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自動運転・センサー

LiDAR Time-of-Flight 距離分解能シミュレーター

自動運転車・地理測量・ロボティクスで使われる Time-of-Flight (TOF) LiDAR の設計ツールです。レーザーパワー、パルス幅、受信帯域、波長、ターゲット反射率を変えると、距離分解能・SNR・受信電力・距離精度・最大非曖昧距離がリアルタイムで分かります。

パラメータ設定
LiDAR タイプ
Flash 型のみ 40 fps、他は 10 fps を仮定
波長
1550 nm は eye-safe (Class 1) で高出力可
レーザーパワー
mW
パルス幅 τ
ns
受信帯域
MHz
目標距離 R
m
ターゲット反射率 ρ
%
黒い車体: 5-10%、コンクリート: 30%、白標識: 80%
環境光(背景光)
lux
夜間: 0、夕方: 1000、晴天昼間: 100000
計算結果
距離分解能 (m)
受信電力 (μW)
SNR (dB)
距離精度 (cm)
最大非曖昧距離 / fps
横方向分解能@target (cm)
50 klx
Ambient
Mechanical
Scan mode
LiDAR ビジュアル — パルス・反射・3D点群

LiDAR ユニットから発射されたレーザーパルスがターゲットで反射し、TOF から距離を測定します。下部は周囲の3D 点群イメージです。

受信電力 vs 距離(1/R² 減衰)
LiDAR タイプ別仕様比較
理論・主要公式

$$d = \frac{c\tau}{2},\quad \delta d = \frac{c\tau_{pulse}}{2\sqrt{SNR}},\quad P_{rec} = \frac{P_{tx}\rho A_{rec}}{\pi R^2}$$

d=距離、τ=TOF、δd=距離精度、R=range、ρ=反射率、A=受信面積。

LiDAR Time-of-Flight 距離分解能 — 自動運転センサー設計

🙋
先生、LiDAR ってカメラやレーダーと何が違うんですか?自動運転車の屋根に乗ってるクルクル回ってるアレですよね?
🎓
そう、あの Velodyne や Ouster の機械回転式が一番有名だね。LiDAR (Light Detection And Ranging) は短いレーザーパルスを発射して、ターゲットから戻ってくるまでの時間 (Time-of-Flight, TOF) を測って距離を出すセンサーなんだ。式は単純で d = c·τ/2、光速 × 飛行時間 ÷ 2。1メートルの距離なら往復で約 6.67 ns、100m なら 667 ns。カメラは色と模様、レーダーは速度に強い、LiDAR は「3D 形状」と「絶対距離精度」が強い、と覚えておくといいよ。
🙋
距離分解能 0.75 m って、デフォルトで出てきたんですけど…自動運転車って 75 cm 単位でしか物体を測れないんですか?それじゃ歩行者と看板の区別がつかなさそう…
🎓
良い疑問!「距離分解能」δd = c·τ/2 は実は「2 つの物体が連続して写ったとき、別物として分解できる最小間隔」のこと。歩行者の前後にもう1つ物体があったとき、それが 75 cm 以内だと1つにマージされちゃう、という話なんだ。一方、単独物体の「距離精度(測距精度)」は δd / √SNR でグッと良くなる。SNR=100 (20dB) あれば 7.5 cm、SNR=1000 で 2.4 cm。だから実機では「分解能 50cm でも精度 2cm」みたいな仕様になる。Cramer-Rao bound という統計理論の下限値だよ。
🙋
なるほど!じゃあ SNR を上げればいいんですね。受信電力を見ると 0.001μW ってありますけど、これって 50mW のレーザー出してるのに戻りはこんなに小さいんですか?
🎓
そう、ここが LiDAR 設計の一番厳しい所。Lidar equation で P_rec = P_tx·ρ·A_rec / (π·R²) になる。50mW 出しても 100m 先で反射率 30%、5cm 口径の受光だと、戻りは 10 のマイナス9乗 W = 1nW 級。1/R² で減衰するから 200m なら 1/4、300m なら 1/9 に落ちる。だから車載 LiDAR は (1) 何百〜千パルスを averaging して √N 倍 SNR を稼ぐ、(2) coherent detection (FMCW) でショットノイズ限界を破る、(3) Gated detection で背景光を抑える、という3つの技で戦ってるんだ。
🙋
波長セレクトに 905nm と 1550nm がありますが、これは何が違うんですか?1550nm を eye-safe って書いてあるけど、905nm は危ないってこと?
🎓
905nm でも合法範囲のクラス1 が原則だけど、出力上限が厳しい。1550nm は人眼の角膜・水晶体で吸収されて網膜に届かないから、同じクラス1 でも 10〜50 倍の高出力が許される。だから Luminar や Aeva の長距離 LiDAR (>250m) は 1550nm InGaAs ベース。一方 905nm は Si APD/SPAD が安いから車載量産の主流で、Velodyne・Hesai・Innoviz の多くがこっち。デメリットは 1550nm が SWIR バンドで水蒸気吸収帯に近く、霧・雨で減衰が大きいことがある点。
🙋
Tesla がカメラオンリーにしたって有名な話を聞きました。LiDAR って本当に必要なんですか?
🎓
業界が完全に二分してるところだね。Tesla は 2021年以降 LiDAR・レーダーを順次廃止、視覚 + NN ベースで FSD を構築する哲学。Waymo・Cruise・Mobileye・Zoox は LiDAR 必須派で、夜間・低コントラスト・小物体での冗長性で安全率を稼ぐ立場。最近のトレンドは FMCW LiDAR (Aurora, Aeva) で、ToF と違ってドップラー速度を同時取得できる。1フレームで「相手車両は右に 30m 先、しかも 50km/h で接近中」と分かるのが強み。コストは 905nm ToF より高いけど、L4 自動運転で本命視されつつあるよ。

