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衝突力学シミュレーター

反発係数 シミュレーター — 跳ね返るボールの減衰

初期高さ h・反発係数 e・重力加速度 g・跳ね回数 n から、着地時速度・n 回後の跳ね高さ・全跳ね時間・全鉛直移動距離を実時間に計算します。床上を跳ねるボールの軌跡と h_n = h·e^(2n) の幾何級数減衰を可視化し、衝突力学を直感的に学べます。

パラメータ設定
初期高さ h
m
反発係数 e
重力加速度 g
m/s²
跳ね回数 n

既定値は h = 2.0 m、e = 0.80(弾性ゴム球程度)、g = 9.81 m/s²(地球)、n = 5 回。e < 1 のとき全跳ね時間 T と全距離 D は無限級数の和として有限値に収束します。

計算結果
着地時速度 v₀
n 回後跳ね高さ
全跳ね時間 T
全鉛直移動距離 D
跳ねる軌跡(床上、n 回分)

茶色帯=床/青放物線=各跳ねの軌跡(左から順に n 回)/黄丸=各跳ねの最高点/白数値=最高点高さ [m]/x 方向は等間隔に配置(実際の水平移動はゼロ)

跳ね高さの幾何級数減衰

横軸=跳ね回数 n(0〜30)/縦軸=跳ね高さ h_n = h·e^(2n) [m]/青曲線=現在の e の減衰/薄色曲線=e=0.5, 0.7, 0.9 の比較/黄丸=現在の n のマーカー

理論・主要公式

反発係数 $e$ は衝突前後の相対速度の比として Newton が定義した無次元量で、エネルギー散逸の度合いを表します。

着地時速度(自由落下):

$$v_0 = \sqrt{2gh}$$

$n$ 回目の跳ね上がり高さと衝突直前速度:

$$h_n = h\,e^{2n},\qquad v_n = v_0\,e^{n}$$

無限級数による全跳ね時間 $T$ と全鉛直移動距離 $D$($e<1$ のとき収束):

$$T = \frac{2v_0}{g}\cdot\frac{1+e}{1-e},\qquad D = h\cdot\frac{1+e^2}{1-e^2}$$

$h$ は初期落下高さ [m]、$g$ は重力加速度 [m/s²]、$e$ は反発係数($0\le e\le 1$)。$e=1$ は完全弾性、$e=0$ は完全非弾性。実際の弾性ゴム球で $e\approx 0.8$、ゴルフボールで $\approx 0.78$ 程度です。

反発係数 シミュレーターとは

🙋
高校物理で「反発係数 e」という言葉は習いましたが、実際にボールを落としたときどんな計算ができるんですか?
🎓
いい入り口だ。反発係数 e は「衝突直後の相対速度 ÷ 衝突直前の相対速度」で定義される無次元量で、Newton が 17 世紀に提案したものだ。床にボールを落とすケースなら、着地時速度 v₀ = √(2gh)、1 回跳ねた後の速度 v₁ = e·v₀、跳ね高さ h₁ = e²·h と一気に出せる。本ツールで既定の h=2 m、e=0.80、g=9.81、n=5 のまま「計算結果」を見てごらん。v₀=6.26 m/s、5 回後の高さ 0.215 m、全跳ね時間 11.49 秒、全鉛直移動距離 9.11 m と表示されるはずだ。
🙋
えっ、無限に跳ねるはずなのに「全跳ね時間 11.49 秒」って有限なんですか?
🎓
それが反発係数の面白いところだ。各跳ねの所要時間 t_n = (2v_0·e^n)/g は公比 e の等比数列をなすから、その無限和は T = (2v_0/g)·(1+e)/(1-e) で有限値に収束する。e=0.80 なら (1+0.8)/(1-0.8) = 9 倍だから、最初の往復 1.28 秒の 9 倍で約 11.5 秒だね。回数は数学的には無限だが時間は有限 — Zeno のパラドックスの古典力学版だ。e を 0.99 に上げてみて — T が急激に伸びるのが見えるよ。
🙋
テニスとかゴルフのボールはどれくらいの e なんですか?野球ボールとかも知りたいです。
🎓
標準試験での代表値は、ゴルフボール(硬い床)で e ≈ 0.78、テニスボール(コンクリート)で 0.73〜0.76、野球ボール(木製バット)で 0.55、バスケットボール(公式コート)で 0.76、スーパーボール(ゴム)で 0.92 ほどだ。NFL の革製アメリカンフットボールは 0.4 程度と意外に低い。本ツールで e=0.55(野球)と 0.92(スーパーボール)を切り替えると、後者が 5 回跳ねても 1 m 近く残るのに対し前者は 0.05 m 以下に減るのが見える。プロスポーツ用具規格はこの e の許容範囲を厳密に決めている。
🙋
右のグラフで「e=0.5」と「e=0.9」の曲線がすごく違いますね。これってエネルギーの保存とどう関係するんですか?
🎓
大事なポイントだ。1 回の衝突で速度は e 倍 → 運動エネルギーは e² 倍残る、つまり (1-e²) の割合が熱・音・変形に変換される。e=0.5 では 1 回で 75% のエネルギーを失い、e=0.9 では 19% しか失わない。h_n = h·e^(2n) の指数 2n はこの「速度 → エネルギー → 高さ」の二乗連鎖から来ている。本ツールの右グラフで n を 1 から 30 まで動かし、e=0.9 の曲線が緩やかに、e=0.5 の曲線が急峻に減衰する様子を比較してみて — 等比数列の威力が体感できる。

