爆風圧・爆発荷重計算 戻る
衝撃・防爆工学

爆風圧・爆発荷重計算シミュレーター

TNT等価装薬量Wと観測距離Rから、爆風最大過圧・衝撃波速度・正圧継続時間・比衝撃量をリアルタイム計算。Friedlander波形と距離依存性を可視化し、防爆構造・耐爆設計の基礎データを取得できます。

パラメータ

プリセット

計算結果
換算距離 Z (m/kg^⅓)
最大過圧 Pso (kPa)
衝撃波速度 Us (m/s)
正圧継続時間 td (ms)
比衝撃 is (kPa·ms)
被害レベル目安
Friedパラメータ

Friedlander近似による圧力-時間波形。橙線 = 大気圧基準(正圧フェーズ + 負圧フェーズ)。

分布

現在の W に対する距離 R と最大過圧 Pso の関係。● が現在の設定。

比較

異なる換算距離 Z での Pso・td・is の相対比較(Z = 0.5, 1, 2, 3, 5 m/kg^⅓)。

理論・主要公式

換算距離 \(Z = R / W^{1/3}\) [m/kg^{1/3}] に対し、以下の近似(Kingery & Bulmash, 1984)で各爆風パラメータを求める(地表面爆発)。


最大過圧:

\(P_{so} = \frac{0.84}{Z} + \frac{3.0}{Z^2} + \frac{0.8}{Z^3} \quad \text{(近似、単位: MPa)}\)

Friedlander波形(正圧フェーズ):

\(P(t) = P_{so}\left(1 - \frac{t}{t_d}\right)\exp\!\left(-\frac{b \cdot t}{t_d}\right), \quad 0 \le t \le t_d\)

比衝撃(圧力-時間積分):

\(i_s = \int_0^{t_d} P(t)\,dt = P_{so}\cdot t_d \cdot \frac{1 - e^{-b}(1+b)}{b^2}\)

衝撃波速度:Rankine-Hugoniot条件より \(U_s = a_0\sqrt{1 + \frac{6P_{so}}{7P_0}}\)(\(a_0\) = 音速 340 m/s、\(P_0\) = 101.3 kPa)。

爆風荷重の基礎 — 会話で理解する

🙋
爆風圧ってどうやって計算するんですか?爆発の大きさと距離だけで決まるんですか?
🎓
基本的にはそうだ。Hopkinson-Cranz相似則というものがあって、「爆発の強さ」は換算距離 Z = R / W^(1/3) という1つのパラメータに集約できる。W はTNT等量(kg)、R は距離(m)。Z が同じなら、1kgの爆薬を10m先で観測したときも、1000kgを100m先で観測したときも、同じ波形になるんだ。
🙋
TNT等量って何ですか?TNTじゃない爆薬は?
🎓
TNT(トリニトロトルエン)は爆薬の基準単位として使われる。他の爆薬はTNT等量係数で換算する。例えば C-4 は約1.34倍(同質量でTNTより34%強い)、ANFO(硝安燃料油)は約0.82倍だ。自動車爆弾で使われる爆薬はだいたいTNT換算で50〜200kgが多い。
🙋
Friedlander波形って何ですか?なぜ爆風圧はその形になるんですか?
🎓
爆発が起きると衝撃波が球状に広がって、瞬時に最大圧力(Pso)に達してから指数的に減衰する。P(t) = Pso × (1 - t/td) × exp(-b×t/td) という式で表せて、これがFriedlander波形だ。正圧フェーズが終わると大気圧以下になる「負圧相」も現れる。これが構造物を引っ張る引き戻し荷重になるんだ。
🙋
過圧と比衝撃、どちらが構造物へのダメージに関係しますか?
🎓
どちらも重要で、対象の固有周期によって変わる。固有周期が継続時間 td より短い「衝撃領域」では比衝撃(圧力×時間の積分)が支配的。固有周期が長い「準静的領域」では最大過圧 Pso が支配的。中間は両方考慮するP-Iダイアグラムで設計する。窓ガラスは衝撃領域、コンクリート壁は準静的領域に近いことが多い。
🙋
形状係数 K = 1.8 って何ですか?なぜ 1.0 じゃないんですか?
🎓
自由空間(球状爆発)の K = 1.0 に対して、地面置き爆発は地面反射によって K ≈ 1.8 になる。地面が完全剛体反射なら K = 2.0 になるけど、地面が変形・吸収するので実用的に 1.7〜1.8 が使われる。半球状の爆薬ならエネルギーが上半球だけに放出されてほぼ K = 2.0 に近くなるよ。
🙋
実際の建物の耐爆設計ではどういう基準が使われるんですか?
🎓
米国のUFC 3-340-02(旧TM5-1300)、英国のBlast Effects of Explosions、ISO 16933などがある。スタンドオフ距離(最低離隔距離)を設けてZを大きく保つのが最も効果的な方法だ。Pso < 6.9kPa(1psi)なら窓ガラス損傷程度、Pso > 69kPa(10psi)だと構造崩壊リスクがある。

