半導体 CMP ウェハ・パッド圧力均一性シミュレーター 戻る
半導体・CMP プロセス

半導体 CMP ウェハ・パッド圧力均一性シミュレーター — Preston

300mm/450mm ウェハの CMP(化学機械研磨)レシピを Preston 式で評価するツールです。荷重・回転・リテーナーリング圧・スラリー流量・プロセス(SiO2/W/Cu/Co)を変えると、平均圧力・相対速度・除去レート・WIWNU 不均一・推定歩留りが即座に更新され、エッジ過圧を抑えた設計を探せます。

パラメータ設定
ウェハサイズ
200/300/450mm に応じて面積と圧力が変化
下向き荷重 F
N
パッド材料
IC1000(XY-groove)が主流
パッド硬度 Shore D
主軸回転 ω
RPM
リテーナーリング圧
kPa
エッジ過圧の抑制に効く(平均圧の 80〜120% 目安)
スラリー流量
mL/min
プロセス(被削材)
Preston 係数 Kp を切り替え
計算結果
平均圧力 P (kPa)
相対速度 V (m/s)
除去レート MRR (Å/min)
エッジ過圧 (%)
WIWNU 不均一 (%)
推定歩留り (%)
CMP プラテン・キャリア・スラリー — アニメーション

回転するプラテン上のパッドにウェハキャリアが押し付けられ、スラリーが供給されます。色はウェハ面内の圧力分布(中心:緑→エッジ:赤)を表します。

MRR vs 圧力 — Preston 式
プロセス別 Preston 係数 Kp
理論・主要公式

$$MRR = K_p \cdot P \cdot V,\quad P = \frac{F}{A_{wafer}},\quad V = \omega \cdot r_{wafer}$$

Kp=Preston 定数(Cu 2e-12, SiO2 1e-13 m²/N)、P=平均圧力 [Pa]、V=相対速度 [m/s]、F=下向き荷重 [N]、A_wafer=ウェハ面積 [m²]、ω=回転角速度 [rad/s]。

半導体 CMP ウェハ圧力均一性 — Preston 式 研磨レート

🙋
CMP って「化学機械研磨」って訳されますけど、要は紙やすりみたいにウェハを削るだけじゃないんですか?
🎓
いいところ突くね。確かに機械研磨だけ見れば紙やすりに近い。でも CMP の "C" が大事で、スラリーに溶けた酸化剤(Cu なら H2O2)が表面を一度酸化させて、柔らかくなった膜を SiO2/Al2O3/Ce 砥粒が削り取る、という「化学+機械」の二段ロケットなんだ。だから Preston 式 MRR=Kp·P·V の Kp は、純機械研磨より 2〜3 桁大きい値になる。300mm の Cu Damascene だと 1 分で 6000Å、つまり 0.6μm 削れる感覚だね。
🙋
なるほど。それで右の MRR グラフ、圧力を上げれば直線でぐんぐん上がってますけど、現場ではいくらでも荷重を増やせるんですか?
🎓
いや、それが CMP の最大の悩みでね。荷重を上げると MRR は確かに上がるんだけど、ウェハ周辺の「エッジ過圧」が膨らんで、中心と外周で削れ方が変わる。これが WIWNU(Within-Wafer Non-Uniformity)として効いてきて、最先端のロジックだと 3〜5% 以下に抑えないと歩留りが死ぬ。だから 300mm では Applied Materials の Reflexion で IPS や Mira ヘッドを使って、ウェハを 5〜7 のリング状ゾーンに分けて、それぞれ独立に背圧を制御してる。これが「マルチゾーン・キャリア」って呼ばれる技術だ。
🙋
左に「リテーナーリング圧」って項目があって、これを上げるとシミュレーターの WIWNU が下がっていきます。なんでリングを押し付けると均一になるんですか?
🎓
パッドってウレタンで弾性があるから、ウェハの外周だけ「面取り」みたいに沈み込んで、エッジに圧力が集中するんだよ。リテーナーリング(保持リング)はウェハのすぐ外側を同じ高さで押すことで、その沈み込みをならして、エッジの圧力ピークを潰してくれる。実機では PEEK や PPS でリングを作るんだけど、これも消耗品で 200 時間くらいで交換。リング圧は平均圧の 80〜120% が定石で、それ以上にするとエッジロールアウトといって、今度は外周だけ削れすぎる別の不良が出るんだ。
🙋
プロセスを SiO2 から Cu に変えると、MRR がいきなり 20 倍になりました。これは Kp の違いだけが原因ですか?
🎓
そう、ほぼ Kp 一発だね。SiO2 が 1e-13 に対して Cu は 2e-12、ちょうど 20 倍。ただし Cu CMP は「速く削れる=制御が難しい」の典型で、配線中央が凹む「ディッシング」とパターン密集域の膜減り「エロージョン」が同時に出る。だからエンドポイント検出が命で、Lam Research の Lapis や Ebara F-REX はモーター電流変化・光学(NIR)・摩擦トルクの 3 つを同時に見て、酸化膜が露出した瞬間に研磨を止めるアルゴリズムを積んでる。3nm GAA NS FET 世代では CMP 工程が 30 ステップを超えるから、各ステップで 1 秒オーバーポリッシュしただけで歩留りが落ちる、というシビアな世界なんだよ。

