光ファイバの開口数(NA)シミュレーター 戻る
光学

光ファイバの開口数(NA)シミュレーター

光ファイバがどれだけ光を集められるかを示す「開口数(NA)」を計算するツールです。コアとクラッドの屈折率、コア径、波長を変えると、受光角・Vパラメータ・モード数がリアルタイムで分かり、単一モードと多モードの境界を直感的に確かめられます。

パラメータ設定
コアの屈折率 n₁
中心コアのガラスの屈折率(クラッドより高い)
クラッドの屈折率 n₂
コアを取り囲むクラッドの屈折率(コアより低い)
コア径 d
µm
光が通るコアの直径
波長 λ
nm
伝送する光の波長(850/1310/1550nm が代表値)
計算結果
開口数 NA
受光角(半角)(°)
比屈折率差 Δ (%)
Vパラメータ
モード数(概算)
ファイバ種別
光ファイバ断面図 — 全反射と受光円錐

受光角より浅く入った光線はコアとクラッドの境界で全反射を繰り返しながら伝わります。急すぎる光線(赤)はクラッドへ抜けて失われます。

開口数 NA とクラッド屈折率 n₂ の関係
Vパラメータとコア径 d の関係
理論・主要公式

$$\text{NA}=\sqrt{n_1^{2}-n_2^{2}},\qquad V=\frac{\pi d}{\lambda}\,\text{NA}$$

開口数 NA とVパラメータ V。n₁:コア屈折率、n₂:クラッド屈折率、d:コア径、λ:波長。V が 2.405 未満なら単一モードファイバ、2.405 以上なら多モードファイバとなる。

$$\theta_{\text{a}}=\arcsin(\text{NA}),\qquad \Delta=\frac{n_1^{2}-n_2^{2}}{2\,n_1^{2}}$$

受光角(半角)θ_a と比屈折率差 Δ。θ_a は端面で受け入れられる光円錐の半角、Δ はコアとクラッドの屈折率差の大きさを表す。

$$M\approx\frac{V^{2}}{2}\quad(V\geq 2.405)$$

多モードファイバの導波モード数 M の概算。V が大きいほど多くのモードを伝えられ、モード分散が大きくなる。

光ファイバの開口数とは

🙋
光ファイバって、髪の毛みたいに細いガラスの線ですよね。あの中をどうやって光が逃げずに何キロも進むんですか?
🎓
仕組みは意外とシンプルなんだ。光ファイバは、屈折率が少しだけ高い「コア」というガラスの芯を、屈折率が少しだけ低い「クラッド」が包んだ二重構造になっている。コアの中を進む光が、コアとクラッドの境界に浅い角度でぶつかると「全反射」が起きる。これは光が一切損なわれずに完全に跳ね返る現象で、だから光は鏡のトンネルの中をジグザグに進むみたいに、何キロも閉じ込められたまま伝わっていくんだ。
🙋
じゃあ、端っこから入れた光は全部その中に閉じ込められるんですか?
🎓
いや、そこが大事なところでね。あまりに急な角度で入射した光は、境界にも急な角度でぶつかってしまって、全反射せずにクラッドへ抜けて失われてしまう。つまり「閉じ込められる入射角には上限がある」。その上限の円錐の半角を「受光角」と呼ぶ。そして、その円錐の広さ=集光能力を1つの数字で表したのが「開口数(NA)」なんだ。左でコアとクラッドの屈折率を動かしてみて。屈折率の差が大きいほど NA が大きくなって、受光円錐も広がるのが分かるよ。
🙋
なるほど。じゃあ NA は大きければ大きいほど、たくさん光を入れられて得ですよね?
🎓
うーん、そう単純じゃないんだ。確かに NA が大きいと、LEDみたいに広がって出てくる光源からでも光をすくい取りやすくなる。これは結合(カップリング)の面では大きなメリット。でも代償もある。NA が大きいほど「Vパラメータ」という別の数字も大きくなって、ファイバが伝えられる「モード」=光の通り道の数が増えてしまうんだ。下のグラフでコア径を動かすと、V がぐんぐん上がっていくのが見えるよ。
🙋
モードが増えると、何がまずいんですか?
🎓
通り道が複数あると、それぞれの経路長がわずかに違うよね。だから1つのパルス(光の信号の塊)を送り込んでも、早く着くモードと遅れて着くモードが出て、出口ではパルスがびよーんと広がってしまう。これを「モード分散」と言って、通信の速度と距離を縛る大敵なんだ。V が 2.405 を下回ると、ファイバは光の通り道が1本だけの「単一モードファイバ」になる。通り道が1つならモード分散が起きないから、長距離・大容量の通信幹線にはこの単一モードファイバが使われている。
🙋
じゃあ、通り道が多い多モードファイバは使い道がないんですか?
🎓
そんなことはないよ。多モードファイバはコアが太い(50µmや62.5µm)から、光を入れるのも、コネクタで繋ぐのも、軸を合わせるのもずっとラクなんだ。データセンター内やビル内の短距離配線では、距離が短いからモード分散はあまり問題にならない。むしろ施工しやすくて安価なメリットが勝つ。だから「長距離なら単一モード、短距離なら多モード」と、NA と V を見ながら用途で使い分ける——これが光ファイバ設計の出発点なんだ。

