応力とひずみの基本
応力(σ)は単位面積あたりに作用する力で、単位は Pa(パスカル)または MPa です。引張・圧縮方向の垂直応力と、面に平行に作用するせん断応力(τ)の2種類があります。
ひずみ(ε)は変形量を元の寸法で割った無次元量です。フックの法則 σ = Eε が成立する弾性域では、ヤング率 E(弾性係数)が応力とひずみを結びつけます。
| 材料 | ヤング率 E (GPa) | 降伏強度 σy (MPa) | 引張強度 (MPa) |
|---|---|---|---|
| 鋼(SS400) | 206 | 245 | 400–510 |
| アルミ合金(A5052) | 70 | 195 | 260 |
| CFRP(0°積層) | 135 | — | 1500 |
| コンクリート | 25–30 | — | 2–5(圧縮40–80) |
モールの応力円
任意の応力状態(σx, σy, τxy)から、主応力(σ1, σ2)と最大せん断応力(τmax)を求める図式解法がモールの応力円です。中心座標と半径から主応力が求まります:
σ1, σ2 = (σx+σy)/2 ± √[((σx-σy)/2)² + τxy²]
von Mises応力と降伏判定
多軸応力状態での降伏をScalar量で評価するのがvon Mises応力(相当応力)です:
σvm = √[(σ1−σ2)² + (σ2−σ3)² + (σ3−σ1)²] / √2
σvm ≥ σy(降伏強度)で材料が降伏します。FEM解析でよく使われる評価指標です。
安全率の設計
設計応力(許容応力)は基準強度を安全率 S で割って求めます。安全率の選定基準:
| 用途・条件 | 安全率(目安) |
|---|---|
| 航空宇宙(厳密な品質管理) | 1.5–2.0 |
| 一般機械(静荷重) | 2.0–3.0 |
| 一般構造物(静荷重) | 3.0–4.0 |
| 動荷重・衝撃荷重 | 4.0–8.0 |
| 木構造(建築基準法) | 3.0 |
疲労強度と応力集中
繰り返し荷重では静的強度よりはるかに低い応力でも破壊が起きます(疲労破壊)。S-N曲線で繰り返し数 N と破断応力振幅 S の関係を把握し、Goodmanダイアグラムで平均応力の影響を評価します。
使い方ガイド
- 材料特性(ヤング率E、ポアソン比ν)と荷重条件を入力し、要素を選択します
- 垂直応力σ=F/A、せん断応力τ=V/Aを計算してから、von Mises応力σvM=√(σx²+σy²-σxσy+3τxy²)を求めます
- 結果をS-N曲線と照合し、安全係数(通常1.5~3.0)を確保して降伏判定を実施します
具体的な計算例
引張荷重を受ける構造用鋼(SS400、E=200GPa、降伏点σy=245MPa)の直径16mm丸棒に50kN荷重を印加した場合:断面積A=π×(8)²=201mm²、垂直応力σ=50000N÷201mm²=248.8MPa。降伏点を超過するため、直径20mm(A=314mm²)に変更するとσ=159.2MPa、安全係数=245÷159.2=1.54となり、実務基準を満たします。
実務での注意点
- 複合応力状態ではvon Mises応力を必ず使用し、単一成分のみの比較は避けてください(例:ねじり+曲げ荷重の同時作用)
- 疲労設計では応力集中係数Kt(切欠き根元で2.0~3.0)と表面仕上げ係数を考慮し、許容応力を低減させます
- 温度上昇時はE値が低下するため、高温環境(例:150℃)での計算時は材料データシートで補正値を確認してください