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半導体パッケージング

半導体ワイヤボンディング プル試験強度シミュレーター

IC ダイから lead frame・PCB へ電気接続するワイヤボンディング(Au/Al/Cu/Pd-Cu 線)のプル試験強度をリアルタイム計算します。ワイヤ材料・径・ループ形状・ボンド条件を変えると、MIL-STD-883 基準に対する品質マージンとループ角度感度がすぐに分かり、信頼性設計の初期検討に使えます。

パラメータ設定
ワイヤ材料
UTS・密度・kg 単価を自動設定
ワイヤ径
μm
ループ高さ
μm
ループ長さ
μm
ボンド温度
°C
Au は 150〜200°C、Cu は 175〜250°C が標準
超音波出力
mW
ボンド荷重
gf
計算結果
ワイヤ断面積 (μm²)
ワイヤ引張破断力 (mN)
プル試験予測値 (mN)
品質マージン vs MIL基準
ループ角度 (deg)
ワイヤあたりコスト (μUSD)
ボンディング模式図 — ダイ・ループ・プルテスター

IC ダイ上のボールボンド → ループ → lead frame 上のステッチボンドを引き上げるプル試験を可視化。色は品質マージン(緑=余裕/橙=注意/赤=不足)。

プル強度 vs ループ角度
材料別 断面強度比較(同一径での F_wire)
理論・主要公式

$$F_{wire,max} = \sigma_{UTS} \cdot A_{wire},\quad F_{pull} = \frac{F_{wire}}{\sin\theta}$$

σ_UTS=ワイヤ引張強度 (MPa)、A=断面積 (μm²)、θ=ループ角度 = atan2(h, L/2)。ループが低い hoop ほど sinθ が小さく、見かけのプル試験値が大きく出る(ヒール破断が支配する場合を除く)。

$$F_{heel} = 0.7\,F_{wire,max},\quad \text{Margin} = \frac{\min(F_{pull},\,F_{heel})}{F_{MIL}}$$

ヒール強度はワイヤ強度の約 70%(経験則)。MIL-STD-883 method 2011 の最低基準は 25 μm Au で 3 gf ≈ 29.4 mN。マージン > 2 が量産品の目安。

$$L_{wire} = \sqrt{L_{loop}^{2} + 4 h^{2}},\quad C_{bond} = \rho \cdot A \cdot L_{wire} \cdot k_{kg}$$

ワイヤ長 L_wire(μm)と1ボンドあたりのコスト C_bond(μUSD)。ρ=密度、k_kg=kg 単価。Au 19.3 g/cm³ で 30 μm × 1.5 mm 1本 ≈ 1.7 μUSD。

