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発電・熱機関

廃熱回収ボイラ HRSG シミュレーター

ガスタービンから出る 600°C の排ガスを使って蒸気を作り、もう一段「蒸気タービン発電」を回すのがコンバインドサイクル(CCGT)。このツールでは HRSG の圧力構成・ピンチ点・給水温度を動かすと、回収熱量・蒸気生成量・蒸気タービン出力・CC 合成効率がリアルタイムで分かります。

パラメータ設定
GT 排ガス流量
kg/s
ガスタービン排ガスの質量流量
GT 排ガス温度
°C
HRSG 入口の排ガス温度(最新の H クラスで 640〜660°C)
HRSG 圧力構成
圧力レベル数。多いほど熱回収率は高いがコストも増
HP 蒸気圧
bar
IP 蒸気圧
bar
LP 蒸気圧
bar
給水温度
°C
脱気器を出てエコノマイザに入る給水温度
ピンチ点 ΔT
°C
蒸発器入口における排ガスと蒸気側の最小温度差
計算結果
排ガス温度 (°C)
煙突温度 (°C)
回収熱量 (MW)
蒸気生成量 (kg/s)
ST 出力 (MW)
CC効率 (%)
HRSG 断面図 — エコノマイザ/蒸発器/過熱器

左から GT 排ガスが入り、右の煙突へ抜けます。給水は右下から入り、エコノマイザ(緑)→ 蒸発器(橙)→ 過熱器(赤)の順に加熱され、左上から HP 蒸気として蒸気タービンへ送られます。

T-Q ダイアグラム(排ガス vs 蒸気側プロファイル)
圧力構成の効率比較(単圧 / 2圧 / 3圧再熱)
理論・主要公式

$$Q_{rec} = \dot m_{exh}\,c_p\,(T_{in} - T_{stack}),\qquad \eta_{CC} = \eta_{GT} + (1 - \eta_{GT})\,\eta_{HRSG}\,\eta_{ST}$$

Q_rec:回収熱量(kW)、ṁ_exh:GT 排ガス流量(kg/s)、c_p:排ガス比熱(≈1.05 kJ/kg·K)、T_in / T_stack:HRSG 入口・煙突温度(°C)。η_GT / η_HRSG / η_ST は GT・HRSG・蒸気サイクル各効率で、η_CC が合成(コンバインドサイクル)効率。

$$\dot m_{steam} = \frac{Q_{rec}}{h_{steam} - h_{fw}} \cdot k_{conf},\qquad T_{stack} = T_{fw} + 0.7\,\Delta T_{pinch}$$

蒸気生成量と煙突温度の簡易式。h_steam ≈ 3300 kJ/kg(HP 過熱蒸気エンタルピー)、h_fw ≈ 251 kJ/kg(給水 60°C)、k_conf は圧力構成係数(単圧 1.0/2圧 1.15/3圧再熱 1.25)。

廃熱回収ボイラ (HRSG) — コンバインドサイクル発電

🙋
「コンバインドサイクル」って、最近の発電所でよく聞きますよね。ガスタービンと蒸気タービンを両方使うってことは知ってるんですけど、なんで2段にすると効率が上がるんですか?
🎓
いい質問だ。ガスタービン単体だと、燃焼ガスを 1500°C 級まで上げて回しても、出口の排ガスがまだ 600°C くらいあるんだ。これをそのまま煙突に捨てるとエネルギーの半分以上が逃げる。だから「もったいないから、その排ガスでお湯を沸かして蒸気タービンも回そう」というのがコンバインドサイクル(CCGT)。この「排ガスで蒸気を作る装置」がまさに HRSG(Heat Recovery Steam Generator、廃熱回収ボイラ)だよ。GT 単独で 40%、HRSG+ST を足して 62% まで効率が跳ね上がる。LNG 火力で世界の主流になっている理由がこれだ。
🙋
HRSG の中身ってどうなってるんですか?普通のボイラと何が違うんでしょう?
🎓
普通のボイラは燃料を炊いて炎で水を沸かすけど、HRSG には燃料炎がないんだ。GT 排ガスが横一文字に流れる長いダクトの中に、エコノマイザ(給水加熱)・蒸発器(沸騰)・過熱器(過熱蒸気化)の3段のフィンチューブを並べて、排ガスからじわじわ熱を奪う仕組み。左のパラメータで「HRSG 圧力構成」を切り替えてみて。単圧だと HP(高圧)レベル1つだけだけど、2圧にすると HP と LP(低圧)の2系統、3圧再熱だと HP・IP・LP の3系統+IP 蒸気の再熱まで入る。圧力レベルを増やすほど排ガスから熱を絞り取れるから、回収効率が 80%→88%→93% と上がっていくんだ。
🙋
じゃあ全部「3圧再熱」にすれば一番得じゃないですか?なのに単圧の発電所もあるのはなぜ?
🎓
完全にコスト勝負だね。3圧再熱は系統が3倍に増えるからボイラ・配管・バルブ・蒸気タービンの段数が大幅に増える。建設費は1.5倍くらいになる。だから出力が小さい工場用コージェネ(60MW 以下)は単圧、中型(100〜200MW)は2圧、大型 LNG 火力(300MW 超)は3圧再熱、と棲み分けてるんだ。年間運転時間が長くて燃料費を回収できる大型案件ほど、初期投資をかけて高効率にする価値がある。
🙋
「ピンチ点」っていうパラメータがあるんですが、これは何ですか?小さくすると効率が上がるみたいですけど…
🎓
ピンチ点は HRSG 設計の主役と言っていい概念だよ。蒸発器の入口で、排ガス温度と蒸気側温度の差が一番小さくなる地点なんだ。この ΔT を 10°C から 5°C に縮めると、もっと多くの熱を回収できて煙突温度も下がる。でも、温度差が小さいほど熱を移すのに必要な伝熱面積が爆発的に増える——簡単に言うと、5°C 差にしたいなら 10°C の倍以上のフィンチューブ面積が要る。だから ΔT=8〜12°C が経済最適。本ツールのデフォルト 10°C はこの典型値だ。グラフの T-Q ダイアグラムでピンチ点をぐっと縮めると、排ガス線と蒸気線がほぼ平行になって、伝熱が「ぎゅっと詰まる」感じが見えるよ。
🙋
なるほど、面積とのトレードオフなんですね。最後に、最新の発電所だと CC 効率はどこまで上がってるんですか?
🎓
2020 年代に入って Mitsubishi Heavy Industries の M501JAC、GE H クラス、Siemens HL クラスといった最新機が出てきて、CC 効率 64% 超を達成している。これは GT 入口温度を 1650°C まで上げて、排ガスも 660°C 級にして、3圧再熱 HRSG で目一杯熱を回収して、というフル装備の組み合わせだね。65% を超えるのは熱力学的にもなかなか難しい領域で、ここから先は補助システム(脱気器の熱、復水器の真空度)まで含めた最適化勝負になる。本ツールで GT 排ガス温度 660°C・3圧再熱・ピンチ 8°C と設定してみて——おそらく 63〜64% が出るはずだ。それが現代 CCGT の最先端だよ。

