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光通信・WDM

EDFA エルビウム添加ファイバ増幅器シミュレーター

海底ケーブルや長距離 WDM 通信を支えるエルビウム添加光ファイバ増幅器(EDFA)の設計ツールです。980 nm ポンプ電力・信号波長・入力レベル・EDF 長・段構成を変えながら、小信号利得・出力電力・ノイズ指数 NF・OSNR・飽和出力をリアルタイムに確認できます。

パラメータ設定
980 nm ポンプ電力
mW
EDF を励起する 980 nm レーザの出力
信号波長
nm
C+L バンドの入力信号波長
入力信号レベル
dBm
EDFA 入力ポートの信号電力
EDF 長
m
エルビウム添加ファイバの巻き長
Er 濃度
ppm
EDF のエルビウムイオン濃度
EDFA 段構成
単段(高出力)/二段(低 NF)/分散(ハイブリッド)
計算結果
小信号利得 (dB)
出力電力 (dBm)
ノイズ指数 NF (dB)
OSNR (dB/0.1nm)
飽和出力 (dBm)
ポンプ変換効率 (%)
EDFA 構成模式図 — 980 nm ポンプ・EDF コイル・WDM 信号

980 nm ポンプ光が EDF コイル中の Er³⁺ イオンを励起し、入力 WDM 信号(C+L バンド)が増幅されて出力されます。背景の薄い緑が ASE ノイズの累積を示します。

利得飽和曲線 — 入力電力 vs 利得
段構成別 NF / OSNR 比較
理論・主要公式

$$G = \exp(g_{0}\,L),\qquad NF = 2\,n_{sp}\!\left(1-\frac{1}{G}\right)$$

利得 G とノイズ指数 NF。g₀: 単位長さ利得係数、L: EDF 長、n_sp: 自然放出係数(理想で 1)。完全反転で NF→3 dB(量子限界)。

$$OSNR_{out} = P_{sig} - NF - 10\log_{10}(h\nu\,\Delta\nu)$$

出力 OSNR。P_sig: 入力信号 dBm、hν: 光子エネルギー(1550 nm で 1.28×10⁻¹⁹ J)、Δν: ノイズ帯域(0.1 nm ≈ 12.5 GHz)。10 Gbps NRZ で 20 dB 以上が要件。

$$P_{sat,out} = 10\log_{10}(\eta_{pump}\,P_{pump}) \;\;[\text{dBm}]$$

飽和出力電力 P_sat。η_pump: ポンプ→信号変換効率(980 nm で 0.5–0.7)、P_pump: ポンプ電力(mW)。

EDFA エルビウム添加ファイバ増幅器 — 利得とノイズ指数設計

🙋
EDFA って名前は聞いたことありますけど、要は「光のアンプ」ですよね?電気みたいに電子回路でゲインを上げるんですか?
🎓
いい質問だ。EDFA はね、信号を電気に戻さずに「光のまま」増幅するのがポイントなんだ。ファイバのコアにエルビウムイオン(Er³⁺)を混ぜておいて、別から 980 nm のポンプ光を打ち込んで Er を励起する。そこに 1550 nm の信号光が通ると、誘導放出でエネルギーが信号にコピーされてゲインが出る、というわけだ。1990 年代に実用化されて、今の海底ケーブルや WDM 通信網は全部 EDFA がなければ成立しない。
🙋
なるほど…でも左の「ノイズ指数 NF」って何ですか?電気のアンプにはあまり聞かない言葉です。
🎓
光増幅では原理的に避けられないノイズが出る。Er が励起されると、信号がなくても勝手にランダムな方向に光を吐く「自然放出(ASE: Amplified Spontaneous Emission)」が必ず混ざる。これが信号と一緒に増幅されてしまうため、入力 SNR より出力 SNR が必ず下がる。その劣化量を dB で表したのが NF だよ。量子力学的に最小でも NF = 3 dB(Caves 限界)から下げられない。実用 EDFA は 4〜6 dB、二段構成にして全体 4 dB くらいまで詰めるのが定石だ。
🙋
OSNR が 37 dB とか大きい数字が出ているんですが、これは余裕があるってことですか?
🎓
一段の EDFA 直後ならその通り、すごく余裕がある。ただ実際の長距離リンクでは EDFA を 80 km おきに 10〜30 段くらい入れる。1 段ごとに ASE が累積していくから、出力 OSNR は段数に応じて急速に劣化するんだ。10 Gbps NRZ なら受信端で OSNR ≥ 20 dB/0.1nm、100 Gbps コヒーレント DP-QPSK なら 14 dB あれば届くという基準があって、最終受信側の OSNR がそれを上回るように初段の OSNR と段数を設計する。
🙋
「飽和出力 P_sat = 20 dBm」とも出ています。これは何の上限ですか?
🎓
EDFA がいくらゲインを持っていても、出力電力にはポンプ電力で決まる頭打ちがある。ポンプ電子のエネルギーは信号に渡されるから、変換効率 η_pump(980 nm で 0.5〜0.7)× ポンプ電力 が出力上限の目安だ。200 mW ポンプなら理論最大で約 100 mW = +20 dBm が出る。入力レベルが上がってきて出力がこの値に近づくと、利得は飽和して圧縮され、上の「利得飽和曲線」のような S 字カーブを描く。WDM では各チャネル合計でこの飽和出力を分け合うことになる。
🙋
最後の「段構成」で単段・二段・分散と選べますが、どう使い分けるんですか?
🎓
用途で選ぶよ。単段は受信側の最終段アンプなど、NF と出力をそこそこ両立させたいときの汎用構成(NF 5–6 dB)。二段は前段に低ノイズ EDFA(LN-EDFA, NF 4 dB)を置いて、間に分散補償ファイバや GFF を挟み、後段に高出力 EDFA(PA-EDFA)を置く構成で、長距離リンクの中継局で標準的だ。分散ラマン+EDFA ハイブリッドはラマン増幅で実効 NF を 0〜3 dB まで下げ、超長距離・大容量の海底ケーブルや 400G/800G 地上系で採用される。Fujitsu、Lumentum、NEC、II-VI(旧 Bookham)あたりが主要メーカーだよ。