半導体ワイヤボンディング プル試験 — 強度・信頼性設計

🙋
「ワイヤボンディング」って、IC の中で金色の細い線が伸びてるあれですよね?あんな細いワイヤで何百本も配線するって、強度的に大丈夫なんですか?
🎓
そう、まさにあれ。直径 25〜50 μm の金線(最近は銅線も多い)で、IC ダイのパッドから lead frame や基板にトルクをかけずに電気接続する技術だ。1 個のスマホ SoC で数百〜千本、車載パワーモジュールでは 300 μm のアルミ太線が数十本走っている。1 本あたりの引張破断力は 30 μm Au でわずか 155 mN(≒ 15.8 gf)しかないけど、これでも MIL-STD-883 の最低基準 3 gf に対して 5 倍以上のマージンがある。信頼性の鍵は「強い線を選ぶ」ことより「ボンド条件(温度・超音波・荷重)を正しく出す」ことなんだ。
🙋
なるほど。左の「ループ長さ」を 1500 → 3000 μm に伸ばすと、プル試験予測値が一気に大きくなりました。これって、長いほど強いってことですか?
🎓
いいところに気づいたね。実は逆で、これはプル試験の「幾何的な仕掛け」なんだ。プルテスターのフックはループ中央を垂直に引き上げる。ワイヤの張力 F_wire は変わらないんだけど、ループが低くて長い(角度 θ が小さい)と、テスターが感じる垂直力 F_pull = F_wire / sin(θ) が見かけ上ずっと大きくなる。だから「プル試験の数値が大きい=強い」とは単純には言えなくて、必ずループ高さ・長さをセットで報告するのがルール。本ツールも「ループ角度」を独立した stat として出している。
🙋
破断モードに「ヒール」「ワイヤ中間」「リフトオフ」があるって聞きました。これって工程改善でどう使うんですか?
🎓
プル試験は数値だけ見ても意味が薄くて、破断モードの分類が命なんだ。(1) ワイヤ中間破断は「ワイヤ強度の上限まで使えた」最良ケース。(2) ヒール破断(ボンドの首元で切れる)は超音波出力か荷重が大きすぎて、ボール/ステッチを作るときに根元のワイヤがやせている。(3) ボール/ステッチのリフトオフ(パッドから剥がれる)は、温度不足・パッド酸化・USG パワー不足で金属間化合物(IMC)が成長していないサイン。Kulicke & Soffa の最新ボンダーだと、超音波 USG を 5 mW 刻みで掃引して「リフトオフ → ヒール → ワイヤ破断」の遷移点を探し、その中間でレシピを固定する、というやり方が標準だよ。
🙋
Cu 線が普及してきたって聞きますが、Au 線と何が違うんですか?普通に置き換えていいんですか?
🎓
Cu 線は kg 単価が Au の 1/6000、強度・電気伝導も Au より良いから、コストとパフォーマンスでは圧勝。スマホ・メモリ・LCD ドライバはほぼ Cu に切り替わった。ただ、「置き換える」とは絶対に言わない方がいい。Cu は (a) 酸化しやすいので N2-95%/H2-5% のフォーミングガス雰囲気でボンドする必要があり、(b) ワイヤが Au より硬いのでパッド下に「パッドクラッキング」を起こしやすく、(c) IMC が Cu3Al で脆く、高温保存で剥がれる。だから低 k パッドの新世代 SoC では Pd 1〜2% を被覆した Pd-Cu 線(kg 5000 USD)が中間グレードとして使われる。装置側も、Heraeus Maxsoft(Cu)と Tanaka・MK Electron(Au)で線材ベンダーが分かれているくらい、設計思想が違うんだ。
🙋
パワーモジュールの太線(300 μm Al)はどうなんですか?信頼性試験も違う?
🎓
そう、車載 IGBT・SiC モジュールや LED の大電流パッケージでは 300〜500 μm の太い Al 線が主役で、MIL-STD-883 の 3 gf 基準ではなく、JEDEC JESD22-B116 系の「100 gf min」が業界基準になる。本ツールでスライダーを「Al」「径 300 μm」にしてみると、断面積が 30 μm Au の 100 倍になるから F_wire が 7 N オーダーに跳ね上がるのが分かるはず。一方で、太線は熱サイクル時のヒール疲労(パワーサイクル試験 PCsec)が支配的になり、別途 SEM で断面観察するのが普通だよ。

よくある質問

ボンディングしたワイヤのループ中央にフックを引っ掛け、垂直方向に引き上げて破断荷重を測る信頼性試験です。米軍規格 MIL-STD-883 Method 2011 が世界的なデファクトで、25μm 径 Au 線の最低基準は 3 gf(約 29 mN)。破断時には (1) ワイヤ中間部破断、(2) ヒール部(ボンド根元)破断、(3) ボールリフトオフ、(4) パッドリフトオフ、(5) ステッチリフトオフ の5つの破壊モードを目視で分類し、ボンド条件の良否を判断します。実機では Dage / Nordson の自動プルテスターが主流です。
Au 線は酸化せず長期信頼性に優れ、軍用・宇宙・医療など高信頼分野で長年使われてきましたが、kg 単価が 8 万 USD と高価です。Cu 線は強度・電気/熱伝導が Au より良く、kg 単価が 12 USD と圧倒的に安いため、ロジック IC・メモリ・LCD ドライバなど大量生産品で 2010 年代以降急速に普及。ただし酸化しやすく、N2-H2 フォーミングガス雰囲気でのボンディングが必須です。Pd-Cu 線(Pd 1〜2% 被覆)は Cu の弱点である酸化を抑え、特に微細パッド・低温保存試験での信頼性を改善した中間グレードです。
プル試験はフックがワイヤを垂直に引き上げるため、ワイヤに作用する張力はループ角度 θ の sin で割って増える幾何関係になります。ループが低く長い(θ が小さい)ほど、わずかなプル力でワイヤ張力が急激に増えるため、見かけのプル強度(破断荷重)は小さく出ます。逆にループが高い(θ が大きい)と、ワイヤを引き上げにくくなりプル試験値が高く出ます。本ツールは F_pull = F_wire / sin(θ) でこの関係を計算し、ループ角度感度グラフで可視化します。
ヒール(ボンドの首元)破断はボール/ステッチ形成時に過度な超音波エネルギーや圧着荷重がかかり、ワイヤ根元が機械的に弱体化したサインです。本ツールではヒール強度をワイヤ単体強度の 70% と仮定し、ワイヤ破断とヒール破断の弱い方を品質マージン計算に使います。対策は (1) 超音波出力を 50〜100 mW 下げる、(2) ボンド荷重を 5〜10 gf 下げる、(3) ボンド温度(特に Au で 150〜200°C)を最適化する、の3点です。Kulicke & Soffa や ASM Pacific のボンダーでは EFO(電気火花)電流・USG パワーを 1mA / 5mW 単位で微調整します。