よくある質問

TOF 方式 LiDAR の距離分解能は δd = c·τ/2 で決まります。τ がパルス幅、c が光速 2.998×10^8 m/s です。例えば 5 ns パルスなら δd = 0.75 m、1 ns で 15 cm、0.1 ns(サブナノ秒)まで短くすれば 1.5 cm 級になります。実用的な APD 受信機の応答時間と回路帯域で詰まるため、905 nm 級ではおおむね 1〜10 ns、最先端の SPAD アレイで 100 ps オーダーが実現範囲です。
本ツールでは Lambert 反射ターゲットを仮定した簡易 lidar equation P_rec = P_tx·ρ·A_rec / (π·R²) を使っています。ρ は反射率、A_rec はレシーバ口径面積、R は距離です。R の2乗で減衰する点が最大の特徴で、距離を2倍にすると受信電力は1/4になります。系統的な大気減衰係数 exp(-2αR) や受信光学系の透過率は省略しているため、霧・雨など悪天候や 200 m 超の長距離評価では実機の半分以下になるのが普通です。
905 nm は Si APD/SPAD が安価で量産しやすく、低コスト車載 LiDAR (Velodyne, Hesai, Innoviz の多く) で主流です。一方 1550 nm は InGaAs 受光素子を必要としコスト増ですが、人眼の角膜・水晶体で吸収されて網膜に届かないためクラス1 eye-safe 制限内で 10〜50 倍の高出力が許容され、長距離 (>200m) と悪天候耐性で有利。Luminar・Aeva など長距離プレミアム LiDAR が採用。SWIR 帯のため水蒸気吸収帯近傍にあり、霧・雨での減衰は 905 nm より大きい場合もあります。
Tesla は 2021 年以降 LiDAR とミリ波レーダーを段階的に廃止し、視覚(カメラ)と NN による奥行き推定で AP/FSD を構築する戦略を採っています。理由は (1) LiDAR の BOM コスト、(2) センサー融合 SW の複雑化、(3) 「人間が目だけで運転できるなら AI も同じはず」というイーロン・マスクの哲学。一方 Waymo・Cruise・Mobileye・Zoox は LiDAR を必須としており、特に夜間・低コントラスト・小物体検出での冗長性で安全率を稼ぐ立場です。FMCW LiDAR (Aurora, Aeva) は ToF と異なりドップラー速度を同時取得でき、相手車両の速度ベクトルを 1 フレームで読めるのが利点です。

実世界での応用

自動運転車・ADAS:Waymo Driver の屋根 Honeycomb LiDAR、Velodyne Alpha Puck、Hesai AT128、Luminar Iris など、L4 robotaxi から L2+ 量産車まで採用が広がる中核センサー。一般的な要求は 200m での 10% 反射率検出、距離精度 ±5cm、角度分解能 0.1°。本ツールのデフォルト 100m 30% でも SNR 4 dB は実機としては厳しい数値で、実機では averaging とコヒーレント検出で 20 dB 以上を稼いでいます。

