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木造建築・構造設計

木造トラス 強度等級設計シミュレーター

JIS Z 2101 の E-F 強度等級・建築基準法の許容応力度設計に沿って、木造トラス(小屋組)の下弦張力・上弦圧縮・安全率・撓みをリアルタイム計算します。樹種・等級・スパン・荷重を変えて、住宅や小規模建築の梁設計のあたりをつけられます。

パラメータ設定
樹種
構造用製材の代表樹種
強度等級(E-F)
JIS Z 2101 の機械等級区分
トラススパン L
m
トラス高 h
m
屋根構面トラス数
建物幅 18.2 m を等分する本数
死荷重 DL
kN/m²
積載荷重 LL
kN/m²
積雪荷重 SL
kN/m²
多雪区域では 2〜3 kN/m² 以上
計算結果
等価分布荷重 w (kN/m)
反力 R (kN)
下弦張力 (kN)
上弦圧縮 (kN)
安全率 引張
撓み (mm / 制限)
-
species
キングポストトラス模式図 — 部材力可視化

下弦(赤=引張)、上弦(青=圧縮)、垂直材(キングポスト)、屋根荷重 w、両端反力 R を表示。線の太さは部材力に比例。

撓み vs スパン L
等級別許容応力(fb / ft / fc)
理論・主要公式

$$F_{\text{bottom}} = \frac{w L^{2}}{8 h}, \qquad SF = \frac{f_{t}}{F/A}, \qquad \delta = \frac{5 w L^{4}}{384 E I}$$

w:等価分布荷重、L:トラススパン、h:トラス高、F:部材力、f_t:許容引張、A:断面積、δ:撓み。実用上は δ/L < 1/250 を推奨。

$$w = (DL + LL + SL) \cdot s, \qquad s = \frac{18.2}{N_{trusses}}$$

DL:死荷重、LL:積載、SL:積雪。建物幅 18.2 m を N_trusses 本のトラスで等分し、1 本あたりの負担幅 s(トリビュタリ幅)を求めて等価分布荷重 w に変換。

木造トラス 強度等級設計 — JIS Z 2101・建築基準法

🙋
「木造トラス」って、屋根裏で三角形に組まれた木の骨組みのことですよね?あれって、ただの木の棒の組合せで、どうして 10 m とか 20 m とか飛ばせるんですか?
🎓
そう、それだ。体育館や倉庫、最近の住宅の小屋組でよく使われる「キングポストトラス」や「シザーズトラス」が代表例だね。秘密は「三角形」という形にある。三角形は変形しない剛体だから、各部材は曲げではなく軸力(引張か圧縮)だけで荷重を伝えられる。木は曲げに弱くて軸方向には強いから、トラスにすると材料を効率的に使える。だから細い角材でも 10〜30 m スパンが実現できるんだ。
🙋
画面の左に「E70-F225」とか出てきますが、これって何の暗号ですか?等級が高いほど良い木、ってことですか?
🎓
いい質問だね。これは JIS Z 2101 系の機械等級区分で、E はヤング係数(剛性)、F は曲げ強度の下限値を表す。E70 なら 7.0 GPa、F225 なら 22.5 N/mm² 以上が保証されるという意味だ。住宅構造材は E70-F225(1 級相当)が標準で、長スパンや雪国の重屋根なら E110-F315 以上を選ぶ。等級を変えると、左パネルの「下弦張力」自体は変わらないけど、SF(安全率)と撓みが大きく改善するのが分かるよ。
🙋
下弦と上弦って色分けされてますね。赤と青、どっちが先に壊れるんですか?
🎓
木材は引張強度 f_t(18 N/mm² 程度)より圧縮強度 f_c(22 N/mm² 程度)のほうが大きい。だから純粋な軸力だけ見れば下弦の引張が先に厳しい。でも上弦は圧縮を受けるから「座屈(細長い棒がグニャっと曲がる)」のリスクがある。長スパンで上弦の有効長が長いと、座屈が支配的になる。実務では下弦・上弦・斜材・キングポストの 4 部材それぞれの応力をチェックして、最も小さい SF が設計を決めるんだ。
🙋
スライダーで積雪を 0.6 から 3.0 に上げると、安全率がガクッと落ちますね。雪国の家ってどうやって設計してるんですか?
🎓
いい着眼点だ。建築基準法で「多雪区域」(北海道・北陸など)は積雪荷重を 1 m あたり 30 N/m²(最低)として、最深積雪深を掛けて算定する。新潟県山間部では 4〜5 kN/m² にもなる。設計では (1) 等級を E110-F315 以上にする、(2) トラス高 h を大きくして部材力を下げる、(3) トラス本数を増やして 1 本あたりの負担幅 s を減らす、(4) 部材断面を太く(120×300 以上)する、を組合せる。だから雪国の家は屋根勾配が急で、小屋組が太く本数も多いんだよ。
🙋
トラス高 h を上げると数値が良くなりますね。じゃあ h は大きいほど得?
🎓
理論上は F_bottom = wL²/(8h) だから h が大きいほど部材力は下がる。ただし h を上げると屋根勾配が急になり、屋根面積(=荷重・コスト・施工性)が増える。実務では「トラス高はスパンの 1/5〜1/8」が目安。L=12 m なら h=1.5〜2.4 m が標準だ。シザーズトラスや剛接合トラスを使えば h を抑えつつ部材力を分散できる。CLT(直交集成板)や Glulam(集成材)と組合せると、出雲ドーム(142 m)のような大スパン木造も可能になる。

