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熱流体・空調シミュレーター

露点温度・相対湿度計算ツール — Magnus 近似

乾球温度と相対湿度を変えると、露点温度・湿球温度・水蒸気圧・絶対湿度を Magnus 近似で即時計算。結露が始まる温度と、空気が含む水分量を直感的に把握できます。

パラメータ設定
乾球温度 T
°C
相対湿度 RH
%
大気圧 p_atm
hPa
表示単位
0=SI/1=USCS

Magnus 係数 (a=17.62, b=243.12 °C) は WMO 推奨値。湿球温度は Stull 近似 (大気圧 1013 hPa 付近で精度約 ±0.3 °C) を使用。

計算結果
露点温度 T_d
湿球温度 T_w
水蒸気圧 e
絶対湿度 w (g/kg DA)
飽和曲線と RH 等値線(e-T 線図)

青実線=飽和水蒸気圧 e_s(T)/破線=RH 等値線 (20/40/60/80 %)/赤丸=現在の (T, e)/緑×=露点位置 (T_d, e)

理論・主要公式

Magnus 近似は飽和水蒸気圧を温度のみの関数で表す実用式で、−40〜+50 °C の空調・気象範囲で誤差 0.4 % 以下と高精度です。

飽和水蒸気圧 e_s(T は °C、e_s は hPa):

$$e_s(T) = 6.112\,\exp\!\left(\dfrac{17.62\,T}{243.12 + T}\right)$$

実水蒸気圧 e と露点温度 T_d(γ は補助変数):

$$e = \dfrac{\mathrm{RH}}{100}\,e_s(T), \qquad T_d = \dfrac{243.12\,\gamma}{17.62 - \gamma}, \quad \gamma = \ln\!\dfrac{\mathrm{RH}}{100} + \dfrac{17.62\,T}{243.12 + T}$$

絶対湿度 w(乾き空気 1 kg 当たりの水蒸気質量、g/kg DA):

$$w = 622\,\dfrac{e}{p_\text{atm} - e}$$

湿球温度 T_w の Stull 近似(大気圧 1013 hPa 付近、RH は %):

$$T_w \approx T\,\arctan\!\big(0.1520\sqrt{\mathrm{RH}+8.314}\big) + \arctan(T+\mathrm{RH}) - \arctan(\mathrm{RH}-1.676) + 0.00392\,\mathrm{RH}^{1.5}\arctan(0.0231\,\mathrm{RH}) - 4.686$$

物体表面の温度が露点温度 T_d を下回ると、その表面で結露が始まります。

露点温度・相対湿度計算ツールとは

🙋
冬の窓ガラスに水滴が付くのって、結露ですよね。あれってどんな条件で起こるんですか?
🎓
ざっくり言うと「窓ガラスの表面温度が、部屋の空気の露点温度を下回ったとき」だ。上のツールで T=25°C、RH=60% にしてみて。露点温度カードが約 16.7°C を示しているはず。つまり窓ガラスの表面が 16.7°C より冷たくなった瞬間から結露が始まる、ということだよ。シングルガラスだと外気が氷点下になると簡単にそこまで冷える。
🙋
じゃあ湿度を下げれば結露しないってことですか?
🎓
そう、RH スライダーを 60% から 40% に下げてみて。露点温度が約 10.5°C まで下がる。同じ室温でも、空気が乾けば結露しにくくなる。逆に風呂上がりで湿度が 80% になると露点は 21°C ぐらいまで上がり、ちょっと冷たい配管でもびっしり結露する。これがデータセンターや精密機器室で湿度管理が厳しい理由だ。
🙋
「湿球温度」っていうのは何ですか?露点とは別物?
🎓
別物だよ。露点は「冷やすだけで飽和に達する温度」。湿球温度は「水を蒸発させながら断熱冷却したときの到達温度」。打ち水で気温が下がる仕組みや、冷却塔の出口水温の下限はこの湿球温度で決まる。乾燥した日(RH=30% で T=30°C)に湿球温度カードを見てごらん。19°C 前後まで下がる。これが気化冷却の限界だ。
🙋
「絶対湿度」と「相対湿度」、設計ではどっちを使うんですか?
🎓
空気を加熱・冷却するプロセスを追うときは絶対湿度 (g/kg DA) を使う。なぜなら加湿も除湿もしなければこの値は一定で「保存量」になるからね。例えば外気 5°C・RH 60% で絶対湿度は約 3.3 g/kg、これを室内で 22°C まで暖めると RH は 20% 以下まで急降下する——でも g/kg は変わらない。加湿器の必要能力は「目標 g/kg − 外気 g/kg」で計算する。本ツールの絶対湿度カードは設計の出発点だよ。