よくある質問

Preston 式は 1927 年に F.W.Preston がガラス研磨の実験から導いた経験式で、単位時間あたりの除去レート(Material Removal Rate, MRR)が圧力 P と相対速度 V の積に比例することを述べています。比例定数 Kp(Preston 係数)は被削材・スラリー・パッドの組み合わせで決まり、SiO2 で約 1×10⁻¹³ m²/N、Cu で 2×10⁻¹² m²/N とおおよそ一桁オーダー違います。本ツールはプロセス選択に応じて代表値の Kp を切り替え、F・ウェハ面積・回転数から P と V を計算します。
WIWNU はウェハ面内の膜厚ばらつき(最大-最小)/2平均×100% で定義されるのが一般的で、最先端のロジック・メモリでは 3〜5% 以下が要求されます。300mm ウェハでは特にエッジ 3mm の落ち込み・盛り上がりが歩留りを直撃するため、Applied Materials Reflexion や Ebara F-REX のようなマルチゾーン・キャリア(IPS/Mira/ZP head)で 5 ゾーン以上の背圧を独立制御し、エッジ過圧を打ち消す設計が標準です。本シミュレーターでは WIWNU>10% を NG、5〜10% を警告、5% 未満を OK としています。
リテーナーリング(保持リング)はウェハの直外周をパッドに押し付けることでパッド変形量を均一化し、エッジ過圧(edge over-pressure)を抑制します。本ツールでは ringFactor = リング圧 / 平均圧 が 1 に近づくほど edgeOverpressure が 0 に近づきます。実プロセスではリング圧を平均圧の 80〜120% に設定するのが定石で、上げすぎるとリング寿命の悪化(PEEK/PPS 製で 200 hr 程度)と、ウェハ最外周の研磨レート上昇によるエッジロールアウトが起こります。
金属 CMP(Damascene Cu や Co コンタクト)は Preston 係数が SiO2 の 1〜2 桁高いため除去レートが大きく、過研磨(over-polish)でディッシング(配線中央の凹み)やエロージョン(パターン密集域の膜減り)が発生しやすくなります。さらに Cu は H2O2 等の酸化剤と benzotriazole(BTA)抑制剤の化学反応バランスでスラリー設計(Cabot, Fujimi)が決まり、機械研磨だけでは制御できません。エンドポイント検出は motor current・NIR 光学・摩擦トルクなど複数センサで判定し、リコーンディングを最小化するレシピが各 fab で蓄積されています。

実世界での応用

ロジック先端ノード(3nm GAA NS FET 等):TSMC・Samsung・Intel・Rapidus などの先端 fab では、1 ウェハあたり CMP 工程が 30 ステップを超えます。STI(素子分離)、ILD(層間絶縁膜)、Cu Damascene 配線、Co コンタクト、最近では HKMG(High-K Metal Gate)の Work-Function Metal CMP まで対象が広がっています。本ツールの WIWNU<5% は最低限の合格ラインで、実機ではマルチゾーン背圧 + リアルタイム膜厚モニタで 3% 以下を狙います。

