カソード平衡電位E₀,cを変化させたときの腐食電流密度の変化
βcを20〜200mV/decで変化させたときの腐食速度の変化
腐食速度(mm/year): $CR = \dfrac{i_{corr} \cdot M}{n \cdot F \cdot \rho}$
アノード・カソードのターフェル定数を入力し、Evans 図(E-log i 線図)から腐食電位、腐食電流密度、腐食速度(mm/year)をリアルタイム計算。混合電位の交点で腐食速度が決まる原理を可視化します。
カソード平衡電位E₀,cを変化させたときの腐食電流密度の変化
βcを20〜200mV/decで変化させたときの腐食速度の変化
腐食速度(mm/year): $CR = \dfrac{i_{corr} \cdot M}{n \cdot F \cdot \rho}$
電位と電流密度の関係はターフェル式で表されます。アノード(酸化)・カソード(還元)それぞれの過電圧 $\eta$ は:
$$\eta_a = \beta_a \log\!\left(\frac{i}{i_{0,a}}\right), \quad \eta_c = -\beta_c \log\!\left(\frac{i}{i_{0,c}}\right)$$$\beta_a, \beta_c$: ターフェル定数 [V/decade](通常 0.04〜0.12 V/decade)、$i_{0,a}, i_{0,c}$: 交換電流密度 [A/cm²]。腐食電位 $E_{corr}$ はアノードとカソードの電流密度が等しくなる点です。
腐食電流密度 $i_{corr}$ からファラデーの法則で腐食速度を計算します:
$$CR\, [\text{mm/year}] = \frac{i_{corr} \cdot M}{n \cdot F \cdot \rho} \times 3.156 \times 10^{10}$$$M$: 金属の原子量 [g/mol]、$n$: 溶解の価数(例:Fe→Fe²⁺では n=2)、$F$: ファラデー定数(96485 C/mol)、$\rho$: 密度 [g/cm³]。
配管・構造物のライフ予測:海水中の鉄鋼構造物や埋設パイプラインの腐食速度をこのモデルで推定し、耐用年数設計や検査周期の設定に活用します。実測のicorrと比較して腐食マップを作成します。
防食技術の設計:外部電流(カソード防食)や犠牲陽極(亜鉛・アルミ)でEcorrを下げ、腐食速度をゼロに近づける設計の基礎理論です。シミュレーターでE₀cを下げてEcorrがアノード平衡電位を下回ると腐食が止まることを確認できます。
腐食抑制剤の評価:インヒビターがβ値や交換電流密度i₀に与える影響を定量化し、最も効果的な添加量を決定します。電気化学インピーダンス分光法(EIS)などの実験データと組み合わせます。
本シミュレーターの物理モデルでは、アノード反応およびカソード反応の分極挙動をターフェル式により記述する。アノード電流密度 \( i_a \) とカソード電流密度 \( i_c \) は、それぞれ平衡電位 \( E_{eq,a} \)、\( E_{eq,c} \) とターフェル勾配 \( \beta_a \)、\( \beta_c \) を用いて次式で表される。 $$ i_a = i_{0,a} \exp\left( \frac{E - E_{eq,a}}{\beta_a} \right), \quad i_c = i_{0,c} \exp\left( -\frac{E - E_{eq,c}}{\beta_c} \right) $$ ここで \( i_{0,a} \)、\( i_{0,c} \) は交換電流密度である。腐食電位 \( E_{corr} \) は \( i_a = i_c \) を満たす電位として決定され、そのときの電流密度を腐食電流密度 \( i_{corr} \) とする。腐食速度 \( v \)(mm/year)は、ファラデーの法則に基づき、金属の原子量 \( M \)、価数 \( n \)、密度 \( \rho \)、ファラデー定数 \( F \) を用いて次式で算出する。 $$ v = \frac{M}{\rho n F} \cdot i_{corr} \cdot 3.15 \times 10^7 $$ 本モデルにより、ユーザーが入力したターフェル定数からEvans図上の交点を求め、腐食挙動をリアルタイムに評価できる。
産業での実際の使用例:自動車業界では、車体の亜鉛めっき鋼板やアルミ合金部材の耐食性評価に本シミュレーターが活用されています。例えば、自動車メーカーが排気系部品(マフラー)の材料選定において、異種金属接触腐食(ガルバニック腐食)のリスクを事前に予測し、適切な防食設計(コーティング厚みや犠牲陽極の配置)に反映しています。また、海洋構造物(洋上風力発電の基礎部材)や化学プラントの配管材料選定でも、実環境の塩分濃度やpHを考慮した腐食速度の試算に用いられています。
研究・教育での活用:大学の材料工学科や腐食防食工学の実験講義では、学生が実験で得た分極曲線データを本ツールに入力し、理論値と比較しながら腐食メカニズムを学ぶ教材として利用されています。研究者は、新規耐食合金やインヒビター(腐食抑制剤)の開発段階で、ターフェル定数をパラメータとして腐食電流密度の変化を瞬時に確認し、実験計画の効率化を図っています。
CAE解析との連携や実務での位置付け:本シミュレーターは、単独の腐食診断ツールとしてだけでなく、有限要素法(FEM)ベースの構造CAEと連携して使用されます。例えば、自動車のボディ骨格モデルに腐食による板厚減少率を反映させることで、長期使用後の強度低下を予測するマルチフィジックス解析の一部として位置付けられています。実務では、設計段階での材料選定や防食仕様の妥当性確認、および既存設備の残存寿命評価(リスクベースメンテナンス)の基礎データ提供に貢献しています。
「ターフェル定数を正しく入力すれば腐食速度が正確に計算できる」と思いがちですが、実際にはEvans図はアノード・カソード反応が単純な活性化支配である理想系を前提としており、拡散支配や不動態皮膜の影響、溶液抵抗によるIRドロップなど現実の複雑な因子は考慮されていません。そのため、計算値はあくまで「推定値」であり、実環境での腐食速度と乖離する可能性がある点に注意が必要です。
「腐食電位が貴(高い)ほど腐食速度が小さい」と誤解されがちですが、実際には腐食電位と腐食電流密度は独立したパラメータではありません。例えばカソード反応のターフェル勾配が急峻だと、同じ腐食電位でも腐食電流密度が大きく変わり得るため、電位のみで耐食性を判断するのは危険です。
「mm/yearの単位が小さいから安全」と思いがちですが、局部腐食(孔食や粒界腐食)では均一腐食速度が小さくても急激な貫通が生じることがあります。本シミュレーターは全面均一腐食を前提としているため、局部腐食のリスク評価には別途注意が必要です。
軟鋼が海水中で腐食する場合:アノード E0a = -0.61 V、i0a = 2×10⁻⁶ A/cm²、ターフェル定数 βa = 50 mV;カソード E0c = +0.10 V、i0c = 1×10⁻⁸ A/cm²、βc = 100 mV と設定すると、腐食電位 Ecorr ≈ -0.52 V、腐食電流密度 icorr ≈ 5×10⁻⁵ A/cm² が得られ、腐食速度は約 0.23 mm/year と計算される(原子量 55.85 g/mol、密度 7.87 g/cm³ を使用)。