よくある質問

量子力学的に光増幅には自然放出(ASE: Amplified Spontaneous Emission)が必ず混入するためです。完全反転(n_sp=1)の理想 EDFA でも NF = 2·n_sp·(1−1/G) ≈ 3 dB(=10log10(2))が下限となり、これは Caves の量子限界と呼ばれます。実際の EDFA は前段で 4–5 dB、後段(高出力段)で 5–7 dB が一般的で、二段構成(低 NF 前段 + 高出力後段)にすることで全体 NF を 4 dB 付近まで抑えます。
変調方式とビットレートで決まります。10 Gbps NRZ-OOK では BER 10⁻⁹ を満たすのに OSNR ≥ 20 dB/0.1nm が目安です。100 Gbps コヒーレント DP-QPSK では FEC(誤り訂正)込みで OSNR ≥ 14 dB 程度、400 Gbps DP-16QAM では 19 dB 以上が必要です。長距離リンクでは EDFA を多段接続するたびに ASE が累積し OSNR が劣化するため、OSNR バジェット(最低受信 OSNR と送信 OSNR の差)を設計時点で確保しておく必要があります。
C バンドは 1530–1565 nm の従来 EDFA 動作帯で、Er³⁺ の主要な発光ピーク(1530 nm)を含み、利得が高く NF も小さい王道帯域です。L バンドは 1565–1625 nm の長波長帯で、EDF を長く(C 用の 3–5 倍)して励起反転率を下げることで動作させます。L バンド EDFA は C バンドより NF が 1–2 dB 悪化しますが、WDM 容量を倍にできるため海底ケーブルや長距離地上系で広く採用されています(C+L 並列構成)。
EDFA は 1530–1610 nm の通信帯で利得 25–40 dB、NF 4–6 dB と高性能で、長距離 WDM の基幹増幅器です。SOA(半導体光増幅器)は小型・全波長帯対応ですが NF 7–9 dB と高く、ROADM や PIC 内部の用途に向きます。ラマン増幅器は分布増幅でファイバ自体に低 NF(実効 NF 0–3 dB)の増幅を与え、超長距離・大容量リンクで EDFA とハイブリッド使用されます。各増幅器は得意領域が異なるため、リンク設計では組み合わせて最適化します。

実世界での応用

海底光ケーブル中継:TPC-5(太平洋)、AAE-1(アジア–欧州)、FASTER(日米)など主要な海底ケーブルでは、約 60–80 km ごとに海中リピータとして EDFA が設置されます。1 系統で 10,000 km 以上を 100 段近い EDFA で伝送するため、各段の NF を 0.5 dB でも改善することが OSNR バジェットに直結し、最終的にはトラフィック容量(C+L で 20–40 Tbps)に効いてきます。

長距離地上 WDM バックボーン:NTT・KDDI・AT&T・China Telecom などのキャリアバックボーン網では、データセンタ間 100–1000 km リンクで EDFA を多段接続して 80–96 波長の WDM 信号を増幅します。ROADM ノード前後でゲイン平坦化フィルタ(GFF)と組み合わせ、波長間ゲイン偏差を 1 dB 以内に保ちます。最近は 400G/800G コヒーレント伝送で OSNR バジェットが厳しくなり、二段構成 + ラマンハイブリッドが標準になりつつあります。