よくある質問

HRSG(Heat Recovery Steam Generator、廃熱回収ボイラ)は、ガスタービン(GT)から出る 500〜700°C の高温排ガスを熱源として、蒸気タービン(ST)を駆動する蒸気を作るボイラです。GT 単独では 35〜42% の効率しかない発電を、HRSG を介してボトミングサイクル(蒸気サイクル)と組み合わせることで、コンバインドサイクル発電(CCGT)として 55〜62%、最新の H/HL クラスでは 64% 以上まで効率を引き上げます。内部はエコノマイザ(給水加熱)・蒸発器・過熱器の3段構成で、圧力レベルを単圧・2圧・3圧再熱と増やすほど排ガスからの熱回収率が高まります。
単圧(Single-Pressure)は HP(高圧)レベルだけで蒸気を作る最もシンプルな構成で、煙突温度が高く残り、回収効率は 80% 前後。2圧(Dual-Pressure)は HP と LP(低圧)の2レベルで、煙突温度を下げて回収効率 88〜92% に高めます。3圧再熱(Triple-Pressure with Reheat)は HP・IP・LP の3レベル+IP 蒸気の再熱で、最も高効率(93〜95%)ですが伝熱面積と機器点数が増えコスト高。一般に GT 出力 60MW 以下は単圧、100〜200MW 級は2圧、300MW 超の最新大型 CCGT は3圧再熱が標準です。
ピンチ点は HRSG 内の蒸発器入口で、GT 排ガス温度と蒸気側温度の差が最小になる点です。これは熱交換器の経済性を決める最重要パラメータで、ΔT を小さくする(5°C 等)ほど多くの熱を回収できますが、必要な伝熱面積が ΔT に反比例して急増し、コストも比例して上がります。逆に ΔT を大きくする(20°C 等)と煙突温度が上がり熱が捨てられます。実機ではΔT=8〜12°C が経済最適で、本ツールのデフォルト 10°C はこの典型値です。LNG 価格や運転時間が長い案件では小さく、ピーク用途では大きく設定する傾向があります。
合成効率は η_CC = η_GT + (1 − η_GT)·η_HRSG·η_ST で表されます。η_GT は GT 単体効率(最新機で 40〜42%)、η_HRSG は排ガス熱の蒸気側回収率(80〜95%)、η_ST は蒸気サイクル効率(35〜45%)です。例えば η_GT=0.40、η_HRSG=0.88、η_ST=0.42 なら η_CC = 0.40 + 0.60·0.88·0.42 ≈ 0.62(62%)。GT 効率が高くなるほど HRSG に入る排ガス温度が下がり η_HRSG・η_ST 側で回収できる余地が減るため、最新の超高温 GT(1600°C 級)では HRSG 設計の最適化がより重要になります。

実世界での応用

大規模 LNG 火力発電所:日本の電力会社が運用する 1000〜1500MW 級の最新 LNG 火力では、GT+HRSG+ST の組み合わせを 1〜3 系列束ねた構成が主流です。Mitsubishi Heavy Industries の M501JAC、GE の 9HA.02、Siemens の SGT5-9000HL を採用したプラントでは、3圧再熱 HRSG により合成効率 64% 以上を達成しています。東電・JERA の川崎火力 2 号系列(1500MW、効率 61%)、関電の姫路第二発電所(2919MW、効率 60%)などが代表例です。

