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HVAC 設計シミュレーター

HVAC ダクトサイジング シミュレーター — 矩形ダクトの圧損計算

風量・幅・高さ・長さから、矩形ダクトの水力直径・平均風速・単位長圧損・総圧損を実時間で算出。空調設計でのダクトサイズ決定と送風機静圧の見積もりに使えるツールです。

パラメータ設定
風量 Q
m³/s
ダクト幅 a
mm
ダクト高さ b
mm
ダクト長 L
m

空気の物性は ρ = 1.20 kg/m³、μ = 1.8e-5 Pa·s に固定。鋼板ダクト粗さ ε = 0.09 mm を使用しています。

計算結果
平均風速 V
水力直径 D_h
単位長圧損 ΔP/L
総圧損 ΔP
矩形ダクトの斜投影図

ダクト寸法 a × b × L の3D風表示。左から右へ風量 Q が流れる様子と寸法ラベルを表示します。

風速 V と単位長圧損 ΔP/L

横軸=V (m/s)/縦軸=ΔP/L (Pa/m)。緑帯=HVAC 推奨速度帯 3〜8 m/s/黄点=現在の運転点。

理論・主要公式

矩形ダクトの圧損は、水力直径 $D_h$ で円管に換算したダーシー・ワイスバッハ式とスワミー・ジェイン明示式から計算します。

水力直径と平均風速:

$$D_h = \frac{2ab}{a+b},\qquad V = \frac{Q}{a\,b}$$

レイノルズ数とスワミー・ジェイン式:

$$Re = \frac{\rho V D_h}{\mu},\qquad f = \frac{0.25}{\left[\log_{10}\!\left(\dfrac{\varepsilon/D_h}{3.7} + \dfrac{5.74}{Re^{0.9}}\right)\right]^2}$$

単位長圧損と総圧損:

$$\frac{\Delta P}{L} = f\,\frac{\rho V^2}{2\,D_h},\qquad \Delta P_\text{total} = \frac{\Delta P}{L}\cdot L$$

$a,b$ はダクト幅・高さ [m]、$L$ はダクト長 [m]、$Q$ は風量 [m³/s]、$\rho = 1.20$ kg/m³(空気)、$\mu = 1.8\times 10^{-5}$ Pa·s、$\varepsilon = 0.09$ mm(鋼板)。

HVAC ダクトサイジング シミュレーターとは

🙋
空調設備の課題でダクトのサイズを決めろって言われたんですけど、矩形ダクトの圧損ってどう計算するんですか?円管の式しか教科書に載ってないんですけど…。
🎓
ざっくり言うと「水力直径」という考え方で円管の式に乗せるんだ。矩形ダクト幅 a・高さ b なら $D_h = 2ab/(a+b)$ で代表径を作って、これを円管径として扱う。あとはダーシー・ワイスバッハ式 $\Delta P = f(L/D_h)(\rho V^2/2)$ をそのまま使えば、矩形でも実用上は数 % 以内の精度で圧損が出るよ。
🙋
え、それだけでいいんですか? なんで断面の形は気にしなくていいんですか?
🎓
乱流だと壁面近くの薄い境界層が摩擦のほとんどを決めるから、断面全体の形より「壁が流れに対してどれだけ濡れているか」、つまり 4A/P が効いてくる。これがまさに水力直径だね。層流ではもう少し補正が要るけど、空調ダクトの風速は 3〜8 m/s 帯で Re も数万〜十数万と完全に乱流なので、この近似で十分。
🙋
推奨速度 3〜8 m/s ってどうやって決まってるんですか?
🎓
下限はダクトが太くなって工事費・占有空間が爆発するライン、上限は圧損と騒音が許容を超えるラインだね。たとえば V を 5 m/s から 10 m/s に上げるとΔP/L は4倍になり送風機動力もほぼ4倍。さらに高風速だと風切り音と振動で居室で耳につく。実務では主ダクトを 5〜7 m/s、居室分岐は 3〜4 m/s に下げるのが王道だよ。
🙋
同じ風量でも幅と高さどっちを大きくするかで圧損変わりますよね?
🎓
いい質問だ。同じ面積 A=ab を持つ矩形でも、正方形(a=b)が一番 D_h が大きくなり、極端に細長い形(アスペクト比10:1とか)だと D_h が小さくなって圧損が大きい。例えば 400×300 mm と 600×200 mm は面積同じ 0.12 m² だけど、D_h は 343 mm vs 300 mm で後者の圧損が約14%増。スライダーで a と b を逆比例に動かしてこの違いを体感してみよう。

