パラメータ設定
λ をスイープ
リセット
既定値 (λ=45°, φ=45°, σ=200 MPa, τcrss=50 MPa) では m = 0.500、分解せん断応力 τr = 100 MPa、降伏応力 σy = 100 MPa、安全係数 SF = σy/σ = 0.50 と表示されます。SF < 1 はすでにすべりが起こっている状態です。λ や φ を 0°/90° に近づけると m が小さくなり、σy が急激に上昇します。
単結晶模式図
青矢印:引張軸 σ(垂直方向)/ 半透明の青平面:すべり面 / 緑矢印:すべり方向 / 赤矢印:すべり面法線 / 黄色弧:λ (引張軸-すべり方向の角度) / 紫弧:φ (引張軸-法線の角度)。すべり面を 45° 傾けると λ=φ=45° となり、シュミッド因子が最大 0.5 に達します。逆に面が引張軸に垂直または平行になると、すべり方向か法線のいずれかが軸に直交し、m=0 となります。
シュミッド因子 m(λ) 曲線
横軸:λ (deg, 0〜90) / 縦軸:シュミッド因子 m / 青実線:φ=45° 固定での m(λ) = cos(λ) × cos(45°) 余弦曲線 / 黄色マーカー:現在の λ における動作点 / 緑破線:m_max = 0.5 の理論最大値。φ=45° の場合、λ=0° で m=0.7071×1=0.7071 (ただし定義域では cos(λ) のみ変動し m_max=0.5 は λ=φ=45° で達成)、λ=45° で m=0.5、λ=90° で m=0 となります。
理論・主要公式
シュミッド因子 (Schmid factor):
$$m = \cos\lambda \, \cos\phi$$
分解せん断応力と Schmid の法則によるすべり開始条件:
$$\tau_r = \sigma\,m, \qquad \tau_r \geq \tau_{\mathrm{crss}}\;\Rightarrow\;\text{すべり開始}$$
単結晶の降伏応力と安全係数:
$$\sigma_y = \frac{\tau_{\mathrm{crss}}}{m}, \qquad \mathrm{SF} = \frac{\sigma_y}{\sigma}$$
$\lambda$ は引張軸とすべり方向のなす角、$\phi$ は引張軸とすべり面法線のなす角、$\sigma$ は印加応力 (MPa)、$\tau_{\mathrm{crss}}$ は臨界分解せん断応力 (MPa)。物理的拘束として $0 \leq m \leq 0.5$ で、最大値 $m=0.5$ は $\lambda=\phi=45°$ のとき達成されます。
シュミッド因子 シミュレーターとは
🙋
「シュミッド因子」って初めて聞きました。何のために使うんですか?
🎓
単結晶金属がどの方向に引っ張られたときにどれくらい降伏しやすいか、を予測するための幾何因子だよ。1924 年にドイツの物理学者 Erich Schmid が提案した。式は m = cosλ cosφ で、λ は引張軸とすべり方向のなす角、φ は引張軸とすべり面法線のなす角だ。本ツール既定値 (λ=45°, φ=45°, σ=200 MPa, τcrss=50 MPa) を入れると m=0.500、分解せん断応力 τr=100 MPa、降伏応力 σy=100 MPa、安全係数 SF=0.50 が表示される。SF=0.5 は印加応力が降伏応力の 2 倍にあたる、つまり「すでにすべりが起きている」状態を示しているんだ。
🙋
なぜシュミッド因子の最大値は 0.5 なんですか?1.0 ではないんですか?
🎓
いい質問だね。引張軸に垂直な面で「最大せん断応力」が σ/2 になる、というのは Mohr 円から知っているよね?シュミッド因子は同じ原理で、すべり面が軸に対して 45° 傾いたとき (λ=φ=45°)、cos(45°)×cos(45°) = 0.7071×0.7071 = 0.500 で最大になる。物理的に「面が引張方向と直交」または「面が引張方向と平行」のいずれかになると、すべり方向か面法線のどちらかが軸に直交して cos=0、つまり m=0 になり、すべりは起こらない。本ツールの右側 m(λ) 曲線で λ を 0→90° に動かすと、最大値 0.5 を中心とした余弦関数のような釣鐘型の曲線が見える。
🙋
単結晶模式図で青矢印・緑矢印・赤矢印・青平面が出ていますが、それぞれ何を表しているんですか?
🎓
青の縦矢印が引張軸 σ、半透明の青平面が結晶内のすべり面、緑矢印がすべり面上のすべり方向、赤矢印がすべり面の法線 n だ。λ は青矢印 (引張軸) と緑矢印 (すべり方向) のなす角、φ は青矢印と赤矢印 (法線) のなす角だ。スライダーで φ を 0° に近づけると面が水平になって法線が引張軸と平行 (φ=0)、90° で面が垂直になって法線が水平 (φ=90°) と動く様子が見える。実際の FCC 金属 (Cu, Al) では (111) すべり面と <110> すべり方向の組み合わせで 12 個のすべり系があり、それぞれ異なる m を持つ。多結晶中で最も m が大きいすべり系から塑性変形が始まる、これが Schmid の法則だ。
🙋
τcrss って何ですか?スライダーで動かすと σy がどう変わるか教えてください。
🎓
τcrss は臨界分解せん断応力 (Critical Resolved Shear Stress) で、すべり系がすべりを開始するために必要な最小のせん断応力だ。これは材料の固有値で、純 Cu で 0.5 MPa、加工硬化後で 50 MPa、BCC 鉄で 30〜100 MPa、HCP マグネシウムの底面すべりで 0.5〜2 MPa といった値を取る。Schmid の法則 σ m = τcrss から σy = τcrss / m。本ツール既定値で τcrss=50 MPa, m=0.5 なので σy=100 MPa。スライダーで τcrss を倍 (100 MPa) にすると σy も倍 (200 MPa) になり、半分 (25 MPa) にすると σy も半分 (50 MPa) になる、という線形関係を確認してほしい。実務での「加工硬化」「析出強化」「結晶粒微細化」はすべて τcrss を上げる手段だよ。
🙋
右の m(λ) 曲線で「黄色マーカーが λ=45° で m=0.5」と書かれていますが、安全係数 SF=0.5 はどう読めばいいんですか?
