ざっくり言うと「水力直径」という考え方で円管の式に乗せるんだ。矩形ダクト幅 a・高さ b なら $D_h = 2ab/(a+b)$ で代表径を作って、これを円管径として扱う。あとはダーシー・ワイスバッハ式 $\Delta P = f(L/D_h)(\rho V^2/2)$ をそのまま使えば、矩形でも実用上は数 % 以内の精度で圧損が出るよ。
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え、それだけでいいんですか? なんで断面の形は気にしなくていいんですか?
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乱流だと壁面近くの薄い境界層が摩擦のほとんどを決めるから、断面全体の形より「壁が流れに対してどれだけ濡れているか」、つまり 4A/P が効いてくる。これがまさに水力直径だね。層流ではもう少し補正が要るけど、空調ダクトの風速は 3〜8 m/s 帯で Re も数万〜十数万と完全に乱流なので、この近似で十分。
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推奨速度 3〜8 m/s ってどうやって決まってるんですか?
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下限はダクトが太くなって工事費・占有空間が爆発するライン、上限は圧損と騒音が許容を超えるラインだね。たとえば V を 5 m/s から 10 m/s に上げるとΔP/L は4倍になり送風機動力もほぼ4倍。さらに高風速だと風切り音と振動で居室で耳につく。実務では主ダクトを 5〜7 m/s、居室分岐は 3〜4 m/s に下げるのが王道だよ。
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同じ風量でも幅と高さどっちを大きくするかで圧損変わりますよね?
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いい質問だ。同じ面積 A=ab を持つ矩形でも、正方形(a=b)が一番 D_h が大きくなり、極端に細長い形(アスペクト比10:1とか)だと D_h が小さくなって圧損が大きい。例えば 400×300 mm と 600×200 mm は面積同じ 0.12 m² だけど、D_h は 343 mm vs 300 mm で後者の圧損が約14%増。スライダーで a と b を逆比例に動かしてこの違いを体感してみよう。
クリーンルーム・実験室の高静圧系:半導体・製薬のクリーンルームでは HEPA フィルタを通す関係で機外静圧 500〜1500 Pa という非常に高い圧力で運用されます。長い垂直シャフトとフィルタ枠の圧損を本ツールのような直管圧損ベースに、フィルタ圧損(最終 250 Pa など)を上乗せして送風機を選定します。風速は 6〜10 m/s と一般空調より高めで、本ツールで上限近くに振った計算がそのまま設計値の感覚に近くなります。
工場・倉庫の換気・排煙:排煙ダクトでは「煙の温度上昇による密度低下」を踏まえつつ、火災時の最大風量で機器選定します。住宅・小規模建物の局所換気では、フレキシブルダクト(ε が大きい)の使用比率が高いため、本ツールの ε=0.09 mm に対し ΔP/L が 2〜5 倍に膨れることを念頭に余裕を持った機種選定が必要です。風路長を最短に取ることが何より効くのが実感できます。
地下鉄・トンネル換気:断面 50 m² を超えるような巨大トンネルでも、矩形換算の水力直径と本式が成立します。風速は 4〜10 m/s、長さは数 km という極端なケースでは ΔP_total が数 kPa に達し、ジェットファンや軸流送風機の動力が MW 級になります。設計初期段階での感度解析(ダクト断面を 5% 変えると圧損は約 −20%)が、本ツールで直感的に確かめられます。
よくある誤解と注意点
最も多い誤解は 「面積さえ確保すれば形状はどうでもよい」 と考えてしまうことです。たしかに同じ風量・面積なら平均風速は同じですが、水力直径 $D_h = 2ab/(a+b)$ は形によって大きく変わります。たとえば 400×300 mm と 600×200 mm は面積こそ同じ 0.12 m² ですが、D_h は 343 mm vs 300 mm と 13% 違い、これがそのまま圧損 ΔP/L の差に効きます(後者の圧損は約 14% 増)。アスペクト比は可能な限り 1〜2 程度に抑えるのが省動力の鉄則です。シミュレーターで a と b を入れ替えながら統計値を眺めるとこの効果を直感的につかめます。
次に多いのが、圧損は風速 V に比例すると勘違いすることです。実際にはダーシー・ワイスバッハ式の右辺が $\rho V^2/2$ に比例し、摩擦係数 f も乱流域では V の弱い関数(Re の −0.2 乗くらい)なので、実質 ΔP/L ∝ V^1.8〜2.0 とほぼ V² で効きます。風速を 2 倍にすると圧損は約 4 倍、送風機動力も流量×静圧で約 8 倍。逆に言えば、断面を 20% 大きくすれば V が 1/1.44 に下がり圧損は 1/2 になる、というレバレッジの大きさが、本ツールでスライダー操作からも確認できます。