よくある質問

極近傍(Z < 0.3 m/kg^(1/3))ではファイアボール・熱放射が支配的になり相似則が成立しにくくなります。また、閉鎖空間(建物内部)では反射波・残留過圧(gas pressure)が支配的になるため、開放空間のモデルは適用できません。核爆発などの超大規模では高度・大気密度の影響も補正が必要です。
Z < 0.5 m/kg^(1/3) は致死的近接爆発(構造崩壊・直接熱傷)、Z = 0.5〜2 は防爆設計の重要ゾーン(窓破壊・鼓膜損傷)、Z = 2〜5 は軽微な損傷(窓ガラス破損など)、Z > 5 は可聴距離レベルが目安です。建物設計では最低でも Z > 3 のスタンドオフ距離を確保するのが一般的です。
2通りのアプローチがあります。① 陽解法 FEM(Abaqus/Explicit, LS-DYNA)で空気を含めた完全流体-構造連成解析を行う(最も精度高いが計算コスト大)。② このツールで求めたFriedlander波形を圧力時刻歴荷重として構造FEMに直接適用する(エンジニアリング実務で多用)。軽量・薄板構造物では負圧相の引き戻し荷重も必ずモデル化する必要があります。
代表値: TNT = 1.00、C-4(PETN系) = 1.34、RDX = 1.60、PETN = 1.27、ANFO = 0.82、黒色火薬 = 0.55、ガソリン蒸気(閉鎖空間) ≈ 0.40。爆風効果(爆速・圧力)か爆破効果(地雷・発破)かで係数が異なる場合があるため、使用目的に応じた値を参照する必要があります。
一般的な窓ガラス(6mm厚)は Pso ≈ 3〜7 kPa(0.5〜1 psi)で破損します。GSA(米国一般調達局)基準では、セキュリティガラス(合わせガラス+フィルム)で Pso = 14〜28 kPa への耐性が求められます。爆風圧設計では破片飛散防止(ハザードレベル)がガラス損傷そのものより重要視されます。
比衝撃 is = ∫P(t)dt は「圧力を時間積分した力積」です。P-Iダイアグラム(Pressure-Impulse diagram)は横軸に比衝撃・縦軸に最大過圧をとり、ある損傷レベルの等損傷曲線を示します。曲線の右上が損傷域、左下が安全域です。構造物の固有周期によって応答が「衝撃支配」か「準静的支配」かが決まるため、両軸を組み合わせた設計が重要です。

爆風圧・爆発荷重計算シミュレーターとは

本シミュレーターの物理モデルは、TNT爆薬の標準的な爆風特性に基づき、距離減衰則と波形近似を組み合わせています。最大過圧 \(P_{\text{max}}\) は、スケーリング則により換算距離 \(Z = R / W^{1/3}\) から算出され、例えば高圧域では \(P_{\text{max}} \propto Z^{-3}\) に従います。衝撃波速度 \(U\) はランキン・ユゴニオ関係式 \(U = c_0 \sqrt{1 + \frac{6P_{\text{max}}}{7P_0}}\)(\(c_0\): 音速、\(P_0\): 大気圧)で与えられます。正圧継続時間 \(t_d\) は \(t_d \propto Z^{1/2} W^{1/3}\) の経験式に従い、比衝撃 \(I\) は過圧波形をFriedlanderモデル \(P(t) = P_{\text{max}} (1 - t/t_d) e^{-a t / t_d}\) で積分して求めます。これにより、爆風のエネルギーと時間特性を統一的に評価し、防爆設計に必要な基礎データを即座に提供します。

実世界での応用

産業での実際の使用例:化学プラントや石油精製施設において、タンクや配管の防爆設計に活用されています。例えば、三菱重工や日揮ホールディングスなどのエンジニアリング企業が、TNT換算で爆発荷重を推定し、圧力容器や防爆壁の耐爆強度を評価。また、自動車業界ではトヨタや日産が、車両の耐爆試験における爆風荷重の事前検討に使用し、装甲車両や燃料タンクの安全設計に役立てています。

