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疲労解析

S-N曲線・疲労寿命推定ツール

材料のS-N曲線と疲労限を入力し、Miner則による累積損傷と疲労寿命をリアルタイム推定。応力振幅・平均応力・Goodman修正を変えて安全率を確認できます。

材料クラス

材料強度

修正係数

負荷条件

数式

主要公式

$$\sigma_a = \sigma_f'(2N_f)^b$$

Basquin則(両対数でS-N線を直線近似)。$\sigma_f'$: 疲労強度係数、$b$: Basquin指数(通常 $-0.05 \sim -0.15$)、$N_f$: 破断繰り返し数。

$$S_e' = k_a k_b k_c S_e$$

修正耐久限度。$k_a$: 表面仕上げ係数、$k_b$: 寸法係数、$k_c$: 信頼性係数、$S_e$: 試験片耐久限度($\approx 0.5 S_u$)。

$$N_f = \frac{1}{2}\!\left(\frac{\sigma_a}{\sigma_f'}\right)^{1/b}$$

疲労寿命の推定式。応力振幅 $\sigma_a$ と Basquin 指数 $b$ から破断繰り返し数 $N_f$ を計算。

計算結果
疲労寿命 N_f
サイクル
修正耐久限度 S_e'
MPa(ka·kb·kc·Se)
安全率 n = S_e'/σ_a
safety factor
① S-N線図(両対数)— Basquin則 + 耐久限度 + 動作点
② 修正係数の効果:原曲線(破線)vs 修正後(実線)
③ 疲労寿命の散布帯(±2σ)

S-N曲線・疲労寿命推定とは

🙋
S-N曲線って何ですか?教科書のグラフみたいなやつですよね?
🎓
大まかに言うと、材料が何回の繰り返し応力に耐えられるかを示す設計の基本図だ。縦軸が応力振幅、横軸が破断までの繰り返し数(サイクル数)で、応力が大きいと早く壊れる、という関係を表しているよ。このシミュレーターでは、上の「応力振幅」スライダーを動かすと、S-N曲線上の点が動いて、推定寿命がリアルタイムで変わるのがわかる。
🙋
え、そうなんですか!でも、同じ応力でも部品の形や表面の状態で疲労寿命って変わりませんか?
🎓
良いところに気づいたね。その通りで、材料そのもののS-N曲線に、実際の使用条件を反映する「修正係数」を掛けるんだ。例えば、表面が粗いと傷からき裂が入りやすいから「表面仕上げ係数」で寿命を減らす。このツールの中央にある「表面仕上げ」「寸法効果」「信頼度」のスライダーをいじると、修正された曲線(破線)が動いて、設計上の安全マージンがどう変わるか確認できるよ。
🙋
「遷移サイクル Nt」って表示もありますが、これは何ですか?10^6サイクルを超えると壊れないということ?
🎓
それが「疲労限度」の考え方だ。多くの鉄鋼材料では、ある応力レベル(疲労限度)以下なら、原理的に無限回(例えば10^7回以上)繰り返しても壊れないとされる。Ntはその境目のサイクル数で、このツールでは修正後の曲線が水平になる点だ。応力振幅を下げて、点が水平線(疲労限度線)より下に来るように調整すれば、「無限寿命」と判定される。実務ではばねや軸など、長期間動かす部品の設計でこの確認が必須なんだ。

よくある質問

平均応力がゼロでない場合(例:予荷重や残留応力がある部品)に使用します。Goodman修正は引張平均応力による疲労強度低下を補正するため、平均応力が大きいほど寿命が短くなります。圧縮平均応力の場合は修正不要なケースが多いです。
鋼材ではb=-0.085前後が一般的です。高張力鋼では-0.05〜-0.12、アルミ合金では-0.10〜-0.15程度と材料により異なります。正確な値は材料試験データから求めるか、文献値を参照してください。ツールでは自由に変更可能です。
本ツールでは、疲労限以下の応力振幅は損傷にカウントされません(損傷度=0)。ただし、実際には疲労限以下の応力でも累積損傷が生じる場合があるため、安全側の設計が必要な場合は疲労限を低めに設定することを推奨します。
各応力振幅とその発生回数を入力し、Miner則(累積損傷則)で計算します。各応力振幅ごとにS-N曲線から許容繰り返し数を求め、実際の発生回数との比(損傷度)を合計します。合計損傷度が1に達した時点が寿命です。

実世界での応用

自動車のサスペンションスプリング:路面の凹凸で繰り返し荷重を受けるコイルばねの設計が典型例です。SUP9のようなばね鋼を使い、最大荷重と最小荷重から応力振幅を算出し、車両寿命(想定走行距離)に相当するサイクル数まで耐えられるか、または疲労限度以下かをこの手法で検証します。

産業機械の回転軸:歯車やプーリーが取り付けられた軸は、回転に伴う曲げ応力が繰り返し加わります。キー溝などの切り欠き部分は応力集中が発生するため、寸法係数$k_b$を小さく見積もり、安全率を多めに見て設計します。

航空機の構造部材:離着陸ごとに与圧・減圧を繰り返す機体構造(フレーム、外板)では、き裂進展による破壊が重大事故につながります。信頼性係数$k_c$を非常に高く設定し、万全の安全マージンを持たせた疲労寿命評価が行われます。

風力発電設備のブレード:常に変動する風荷重による疲労が主要な設計課題です。20年以上の運用期間中に10^8〜10^9サイクルに及ぶ極高サイクル疲労を考慮する必要があり、疲労限度以下の設計が強く求められます。

よくある誤解と注意点

まず、「S-N曲線は材料の絶対的な性能表ではない」という点を押さえよう。よく「SUP9のS-N曲線はこれ」と一意に決めている資料を見かけるが、これは試験片という理想的な形状・表面・環境でのデータだ。実際の部品では、先輩が言った修正係数がモノを言う。例えば、同じ応力振幅100MPaでも、鏡面研磨品と切削放り出し品では、寿命が10倍以上違うこともある。ツールで表面仕上げ係数を「粗い切削面」に変えてみると、曲線が大きく下がるのがわかるよね。これが現実だ。

次に、平均応力の影響を見落としがちだ。このツールは「両振り(平均応力0)」が前提だけど、実務では片振り(例えば引張り方向だけの繰り返し)が多い。平均応力が加わると、同じ応力振幅でも疲労寿命は大きく変わる。例えば、平均引張応力がかかっていると、破壊が早まる。この評価には「グッドマン線図」などの別の手法が必要になるから注意してね。

最後に、「無限寿命=永久に壊れない」という過信は禁物。疲労限度以下なら確かに高サイクルでは壊れにくいが、腐食環境があったり、想定外の過大荷重が一度でもかかれば話は別だ。また、10の7乗サイクルを超える「超長寿命領域」で破壊が起きることも最近は知られている。安全率1.5はあくまで設計の出発点。プロトタイプでの実機耐久試験は絶対に省けないステップだ。