よくある質問

WMO(世界気象機関)が 2008 年に推奨した水面上の飽和水蒸気圧用の Magnus 係数です。Sonntag や Alduchov-Eskridge による実測フィッティングに基づき、−40 °C から +50 °C で誤差 0.4 % 以下を達成しています。氷面上では別の係数(22.46, 272.62)を使うのが一般的ですが、本ツールは空調・気象用途を想定し水面上係数のみを採用しています。
飽和水蒸気圧 e_s と露点温度 T_d は大気圧にほぼ依存しません(Magnus 式は温度のみの関数)。一方、絶対湿度 w = 622·e/(p_atm − e) は大気圧の影響を受けます。高地(800 hPa 程度)では同じ水蒸気圧でも w が約 1.3 倍に増えるため、富士山頂や航空機内の空調設計では大気圧補正が必須です。スライダーを動かすと w カードのみが変化することを確認できます。
Stull (2011) の解析的近似は、大気圧 1013 hPa 付近で乾球温度 −20〜50 °C、相対湿度 5〜99 % の範囲で、厳密解(飽和エンタルピー反復計算)に対し平均誤差 ±0.3 °C 以内です。精密空調・湿度制御では厳密解を使うべきですが、設計概算・現場確認・教育目的では十分な精度を持ちます。極低湿(RH < 5 %)では誤差が大きくなる点に注意してください。
表示単位スライダーを 1 にすると、温度は °C → °F、水蒸気圧は hPa → inHg、絶対湿度は g/kg → gr/lb(grains per pound、1 g/kg ≈ 7 gr/lb)に切り替わります。米国 ASHRAE 基準や輸入冷凍機の銘板を読むときに便利です。スライダー入力は SI のままなので、入力値の体感を保ったまま出力単位だけ変換できます。

実世界での応用

建築の結露・カビ対策:窓ガラスや北側外壁の表面温度を、室内空気の露点温度より高く保つことが結露防止の基本原則です。本ツールで露点温度を確認し、断熱性能(複層ガラス・内窓・外断熱)の必要レベルを判断します。結露が継続するとカビが繁殖し、シックハウス症候群やアレルギーの原因になります。

データセンター・サーバールームの精密空調:ASHRAE TC9.9 のサーバー室推奨環境は露点温度 5.5〜15 °C、相対湿度 60 % 以下。露点が低すぎると静電気で IC が破壊され、高すぎるとサーバー筐体表面で結露し短絡事故になります。本ツールで運転条件の露点を確認すると、加湿器・除湿器の設定が妥当か即座に判断できます。

気化冷却塔・打ち水・気化式加湿器:これらの装置の到達下限温度はすべて湿球温度 T_w で決まります。例えば乾球 35 °C・RH 30 % の真夏の屋上では湿球温度約 22 °C まで冷却塔出口水温が下がり、空冷の代わりに大幅な省エネが可能です。湿球温度カードで地域・季節ごとの省エネポテンシャルを評価できます。

食品・医薬・倉庫の品質保持:チョコレートのファットブルーム、医薬品錠剤の吸湿崩壊、紙・木材の寸法変化はすべて露点温度と保管表面温度の関係で起こります。本ツールで保管空気の露点を求め、それより十分高い表面温度を維持するよう温調・断熱を設計します。

よくある誤解と注意点

最も多い誤解は「相対湿度が低ければ結露は起こらない」という思い込みです。本ツールで T=22 °C・RH=40 % を入力すると露点は約 8 °C。これは一見「乾いた」状態ですが、冬の外気で冷えた窓サッシ表面が 8 °C 以下になれば容赦なく結露します。重要なのは「相対湿度」ではなく「露点温度と表面温度の差」です。本ツールで露点温度カードを優先的に確認する習慣を付けてください。

次に多いのが、「温度を上げれば湿度が下がるので快適」という誤解です。確かに RH スライダーは下がりますが、本ツールで絶対湿度 w カードを見れば値は変わっていません。空気中の水分量自体は同じで、人間の肌が感じる「乾燥感」は呼気からの水分蒸発速度に依存します。冬の暖房で喉が乾く・肌が荒れるのはこの絶対湿度が低いままだから。RH 表示に頼らず w を見て加湿の必要性を判断しましょう。

最後に、「Magnus 式は万能」と思い込まないこと。本ツールが採用する水面上 Magnus 係数は −40〜+50 °C で高精度ですが、−40 °C 以下の極低温(氷面上飽和)、150 °C 以上の高圧蒸気、海水中の塩分影響などは別モデルが必要です。空調・建築・農業・気象という日常スケールでは十分実用的ですが、燃料電池・蒸気タービン・宇宙服など特殊環境では IAPWS-IF97 などの厳密モデルを使ってください。