よくある質問

スワミー・ジェイン式(1976)はコールブルック式の明示近似で、5e3 ≤ Re ≤ 1e8 かつ 1e-6 ≤ ε/D ≤ 1e-2 の範囲でコールブルック解との誤差は約 1% 以内です。HVAC ダクトの代表値(Re ≈ 1e4〜1e6、ε/D ≈ 1e-4〜1e-3)は完全にこの範囲に入り、ASHRAE Duct Fitting Database や SHASE 設計マニュアルでも同精度の明示式が標準採用されています。手計算でも表計算でも反復不要で扱えるため、実務で広く使われています。
同じ流路面積であれば、円形ダクトのほうが D_h が大きく圧損が小さくなります(円の D_h = D で、矩形の D_h より常に大きい)。製作費・気密性も円形(特にスパイラル)が有利です。一方、矩形ダクトは天井裏の制約された空間に納めやすく、低層・高さ制限のある天井裏ではほぼ必須です。実際の設計では、メインの長い経路はスパイラル円形、室内側の天井内分岐は矩形、というハイブリッド構成が一般的です。
いいえ、本ツールが計算するのは「ダクト直管の摩擦損失」だけです。送風機の必要静圧は、これに加えて、エルボ・分岐・ダンパー・コイル(フィルタ・冷温水コイル・加湿器)・吹出口の圧損をすべて足し合わせる必要があります。実務では「ダクト摩擦損失:機器圧損:吹出口圧損 ≒ 1:1:1」のオーダー感が目安で、本ツールの ΔP の 2〜3 倍程度が機外静圧の目安になることが多いです。最終的には ASHRAE/SHASE のフィッティングデータで個別積算します。
空気密度 ρ と粘度 μ が変わるので圧損が変化します。本ツールは 20℃ 標準空気(ρ=1.20 kg/m³、μ=1.8e-5 Pa·s)を仮定しています。一般空調の冷温水コイル下流(5℃〜40℃)程度なら誤差数 % 以内で本ツール値が使えますが、排煙設備で 200℃ 超の高温気流を扱う場合、ρ が約 0.74 kg/m³ まで下がるため、ΔP も同比率で小さくなります。理想気体則 ρ ∝ 1/T を用いて Δp を 273/(273+T℃) 倍する簡易補正が現場ではよく使われます。

実世界での応用

オフィス・商業ビルの空調ダクト設計:本ツールがそのまま使えるのが、オフィスや商業施設の天井内空調ダクトの初期計画です。所要風量から ASHRAE/SHASE の推奨速度を仮定して断面を決め、ダクト長と合わせて圧損を見積もる「等摩擦法」「等速法」の基礎計算が本ツールの内部ロジックそのものです。たとえばオフィス系統の主ダクトでは ΔP/L = 1 Pa/m 前後を目標とし、本ツールでスライダーを動かしてこの値になる断面寸法を逆算するのが定石です。

クリーンルーム・実験室の高静圧系:半導体・製薬のクリーンルームでは HEPA フィルタを通す関係で機外静圧 500〜1500 Pa という非常に高い圧力で運用されます。長い垂直シャフトとフィルタ枠の圧損を本ツールのような直管圧損ベースに、フィルタ圧損(最終 250 Pa など)を上乗せして送風機を選定します。風速は 6〜10 m/s と一般空調より高めで、本ツールで上限近くに振った計算がそのまま設計値の感覚に近くなります。

工場・倉庫の換気・排煙:排煙ダクトでは「煙の温度上昇による密度低下」を踏まえつつ、火災時の最大風量で機器選定します。住宅・小規模建物の局所換気では、フレキシブルダクト(ε が大きい)の使用比率が高いため、本ツールの ε=0.09 mm に対し ΔP/L が 2〜5 倍に膨れることを念頭に余裕を持った機種選定が必要です。風路長を最短に取ることが何より効くのが実感できます。

地下鉄・トンネル換気:断面 50 m² を超えるような巨大トンネルでも、矩形換算の水力直径と本式が成立します。風速は 4〜10 m/s、長さは数 km という極端なケースでは ΔP_total が数 kPa に達し、ジェットファンや軸流送風機の動力が MW 級になります。設計初期段階での感度解析(ダクト断面を 5% 変えると圧損は約 −20%)が、本ツールで直感的に確かめられます。

よくある誤解と注意点

最も多い誤解は 「面積さえ確保すれば形状はどうでもよい」 と考えてしまうことです。たしかに同じ風量・面積なら平均風速は同じですが、水力直径 $D_h = 2ab/(a+b)$ は形によって大きく変わります。たとえば 400×300 mm と 600×200 mm は面積こそ同じ 0.12 m² ですが、D_h は 343 mm vs 300 mm と 13% 違い、これがそのまま圧損 ΔP/L の差に効きます(後者の圧損は約 14% 増)。アスペクト比は可能な限り 1〜2 程度に抑えるのが省動力の鉄則です。シミュレーターで a と b を入れ替えながら統計値を眺めるとこの効果を直感的につかめます。

次に多いのが、圧損は風速 V に比例すると勘違いすることです。実際にはダーシー・ワイスバッハ式の右辺が $\rho V^2/2$ に比例し、摩擦係数 f も乱流域では V の弱い関数(Re の −0.2 乗くらい)なので、実質 ΔP/L ∝ V^1.8〜2.0 とほぼ V² で効きます。風速を 2 倍にすると圧損は約 4 倍、送風機動力も流量×静圧で約 8 倍。逆に言えば、断面を 20% 大きくすれば V が 1/1.44 に下がり圧損は 1/2 になる、というレバレッジの大きさが、本ツールでスライダー操作からも確認できます。

最後に、このツールが計算しているのは「直管のみ」であることに注意してください。実際の経路にはエルボ(K=0.2〜0.5)、Y分岐(K=0.5〜1.0)、ダンパー、コイル、フィルタ、吹出口などが必ず存在します。とくに短いダクトでは、これら局所損失が直管損失と同程度かそれ以上を占めることもあります。実務ではダンパー全開時で総静圧の 30〜50% を局所損失が占めるのが標準で、ASHRAE Duct Fitting Database や SHASE-S 010 を併用して各部品の K を加算する必要があります。本ツールはあくまで初期検討用の「直管圧損早見表」として使ってください。