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半導体プロセス・CMP

半導体 CMP 化学機械研磨シミュレーター

半導体ウェーハの表面を nm 級で平坦化する CMP(Chemical Mechanical Planarization)プロセスを Preston 式 RR = K_p·P·v で設計するツールです。パッド圧力・相対速度・スラリーと被研磨材料の組み合わせを変えると、除去率・総研磨量・WIWNU・スループット・コストがリアルタイムで分かります。

パラメータ設定
パッド圧力 P
kPa
ウェーハをパッドに押し付ける圧力。代表値 20〜50 kPa
相対速度 v
m/s
パッドとウェーハの相対速度。1.5 m/s 超で WIWNU 悪化
被研磨材料
半導体プロセスで CMP 対象となる主要膜
スラリー
研磨粒子(砥粒)の種類
Preston 定数 K_p
m²/N
材料・スラリー・パッドの組み合わせで決まる比例係数
処理時間 t
min
ウェーハ半径 R
mm
150 mm = 300 mm 径、100 mm = 200 mm 径ウェーハ
計算結果
基本除去率 RR (nm/min)
材料補正後 RR (nm/min)
総研磨量 (nm)
WIWNU 不均一性 (%)
1時間スループット (wafers/hr)
ウェーハあたりコスト (USD)
CMP 装置断面アニメーション

研磨ヘッドがウェーハを下向きに押し付け、回転するパッド上をスラリー(青点)と共に滑る様子。表面の凹凸は時間と共に nm 級まで平坦化されます。

Preston 直線 — RR vs P×v
材料×スラリー 除去率の比較
理論・主要公式

$$RR = K_p \cdot P \cdot v,\qquad t_{\text{process}} = \frac{\Delta h}{RR}$$

Preston 式(1927)。K_p:Preston 定数(m²/N、SiO₂/silica で ~1×10⁻¹³)、P:パッド圧力 [Pa]、v:相対速度 [m/s]。除去率 RR の SI 単位は m/s で、ツールでは nm/min に換算(×60×10⁹)。

$$RR_{\text{actual}} = k_{\text{mat,slurry}} \cdot RR,\qquad \Delta h = RR_{\text{actual}} \cdot t$$

材料×スラリー相性補正 k(例:SiO₂×セリア = 3.0、Cu×アルミナ = 1.0、Low-k×シリカ = 0.1)。Δh は処理時間 t [min] あたりの総研磨量 [nm]。

半導体 CMP 化学機械研磨 — Preston 式と除去率

🙋
CMP って「化学機械研磨」って訳されますけど、要するにウェーハを研磨剤でゴシゴシ削るんですか?それで本当に nm レベルの平坦が出るんですか?
🎓
半分正解で半分違う、というのが面白いところだ。CMP は Chemical Mechanical Planarization の略で、研磨パッド(ポリウレタンの円盤)の上にスラリー(粒径数十 nm の研磨粒子+薬液)を流して、ウェーハを押し付けて滑らせる。ポイントは「化学反応で表面を少し柔らかくしてから機械的に削る」こと。SiO₂ ならスラリー中の水酸基が表面に Si-OH 層を作り、シリカ砥粒がそれを削り取る。純粋な機械研磨なら下地まで削れてしまうが、化学反応で柔らかい層だけが選択的に取れるから、結果として nm 級の平坦面が得られるんだ。
🙋
なるほど…。除去率は左の Preston 式で出るんですよね?でも RR = K_p·P·v って単純すぎませんか?スラリー流量とかパッドのタイプとか、もっと変数がありそうですけど。
🎓
いい指摘だ。Preston 式は 1927 年に F. Preston がガラス研磨について発表した経験式で、確かに圧力 P と相対速度 v だけで除去率を予測する超シンプルなモデル。実際にはスラリー流量・砥粒濃度・パッド剛性・温度・ウェーハ反り…全部が効く。でも実務で何が起きているかというと、それらすべての影響を K_p という 1 つの定数に押し込んで、まず P と v の支配的な傾向を捉える。これが Preston 式が 100 年経っても現役な理由なんだ。新しい材料・スラリーを評価するときも「まず K_p を実験で決める」が出発点になる。
🙋
材料を Cu や W に切り替えると、同じ K_p でも除去率が全然違って表示されますね。これは何の補正ですか?
🎓
「材料×スラリー相性」の係数 k だ。たとえば SiO₂ にセリア(CeO₂)砥粒を使うと、Ce⁴⁺ が Si-O-Si 結合を直接切断する化学反応が起きて、シリカ砥粒の 3 倍の除去率が出る——これは Shallow Trench Isolation の CMP で使われている。Cu はそもそも酸化されないと削れないので、過酸化水素入りのアルミナスラリーが標準。W はもっと反応性が低くて、強い酸化剤(ヨウ素酸塩など)+アルミナの組み合わせ。逆に Low-k 膜は機械的に弱いので、どの砥粒でもごく低圧でゆっくり削るしかない。本ツールの k マトリクスはこの「業界常識」をかなり粗く近似したものだ。
🙋
WIWNU は「ウェーハ内不均一性」ですよね?相対速度を 1.5 m/s より上げると数字が悪化していくのはなぜですか?
🎓
パッドの追従性が落ちるからだ。高速だとスラリーがパッド表面で十分に再分配される時間がなく、特にウェーハ外周(線速度がさらに大きい場所)が削れすぎる。300 mm ウェーハで端まで含めて WIWNU 3% を切るのが先端ノードの要求で、これを実現するには (1) Pad conditioner で常時パッド表面を更新、(2) 多ゾーンのヘッド加圧(中心と外周で圧力を変える)、(3) End-Point Detection(光学やモータートルクで終点検出)の合わせ技が必要になる。Applied Materials の Reflexion、Ebara の F-REX、Lam Research の SP100 が代表的な装置だ。
🙋
スループットとコストまで出るのが意外でした。実務ではどう使うんですか?
🎓
プロセス開発の初期段階で「目標除去量を時間内に達成しつつ、コスト・WIWNU が許容範囲か」をざっくり試算するのに使う。CMP は半導体プロセスの中でも消耗品コストが大きい工程で、スラリー+パッドだけで 1 ウェーハあたり 5〜10 ドル、装置償却を入れると 30〜50 ドルになる。だから「P と v を上げて時間を短縮」する vs 「WIWNU を維持」のトレードオフを設計者が早期に把握しておくのが大事なんだ。本ツールはあくまで概算だけど、Fab エンジニアが新スラリー評価の前段でモデル化する典型的なステップを再現している。

