貨物エレベータ かご支持ブラケット応力 戻る
貨物エレベータ・構造

貨物エレベータ かご支持ブラケット応力

貨物エレベータのかご枠を支える支持ブラケットの曲げ応力・撓み・安全率を、定格積載量・かご質量・支持間隔・桁断面・ブラケット数・衝撃係数・材種から即時計算します。リノベーションや既設改修時の構造健全性スクリーニングに活用できます。

パラメータ設定
定格積載 (kg)
kg
かご質量 (kg)
kg
支持間隔 (mm)
mm
ブラケット支点間の距離(梁スパン L)
桁高 (mm)
mm
桁厚 (mm)
mm
ブラケット数
材種
降伏応力 fy を自動設定
衝撃係数
急停止・非常制動を考慮する動的増幅係数
計算結果
全荷重 (kN)
1ブラケット荷重 (kN)
曲げ応力 σ (MPa)
安全率 SF
撓み δ (mm)
許容撓み δ_a (mm)
荷重伝達モデル — かご・ブラケット・モーメント図

かご質量と積載荷重に衝撃係数を乗じた合計荷重が、各ブラケット上部に分配されます。下段は各ブラケット桁の曲げモーメント図(中央集中荷重の三角分布)です。

設計感度 — 支持間隔に対する安全率
材種比較 — 同条件での安全率
理論・主要公式

$$W_{\text{tot}} = (m_{\text{rated}} + m_{\text{cab}})\cdot g\cdot K_{\text{imp}}, \qquad P = \frac{W_{\text{tot}}}{n}$$

全荷重 W_tot とブラケット1本あたりの荷重 P。K_imp は衝撃係数、n はブラケット数、g = 9.81 m/s²。

$$M = \frac{P\,L}{4}, \qquad I = \frac{b\,h^{3}}{12}, \qquad Z = \frac{I}{h/2} = \frac{b\,h^{2}}{6}$$

中央集中荷重を受ける両端支持梁の最大曲げモーメント M、断面二次モーメント I、断面係数 Z。b は桁厚、h は桁高。

$$\sigma_{\max} = \frac{M}{Z}, \qquad \mathrm{SF} = \frac{f_y}{\sigma_{\max}}, \qquad \delta = \frac{P\,L^{3}}{48\,E\,I}, \qquad \delta_a = \frac{L}{360}$$

最大曲げ応力 σ_max、降伏応力 fy に対する安全率 SF、中央撓み δ、許容撓み δ_a。E_steel = 200 GPa 固定。

貨物エレベータ かご支持ブラケット応力・安全設計

🙋
築40年の倉庫ビルの貨物エレベータをリニューアルする話があるんですが、既設のかご支持ブラケットってそのまま使えるんでしょうか?図面が残っていない部分も多くて、現場で実測しています。
🎓
リノベ案件あるあるだね。貨物エレベータは積載がデカいから、ブラケットの構造評価は必須だよ。まずやるのは「全荷重 W = (積載+かご質量)·g·衝撃係数」を出して、ブラケット1本あたりに分担させた P で曲げ応力 σ と撓み δ を見る。応力が降伏応力を超えないか、撓みがスパンの1/360を超えないか、の2点をチェックする。このツールの左側で実測値を入れてみて。
🙋
入れてみました。定格5t、かご1.5t、スパン1500mm、桁150×12mm、SS400、衝撃係数1.5で…安全率1.18でNG判定が出ちゃいました。これって既設はアウトってことですか?
🎓
即「アウト」じゃないけど、設計余裕がない状態だね。SS400の降伏235MPaに対して計算応力199MPa、SFが1.18は新規設計だと絶対NGの数字。リニューアルでも目標SFは2.0以上欲しい。改善策は3つ。(1)桁高を150→200mmに上げる、(2)ブラケット数を4→6本に増やす、(3)材種をSM490A(325MPa)に変える。実は桁高は3乗で効くから一番効率がいい。実際にスライダーで桁高を200mmにしてみて。
🙋
あ、本当だ。桁高150→200にしただけでSFが1.18→2.10に跳ね上がりました。撓みも2.49→1.05mmに改善。これだけ効くんですね。
🎓
そう、σ = 1.5PL/(bh²) で h は2乗、撓みは h³ で効くから断面サイズの効きが圧倒的なんだ。ただし注意点。本ツールは「両端支持で中央集中」っていう一番厳しめの仮定をしている。実機のブラケットは取付ボルトの位置や補強リブで効きが変わる。詳細検証は3D-FEMでやるとして、ここで使うのは「行ける/ダメ」の一次スクリーニング。SF2.5以上のゾーンに入れば、FEMでも問題なく通ることが多いよ。
🙋
衝撃係数1.5って何の数字なんですか?通常運転時の話だと思ってましたが…急停止とかも考えてるんですか?
🎓
そう、エレベータの構造設計では静荷重×衝撃係数で動的な増幅を見込むんだ。通常運転だけなら1.2程度でいいんだけど、急停止・非常制動・緩衝器衝突まで含むと2.0〜2.5、巻上機のシーブ滑り脱調などの極限条件では3.0まで取ることもある。貨物用は人荷両用や乗用より荷重変動が大きいので1.5を最小ラインに。法令上は建築基準法と日本エレベーター協会の標準JEAS-S015などを参照するけど、設計上は安全側に大きめを取るのが定石だね。

