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原子力工学

核燃料燃焼度 Burnup シミュレーター

原子炉燃料(UO₂)の燃焼度・U-235 消費率・Pu 生成量・核分裂生成物の蓄積量・サイクル末期反応度をリアルタイム計算します。濃縮度・熱出力・運転日数・炉型を変えて、燃料サイクル設計の初期検討ができるツールです。

パラメータ設定
U-235 濃縮度
%
天然ウラン 0.7%、PWR燃料 3-5%、研究炉 20% 未満
燃料質量(UO₂換算)
kg
PWR炉心装荷量の典型値 80-100 t
熱出力
MW
電気出力÷熱効率(33%)。1000 MWe ≈ 3000 MWth
目標燃焼度
GWd/MTU
通常 PWR 40-50、高燃焼度 55-65
全出力運転日
day
PWR の 1 サイクル 約 540 日(18 か月運転)
炉型
中性子スペクトル・転換比に影響
計算結果
達成燃焼度 (GWd/MTU)
U-235 消費率 (%)
Pu 生成量 (kg)
核分裂生成物 (kg)
反応度損失 (pcm)
サイクル末期余裕 (pcm)
燃料集合体格子 — 燃焼度マップ

燃料棒の色は局所燃焼度(緑=新燃料、黄=中間、赤=高燃焼度)。白点は核分裂イベント、紫点は U-238 → Pu-239 転換を表します。

反応度 ρ vs 燃焼度(サイクル経過)
質量バランス — U-235・Pu・核分裂生成物
理論・主要公式

$$BU = \frac{P_{th}\,\cdot\,t_{full}}{M_{HM}},\qquad \rho_{EOC} = \rho_{BOC} - \alpha_{BU}\,\cdot\,BU$$

BU:燃焼度 (MWd/MTU)、P_th:熱出力 (MW)、t_full:全出力日数 (day)、M_HM:重金属質量 (MTU)。ρ:反応度 (pcm)、α_BU:燃焼度反応度係数(LWRで約 200 pcm/GWd)。

$$N_{fission} = \frac{BU \cdot 86400}{E_{fission}},\qquad E_{fission} \approx 200\,\mathrm{MeV} = 3.2\times10^{-11}\,\mathrm{J}$$

1 回の核分裂は約 200 MeV のエネルギーを放出するため、燃焼度から累積核分裂数 N_fission を逆算できる。これに 0.85 を掛けて U-235 消費数とする(残り 15% は中性子捕獲)。

$$m_{Pu} \approx C_{R}\,\cdot\,M_{HM}\,\cdot\,BU,\qquad m_{FP} \approx 1.05\,\mathrm{g/MWd}\,\cdot\,BU\,\cdot\,M_{HM}$$

Pu 生成量は転換係数 C_R(LWRで約 0.4 g/MWd)と燃焼度に比例。核分裂生成物は 1 MWd あたり約 1.05 g 蓄積する(質量保存則:核分裂したウラン質量がほぼそのまま FP 質量となる)。