よくある質問

「E70-F225」のような表記は JIS Z 2101(木材物理試験)系の機械等級区分で、E がヤング係数の下限値(×100 kgf/mm² 相当、E70=7.0 GPa)、F が曲げ強度の下限値(F225=22.5 N/mm²)を表します。E が高いほど剛性が高く撓みが小さくなり、F が高いほど許容応力が大きくとれます。一般住宅の構造材は E70-F225(1級相当)が標準で、長スパントラスや重荷重では E110-F315 以上を選びます。本ツールは E70/E90/E110/E130 の 4 等級を切替えて影響を確認できます。
キングポスト型トラスでは、下弦(bottom chord)は引張、上弦(top chord)は圧縮を受けます。木材は一般に引張強度より圧縮強度のほうが大きい一方、上弦は座屈の影響を受けるため、長スパン・低トラス高では上弦の座屈が支配的になります。逆にスパンが短く・トラス高が十分にあれば、下弦の引張が支配します。本ツールは F_bottom = wL²/(8h) で両方の部材力を算出し、SF_tension と SF_compression を独立に表示するので、どちらが厳しいかひと目で分かります。
建築基準法施行令第82条では、長期は『死荷重+積載荷重』、短期(積雪時)は『死荷重+積載荷重+積雪荷重』を組合せます。多雪区域では積雪が支配する組合せが厳しくなります。本ツールでは簡易的に 3 つを足し合わせた等価分布荷重 w を用いて部材力を算出します。実設計では地震・風荷重との組合せ(短期)も検証が必要で、許容応力度も長期・短期で割増(短期は約 2 倍)します。本ツールは長期相当の常時荷重評価に位置づけられます。
木造トラスの一般的な撓み制限は L/250〜L/300(スパン 12 m なら 40〜48 mm)です。住宅金融支援機構の住宅性能基準では L/250、長期荷重時のクリープを考慮する場合は L/200 を採ることもあります。本ツールは L/250 を基準に判定します。算式は単純な部材伸び δ ≈ 2·F_bottom·L/(E·A_bottom) を用いており、桁行方向の剛性や仕口・継手のすべりは含みません。実設計ではクリープ変形(長期荷重で初期撓みの 2 倍程度)を見込んでください。

実世界での応用

木造軸組住宅の小屋組:日本の在来工法住宅の屋根は、ほとんどがキングポストトラスまたはハウトラスの変形です。スパン 6〜10 m、トラス高 1.2〜2 m、間隔 910 mm(半間)or 1820 mm(1 間)が一般的。E70-F225 の 105×270 構造材を本ツールのような設計で検証し、住宅金融支援機構の住宅性能基準に適合させます。建物幅 18.2 m(10 間)はモジュール設計の典型値です。

集成材(Glulam)大スパン建築:体育館・倉庫・店舗の大空間屋根では、Glulam(カラマツ・ヒノキ・米マツの集成材)でスパン 20〜40 m のトラスを組みます。集成材は E110-F315 以上の高等級が選ばれ、断面寸法も大きく(150×600 mm 等)取れます。出雲ドーム(142 m スパン、木造世界最大級)は集成材のキールアーチで構成され、本ツールの単純なキングポストではないものの、軸力主体の設計思想は共通です。

