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省エネ住宅・気密性能

パッシブハウス 気密 n50 Blower Door シミュレーター

Passivhaus(パッシブハウス)の必須要件である n50 ≤ 0.6 を、Blower Door 試験の Q50(50Pa 漏気流量)から実時間計算するツールです。建物容積・外皮面積・断熱性能・換気率を変えて、等価漏気面積 ELA・浸入熱損失・年間暖房需要を可視化し、PH/EnerPHit/LEED/BELS の各規格に対する適合を判定します。

パラメータ設定
気密性能の規格
判定対象の n50 上限を決定
気候帯
解説向けラベル。物理量は外気温で評価
建物容積 V
外皮面積 A_env
外壁・屋根・床・窓を合算した外気接触面積
Blower Door Q50
m³/h
室内外差圧 50 Pa における漏気総流量
機械換気率
ach
HRV/ERV による設計換気回数
平均 U 値
W/m²K
外皮加重平均の熱貫流率
外気温 T_o
°C
熱負荷計算用(室内温度 20°C と差分)
計算結果
n50(1/h)
等価漏気面積 ELA(cm²)
自然浸入換気率(ach)
浸入熱損失 Q_infil(W)
包絡熱損失 Q_env(W)
暖房需要(kWh/m²·年)
住宅断面と Blower Door 圧力勾配

外気との差圧 50 Pa を Blower Door ファンで作り出し、外皮の隙間から漏気経路が可視化されます。色は漏気量、ゲージは n50 の現在値。

n50 vs Q50(容積一定)
規格別 n50 上限の比較
理論・主要公式

$$n_{50} = \frac{Q_{50}}{V_{\text{building}}},\qquad ELA = \frac{Q_{50}}{C_d\sqrt{2\Delta P/\rho}}\times 10^{4}\;[\text{cm}^{2}]$$

n50:50Pa 加圧時の毎時換気回数、Q50:Blower Door 漏気流量(m³/h)、V:建物容積。ELA はオリフィス換算した等価漏気面積(Cd=0.6、ΔP=50 Pa、ρ=1.225 kg/m³)。Passivhaus の必須要件は n50 ≤ 0.6 /h。

$$n_{\text{nat}}\approx \frac{n_{50}}{20},\qquad Q_{\text{infil}}=\dot m\,c_p\,\Delta T = \frac{n_{\text{nat}}}{3600}\,V\,\rho\,c_p\,\Delta T$$

Persily 近似による年平均の自然浸入換気率と浸入熱損失。c_p=1006 J/kgK、ρ=1.225 kg/m³、ΔT は室内外温度差。

$$Q_{\text{env}} = U_{\text{avg}}\,A_{\text{env}}\,\Delta T,\qquad E_{\text{heat}} \approx \frac{(Q_{\text{infil}}+Q_{\text{env}})\cdot H_{\text{hr}}}{A_{\text{floor}}\cdot 1000}$$