3D NAND・DRAM:キオクシア・SK hynix・Micron の 3D NAND は 200 層を超えるスタックを W プラグで貫通させるため、W CMP のエロージョン制御が歩留り直結。DRAM のキャパシタ用 ILD CMP は SiO2 + 化学的セレクティビティ制御で「狙ったところで止める」レシピが要求されます。本ツールの SiO2 / W プリセットはこれらを意識した代表値です。

パワー半導体(SiC・GaN):SiC ウェハ(150〜200mm)の表面平坦化は CMP 業界の新フロンティアで、Si より硬度が高いためダイヤモンドスラリー+低速・高圧の特殊レシピを使います。Rohm・三菱電機・Wolfspeed・ON Semi が量産化しており、本ツールの Kp は SiC では機能しませんが、圧力と速度の感度を見るには有効です。

MEMS・先進パッケージ:Si インターポーザの TSV(Through-Silicon Via)露出 CMP や、HBM 用ハイブリッドボンディング前のウェハ平坦化(<1nm rms)など、後工程 CMP の需要も急増中。SCREEN・荏原・東京エレクトロンの装置がここでも使われており、低圧・低 RPM の極めて均一なレシピが要求されます。

よくある誤解と注意点

まず最大の落とし穴が、「Preston 式は全てを説明できる」と思い込むことです。本ツールの MRR=Kp·P·V は経験式であり、低圧領域では化学反応律速で MRR がほぼゼロになる「閾値圧」が存在し、高圧領域では摩耗熱でパッドが変形して非線形に増大します。実プロセスではこの線形領域(典型的に 14〜35 kPa)で運用するレシピが多く、ツールの数値はあくまで設計の当たりづけ用です。Cu CMP では化学反応速度が支配的なため、Preston の補正版(Tseng-Wang モデル等)を使うこともあります。

次に、「平均圧 = ウェハ全面の圧力」だと誤解すること。F/A は単なる名目値で、実際の圧力分布はリング圧・ヘッド剛性・パッド硬度(本ツールの Shore D)で大きく変わります。300mm でエッジ過圧が中央の 1.3〜2 倍になることは珍しくなく、これが「中心は OK でも外周だけ研磨不足/過研磨」というありがちな不良の原因です。マルチゾーン制御がない 200mm 旧装置で 300mm の感覚で運用すると、必ずエッジ歩留り問題に直面します。

最後に、「スラリーは流量さえ確保すれば良い」ではないこと。スラリー流量(mL/min)は確かに反応性に効きますが、本当に重要なのは「ウェハ-パッド界面に新鮮な砥粒が入り続けるか」です。プラテン回転とキャリア回転の差速、パッドのグルーブ形状(IC1000 XY-grv の 800μm 幅・450μm 深)、ダイヤモンドコンディショナ(3M・Saesol 製)による表面リフレッシュが連動して初めてレートが安定します。流量を倍にしても WIWNU が下がるとは限らず、コンディショニング不足の方が支配的な場合が多いです。

使い方ガイド

  1. ウェハサイズ(300mm/200mm)、荷重(下向き力 1.5~3.0 kN)、パッドショア硬度(55~75 D)を入力
  2. CMP 回転速度(50~200 RPM)とリテーナーリング圧力(20~80 kPa)を設定し、Preston 係数 Kp を材料別に選択
  3. シミュレーション実行後、平均圧力 P (kPa)、相対速度 V (m/s)、MRR=Kp·P·V (Å/min) を確認し、エッジ過圧とWIWNU 不均一性から研磨均一性を評価

具体的な計算例

300mm ウェハ、銅層除去プロセス:荷重 2.4 kN、パッドショア硬度 65 D、回転速度 120 RPM、リテーナーリング圧 45 kPa の場合、平均圧力 P≈42 kPa、相対速度 V≈1.85 m/s、Kp=0.45 (銅標準) を用いると MRR≈34.9 Å/min が得られます。このときエッジ過圧が 12.3%、WIWNU 不均一性が 8.7% に抑制され、推定歩留りは 94.2% となり、量産ライン条件に適合します。

実務での注意点