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トライボロジーシミュレーター

Greenwood-Williamson 粗面接触シミュレーター

ガウス分布で表されたアスペリティ高さに基づく古典的なGW粗面接触モデル。標準偏差σ・頂点曲率半径β・密度η・基準面間距離dを動かすと、実接触面積率・名目接触圧・実接触個数がリアルタイムに変化。摩耗や接触剛性の感度を肌で理解できます。

パラメータ設定
アスペリティ高さ標準偏差 σ
μm
アスペリティ頂点曲率半径 β
μm
アスペリティ密度 η
×10⁹/m²
基準面間距離 d
μm

E* = 115400 MPa(鋼/鋼の等価弾性率)に固定。d を小さくするほど押し付けが強くなり、実接触面積率が増加します。

計算結果
実接触個数 n(d)
実接触面積率 A_r/A_0
名目接触圧 P/A_0
接触確率 F_0 = ∫φdz from d
粗面と基準面(模式図)

上半:粗面アスペリティと基準面間距離 d(赤丸=接触するアスペリティ)/下半:F_0(d/σ)・A_r/A_0・P/A_0 の d/σ 依存性

理論・主要公式

GW モデルでは、アスペリティ高さ z がガウス分布 φ(z) に従い、各アスペリティはヘルツ球接触で押しつぶされます。高さ z > d のアスペリティだけが接触し、押し込み量は δ = z − d です。

アスペリティ高さ分布(標準偏差 σ のガウス分布):

$$\varphi(z) = \frac{1}{\sqrt{2\pi\sigma^2}}\exp\!\left(-\frac{z^2}{2\sigma^2}\right)$$

単位面積あたりの実接触個数。η はアスペリティ密度:

$$n(d) = \eta \int_d^\infty \varphi(z)\,dz$$

実接触面積率(1接触あたり A_c = π β δ):

$$\frac{A_r}{A_0} = \pi\beta\eta \int_d^\infty (z-d)\,\varphi(z)\,dz$$

名目接触圧(1接触あたりヘルツ荷重 P_c = (4/3) E* β^{1/2} δ^{3/2}):

$$\frac{P}{A_0} = \frac{4}{3}E^*\sqrt{\beta}\,\eta \int_d^\infty (z-d)^{3/2}\varphi(z)\,dz$$

注目点は、d を小さくする(押し付ける)と n(d) と A_r/A_0 と P/A_0 がほぼ同じ割合で増えること。これがアモントン・クーロン摩擦法則の微視的根拠です。

Greenwood-Williamson 粗面接触シミュレーターとは

🙋
机に手のひらをぴったり置いてるつもりでも、実際に触れてるのはほんの一部って聞いたことがあるんですけど、本当ですか?
🎓
本当だよ。それを定量化するための代表モデルが Greenwood-Williamson、いわゆる GW モデルだ。ざっくり言うと、表面はランダムな高さの「アスペリティ(突起)」がたくさん並んでいて、その高さがガウス分布に従うと仮定する。上の既定値だと、見かけ面積に対して実接触面積率はわずか2.6%。残りはミクロな隙間で、潤滑油や空気が入り込む空間になっているんだ。
🙋
え、たった2.6%!じゃあもっと強く押し付けたら、実接触面積はどれくらい増えるんですか?
🎓
それが GW モデルが教えてくれる一番面白いところなんだ。スライダーで「基準面間距離 d」を小さくしていってごらん。実接触面積率 A_r/A_0 と名目接触圧 P/A_0 が、ほぼ同じ比率で一緒に増えていくのが見えるはずだ。これが「実接触面積は荷重にほぼ比例する」というアモントン・クーロン摩擦法則の微視的根拠だよ。
🙋
なるほど!じゃあ表面を磨いて σ を小さくしたら、接触面積はもっと増えるんですか?
🎓
そう、σ を小さくすると同じ d でも接触個数 n(d) が指数的に増える。摩擦やリーク、電気接点の抵抗を減らしたいときは表面を磨いて σ を下げるのが定石だ。逆に、頂点曲率半径 β を大きくすると1個あたりの接触面積が広がる。スライダーで β を10倍にすると A_r/A_0 がほぼ10倍になるのが確認できる。
🙋
下のグラフ、d/σ を大きくすると F0 も A_r も急激に小さくなりますね。ほぼ直線で右下がりに見えます。
🎓
いいところに気づいた。縦軸が log なのに直線的に下がるってことは、F0 や A_r/A_0 が d/σ に対してほぼ指数関数的に減衰しているということだ。実務でよく使う近似式 A_r/A_0 ≈ const × exp(-d/σ) はここから出ている。d を1σ分離すだけで実接触面積が約 e 分の1(37%)になる、と覚えておくと感覚がつかみやすいよ。