包絡熱損失と暖房需要の概算。H_hr ≈ 5000 K·h、A_floor ≈ A_env/2。Passivhaus 認定では 15 kWh/m²·年が上限。

パッシブハウス 気密性能 n50・Blower Door 試験

🙋
「パッシブハウスは n50 が 0.6 以下じゃないとダメ」って聞いたんですけど、この 0.6 って何の数字なんですか?普通の家ってもっと大きいんですよね?
🎓
いい質問だね。n50 は「建物全体を 50 Pa の差圧で加圧(または減圧)したときに、内部の空気が 1 時間に何回入れ替わるか」を表す数字なんだ。0.6 /h っていうのは、建物の隙間がほぼ無いレベル。比較すると、日本の一般住宅は n50 換算で 5〜10、HEAT20 G2 級でも 2 前後。新築の Passivhaus はそれを十数倍の精度で締め上げる。ドイツの Wolfgang Feist が 1991 年に最初の認定住宅を作ってから、世界で 50,000 棟以上が認定されているよ。
🙋
どうやって測るんですか?気密測定って何かすごい装置が必要なイメージで…
🎓
使うのは「Blower Door」という大きな送風ファンを玄関ドアに装着する装置。室内外の差圧を 10〜60 Pa の範囲で複数点に変えて、流量 Q を測る。Q = C·ΔP^n のべき乗則に当てはめて、ΔP=50 Pa での流量 Q50(m³/h)を求めるんだ。これを建物容積 V で割れば n50 になる。ISO 9972 と ASTM E779 が国際規格で、Method 1 は加圧と減圧の平均、Method 3 は減圧のみ。試験中は給排気口・煙突・排水トラップを養生するのが鉄則だよ。左パネルの Q50=300 m³/h、V=350 m³ をデフォルトに置いたから、まずは右上で n50 = 0.86 が出ているのを確認してみて。
🙋
あっ、ホントだ。でもこれって PH(n50 ≤ 0.6)に通ってないですよね?どうすれば 0.6 まで落とせるんですか?
🎓
そう、まさにそこが Passivhaus 設計の山場。Q50 を 300 → 210 m³/h に落とせば n50 = 0.6 になる。具体的には、(1) 気密シート(Pro Clima Intello、Siga Majpell など)を躯体内側に連続展開する、(2) シートのジョイントとサッシ周りを気密テープ(Tescon Vana など)で全部つなぐ、(3) コンセント・配管貫通部を専用ガスケットで処理する、(4) サッシは三層ガラスの Passive House 認定窓を使う、というステップを踏む。リフォーム(EnerPHit)の場合は n50 ≤ 1.0 と少し甘めの基準があるよ。
🙋
なるほど。あと「暖房需要 62 kWh/m²·年」って出てますけど、PH は 15 kWh/m²·年が上限なんですよね?気密が悪いとそんなにエネルギーが変わるんですか?
🎓
変わる、というより気密はあくまで一部の貢献。今のデフォルトでは外皮 U=0.30 が比較的良い性能だけど、外気温 0°C・外皮 450 m² の包絡熱損失が 2,700 W で支配的。Passivhaus 認定を取るには U を 0.10〜0.15 まで落とし、トリプルガラス+HRV 80% で熱を回収する必要がある。気密だけ良くしても断熱が薄ければ PH には届かないけど、逆に気密が悪いと HRV の効率がガタ落ちするので、両方そろえて初めて 15 kWh/m²·年が見えてくる、というのが PH 設計の核心だね。

よくある質問

n50 は Blower Door 試験で建物全体を 50 Pa に加圧(または減圧)したときの、毎時換気回数(1/h)です。Passivhaus 認定では n50 ≤ 0.6 が必須要件で、これは普通の住宅(n50=3〜10)の十数分の一というレベル。Q50(漏気流量 m³/h)を建物容積 V で割って算出します。改修(EnerPHit)は 1.0、LEED Platinum は 1.5、日本の一般住宅では n50 に相当する基準値はなく、相当隙間面積 C 値で代用するのが普通です。
Blower Door は玄関ドアに送風ファンを装着し、室内外差圧を 10〜60 Pa の範囲で複数点測り、Q = C·ΔP^n のべき乗則に当てはめて Q50 を求める試験です。国際規格 ISO 9972(旧 EN 13829)と米国 ASTM E779 が代表で、Method 1(加圧と減圧の平均)と Method 3(減圧のみ)があります。試験前に給排気口・煙突・排水トラップを養生し、開口部の養生忘れがあると n50 が数倍化するので注意します。
ELA(Equivalent Leakage Area)は、建物中のすべての隙間を一枚の薄板オリフィスに集約したときの面積で、Q = Cd·A·√(2ΔP/ρ) から逆算します。流量係数 Cd は通常 0.6、空気密度 ρ は 1.2 kg/m³、ΔP は 50 Pa を用いる流派が多いです。例えば Q50 = 300 m³/h なら ELA ≈ 154 cm²、つまりハガキ 1 枚分ほどの「総隙間」が建物に空いていることになります。これを A4 用紙以下に抑えるのが PH レベルの目安です。
Persily の近似では年平均の自然浸入換気率 n_nat ≈ n50/20 ほどになります。例えば n50 を 5.0 → 0.6 に下げると n_nat は 0.25 → 0.03 ach に減り、寒冷地(ΔT=25K)の浸入熱損失は約 8 倍違います。容積 350 m³ の住宅では年間 1,500 kWh 級の暖房エネルギー差になり、HRV(熱回収換気)80% と組み合わせると Passivhaus 基準の暖房需要 15 kWh/m²·年が現実的になります。

実世界での応用

ドイツ Darmstadt の世界第 1 号 Passivhaus(Kranichstein 1991):Wolfgang Feist 博士が自宅として建てた連棟住宅で、n50 = 0.3、暖房需要 10 kWh/m²·年を達成。窓は当時最先端の Ar 入りトリプルガラス(U_w = 0.7)、外皮 U = 0.10、HRV 80%。30 年経過後も性能が劣化しておらず、PH の長期信頼性を証明した歴史的な建物です。