よくある質問

通常運転では1.2〜1.5、急停止や非常制動が想定される場合は1.8〜2.5、巻上機の脱調や緩衝器衝突を含めた極限条件では2.5〜3.0が目安です。法令上は建築基準法施行令と日本エレベーター協会の標準が参照されますが、貨物用は人荷両用や乗用より大きめに取るのが安全側です。本ツールでは1.5を初期値にしています。
中央集中荷重を受ける両端支持梁として M = P·L/4、断面係数 Z = b·h²/6 から σ = M/Z = 1.5·P·L/(b·h²) で計算しています。実機ではブラケットの取付方式(片持ち・両端固定など)により M はこれより小さくなることが多く、両端支持中央集中はやや厳しめの仮定です。設計初期のスクリーニングには十分な精度です。
鋼構造設計規準やJIS B 1131相当の機械設備では、二次部材の活荷重撓みを L/360 に抑える慣習があります。エレベータのガイドレール取付ブラケットでは、過大撓みがガイドレールの平行度を狂わせて走行振動・異音の原因となります。本ツールでは L/360 をしきい値とし、安全率1.5未満または撓み過大のいずれかでNG判定にしています。
理論的には1本あたりの荷重が下がるので応力は下がりますが、実機では均等な荷重分担が成立しません。製作公差や取付ボルトの締付差で、特定の1〜2本に荷重が集中することがあります。設計実務では理論値の70〜80%の有効本数で割って評価し、4本→実質3本相当として安全率を見ます。本ツールの計算は理論値(均等分担)なので、実機ではこれより厳しい応力になる前提で安全率2.5以上を狙うのが安全です。

実世界での応用

倉庫・物流センターのリニューアル:築30〜50年の倉庫ビルでは、フォークリフト直載やパレット搬送用の貨物エレベータが多数稼働しています。リニューアル時には、既設ブラケットを再利用できるか、補強または交換が必要かを早期判断する必要があります。本ツールで実測寸法を入れて一次評価し、SFが2.0未満であれば詳細FEM検証または補強設計へ進む、という運用が現実的です。

工場の生産ラインリプレース:製造業の工場では、生産品の重量化(電気自動車バッテリー、大型液晶パネル等)に伴い、既設エレベータの定格積載アップを求められるケースが増えています。「定格を3t→5tに上げたい」という要望に対し、既設ブラケットがその荷重に耐えるかを本ツールで即座に判定できます。耐えない場合は、桁高アップやブラケット追加の改修案の効果も同時に評価可能です。

建築設計の初期検討:新築物件のエレベータピット周辺構造設計では、エレベータメーカーから提供される反力データを元にブラケット・支持鋼材を設計します。メーカー提示の反力は最大値ですが、本ツールで自社の積載・かご質量・衝撃係数前提から逆算することで、メーカー提示値の妥当性を確認できます。設計ミスや過剰設計の早期発見に役立ちます。

耐震診断と地震時荷重評価:地震時の水平加速度(一般に0.3〜0.5G)は本ツールの衝撃係数では直接表現できませんが、衝撃係数を2.0〜2.5にすることで地震時相当の動的増幅を近似評価できます。エレベータが地震時にガイドレールから脱落するとかご落下事故につながるため、地震時SFを1.5以上確保する設計が標準的です。

よくある誤解と注意点

最大の落とし穴が、「均等荷重分担を前提にした過小評価」です。本ツールは P = W_tot / n でブラケット数 n で均等に割っていますが、実機ではこれが成立しません。製作公差(取付穴位置のばらつき±2mm程度)、取付ボルトの締付トルク差、ブラケット支持面の平面度などにより、4本中1〜2本に荷重が集中します。設計実務では「有効本数 = n × 0.7〜0.8」として評価するのが安全側で、4本→実質3本、6本→実質4〜5本として SF を計算し直すと、本ツールの値より20〜30%厳しい結果になります。

次に、「衝撃係数の解釈ミス」です。衝撃係数は静荷重に対する動的増幅倍率であり、ブレーキシステム、ガイドシュー摩擦、緩衝器特性などの全てを含む集約値です。本ツールの1.5という初期値は通常運転と急停止を含む一般的な値ですが、巻上機の制御方式(VVVF vs 油圧)、緩衝器の種類(バネ式 vs 油圧式)、ガイドレールの保守状態で実際の値は変わります。特に油圧式緩衝器のついた高速機では衝撃係数2.0〜2.5を見ておくべきで、1.5のままで設計すると非常制動時にブラケット降伏のリスクがあります。

最後に、「曲げ応力だけで安全とみなす誤り」です。本ツールは曲げ応力 σ と撓み δ の2項目を評価していますが、実際のブラケット破損モードはこれだけではありません。取付ボルトのせん断・引抜き、溶接部の応力集中、繰返し荷重による疲労破壊、コンクリート躯体側のアンカー引抜きなど、複数の破損モードを並行して評価する必要があります。本ツールは「梁としての健全性」のスクリーニング用と割り切り、詳細設計では各破損モードの個別検証を行ってください。

使い方ガイド

  1. 定格積載量(例:1000kg)とかご自体の質量(例:800kg)を入力します
  2. 支持ブラケットの支間(両端間距離、例:400mm)と桁高さ(例:80mm)を入力します
  3. 計算ボタンを押すと、全荷重、1ブラケット当たり荷重、曲げ応力σ、安全率SF、撓みδが即座に表示されます

具体的な計算例

定格積載量1500kg、かご質量900kg、支間500mm、桁高さH=100mm、材質SS400(E=200GPa、許容曲げ応力=140MPa)の場合:全荷重=(1500+900)×9.81=23.52kN。4本ブラケット支持なら1本あたり5.88kN。支間500mmの単純梁として最大曲げモーメントM=5.88×0.5/4=0.735kNm。断面係数W=100×100²/6≒166.7cm³として曲げ応力σ=735000/166700≒4.41MPa。撓みδ=5×5.88×500⁴/(384×200000×166.7×10⁴)≒0.22mm(許容1/250=2.0mm以内)で安全率SF=140/4.41≒31.7と十分な余裕があります。

実務での注意点