核燃料の燃焼度 (Burnup) と核分裂生成物蓄積

🙋
原子炉の「燃焼度」って言葉、よく聞きますけど、火力発電みたいに燃料が燃えるわけじゃないですよね?何を「燃やしている」んですか?
🎓
いい質問だね。核燃料の場合、「燃える」のは化学的な燃焼じゃなくて、U-235 が中性子で核分裂を起こすことを指すんだ。1 回の核分裂で約 200 MeV——つまり化学反応の数百万倍のエネルギーが出る。燃焼度 (Burnup) は「燃料 1 トンからどれだけエネルギーを取り出したか」を表す指標で、単位は GWd/MTU。例えば PWR 燃料を 1 GWd/MTU 燃やすと、燃料 1 トンから 1 ギガワット・1 日分のエネルギー=86,400 GJ が出てくる勘定だよ。
🙋
なるほど。じゃあ燃焼度を上げ続けたら、燃料を交換しなくていいんですか?左の「目標燃焼度」を80にしてみても、なんか「サイクル末期余裕」が小さくなっていくんですが…。
🎓
そこが燃料サイクル設計の核心なんだ。燃焼度を上げると、まず U-235 がどんどん減る(消費される)。それから核分裂生成物——特に Xe-135 や Sm-149——が「中性子毒」として中性子を吸ってしまい、連鎖反応を弱める。さらに反応度も GWd あたり約 200 pcm くらい単調に下がる。だから「初期反応度」と「燃焼に伴う反応度損失」のバランスが取れなくなった時点で、もう臨界を維持できなくなる。これが「サイクル末期」、燃料を取り出すタイミングだよ。
🙋
じゃあ濃縮度を上げて U-235 をたくさん入れておけば、長く燃やせるんですか?
🎓
その通り。商用 LWR が 3-5% の濃縮度を使っているのは、ちょうど 18 か月 (540 日) 程度の連続運転で 45 GWd/MTU を達成する設計だからなんだ。近年は経済性向上のため「高燃焼度化」が進んでいて、55-65 GWd/MTU 級では濃縮度を 5% 近くまで上げる。さらに先進的な「ATF (Accident Tolerant Fuel)」では 6-8% を視野に入れている。ただし NRC 規制で民生用は 5% 未満が一般的で、それ以上は SMR や研究炉の領域だね。
🙋
Pu の生成量も結構出てくるんですね…これは廃棄物として捨てるんですか?それとも再利用?
🎓
これも興味深い話で、Pu-239 自体が核分裂性なので、燃料寿命の後半は出力の 30-40% を Pu-239 が支える。だから「U-238 が中性子捕獲で Pu-239 になり、それがまた核分裂する」というプロセスが LWR でも常時起きているんだ。使用済み燃料の Pu を取り出して MOX 燃料として再利用するのが「ワンススルー再処理」、それを増殖炉でさらに増やすのが「クローズドサイクル」。日本の高速増殖炉「もんじゅ」やフランスの Phénix・Superphénix は後者を目指したものだよ。一方、米国は再処理コストの問題から直接処分(ワンススルー)を選んでいる。
🙋
核分裂生成物が GWd あたり 1 g くらい出るって、結構な量ですよね。具体的にどんな問題があるんですか?
🎓
3 つあるよ。1 つ目は「反応度毒」——前述の Xe-135 は半減期 9.2 時間で、停止後に蓄積して再起動を妨げる「キセノンオーバーライド」を引き起こす。2 つ目は「崩壊熱」——核分裂が止まっても FP の崩壊で発熱が続き、福島事故ではこれが冷却失敗で炉心溶融を招いた。3 つ目は「長寿命核種」——Cs-137 (30 年)、Sr-90 (28 年)、Tc-99 (21 万年)、I-129 (1570 万年) などは数百〜数百万年の管理が必要。これら全てを統合的に扱うのが「核燃料サイクル工学」の世界で、UQ (不確かさ定量化) や PRA (確率論的リスク評価) の中心テーマでもあるんだ。

よくある質問

燃焼度は燃料 1 メトリックトン(MTU、Metric Ton of Uranium)あたりに取り出した熱エネルギー量で、単位は MWd/MTU または GWd/MTU を用います。例えば PWR の燃料を 540 日間 3000 MW で運転した場合、ウラン 90 トンに対して 1.62×10⁶ MWd ÷ 90 = 18,000 MWd/MTU = 18 GWd/MTU となります。標準 PWR の取出燃焼度は 40-50 GWd/MTU、近年は高燃焼度化で 55-65 GWd/MTU まで延長されています。
燃焼度に応じて U-235 が消費されます。1 回の核分裂で 200 MeV のエネルギーが放出されるため、燃焼度から累積核分裂数を逆算できます。本ツールでは U-235 反応のうち約 85% が核分裂、残り 15% が捕獲(U-236 生成)と仮定します。濃縮度 4.5% で 18 GWd/MTU の場合、U-235 の約 36% が消費されます。45 GWd/MTU 級の高燃焼度では U-235 の 80% 超が消費され、燃料寿命末期では生成された Pu-239 が出力の 30-40% を支えるようになります。
U-238 が熱中性子を捕獲して U-239 となり、2 段階の β 崩壊(U-239 → Np-239 → Pu-239、半減期それぞれ 23 分・2.4 日)で Pu-239 に変換されます。これを「転換」と呼びます。LWR の典型的な生成率は約 0.4 g Pu/MWd で、PWR で 18 GWd/MTU、90 トン燃料の場合 約 648 kg の Pu が蓄積します。FBR ではブランケットを含めて転換比 > 1(増殖)が達成可能で、Pu-239 を燃やしながら同時に増やせるのが特徴です。生成された Pu は再処理(PUREX 法)で回収し、MOX 燃料として再利用できます。
主因は3つです。(1) U-235 の燃焼による核分裂性核種の減少、(2) Xe-135・Sm-149 などの中性子毒となる核分裂生成物の蓄積、(3) アクチニド系列の組成変化。本ツールは GWd 当たり約 200 pcm の反応度損失を仮定し、サイクル初期反応度(BOC)から差し引いた末期反応度(EOC)を表示します。EOC が負になると未臨界となり運転継続不可です。実際の PWR ではホウ酸(可溶性毒物)の濃度を運転と共に下げて反応度損失を補償し、サイクル末期にホウ酸 0 ppm 近くに達したらリフューエリングします。

実世界での応用

商用原子炉の燃料サイクル設計:世界の PWR・BWR では「3 バッチローディング」が一般的で、毎回炉心の 1/3 を新燃料に交換し、残り 2/3 を再配置(シャッフリング)します。1 サイクル 18 か月で 1 体あたり 15 GWd/MTU、3 サイクルで合計 45 GWd/MTU を達成する設計です。新燃料の濃縮度は 4.0-4.95% に分布させ、漏れ中性子と燃焼度のバランスを最適化します。本ツールは 1 体相当の燃焼度を初期検討する目的で使えます。