プレファブ・トラスプレート工法:北米・北欧で主流の GangNail(MiTek 等のトラスプレート)工法は、工場で打抜き鋼板(Truss Plate)を用いて木造トラスを大量生産します。住宅 1 棟分の小屋組を 1 日で組立可能。本ツールで算出する部材力と SF をプレートメーカーの設計表(Truswal、Alpine 等の許容耐力)と照合して仕口を選定します。

CLT・中高層木造への展開:CLT(Cross-Laminated Timber、直交集成板)の登場で、木造でも 10 階建て以上の中高層建築が可能になりました。CLT パネル+木造トラスのハイブリッド屋根、Glulam 柱+鋼板トラス梁の組合せなど、本ツールが扱う「軸力主体の木造」設計が中高層に拡張されています。LCC(ライフサイクルコスト)削減と CO2 固定の観点から、世界的に需要が拡大中です。

よくある誤解と注意点

まず最大の落とし穴が、「許容応力度を JIS の基準強度そのまま使ってしまう」こと。本ツールに入力した f_t=18 N/mm²(E70-F225)は『基準強度』であり、実際の許容応力度は荷重継続時間・含水率・温度・寸法効果による調整係数を掛けた値です。建築基準法では長期 = 基準強度 × 1.1/3、短期 = 長期 × 2 が原則。さらに集成材ではラミナ等級・接着剤性能による補正が入ります。本ツールの SF はあくまで『基準強度に対する余裕』であり、実設計では SF が 3 以上を目安にしてください。SF=2 でも建築基準法上はギリギリ NG になることが多いです。

次に、「仕口・継手の強度を無視する」誤解。木造トラスの破壊事例の多くは、部材本体ではなく仕口(部材同士の接合部)で起きます。引きボルト・羽子板ボルト・ガセットプレート・トラスプレートいずれを使っても、接合部の許容耐力は部材本体の 50〜70% 程度しか取れません。本ツールの下弦張力 73.7 kN を仕口で受ける場合、引きボルト M16 で 6 本程度(1 本あたり 12 kN 程度の許容引張)が必要です。仕口設計を別途行わずに「部材は OK」と判断するのは危険です。

最後に、「クリープ・乾湿変形を見落とす」こと。木材は長期荷重を受けると、初期撓みの 1.5〜2 倍まで撓みが増加します(クリープ変形)。本ツールの撓み 8.9 mm は瞬時値であり、長期では 15〜18 mm 程度になります。L/250=48 mm は瞬時値判定の目安なので、長期判定では L/300=40 mm のほうが安全側です。さらに乾燥収縮・吸湿膨潤で部材長さが ±0.3% 変動するため、仕口に過大な拘束を与えると割裂破壊の原因になります。集成材は乾湿変形が小さく安定しますが、製材は乾燥材(KD 材)の使用が必須です。

使い方ガイド

  1. スパン長(m)と小屋組高さ(m)を入力し、トラス本数と死荷重(kN/m²)を設定する
  2. JIS Z 2101による樹種・強度等級を選択し、等価分布荷重w(kN/m)と支点反力R(kN)を自動計算する
  3. 下弦張力・上弦圧縮力と引張安全率を確認し、撓み制限値(スパン/250)との比較で設計の妥当性を検証する

具体的な計算例

スパン8m、小屋組高さ1.2m、トラス4本間隔、死荷重2.5kN/m²の杉(強度等級E105)の場合:等価分布荷重w=2.5×8/4=5.0kN/m、支点反力R=20kN、下弦張力=86.7kN、上弦圧縮=86.7kN、引張安全率=4.2、撓み制限=8000/250=32mmで基準適合判定。

実務での注意点

  1. 積雪地域では死荷重に積雪荷重を加算(例:北海道日本海側で1.5m積雪時は+7.5kN/m²)し、建築基準法第88条で撓み制限δ≦L/250を確認する
  2. 檜(E120)と杉(E105)では許容応力が約15%異なるため、既存小屋組の樹種判定が設計値に大きく影響する
  3. 野地合板・防水層の施工時期によっては部分載荷状態での撓み35mm超過でクラック発生するため、工事順序を留意する