実世界での応用

スマホ・PC 用ロジック / メモリ IC:SoC・DRAM・NAND の量産パッケージでは、20〜25 μm の Cu / Pd-Cu 線で 1 チップあたり数百本がボンディングされます。生産性は 1 ボンダーで 1 秒間に 10〜20 ボンド、Kulicke & Soffa IConn / ASM Pacific Eagle が業界標準機。プル試験は SPC(統計的工程管理)の一環で抜き取り検査され、Cpk≧1.33 が量産ライン認定の壁になります。

車載 IGBT・SiC パワーモジュール:EV インバータ・PCU の SiC モジュールでは 300〜500 μm の Al ヘビーワイヤが数十本、各 100 A 以上を流します。プル試験基準は JEDEC JESD22-B116 の 100 gf min、さらに −40〜+150°C の熱サイクル 1000 回後のヒール疲労(剥がれ)が許容範囲かを SEM で観察します。Hesse Mechatronics や F&K Delvotec の太線専用ボンダーが使われます。

LED パッケージ・センサ:白色 LED や CMOS イメージセンサでは、透明樹脂への封止前後で 30〜50 μm Au 線のプル試験を実施し、樹脂応力でループが押し下げられた状態でも MIL 基準を満たすかを評価します。樹脂硬化収縮で角度 θ が変わるため、本ツールの「ループ角度」感度が直接効いてきます。

故障解析と量産歩留まり:「車載モジュールが熱衝撃で死ぬ」「メモリのリトリフロー試験で開放故障が出る」といった不具合では、まずプル試験+破断モード分類で「ワイヤ問題」か「IMC 問題」かを切り分けます。本ツールのような数値モデルで「材料・径・ループ形状を変えると基準マージンがどう変わるか」を事前に当たりづければ、試作回数を 2〜3 サイクル削減できます。

よくある誤解と注意点

まず最大の落とし穴が、「プル試験値が大きいほど良いボンドだ」という誤解です。前述のとおり、プル試験値はループ角度の幾何で変わるため、低く長いループでは数値が小さく、急峻に立ち上がるループでは大きく出ます。同じワイヤ・同じボンド条件でも、ループプロファイルを変えると 3 倍以上違う数値が出ることがあります。製品仕様書では必ず「ループ高 X μm、ループ長 Y μm でのプル試験値」とセットで規定し、別形状の値と直接比較しないこと。シェア試験(ボール直径方向に押す)と組み合わせて報告するのが現代の標準です。

次に、「Cu 線は Au 線より強いから単純置換できる」という思い込み。Cu は UTS で 320 MPa(Au 220 MPa の 1.45 倍)と強く、確かにプル試験値だけ見れば「Au より良い」結果が出ます。しかし Cu は硬度も Au の 2〜3 倍あるため、超音波エネルギーをそのまま流し込むと低 k パッド(28 nm 以降のロジックでは多孔質 SiO2)が割れる「pad cratering」が起こります。Cu 化したら必ず USG パワーを 20〜40% 下げ、温度を 30〜50°C 上げて熱拡散ボンド比率を増やす、という条件再構築が必要です。本ツールの「超音波出力」「ボンド温度」のスライダーをセットで動かして、最適範囲を探してみてください。

最後に、「プル試験だけで合格にする」のは危険です。プル試験はワイヤとボンド界面の強度を見ますが、長期信頼性(HTOL、HTSL、温度サイクル)で支配するのは Au-Al や Cu-Al の金属間化合物(IMC)成長で、これは初期プル値とは別の現象です。IMC の Kirkendall void は SEM 断面でしか見えず、プル試験が良好でも 1000 時間後に開放故障する例は珍しくありません。実務では「プル+シェア+HTSL 1000h+SEM 断面観察」をワンセットで行います。本ツールは初期強度の当たりづけまでで、長期信頼性は別途加速試験で確認してください。

使い方ガイド

  1. ワイヤ材料(Au/Al/Cu/Pd-Cu)と径(25~75μm)を選択し、ボンディング温度(150~350℃)を設定します
  2. ループ高さ(50~200μm)とループ長さ(400~800μm)を入力し、シミュレーターがワイヤ断面積と引張破断力を自動計算します
  3. MIL-STD-883方式のプル試験予測値を確認し、品質マージン(実測値/基準値)が1.3以上であることを検証して設計を確定します

具体的な計算例

Au線径25μm、ループ高さ100μm、ループ長さ600μmの場合:ワイヤ断面積491μm²、引張強度120MPaで破断力59mN。300℃ボンディング時のプル試験予測値は52mNとなり、MIL-STD-883基準値40mNに対してマージン1.3倍を確保できます。同じAu線でも径35μmの場合、断面積962μm²で破断力115mNに増加し、マージン2.9倍となり、高信頼性パッケージ向けの余裕設計が可能です。

実務での注意点