要家の電圧を規定範囲(日本では低圧で101±6V、202±20Vなど)に収める必要があります。電圧変動率が大きいと、夜の軽負荷時と昼のピーク負荷時で電圧が大きく振れてしまいます。設計段階で本ツールのように%R・%Xと想定負荷から変動率を見積もり、規定を満たすかを確認します。満たさない場合はタップ位置の調整や、より%Xの小さい変圧器の採用を検討します。

力率改善とフェランチ効果の管理:工場では力率改善コンデンサを設置して遅れ力率を1に近づけますが、夜間など負荷が軽いときにコンデンサを切り忘れると進み力率になり、変圧器の二次電圧や配電線末端の電圧が上昇します。本ツールで力率の種類を「進み」にすると変動率が負になる挙動が再現でき、コンデンサの自動開閉制御が必要な理由を直感的に理解できます。

並行運転と負荷分担:2台以上の変圧器を並行運転するとき、各変圧器の%インピーダンス(特に%X)が等しくないと、容量比に応じた理想的な負荷分担ができません。%インピーダンスの小さい変圧器に負荷が偏り、その変圧器だけ過負荷になることがあります。電圧変動率の計算は、各変圧器がどの程度電圧を下げるかを把握する第一歩であり、並行運転の検討の基礎になります。

電力系統解析の前段階:本格的な潮流計算(ロードフロー)を行う前に、変圧器1台の電圧変動率を概算しておくと、系統全体の電圧プロファイルの当たりがつきます。詳細解析の結果がこの概算と大きく食い違う場合は、入力した%インピーダンスやタップ設定の誤りを疑うサニティチェックにも使えます。

よくある誤解と注意点

まず多いのが、「電圧変動率は変圧器固有の一つの数値だ」という誤解です。変動率は変圧器の%R・%Xだけでは決まりません。実際の値は負荷率と力率に強く依存します。同じ変圧器でも、全負荷・遅れ力率0.8のときと、半負荷・力率1.0のときでは変動率がまったく違います。カタログに載っている「電圧変動率」は、通常「全負荷・特定の力率」での値なので、実使用条件に合わせて再計算する必要があります。本ツールで負荷率と力率を動かすと、その依存性がはっきり分かります。

次に、「変動率が負になるのは計算ミスだ」という思い込み。進み力率(容量性負荷)では、リアクタンス降下の項が引き算になるため、変動率が負になることがあります。これは負荷をかけると二次電圧が下がるどころか「上がる」という意味で、力率改善コンデンサを多く接続した軽負荷の配電線で実際に起きる現象です。負の変動率を見て「式が間違っている」と判断せず、容量性負荷では電圧上昇が物理的に起こりうることを理解してください。

最後に、「%Xは小さければ小さいほどよい」という誤解。確かに%Xを小さくすれば電圧変動率は小さくなり、電圧が安定します。しかし%Xは短絡電流を制限する役割も持っています。%Xを小さくしすぎると、短絡事故のときに過大な電流が流れ、遮断器の容量を超えたり巻線が機械的に損傷したりします。電圧変動率の改善と短絡電流の抑制はトレードオフであり、両者のバランスで%Xを決めるのが実務です。一般に配電用変圧器の%Xは数%〜10%程度に設計されます。

使い方ガイド

  1. 変圧器の定格容量(kVA)を50~500kVAの範囲で設定します。配電用変圧器は一般的に100kVA、200kVAが標準です
  2. 二次側定格電圧(V)を100~440Vで入力します。低圧配電では200V単相または400V三相が一般的です
  3. 巻線抵抗(R)とリアクタンス(X)を定格容量の0.5~5%範囲で設定。定格電流値から銅損が自動計算されます
  4. 負荷率(0~100%)と力率(遅れまたは進み)を入力し、シミュレーションボタンで電圧変動率を算出します

具体的な計算例

定格容量100kVA、二次電圧200V、巻線抵抗0.8%、リアクタンス3.2%の変圧器に遅れ力率0.9で80%負荷を加えた場合、定格電流は287.5Aとなります。電圧変動率VR=(R×cosφ+X×sinφ)/100×100=(0.8×0.9+3.2×0.436)/100×100≒2.1%となり、電圧降下は約4.2V、負荷時電圧は195.8Vになります。無負荷時損失は別途計算で鉄損として処理されます

実務での注意点

  1. 進み力率(力率改善コンデンサ接続時)では電圧昇圧効果が発生し、VRが負値となる逆昇圧現象が起こります。力率0.95進みで80%負荷の場合、VR≒-0.5%となり過電圧保護が必要です
  2. 銅損(I²R)は負荷率の二乗に比例するため、80%負荷時の銅損は定格損の64%となります。冷却性能を確認してください
  3. 配電線の電圧低下を合算するため、変圧器単体で3%以下、配電線合わせて5%以内に抑える設計基準が一般的です
  4. 季節変動や突入電流を考慮し、シミュレーション結果に10%の余裕係数を加算することを推奨します