すみ肉溶接強度計算 戻る
構造解析

すみ肉溶接・溶接継手強度計算

AWS D1.1 / ISO 5817 / JIS規格対応。脚長・溶接長・荷重からのど厚・応力・安全率をリアルタイム算出。溶接断面の可視化とChart.jsによる応力グラフ付き。

パラメータ設定
溶接タイプ
脚長 a
mm
溶接長さ L
mm
溶接本数
荷重入力
せん断力 F_x
kN
垂直力 F_y
kN
曲げモーメント M
kN·m
ねじりモーメント T
kN·m
材料・規格
母材降伏強度 F_y
SS400:245 / SM490:325 / HT780:690
溶接材引張強度 F_EXX
E49XX:490 / E70XX:483 / E90XX:621
設計規格
計算結果
のど厚 a_eff [mm]
せん断応力 τ [MPa]
垂直応力 σ [MPa]
合成応力 τ_res [MPa]
溶接材許容 — MPa
許容応力 τ_allow [MPa]
安全率 SF
有効断面積 A [mm²]
溶接品質クラス
溶接断面・応力図
応力成分グラフ
理論・主要公式

有効のど厚:$a_{eff}= 0.707 \times a$

溶接有効断面積:$A = a_{eff}\times L \times n$

せん断応力:$\tau = F_x / A$ , 垂直応力:$\sigma = F_y / A$

合成応力:$\tau_{res}= \sqrt{\tau_{shear}^2 + \sigma_{normal}^2}$

安全率:$SF = \tau_{allow}/ \tau_{res}$

AWS許容応力:$\tau_{allow}= 0.30 \times F_{EXX}$

すみ肉溶接・溶接継手強度計算とは

🙋
「有効のど厚」って何ですか? 脚長aを入力すると、自動で計算されてますね。
🎓
大まかに言うと、溶接の「本当に力を受ける部分の厚み」だよ。等脚すみ肉溶接の断面は直角二等辺三角形に見立てて、その高さが有効のど厚 $a_{eff}$ になる。計算式は $a_{eff}= 0.707 \times a$ だ。このシミュレーターでは、上の「脚長 a」スライダーを動かすと、即座にこの値が変わって、後続の応力計算に反映されるんだ。
🙋
え、そうなんですか!でも、なぜ0.707倍なの? それと、下の方にある「安全率」はどうやって決まるんですか?
🎓
0.707は $1/\sqrt{2}$ だね。直角二等辺三角形の高さを斜辺(脚長)で表すとこうなる。安全率は、計算された応力が「許容応力」に対してどれだけ余裕があるかを示す。実務ではAWS D1.1規格が多く使われてて、例えば溶接材の引張強度 $F_{EXX}$ に基づいて許容せん断応力 $\tau_{allow}= 0.30 \times F_{EXX}$ と決められている。右側の「溶接材引張強度」をE70XX(483MPa)からE60XX(414MPa)に変えてみると、安全率が大きく変わるのがわかるよ。
🙋
なるほど!「曲げモーメント M」や「ねじりモーメント T」も入力できますが、これらはどう計算に効いてくるんですか? 自動車のフレームみたいな複雑な荷重の場合、どう使えばいいですか?
🎓
良い質問だね。曲げやねじりが加わると、溶接部には一様でない応力が発生する。このツールでは、それらを考慮した合成応力を自動計算している。例えば、建設機械のアームの根本の溶接部は、垂直力と大きな曲げモーメントが同時に作用する。そんな時は、このツールで「垂直力 F_y」と「曲げモーメント M」を両方入力して、安全率が1.0を切らないか確認するんだ。CAEで詳細解析する前の手計算検証にぴったりだ。

よくある質問

安全率が1未満は溶接部が許容応力を超えていることを示します。脚長や溶接長を増やす、または荷重条件を見直してください。ツールではリアルタイムで再計算されるため、数値を変更しながら適正な安全率(通常1.5〜2.0以上)を目指して調整できます。
等脚すみ肉溶接の断面は直角二等辺三角形とモデル化され、有効のど厚は三角形の高さに相当します。脚長を斜辺とした場合、高さは脚長/√2 ≈ 0.707×脚長となります。この値が実際の溶接強度評価に用いる有効断面の基準です。
各規格で許容応力値や安全率の算出方法が異なります。AWS D1.1は主に米国基準で建築・橋梁向け、ISO 5817は欧州基準で溶接欠陥の許容範囲を規定、JISは日本工業規格です。ツール上部で切り替え可能で、選択した規格に応じた応力評価が自動適用されます。
Chart.jsによる応力グラフは、せん断応力τと垂直応力σの値を視覚的に比較できます。各荷重成分が溶接部に与える影響を直感的に把握でき、どの荷重が支配的かを確認しながら、脚長や溶接長の最適化に役立ててください。

実世界での応用

鋼構造建築(ビル、橋梁):柱と梁の接合部(モーメント接合)のすみ肉溶接強度を、長期荷重と地震時の短期荷重で検証します。AWS D1.1規格に準拠した許容応力設計法で、曲げモーメントとせん断力を入力して安全率を確認します。

建設・農業機械:油圧ショベルのアームやトラクターのフレームなど、繰り返し荷重と衝撃を受ける部分の溶接継手設計に利用します。特に、ねじりモーメントが大きい関節部の溶接長さと脚長を最適化する際の初期検討ツールとして有効です。

自動車車体・シャシー:サスペンション取付部やフレームの溶接継手に対して、走行中に加わる多軸応力(せん断+曲げ+ねじり)を簡易的に評価します。CAEによる疲労解析を行う前に、局所的な溶接部の応力レベルを手計算で把握する目的で使用されます。

圧力容器・配管支持部:ノズル取付部などの局部応力集中が問題となる箇所の補強用すみ肉溶接の設計に応用します。内圧によるせん断力と熱応力による曲げモーメントを考慮し、必要な溶接サイズを決定するための参考計算として活用できます。

よくある誤解と注意点

このツールを使い始める際、特に初心者が陥りがちな落とし穴がいくつかあります。まず第一に、「脚長を大きくすれば絶対に安全」という考え方。確かに脚長を増やすと有効のど厚は大きくなりますが、溶接熱による母材の変形や残留応力も増大します。例えば、板厚6mmの材料に8mmの脚長で溶接すると、熱影響部が広がりすぎてかえって母材の靭性を損なうリスクがあります。JISでは推奨される脚長の範囲が定められているので、ツールの結果だけでなく、適用規格の設計制約も確認しましょう。

次に、「安全率が1.0以上だからOK」という単純判断。このツールで算出される安全率は、静的な基本荷重に対するものです。実際の機械では、繰り返し荷重(疲労)や衝撃荷重が作用します。例えば、コンベアのフレーム溶接部で安全率が1.5だったとしても、24時間運転による疲労破壊の可能性は別途評価が必要です。ツールはあくまで「第一関門」の確認と心得てください。

最後に、溶接長さLと溶接本数nの入力ミス。溶接部が連続でない断続溶接の場合、有効な溶接長さは実際の溶接部の合計長さです。また、左右対称に2本の溶接がある場合、本数n=2としますが、この時に荷重が両方に均等に伝達されることが大前提。溶接部の配置が非対称だと、ツールの計算通りに荷重分担せず、片側に負担が集中する「偏心荷重」状態になり、想定外の破損を招きます。