いい指摘だ。Preston 式は 1927 年に F. Preston がガラス研磨について発表した経験式で、確かに圧力 P と相対速度 v だけで除去率を予測する超シンプルなモデル。実際にはスラリー流量・砥粒濃度・パッド剛性・温度・ウェーハ反り…全部が効く。でも実務で何が起きているかというと、それらすべての影響を K_p という 1 つの定数に押し込んで、まず P と v の支配的な傾向を捉える。これが Preston 式が 100 年経っても現役な理由なんだ。新しい材料・スラリーを評価するときも「まず K_p を実験で決める」が出発点になる。
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材料を Cu や W に切り替えると、同じ K_p でも除去率が全然違って表示されますね。これは何の補正ですか?
Cu ダマシン配線の平坦化:SiO₂(または Low-k)に溝を掘り、Cu を埋め戻してから、配線パターンの上の余分な Cu と Ta バリアを CMP で削り落とす。0.13 μm 以降のすべてのロジック LSI のメタル層がこの方式で、過酸化水素 + アルミナ + キレート剤の Cu-CMP スラリーで Cu を選択的に削る。Dishing(広い配線部の凹み)と Erosion(密な配線部の研磨過多)のバランスがプロセスエンジニアの腕の見せどころ。
3D NAND / DRAM 周辺:3D NAND の 200 層超のメモリホール形成過程、DRAM のキャパシタ形成過程でも各層ごとに CMP が必要。1 枚のウェーハに 30 回以上 CMP をかけることも珍しくなく、スループット改善(処理時間短縮)が原価に直結する。
パワー半導体 SiC / GaN の研磨:SiC は Si の約 10 倍硬く、コロイダルシリカでの除去率はわずか 1 nm/min 程度。電解化学機械研磨(ECMP)や高温 CMP など特殊な手法が開発されている。本ツールはシリコン系プロセス向けの近似だが、K_p を 1e-15 程度まで下げれば SiC の挙動感を試せる。
よくある誤解と注意点
まず最も多い誤解が、「Preston 式は除去率を正確に予測する」と思い込むこと。Preston 式は経験式であり、実際の除去率には少なくとも以下の非線形効果が乗ります:(1) 低圧域では「化学反応律速」になり P の依存性が薄れる、(2) 高速域ではパッドとウェーハ間の流体潤滑膜(Hydroplaning)が発生して逆に除去率が落ちる、(3) パッドの寿命(コンディショニング)で K_p が時間変化する。本ツールはあくまで「P や v をいじったらどっち向きに動くか」を理解するための導入用モデルで、実機の K_p は必ず実験で決めてください。
次に、「圧力を上げれば速くなるから時間短縮できる」という早合点。確かに RR は P に比例しますが、高圧条件には副作用があります:(a) Cu や Al の Scratching(パターン上の引っかき傷)、(b) Low-k 膜の Delamination(剥離)、(c) パッド寿命の短縮、(d) ウェーハ内の応力増大によるダイス割れ。28 nm 以下のロジックでは 20 kPa 以下、Low-k 層では 10 kPa 以下が標準で、「とにかく低圧」が先端プロセスの大原則です。本ツールで P=100 kPa にすると WIWNU は計算上問題なく見えても、実機ではほぼ確実にデバイス不良が出ます。