産業用コージェネレーション:製鉄所・化学プラント・製紙工場などでは、自家発電と工場の蒸気需要を同時に賄うコージェネ用途で中小型 HRSG が広く使われています。出力 10〜60MW 級の小型 GT に単圧 HRSG を組み合わせ、発電 + プロセス蒸気を取り出すことで総合熱効率 80% 超を達成します。HRSG の蒸気圧をプロセス側の要求に合わせて設計するのが特徴で、純発電用とは最適点が異なります。

洋上石油・天然ガスプラットフォーム:北海や中東の海上プラットフォームでは、空間制約からコンパクトな水平型 HRSG(縦型より背が低い)が採用されます。排出ガスの再利用で電力と注水用蒸気を同時供給し、設置面積を最小化しつつ操業効率を高めます。海上では塩害対策のためチューブ材質に高耐食合金(SUS316L、Incoloy 825)が選ばれます。

調整火力・ピーク電源:再エネ(太陽光・風力)の変動を吸収する役割の調整電源としても CCGT は重要です。HRSG は通常のドラム式に比べて起動時間が短い貫流式(OTSG: Once-Through Steam Generator)が選ばれ、コールドスタートから 30 分以内にフル負荷に到達できます。米国 PJM 市場や欧州の電力市場では、この高速起動性能と高効率を両立する CCGT が需給調整の主役になっています。

よくある誤解と注意点

まず多いのが、「ピンチ点 ΔT を小さくすればするほど良い」という誤解です。確かに ΔT を 10°C から 5°C に縮めれば回収熱量は数 % 増えますが、その熱を移すのに必要な伝熱面積は ΔT に反比例して急増します——5°C 設計のフィンチューブ面積は 10°C 設計の倍以上、コストも比例して跳ね上がります。さらに小 ΔT 設計は部分負荷時の流動不安定や蒸発器のオーバーシュートを起こしやすく、運転バランスがシビアになります。LNG 価格と運転時間から経済評価して、ΔT=8〜12°C のレンジで最適化するのが実務の定石です。本ツールでも ΔT を 5°C と 20°C で比較してみると、回収熱量の差以上にエネルギー回収の限界を実感できるはずです。

次に、「煙突温度はいくらでも下げられる」という思い込み。HRSG 出口(煙突)の排ガス温度を給水温度近くまで下げれば理論的には熱回収率 100% ですが、現実には限界があります。LNG を燃焼させた排ガス中の水蒸気が露点(約 50°C 前後)以下に冷えると凝縮し、燃料中の微量硫黄分と反応して低温腐食(硫酸露点腐食)を起こすため、煙突温度は通常 90〜120°C 以上に保ちます。本ツールの計算式 T_stack = T_fw + 0.7·ΔT_pinch は経験式で、実機ではこの最低温度制約も考慮します。給水温度が 60°C、ΔT=10°C なら煙突温度 67°C となり、実機では追加の余裕を見て 100°C 以上に設定するのが安全側です。

最後に、「GT 効率が上がれば CCGT 効率も同じだけ上がる」という誤解。式 η_CC = η_GT + (1 − η_GT)·η_HRSG·η_ST を見ると分かりますが、η_GT が大きくなると (1 − η_GT) が小さくなり、HRSG+ST 側で回収できる熱の絶対量が減ります。GT 単独効率を 40% → 42% に上げると、CC 効率は 62.2% → 63.0% へ 0.8% しか上がりません。さらに高効率 GT は排ガス温度がやや低く(600°C → 580°C)、HRSG の蒸気条件も控えめになるため、η_ST 側にも逆風が吹きます。最先端の H/HL クラスで CC 効率 64% 超を達成しているのは、GT・HRSG・ST のすべてを最適に組み合わせた成果であり、GT だけ最新型にしても CCGT 全体の効率は思ったほど上がらないのが現実です。

使い方ガイド

  1. ガスタービン排ガスの質量流量(kg/s)と入口温度(°C)を入力します。一般的なガスタービンは排ガス流量300~600kg/s、温度500~600°Cです
  2. 高圧蒸気と中圧蒸気の設計圧力(bar)を指定します。単圧運転は高圧のみ、2圧再熱は高圧と中圧の組合せです
  3. 給水温度とピンチ点温度差ΔTを設定して「計算」ボタンを押します。煙突温度(通常80~120°C)が表示され、回収熱量・蒸気生成量・ST出力・CC効率が自動算出されます

具体的な計算例

排ガス流量500kg/s、入口温度580°C、高圧70bar、中圧12bar、給水温度210°C、ピンチ点ΔT15°Cの場合:煙突温度95°C、高圧蒸気生成量95kg/s、回収熱量165MW、蒸気タービン出力52MW、コンバインドサイクル効率58.5%となります。この構成は500MW級ガスタービン発電所の標準的なHRSG設計です

実務での注意点