よくある質問

表面粗さプロファイル測定器(白色干渉計、AFM、共焦点顕微鏡など)で得られた表面高さデータから、頂点(極大)の単位面積あたりの個数として算出します。一般的な機械加工面で η ≈ 10⁹〜10¹¹ /m²、研磨面で 10¹¹〜10¹² /m² 程度です。GW モデルでは σ・β・η の3つは独立に与えられますが、実際には測定スケールに依存するため、適用する寸法スケールに合わせて計測することが重要です。
d < 0 は、基準面が平均面より下に沈み込んでいる状態を表します。つまり押し付けが非常に強く、平均面以下の高さのアスペリティまで接触するようになります。スライダーで d を -2 μm に下げると、接触確率 F_0 が0.5を大きく上回り、A_r/A_0 もパーセント単位で急増することが確認できます。実務では塑性変形や材料の降伏が始まる領域なので、純粋な GW モデルの仮定(完全弾性)からは外れていきます。
GW モデルを拡張した塑性指数 ψ = (E*/H)√(σ/β)(H は材料硬度)で判定するのが定番です。ψ < 0.6 でほぼ弾性、ψ > 1 で塑性変形が支配的とされます。塑性域では GW-CEB モデル(Chang-Etsion-Bogy)や、Kogut-Etsion の弾塑性球接触モデルを用いて、各アスペリティの接触を弾性・弾塑性・完全塑性の3段階に分けて積分します。本ツールは弾性 GW モデルなので、ψ が大きい場合は接触圧を過小評価する点に注意が必要です。
GW モデルはアスペリティを独立な半球と仮定し、各接触をヘルツ球接触で扱う「離散的・統計的」アプローチです。一方、Persson 理論(2001年)は表面をフラクタル(多スケール)として扱い、フーリエ空間で接触面積の確率分布を直接導出する「連続的・スケール依存」アプローチです。Persson 理論は低荷重で A_r/A_0 ∝ P/A_0 という線形比例を厳密に導きますが、計算は複雑です。実務では、簡便性で GW モデル、精度・多スケール性で Persson 理論を使い分けます。

実世界での応用

軸受・歯車のトライボロジー設計:玉軸受やすべり軸受では、油膜が薄くなる境界潤滑領域でアスペリティ同士の直接接触が起きます。GW モデルで実接触面積と接触圧を見積もり、摩擦・摩耗・焼付きの限界荷重を推定します。EHL(弾性流体潤滑)解析と組み合わせ、油膜厚さと粗さの比(Λ 比)から接触領域を判定する設計手法は、自動車・航空機の駆動部品で広く使われています。

電気接点・コネクタ設計:リレーやコネクタの電気接点では、実接触個数とその面積が接触抵抗を直接決めます。GW モデルから R_c ∝ 1/√(n × A_c) の形で接触抵抗を予測し、必要な接触荷重と接点材料の硬度を設計します。スマートフォンの USB-C コネクタやコンピュータの CPU ソケットなど、ミクロ接触の信頼性が機器寿命を左右する場面で活躍します。

シール・パッキンの漏れ解析:金属ガスケットや O リングの漏れは、実接触面積率と隙間の連結性で決まります。GW モデルでアスペリティ間に残る「漏れ流路」の幾何を推定し、Reynolds 方程式と組み合わせて漏れ流量を予測します。半導体製造装置や水素関連機器の超高気密シール設計で重要な手法です。

熱接触抵抗・ヒートシンク設計:CPU とヒートシンクの界面など、固体間の熱伝導は実接触点を通じてしか起きません。GW モデルで実接触面積を求め、TCC(Thermal Contact Conductance)を推定します。サーマルグリスは隙間を埋めて見かけ接触面積を増やす役割を果たします。データセンターのサーバ冷却設計で必須の評価です。

よくある誤解と注意点

最も多い誤解は、見かけ接触面積と実接触面積を混同してしまうことです。たとえば100 cm² の金属ブロックを別の金属面に乗せたとき、見かけは100 cm² 全体が接触しているように見えますが、GW モデルでは実接触面積率は数% から数十% にすぎません。摩擦力や接触抵抗、熱伝導は実接触面積に比例するため、見かけ面積で割ってしまうと桁違いに過小評価することになります。スライダーで d=1 μm のデフォルト値を試すと、A_r/A_0 ≈ 2.6% という小ささを実感できます。

次に多いのが、表面を「滑らかに」すれば必ず接触面積が増えると考えてしまうことです。σ を下げるとアスペリティの高さばらつきが減り、同じ d でも接触個数は増えますが、同時に「実接触1個あたりの面積」も小さくなる傾向があります。さらに研磨を進めすぎると吸着・凝着(コールドウェルディング)が起こり、摩擦係数が逆に跳ね上がる現象(鏡面同士の貼り付き)が起きます。シミュレーターで σ を 0.1 μm まで下げると、F_0 が0に近づいて見える範囲が変化するのが分かります。

最後に、GW モデルが「あらゆる粗面接触に通用する万能式」と誤解する点に注意が必要です。GW モデルはアスペリティ同士の相互作用を無視し、頂点曲率半径を一定とし、ガウス分布を仮定した「最も簡単な統計モデル」です。実際の表面は多スケール(フラクタル)構造を持つため、観測スケールを変えると σ も β も変わります。荷重が高くて塑性が支配的な領域、表面が異方性をもつ加工面、潤滑油が介在する境界潤滑などでは、GW を出発点にしつつ Persson 理論・GW-CEB・EHL 解析などで補正する設計姿勢が大切です。