よくある質問

1927 年に F. Preston がガラス研磨について提案した経験式で、除去率 RR は研磨パッドのウェーハ表面に対する圧力 P と相対速度 v の積に比例するというものです。比例係数 K_p(Preston 定数)は被研磨材料・スラリー・パッドの組み合わせで決まり、SiO₂ + コロイダルシリカでは 1×10⁻¹³ m²/N 程度です。半導体 CMP では SI 単位(m/s, Pa)で計算した後 nm/min に換算するのが一般的で、本ツールはこの換算込みで除去率を表示します。
使えません。被研磨材料ごとに「化学的に反応しやすい砥粒」が決まっています。SiO₂(酸化膜)はセリア(CeO₂)と特異な化学反応を起こし、シリカの 3 倍以上の除去率が出ます。Cu 配線(ダマシン)は酸化剤入りのアルミナスラリーで化学的に酸化+機械的に除去する Cu-CMP 専用液を使います。W プラグはアルミナ+酸化剤、poly-Si はシリカが標準。Low-k は機械的に弱いのでどのスラリーでも遅く、低圧条件が必須です。本ツールは材料×スラリー組み合わせの補正係数を内蔵しています。
EUV 世代の先端ノード(3 nm / 2 nm)では WIWNU < 3% が要求基準で、量産工程では 2% を目標に管理します。28 nm 以上のレガシーノードでも 5% 程度が一般的な合格ラインです。WIWNU が悪化する主因は (1) 相対速度が大きすぎてパッドが追従できない、(2) パッドのコンディショニング不良、(3) スラリー供給ムラ、(4) ヘッドの加圧プロファイル不適切、の 4 つ。本ツールでは相対速度 1.5 m/s を超えると WIWNU 推定値が上昇するモデルにしています。
実験的に決めます。基板を一定の圧力 P・速度 v で一定時間研磨し、研磨前後の膜厚差を WDXRF や干渉計で測って RR を求め、K_p = RR / (P·v) を計算します。装置メーカーが提供するスラリー仕様書には代表値が記載されていますが、実機・実パッド・実スラリーの組み合わせでチューニングするのが普通です。本ツールでは 1e-15 から 1e-12 m²/N まで調整でき、SiO₂/silica の標準値 1×10⁻¹³ をデフォルトにしています。

実世界での応用

STI(Shallow Trench Isolation)の SiO₂ 平坦化:トランジスタ間を電気的に分離するための SiO₂ 埋め込み構造を、表面が完全に平らになるまで CMP で削る工程。28 nm 以降のロジック・メモリ全製品に必須で、ここでセリア系スラリーが SiO₂ に対して Si₃N₄ ストッパー層より遥かに速く削れる「高選択比 STI スラリー」が広く使われている。