地理測量・国土測量:航空機・ドローン搭載 LiDAR (RIEGL, Leica) は GIS・地形図作成・森林管理で標準ツール。地上ベースの terrestrial LiDAR (Faro, Leica BLK360) は建築 3D スキャン・BIM 作成で活用。これらは静止または低速ターゲットなので長時間 averaging が可能で、サブ cm 精度・10 m〜数 km 範囲が普通です。

農業・林業 robotic:John Deere・Naïo Technologies など、ロボトラクター・除草ロボットの作物認識で使用。低コスト 905 nm ソリッドステート LiDAR を採用し、列間走行と作物 vs 雑草の識別を行います。SLAM (Simultaneous Localization and Mapping) のセンサーとしても標準。

気象観測 LiDAR:Mie 散乱を利用したエアロゾル LiDAR、ドップラー風 LiDAR (NOAA, JMA) で大気成分・雲底高度・PM2.5 分布・上空風速を測定。本ツールの ToF 距離測定原理は同じですが、ターゲットが点ではなく散乱体積になり、距離分解能はゲート幅で決まる点が異なります。

よくある誤解と注意点

第一の落とし穴が、「距離分解能 = 距離精度」と混同すること。本ツールが出す δd = c·τ/2 = 75 cm(パルス 5 ns)は「2つの物体を分離できる最小間隔」で、単独物体の測距精度はこれよりはるかに良い δd/√SNR となります。デフォルト条件で精度 45 cm と出ているのは SNR が 4 dB と低いから。実機ではパルス averaging で SNR を 30 dB(1000倍)稼げば、同じパルス幅で精度 2.4 cm まで到達可能。「分解能 75cm のセンサーで歩行者の脚と胴が見えないのか?」という質問に対しては「YES、ただし1人の歩行者の重心位置は cm 単位で分かる」が正解です。

第二に、「Lidar equation を直線的に外挿してしまう」こと。本ツールの簡易式 P_rec = P_tx·ρ·A/(π·R²) は (1) Lambert 拡散反射、(2) 大気減衰ゼロ、(3) 光学系透過率 100% を仮定しています。実機では (a) 鏡面反射体(バンパー、ガラス)で受信ゼロになるか飽和、(b) 霧・雨・雪で 10-30 dB の追加減衰、(c) 受光光学系で 30-50% の損失。設計時はこの式を 6-10 dB のマージン込みで使い、実機評価で校正してください。Class 1 eye-safe 制限を超えないことも必須です。

第三に、「角度分解能を忘れて距離分解能だけ議論する」こと。本ツールには角度分解能を典型値 0.5 mrad と固定していますが、これは横方向(spatial)の分解能を決める死活的パラメータです。100m 先では 0.5 mrad = 5 cm 幅、200m 先では 10 cm 幅となり、これより小さい物体(歩行者の腕、自転車のフレーム)は単一点として検出されます。Velodyne Puck の 32 ライン・水平 0.2° は 200m 先で歩行者 1人あたり 4-5 点しか当たらず、認識アルゴリズムの工夫が必要。Luminar Iris のような可変解像度型は、関心領域だけ 0.05° に密集させる戦略を取ります。

使い方ガイド

  1. レーザーパワー(mW)を設定します。自動運転向けは50~100mW、測量用途は5~20mWが標準です
  2. パルス幅(ns)を入力します。狭いほど距離分解能が向上しますが、ノイズ耐性が低下します(典型値:2~10ns)
  3. 受信機帯域幅(MHz)とターゲット距離(m)を設定し、「シミュレーション実行」ボタンで距離精度・SNR・最大非曖昧距離をリアルタイム計算します

具体的な計算例

905nm波長、レーザーパワー100mW、パルス幅3ns、受信帯域幅100MHz、ターゲット距離50mの設定では、距離分解能は約0.45mとなります。このとき受信電力は約0.8μWで、SNR値は18dB程度が期待でき、距離精度は±8cm以内に収まります。最大非曖昧距離は約150mで、スキャンレート10fpsで自動車のLiDAR用途に適します。横方向分解能@50mは約15cm(視野角0.17度想定)です

実務での注意点

  1. 夜間走行・雨天時は環境光が少なくなるため、SNRが10dB以上確保できるレーザーパワーを選択してください
  2. パルス幅を1ns以下にするとマルチパスエラー(建物反射など)が顕著になり、測量精度が±5cm以内必須な場合は避けてください
  3. 受信帯域幅を250MHz以上に設定すると電子ノイズが増加し、SNRが3~5dB低下する傾向があります
  4. 最大測定距離200m以上が必要な場合、レーザーパワー150mW以上の高出力タイプを検討してください