SMR・先進炉の評価:NuScale・BWRX-300 等の SMR は燃料サイクルを 24-60 か月に延長することで保守コストを削減します。Natrium・XE-100 等の高速炉・高温ガス炉では 100 GWd/MTU 超の超高燃焼度を狙い、廃棄物体積を 1/10 以下にする戦略です。本ツールで濃縮度・運転日数を変えて感度を見ると、これら先進炉が目指す設計領域がイメージできます。

使用済み燃料管理・再処理:燃焼度は使用済み燃料の発熱量・線量・臨界安全性を決める基本指標です。乾式キャスク貯蔵では燃焼度ごとに崩壊熱を計算してキャスク仕様(ボロン含有量・冷却孔配置)を決定し、PUREX 再処理工場では Pu・U の回収量を燃焼度から見積もります。本ツールの Pu 生成量・FP 量は、再処理プロセス設計の概略検討に対応します。

規制・安全評価とUQ:NRC・原子力規制委員会への申請では、燃焼度ごとの反応度・崩壊熱・放射性核種インベントリを SCALE/ORIGEN や Serpent 等のコードで詳細評価します。本ツールのような簡易計算は、これら詳細解析の妥当性確認(V&V)や、UQ における入力パラメータ感度の事前検討に有効です。実炉のフルコア解析を回す前に、まず単純化モデルで桁オーダーを掴むのが実務の鉄則です。

よくある誤解と注意点

まず最大の誤解が、「燃焼度=燃料寿命」と単純化することです。燃焼度は熱エネルギー積算量であって、燃料寿命は反応度(臨界維持能力)・被覆管健全性・FP ガス内圧・PCI (Pellet-Cladding Interaction) 等の複合制約で決まります。例えば反応度的にはまだ運転可能でも、被覆管の腐食・水素吸収量が許容限度に達したらサイクル末期です。米国の高燃焼度規制は最高燃焼度 62 GWd/MTU(被覆管制約)で頭打ちでしたが、ATF (Accident Tolerant Fuel) で 75 GWd/MTU 超を目指しています。本ツールは熱エネルギー側の指標のみを扱うため、被覆管・FP ガス挙動は別途検討が必要です。

次に、「Pu 生成量=核拡散リスク」と直結させる誤解。LWR で生成される Pu はアイソトープ組成が複雑で、Pu-239 比は約 60%、残りは Pu-240・Pu-241・Pu-242。Pu-240 が 7% 超含まれると「リアクター・グレード Pu」と呼ばれ、兵器転用には不適と国際的に評価されています。一方、低燃焼度(< 5 GWd/MTU)で取り出した Pu は Pu-239 比 > 93% の「ウェポンズ・グレード」になり得るため、IAEA 保障措置は燃焼度履歴を厳しく監視します。本ツールの Pu 生成量は同位体組成までは計算しないため、核拡散評価には ORIGEN 等の詳細コードが必要です。

最後に、「反応度損失 200 pcm/GWd は普遍的」という思い込み。この係数は LWR の代表値であり、炉型・濃縮度・可燃性毒物(ガドリニア・ボロン)の有無で大きく変動します。Gd₂O₃ 入り燃料では初期反応度を意図的に下げて燃焼初期にホウ酸を温存する設計があり、見かけの反応度損失曲線が逆 U 字を描きます。RBMK のようなグラファイト減速炉では正の温度係数(ボイド係数正)と組み合わさってチェルノブイリ事故の遠因にもなりました。本ツールの単純な線形モデルは概略把握用と割り切り、本格設計では時間依存の燃焼計算が必須です。

使い方ガイド

  1. 濃縮度(3~5 wt%)、初期装荷量(MTU)、熱出力(MW)を入力欄に設定します
  2. 目標燃焼度(20~60 GWd/MTU)を指定し、シミュレーション実行ボタンを押下します
  3. U-235消費率、Pu生成量、核分裂生成物蓄積、反応度損失の遷移曲線がリアルタイム表示されます
  4. サイクル末期の余裕反応度がBOR値と比較され、燃料交換時期の判定が可能になります

具体的な計算例

PWR(300 MW熱出力)に濃縮度4.2 wt%、装荷量100 MTUの燃料を投入した場合、燃焼度45 GWd/MTUまで運用すると想定します。本シミュレーターは、U-235消費率92%、Pu生成量950 kg、核分裂生成物蓄積1,200 kg、反応度損失4,500 pcmを計算し、サイクル末期の余裕反応度が制御棒価値(4,800 pcm)を下回る3,800 pcmと判定。ホウ素濃度調整に基づく再評価が必要と推奨します。

実務での注意点