$$\frac{\partial \phi}{\partial t} + u\frac{\partial \phi}{\partial x} = D\frac{\partial^2 \phi}{\partial x^2}$$
1次元移流拡散方程式:$u$ は流速(m/s)、$D$ は拡散係数(m²/s)、$\phi$ はスカラー量。
$$Pe = \frac{uL}{D}$$
ペクレ数:移流と拡散の比。$Pe \gg 1$ で移流支配(鋭い波)、$Pe \ll 1$ で拡散支配(平滑)。
$$\phi(x,t) = \frac{1}{\sqrt{4\pi D t}}\exp\!\left(-\frac{(x - u t)^2}{4 D t}\right)$$
移動ガウス解:点源パルスの厳密解。中心 $= u\,t$、分散 $\sigma^2 = 2Dt$、ピーク $\propto 1/\sqrt{4\pi D t}$。アニメーションはこの解を直接描画します。
対流拡散方程式と数値スキームとは
よくある質問
scalarTransportFoam が対流拡散(移流拡散)の標準ソルバーです。fvSchemes ファイルで divSchemes に Gauss linearUpwind(風上差分)や Gauss QUICK(QUICK法)を指定して切り替えられます。Ansys Fluentでは「空間離散化」スキームで「Second Order Upwind」や「QUICK」を選択する操作が本シミュレーターの差分スキーム切替に対応します。実世界での応用
環境工学・大気拡散シミュレーション:工場や自動車から排出される汚染物質(PM2.5、NOxなど)が、風によって運ばれ、大気中で拡散・希釈される過程を予測します。風上差分がよく用いられ、安定した計算が求められます。
電子機器の熱設計:CPUなどの発熱体で発生した熱が、ファンによる強制空冷(対流)で流され、基板内を伝導(拡散)する温度分布を計算します。高精度な熱対策にはQUICK法に近いスキームが検討されます。
化学反応工学・反応器設計:管型反応器内で、原料が流れに沿って移動(対流)しつつ、混合(拡散)しながら化学反応を起こす濃度分布をシミュレーションします。反応速度の正確な評価には数値拡散の少ない手法が重要です。
河川・水域の水質予測:生活排水などに含まれる栄養塩や化学物質が、河川の流れで運ばれ、渦拡散によって広がる過程をモデル化します。実務では風上差分をベースにした安定な解法が主流です。
よくある誤解と注意点
「中心差分法は常に高精度」と思いがちですが、実際はペクレ数(対流と拡散の比)が大きくなるにつれて数値振動が発生し、物理的にありえない解(オーバーシュート・アンダーシュート)を生じます。このツールでは、ペクレ数が2を超えると中心差分の解が解析解から乖離し始める様子を確認できます。実務では、この振動を避けるために風上差分やQUICK法を使いますが、「風上差分は常に安定」という点にも注意が必要です。風上差分は数値拡散(人工的な拡散)が大きく、ペクレ数が極端に高い場合でも解がなまってしまい、急峻な濃度勾配を正確に捉えられません。また、「QUICK法は常に中心差分より優れている」と誤解されがちですが、QUICK法もペクレ数が非常に大きい領域ではわずかな振動が残ることがあり、境界条件やメッシュ品質によっては不安定化する可能性があります。各スキームの特性を理解し、問題に応じた適切な選択が重要です。