データセンタ DCI(Data Center Interconnect):クラウド事業者(Google、Meta、AWS)の都市内 40–100 km DCI では、安価な単段 EDFA(NF 6 dB 程度)でも十分に動作するため、コスト最適化された統合型トランスポンダ + EDFA モジュールが多用されます。プラガブル形式(QSFP-DD ZR+)でアンプ内蔵のものも登場しています。

光計測・センシング:OTDR(光時間領域反射計)、Brillouin/Raman 分布センシング、ファイバレーザの励起など、産業用の光計測機器でも EDFA はキー部品です。特に長距離光ファイバセンサでは EDFA で信号を増幅しながら何十 km にも分布した応力・温度を計測でき、橋梁・パイプライン・電力ケーブルのモニタリングに使われています。

よくある誤解と注意点

まず最大の落とし穴が、「利得を大きくすればリンク予算が稼げる」と単純に考えること。EDFA は確かに信号を増やすが、ASE ノイズも同時に増やす。NF = 4 dB の EDFA を 20 段カスケードすると、累積 NF はおよそ 17 dB(10log20 + 4)まで悪化する。リンク設計は「ゲイン」ではなく「OSNR バジェット」で考えるのが鉄則。長距離リンクでは、各段で 20–25 dB のゲインに抑え、ファイバ損失(0.2 dB/km × 80 km ≈ 16 dB)を回復する程度に留め、過剰な利得は飽和と ASE 増殖を招くだけだ。

次に、「ポンプ電力を増やせば NF が下がる」という誤解。ポンプ電力を上げると確かに反転率(n_sp)は 1 に近づき NF は理論限界の 3 dB に漸近する。しかし実際には、低ポンプ域では未反転 Er³⁺ による吸収損失(ground-state absorption)が大きく NF を悪化させ、高ポンプ域では励起状態吸収(ESA)と熱効果で性能が頭打ちになる。最適ポンプ電力は EDF 長と Er 濃度の組み合わせで決まり、150–250 mW が典型値。やみくもにポンプを上げても、消費電力が増えて NF はあまり変わらないことが多い。

最後に、「OSNR の単位 dB/0.1nm」を意識せずに使うこと。光通信業界では OSNR を「0.1 nm(≈12.5 GHz)の参照帯域」で表すのが標準で、機器の OSA(光スペクトラムアナライザ)も通常この設定で測定する。しかし 100 Gbps コヒーレント信号の実効ノイズ帯域は数十 GHz あるため、文献によっては「信号帯域あたりの OSNR」で表記されることもある。両者の換算を間違えると 5–6 dB のずれが生じ、リンクが届くはずが届かない事態になる。仕様書を読むときは必ず「リファレンス帯域は何 nm(または GHz)か」を確認すること。

使い方ガイド

  1. 980nmポンプ電力を100~500mW範囲で設定し、EDFA増幅器の駆動条件を決定します
  2. 信号波長を1530~1565nm間で選択し、C帯域内の目的チャネルに合わせます
  3. 入力信号電力を-30~0dBm範囲で入力し、長距離WDM伝送での必要な信号レベルを設定します
  4. ファイバ長を5~30m範囲で調整し、利得と飽和出力特性の最適バランスを求めます
  5. 小信号利得、ノイズ指数NF、OSNR、飽和出力が同時に計算され、リアルタイムで更新されます

具体的な計算例

980nmポンプ電力300mW、信号波長1550nm、入力信号-20dBmの条件でシミュレーション実行時、ファイバ長15m標準仕様では小信号利得32dB、出力電力12dBm、ノイズ指数5.2dB、OSNR 38dB/0.1nm、飽和出力20dBm、ポンプ変換効率68%が得られます。これは100km以上の長距離海底ケーブル伝送で16ch WDMシステム運用に必要な増幅性能を満たします

実務での注意点

  1. ポンプ電力400mW超過時の温度上昇により、1550nmでのファイバ利得が0.15dB/℃低下するため、冷却機構を考慮した設計が必須です
  2. ノイズ指数が6dB超過する場合、多段EDFA設計では前段増幅器を低NF化(3.5dB以下)して全体OSNR劣化を抑制します
  3. ファイバ長8m以下では飽和出力が上昇する反面、小信号利得が35dB超過して非線形効果が顕在化するため、ASE抑制フィルタ挿入が必須です
  4. 信号波長1530nm帯域ではポンプ吸収効率が73%に低下し、同じ利得を得るにはポンプ電力15~20%増加が必要になります