よくある質問

開口数は NA = √(n₁² − n₂²) で計算します。n₁ はコアの屈折率、n₂ はクラッドの屈折率です。NA は端面で受け入れられる光の円錐の広さ(集光能力)を表す無次元数で、コアとクラッドの屈折率差が大きいほど大きくなります。受光角(半角)は θ = arcsin(NA) で求められ、空気中からこの角度より浅く入射した光だけがコア内に閉じ込められます。
Vパラメータは V = (π·d/λ)·NA で定義される無次元数です。d はコア径、λ は波長で、開口数・コア径・波長を1つにまとめた量です。V はファイバが支えられるモード(光の通り道)の数を決めます。V が 2.405 未満ならファイバは1つのモードしか伝えない単一モードファイバ、2.405 以上なら多モードファイバになります。多モードファイバのモード数はおおよそ V²/2 で概算できます。
単一モードファイバは V < 2.405 で1つの光の通り道しか持たず、モード分散がないため長距離・大容量の通信に使われます。コア径が約9µmと細いため光の結合や接続が難しいのが欠点です。多モードファイバは V ≥ 2.405 で多数のモードを伝え、コア径が50〜62.5µmと太いため光源との結合や調心が容易ですが、モードごとに経路長が異なりパルスが広がるため、帯域と距離が制限されます。
一概には言えません。開口数が大きいと受光円錐が広がり、LEDのような発散の大きい光源からでも光を取り込みやすくなります。一方で、開口数が大きいほどVパラメータも大きくなり、多モードファイバではモード数が増えてモード分散が大きくなり帯域が落ちます。長距離・高速通信では NA を小さく抑えた単一モードファイバを、短距離で結合の容易さを優先する用途では NA の大きい多モードファイバを選ぶ、というように用途で使い分けます。

実世界での応用

長距離通信幹線:大陸間の海底ケーブルや都市間のバックボーン回線には、開口数を小さく(おおむね0.12〜0.14)抑えた単一モードファイバが使われます。コア径が約9µmと細く V を 2.405 以下に保つことで、モードを1本に絞り、モード分散をゼロにしています。波長は損失の小さい1310nm帯・1550nm帯が選ばれ、開口数と波長の選択が伝送距離を直接左右します。

データセンター・構内配線:サーバ間やフロア間の短距離配線では、コア径50µmの多モードファイバ(OM3/OM4/OM5)が主流です。開口数が大きくコアが太いため、安価なVCSEL(面発光レーザ)との結合や、コネクタ接続の調心が容易で、施工コストを下げられます。距離が数百m以内ならモード分散の影響が小さく、多モードの扱いやすさが勝ります。

センサ・計測・産業用:光ファイバセンサや内視鏡の照明・イメージガイドでは、光をいかに多く取り込めるかが性能を決めます。LEDやランプのような発散の大きい光源と組み合わせる用途では、受光円錐の広い高NAファイバ(NA 0.2〜0.5)が選ばれます。受光角の計算は、光源とファイバの結合効率を見積もる出発点になります。

光部品設計・結合効率の検討:レーザダイオードやLEDをファイバに繋ぐとき、光源の放射角とファイバの受光角を比較して、何割の光が結合できるかを見積もります。受光角より広く放射される光は取り込めず損失になります。本ツールのような NA・受光角の概算は、レンズ系の設計やファイバ選定の事前検討として日常的に使われます。

よくある誤解と注意点

まず多いのが、「開口数はファイバの太さで決まる」という誤解です。開口数 NA = √(n₁² − n₂²) は、あくまでコアとクラッドの屈折率だけで決まる量で、コア径とは無関係です。コア径が効いてくるのは Vパラメータのほうで、V = (π·d/λ)·NA のように NA・コア径・波長の3つが一緒になって初めてモード数が決まります。「太いファイバ=高NA」ではありません。NA とコア径は別々の設計パラメータとして扱ってください。

次に、「単一モードか多モードかはファイバだけで決まる」という思い込み。同じファイバでも、使う波長によって V の値が変わるため、モードの数が変わります。V = (π·d/λ)·NA は波長 λ に反比例するので、設計波長より短い波長を入れると V が大きくなり、本来は単一モードのファイバが多モード的に振る舞うことがあります。各ファイバには「カットオフ波長」があり、それより短い波長では単一モード動作が保証されません。波長は必ずファイバの仕様とセットで考えてください。

最後に、「開口数を大きくすれば集光が良くなって性能が上がる」という単純化。確かに高NAは光を取り込みやすくしますが、通信用途では NA を上げることが裏目に出ます。NA を上げると V が上がり、多モードファイバではモード数が増えてモード分散が悪化し、帯域(伝送できる速度)が落ちます。集光のしやすさ(結合効率)と帯域はトレードオフの関係にあります。何を優先する用途なのかを決めてから、NA・コア径・波長を選ぶことが大切です。

使い方ガイド

  1. コア屈折率(例:1.48)とクラッド屈折率(例:1.46)を入力し、比屈折率差Δを自動計算
  2. コア径(例:8μm単一モード、50μm多モード)と動作波長(例:1310nm、1550nm)を設定
  3. 開口数NA、受光角(半角)、Vパラメータ、予想モード数が即座に表示される
  4. Vパラメータ≤2.405で単一モード、2.405≤V≤10でステップインデックス多モード動作確認

具体的な計算例

石英系単一モードファイバ:コア屈折率n₁=1.4815、クラッド屈折率n₂=1.4662、コア径d=9μm、波長λ=1550nmの場合、NA≈0.14、受光角(半角)≈8.1°、Δ≈1.04%、Vパラメータ≈2.05となり単一モード伝搬を実現。多モードファイバでコア径50μm、NA=0.2の場合、受光角(半角)≈11.5°、Vパラメータ≈50.4で約1250モードが伝搬可能。

実務での注意点