よくある質問

反発係数 e は、衝突直後の相対速度を衝突直前の相対速度で割った無次元量で、Newton が定義した「衝突の質」を表す指標です。e = 1 は完全弾性衝突(エネルギー保存)、e = 0 は完全非弾性衝突(くっついて離れない)を意味し、現実の物体は 0 < e < 1 の間にあります。例えばゴルフボールと硬い床で e ≈ 0.78、テニスボールで e ≈ 0.75、野球ボールと木製バットで e ≈ 0.55 程度です。本ツールで e を 0.0 から 0.99 まで動かすと、跳ね高さの減衰速度が劇的に変わることが直感できます。
これは Zeno のパラドックスの古典力学版で、各跳ねの時間 t_n = (2v_0·e^n)/g が公比 e の等比数列をなすため、その無限和 T = (2v_0/g)·(1+e)/(1-e) は e < 1 で有限値に収束します。例えば h=2 m, e=0.8, g=9.81 m/s² では T ≈ 11.5 秒で全運動が止まります。回数自体は数学的に無限ですが、実際のボールは跳ね高さが分子振動レベル(10⁻¹⁰ m)に達した時点で物理的に止まります。本ツールで e を 0.99 に近づけると T が急激に伸び、e を 0 に近づけると瞬時に止まる様子が確認できます。
速度比 e は 1 回の衝突で速度を e 倍にしますが、高さは速度の 2 乗に比例します(h = v²/(2g))。したがって 1 回の跳ねで高さは e² 倍、n 回後は (e²)^n = e^(2n) 倍となります。例えば e=0.8 の場合、各跳ね高さは 0.64 倍ずつ減るので、5 回後は 0.64⁵ ≈ 0.107 倍、すなわち 2 m から 0.215 m まで減衰します。エネルギーで考えても 1 回ごとに e² だけ運動エネルギーが残るため同じ式になります。本ツールでは e と n を変えてこの幾何級数の急激な減衰を直接観察できます。
本ツールは Newton の反発係数定義に基づき、空気抵抗・回転・床の弾性応答時間・温度依存性・接触時の摩擦・ボール内部の振動モードなどを無視しています。実際にはゴルフボールが芝生に当たると e は約 0.4 まで下がり、硬球同士でも 1 回の衝突で温度が上昇し e が時間経過で変化します。また高さ 2 m から落とすと空気抵抗で着地速度が約 0.3% 遅くなり、超低温では多くのゴム材料の e が低下します。本ツールは衝突力学の基本理解と概算用途に十分で、e の精密測定には ASTM F2117 や ISO 8124 などの規格試験を参照してください。