オーストリア Linz Solar City(住戸 600 戸):欧州最大級の PH 集合住宅団地で、団地全体で n50 ≤ 0.6 を全戸クリア。集合住宅では戸境壁の気密処理が特に難しく、Pro Clima のシステムテープとプラスター仕上げを組み合わせて達成しました。日本でも 2018 年以降、東京・那須・札幌で同様の認定 PH が増えています(KEN HOUSE、那須 PH 等)。

米国 Mass Public Housing(Stephen Wessling Architects):マサチューセッツ州の公営住宅で PH 認定を取得した実例で、n50 = 0.5。連棟住宅 14 戸で、コストを抑えるためにスタンダードな OSB+気密シート(Siga Majvest)を採用しつつ、全戸 Blower Door 試験を実施。光熱費が一般市営住宅の 1/4 まで下がり、低所得層の住居費負担を大幅に軽減した代表例です。

EnerPHit による既存住宅の改修:新築 PH(n50 ≤ 0.6)は既存の建物にはほぼ不可能なので、改修向けには EnerPHit(n50 ≤ 1.0)という別基準があります。外断熱+気密シートの内張りで n50 = 4〜8 の古い住宅を 0.7〜1.0 まで落とすケースが多く、ドイツ・オーストリアの公的補助対象になっています。日本では旧耐震基準の住宅を Bels A 級+EnerPHit に近づける改修事例が増えつつあります。

よくある誤解と注意点

まず最大の誤解が、「気密性能を上げると窓が結露しなくなる」というもの。実際は逆で、気密が高いほど室内の水蒸気が外に漏れないため、適切な機械換気(HRV/ERV)がないと逆に結露・カビが発生します。Passivhaus 認定には「冬季の室内湿度 30〜60%」を維持するための HRV が必須で、気密性能と換気設計はセットで成立する関係です。気密だけ上げて換気を雑にすると、シックハウス・カビ・CO2 過剰の三重苦になります。

次に、「n50 = 1.0 と n50 = 0.5 は大差ない」という思い込み。確かに数字の差は 2 倍ですが、Persily の関係式で浸入換気率に直すと 0.05 ach と 0.025 ach、寒冷地(ΔT=25K)の浸入熱損失で年間 400〜500 kWh/戸も変わります。HRV を 80% 効率で組み合わせる場合、n50 = 1.0 では HRV を通らない漏気が多く実効効率が 60% 台に落ち、Passivhaus の 15 kWh/m²·年は届かない。PH 必須要件が 0.6 なのは「HRV が設計通り動く前提条件」という意味合いが強いのです。

最後に、「日本の C 値と n50 は同じものを違う指標で表しているだけ」という誤解。C 値(cm²/m²)は床面積あたりの相当隙間面積で、5 Pa での Q から算出します。一方 n50 は容積あたり・50 Pa での換気回数。建物の形状によって C 値 ≒ 0.5 が n50 = 1.0〜2.0 のどこに対応するかは変わり、単純な換算式は存在しません。日本の HEAT20 G2 や ZEH の C ≤ 1.0 という基準は Passivhaus の n50 ≤ 0.6 より緩く、PH を狙うなら Blower Door 試験で n50 を直接測る必要があります。

使い方ガイド

  1. 建物容積(m³)と外皮面積(m²)を入力します。例:RC造5階建て事務所の場合、容積2500m³、外皮面積1800m²
  2. Blower Door試験で測定した50Pa時の漏気量Q50(m³/h)を入力します。パッシブハウス認証基準は3m³/h以下
  3. 機械換気量(m³/h)を設定すると、n50値、等価漏気面積ELA、自然浸入熱損失、暖房需要が自動計算されます
  4. PH/EnerPHit/LEED/BELS各基準の適合判定が即座に表示されます

具体的な計算例

木造平屋住宅(容積350m³、外皮面積280m²)でQ50=105m³/hの場合:n50=0.3回/h、ELA=4.2cm²となります。外皮熱貫流率3.0W/m²Kと組み合わせると、冬季浸入熱損失は約180W、暖房需要は15kWh/m²·年に低減。これはパッシブハウス基準(≦15kWh/m²·年)に適合します。一方Q50=250m³/hではn50=0.7回/h、暖房需要35kWh/m²·年となり不適合です

実務での注意点