研究・教育での活用:大学の工学部や防衛研究所で、爆発現象の基礎理解や数値解析の教育ツールとして利用。例えば、東京大学や防衛大学校の講義では、学生が本シミュレーターで爆風圧の距離減衰や波形変化をリアルタイムに観察し、Friedlander波形の理論と実現象の対応を学ぶ教材として採用。研究では、新素材の耐爆性能評価の初期検討にも活用されています。

CAE解析との連携や実務での位置付け:本シミュレーターは、詳細なFEMやCFD解析の前段階として位置付けられ、爆風荷重の概算値を迅速に取得するツールです。実務では、設計者がまず本ツールで荷重条件を設定し、その結果をANSYSやLS-DYNAなどの汎用CAEソフトに受け渡すことで、構造物の非線形応答解析や破壊シミュレーションの入力データとして活用。防爆設計の初期段階でのリスク評価や設計パラメータの絞り込みに貢献します。

よくある誤解と注意点

「TNT等価法で計算した爆風圧は実際の爆発と完全に一致する」と思いがちですが、実際はTNT以外の火薬や化学爆発ではエネルギー放出率や爆轟特性が異なるため、あくまで近似値である点に注意が必要です。特に密閉空間や複雑な構造物内部では反射波や干渉効果が生じ、単純な自由空間のFriedlander波形から大きく乖離します。

「正圧継続時間が長いほど構造被害が大きい」と思いがちですが、実際は比衝撃(圧力×時間の積分値)が支配的であり、短時間でも高ピーク圧の方が構造に致命的な損傷を与えるケースがあります。防爆設計では最大過圧だけでなく、衝撃波の立ち上がり時間とエネルギー量の両方を評価する必要があります。

「観測距離Rを2倍にすれば爆風圧は単純に1/4になる」と思いがちですが、実際は爆発のスケール(相似則)や大気条件、地形の影響で減衰率は非線形に変化します。特に近距離では球面拡散と爆轟生成物の影響が複雑に絡み、距離減衰曲線が理論値から外れるケースが多いため、実験データや詳細な数値解析との併用が推奨されます。

使い方ガイド

  1. TNT等価装薬量(kg)をsl_wスライダーで設定。爆薬の種類に応じて換算係数を適用します(RDXベース爆薬=1.15倍、PETN=1.27倍)
  2. 爆発地点からの距離(m)をsl_rスライダーで入力。Hopkinson-Cranz相似則により無次元化距離Z=r/W^(1/3)を自動計算
  3. Kingery-Bulmash近似係数(kvNum)で過圧算出モデルを選択。建築物評価用(標準)またはNATO軍事規格対応に切り替え
  4. 計算実行により最大過圧Pmax(kPa)、衝撃波速度Us(m/s)、正圧持続時間td(ms)がリアルタイム出力
  5. Friedlander波形グラフで圧力-時間履歴を可視化。反射波を考慮した反射過圧(1.8~2.2倍)も表示

具体的な計算例

TNT 50kg爆薬が距離10mで爆発する場合:Z=10/50^(1/3)=2.92。Kingery-Bulmash式でPmax≈680kPa、Us≈1520m/s、td≈18msを算出。鉄筋コンクリート耐爆壁(圧縮強度30MPa)の場合、一面反射による反射過圧1540kPaを受けるため、厚さ500mm設計では局所破砕の可能性。距離を15mに延長するとPmax≈290kPaに低減され、安全性が向上。

実務での注意点

  1. Hopkinson-Cranz相似則はZ≧0.4(自由場過圧領域)でのみ適用。近距離爆発はKingery-Bulmash近似の精度低下を考慮し、実験値との比較検証が必須
  2. 反射波倍率はコンクリート面で1.8倍、鋼板では1.9倍。複雑な幾何形状では3次元FEM解析(ANSYS-AUTODYN等)による詳細評価を並行実施
  3. 装薬内訳(TNT相当換算)の確認が重要。工業用爆薬RDX/TNT混合物は1.15倍、ダイナマイト系は0.95倍で計算精度が±15%変動
  4. 正圧持続時間tdは構造の動的応答周期と比較。td<固有周期×0.3の場合は衝撃応答、td>固有周期×3では準静的応答として設計方針を変更