実世界での応用

スポーツ用具の品質規格:テニスボールは ITF 規格で 254 cm の高さからコンクリート床に落としたとき 135〜147 cm の高さまで跳ねることが要求され、これは e ≈ 0.73〜0.76 に相当します。野球の公認球は MLB 規格で 8 フィート(2.44 m)から大理石板に落として 0.514〜0.578 倍の跳ね(e ≈ 0.514〜0.578)が条件。ゴルフボールでは USGA が定める COR(Coefficient of Restitution)が 0.83 以下と厳格に制限されており、これを超えるドライバー/ボール組合せは公式競技で使用禁止です。本ツールで e を 0.55、0.78、0.92 に切り替えると、スポーツ用品の差が直感できます。

自動車衝突安全設計:車両前後方向の衝突解析で、バンパー・フレームの設計に反発係数 e が使われます。完全非弾性 e ≈ 0 のクラッシャブルゾーンでは衝突エネルギーを車体変形で吸収し、乗員への加速度を最小化。逆に e ≈ 1 だと乗員が反対方向に跳ね返り頸椎損傷のリスクが急増します。NCAP(New Car Assessment Program)の前面衝突試験では e ≈ 0.1〜0.2 になるよう設計されており、運動エネルギー散逸率は 1-e² = 96〜99% に達します。

材料・粒状物試験:セメント・粉体の充填密度評価では、ペレットを既知高さから落として跳ね高さを測り e を算出することで、表面粗さ・粒径・湿度の影響を評価します。シリカゲル粒子で e ≈ 0.65、湿った砂粒で e ≈ 0.05 と大きく異なり、サイロ設計や粉体輸送でこの差が壁面摩耗速度を決めます。鋼球を用いた Leeb 硬度試験では、衝撃ヘッド速度の前後比から e を測り材料硬度に換算する原理が使われています。

ロボット・グリッパー制御:産業用ロボットアームが対象物を掴む・置く動作で、把持時の e を考慮した制御が必須です。ガラス製品(e ≈ 0.95)は跳ね返りが大きいため吸引パッドや低粘弾性ゴム(e ≈ 0.2)でグリッパーを設計します。協働ロボット(cobot)の安全認証では人体接触時の運動量変化が ISO/TS 15066 で制限され、ロボット表面の e と人体組織の e の組合せから許容速度が決定されます。

よくある誤解と注意点

最も多い誤解は、「反発係数 e は質量や落下高さで変わる」というものです。Newton の定義 e = v_after/v_before は速度比のみで決まり、質量には依存しません。一定の試験条件であれば e は材料・温度・接触面の特性で決まる固有値で、例えばゴルフボール × 大理石板の組合せは試験高さが 1 m でも 5 m でも同じ e を示します。ただし高速衝突(>50 m/s)では塑性変形が進み e が低下する傾向があるため、ASTM などの規格試験は速度範囲を厳密に指定しています。本ツールで h を 0.1〜10 m で動かしても e による高さ比は同じであることを確認してください — h は v₀ と総時間にしか効きません。

次に多いのが、「e=1 でも実物のボールは無限に跳ね続ける」という勘違いです。本ツールでは e=0.99 までしか設定できませんが、たとえ e=1 でも実物のボールでは内部摩擦・空気抵抗・床の振動エネルギー伝達などで必ず減衰します。完全弾性衝突は理想化された極限で、超伝導体上の Maglev 球など特殊系でしか近似されません。本ツールで e=0.99 を入れると T が膨大な値(数百秒)になりますが、これは Newton モデルの予言であり、実際の系では追加の散逸機構が必ず効くことを念頭に置いてください。

最後に、「ボールが床に対して斜めに当たる場合も同じ式で OK」と思いがちですが、斜衝突では速度の法線成分にのみ e が適用され、接線成分は摩擦係数 μ と回転モーメントで別個に減衰します。野球の打球角度や卓球のスピン挙動はこの 2 方向分解が必須で、本ツールは「鉛直自由落下+床への垂直衝突」の理想ケースに限定された 1 次元モデルです。実際のスポーツ計算では、跳ね角度・スピン速度・摩擦係数を含む 6 自由度モデル(Hertzian 接触理論など)が使われます。