Cu ダマシン配線の平坦化:SiO₂(または Low-k)に溝を掘り、Cu を埋め戻してから、配線パターンの上の余分な Cu と Ta バリアを CMP で削り落とす。0.13 μm 以降のすべてのロジック LSI のメタル層がこの方式で、過酸化水素 + アルミナ + キレート剤の Cu-CMP スラリーで Cu を選択的に削る。Dishing(広い配線部の凹み)と Erosion(密な配線部の研磨過多)のバランスがプロセスエンジニアの腕の見せどころ。

3D NAND / DRAM 周辺:3D NAND の 200 層超のメモリホール形成過程、DRAM のキャパシタ形成過程でも各層ごとに CMP が必要。1 枚のウェーハに 30 回以上 CMP をかけることも珍しくなく、スループット改善(処理時間短縮)が原価に直結する。

パワー半導体 SiC / GaN の研磨:SiC は Si の約 10 倍硬く、コロイダルシリカでの除去率はわずか 1 nm/min 程度。電解化学機械研磨(ECMP)や高温 CMP など特殊な手法が開発されている。本ツールはシリコン系プロセス向けの近似だが、K_p を 1e-15 程度まで下げれば SiC の挙動感を試せる。

よくある誤解と注意点

まず最も多い誤解が、「Preston 式は除去率を正確に予測する」と思い込むこと。Preston 式は経験式であり、実際の除去率には少なくとも以下の非線形効果が乗ります:(1) 低圧域では「化学反応律速」になり P の依存性が薄れる、(2) 高速域ではパッドとウェーハ間の流体潤滑膜(Hydroplaning)が発生して逆に除去率が落ちる、(3) パッドの寿命(コンディショニング)で K_p が時間変化する。本ツールはあくまで「P や v をいじったらどっち向きに動くか」を理解するための導入用モデルで、実機の K_p は必ず実験で決めてください。

次に、「圧力を上げれば速くなるから時間短縮できる」という早合点。確かに RR は P に比例しますが、高圧条件には副作用があります:(a) Cu や Al の Scratching(パターン上の引っかき傷)、(b) Low-k 膜の Delamination(剥離)、(c) パッド寿命の短縮、(d) ウェーハ内の応力増大によるダイス割れ。28 nm 以下のロジックでは 20 kPa 以下、Low-k 層では 10 kPa 以下が標準で、「とにかく低圧」が先端プロセスの大原則です。本ツールで P=100 kPa にすると WIWNU は計算上問題なく見えても、実機ではほぼ確実にデバイス不良が出ます。

最後に、「除去率さえ管理すれば膜厚は揃う」という誤解。膜厚均一性(WIWNU)は除去率の絶対値ではなく、ウェーハ面内での RR 分布で決まります。EPD(End-Point Detection)でストッパー層を検出して止めても、面内で先に終点が来た場所は研磨されすぎ、遅れた場所は残膜が出ます。Pad conditioner の溝設計、リテーナリングの圧力、スラリーノズルの位置——CMP の真の難しさは「平均除去率」ではなく「面内分布の管理」にあります。本ツールの WIWNU 推定はあくまで簡易モデルで、実機の WIWNU はもっと多くの要因に依存することを理解しておいてください。

使い方ガイド

  1. パッド圧力(kPa)を設定します。通常50~300kPaの範囲で、SiO₂研磨は150kPa、Cu研磨は100kPaが目安です
  2. 相対速度(m/s)を入力します。プラテン回転数とキャリア速度から算出され、0.5~2.0m/sが一般的です
  3. Preston定数Kpを材料別に選択します。SiO₂は2.0×10⁻⁶、Cu是3.5×10⁻⁶、W(タングステン)は1.8×10⁻⁶µm³/(µN·s)です
  4. 研磨時間(分)を設定し、計算ボタンで Preston式RR=Kp·P·vにより基本除去率を算出します
  5. 出力される総研磨量、WIWNU不均一性、スループット、原価から工程設計を最適化します

具体的な計算例

SiO₂膜厚800nmをCMP除去する場合:パッド圧力180kPa、相対速度1.2m/s、Kp=2.0×10⁻⁶、処理時間6分を入力します。基本除去率RR=180×1.2×2.0×10⁻⁶=432nm/minとなり、総研磨量=432×6=2,592nm。target800nmに対し過度な除去を避けるため圧力を120kPaに低減するとRR=288nm/minとなり、処理時間2.8分で800nm除去が達成でき、WIWNU±8%以下に管理できます。

実務での注意点