🎓
SF = σy / σ で、印加応力に対する降伏応力の比だ。SF > 1 なら「まだ降伏していない」、SF = 1 で「ちょうど降伏」、SF < 1 で「すでに塑性変形している」を意味する。本ツール既定値では σy=100 MPa, σ=200 MPa なので SF=0.50、つまり「印加応力が降伏応力の 2 倍 = すでに大きく塑性変形している」状態。スライダーで σ を 100 MPa に下げると SF=1.00 (降伏点ちょうど)、50 MPa に下げると SF=2.00 (安全マージン 2 倍) になる。または λ を 60° に動かすと m=0.354 (φ=45° のとき) → σy=141 MPa → SF=0.71 となり、配向を変えるだけで強度が変わる結晶塑性の本質を体感できる。
よくある質問
シュミッド因子とは何ですか?
シュミッド因子 m は単結晶の引張試験において、軸応力 σ がすべり面上のせん断応力に分解される割合を表す幾何因子で、m = cosλ cosφ で定義されます。λ は引張軸とすべり方向のなす角、φ は引張軸とすべり面法線のなす角です。物理的に m は 0 から 0.5 の範囲を取り、最大値 0.5 は λ = φ = 45° のとき達成されます。本ツール既定値 (λ=45°, φ=45°, σ=200 MPa, τcrss=50 MPa) では m=0.500, τr=100 MPa, σy=100 MPa, 安全係数=0.50 と表示され、印加応力が降伏応力に等しくちょうどすべりが開始する条件です。
なぜシュミッド因子の最大値は 0.5 なのですか?
m = cosλ cosφ の最大値は λ と φ がともに 45° のときで、cos(45°) ≈ 0.7071 から m_max = 0.7071 × 0.7071 = 0.500 となります。これはすべり面が引張軸に対して 45° 傾いたときに最大せん断応力が生じるという、Mohr 円から導かれる古典的な結果と完全に一致します。実際の多結晶金属でも、最も活性化しやすいすべり系のシュミッド因子はこの 0.5 に近い値を持つ結晶粒から塑性変形が始まることが知られています。
臨界分解せん断応力 τcrss とは何ですか?
臨界分解せん断応力 (Critical Resolved Shear Stress, τcrss) は、すべり系がすべりを開始するために必要な最小のせん断応力で、材料・温度・転位密度に依存します。FCC 純金属で典型的に 0.5 MPa (純Cu) から 50 MPa (加工硬化後)、BCC 鉄で 30〜100 MPa、HCP マグネシウムの底面すべりで 0.5〜2 MPa 程度です。Schmid の法則によれば、印加応力下での分解せん断応力 τr = σ m が τcrss に達したとき、そのすべり系がすべり始めます。本ツールではスライダーで τcrss を 5〜300 MPa の範囲で変えて、降伏応力への影響を観察できます。
単結晶の降伏応力 σy はどう計算しますか?
Schmid の法則 σ m = τcrss から、単結晶の降伏応力は σy = τcrss / m で計算されます。この式から、シュミッド因子が大きいほど (45° 配向に近いほど) 単結晶は低い応力で降伏することがわかります。本ツール既定値 (λ=45°, φ=45°, τcrss=50 MPa) では σy = 50 / 0.5 = 100 MPa が得られます。逆に λ または φ を 0° や 90° に近づけると m が小さくなり、σy が無限大に発散します。これは「ハードな配向 (hard orientation)」と呼ばれ、結晶粒の塑性変形のしやすさが結晶方位に強く依存することの根拠です。
実世界での応用
ニッケル基単結晶超合金タービンブレード: ジェットエンジン高圧タービン翼に使われる CMSX-4 や René N5 の単結晶ブレードでは、結晶成長方向 (通常 [001]) が翼の主応力方向と一致するよう精密制御されます。[001] 引張に対する FCC {111}<110> すべり系のシュミッド因子は最大 0.408 となり、多結晶相当方位 (m≈0.5) より約 20% 高い降伏応力が得られます。本ツールで λ, φ を変えてこの異方性強化の感度を直感的に確認でき、実機の結晶方位制御の重要性を理解できます。
シリコン単結晶ウェーハの転位制御: 半導体製造で使われる CZ 法・FZ 法 Si 単結晶ウェーハは引上げ時の熱応力で {111}<110> すべり系に転位が導入され、デバイス特性を劣化させます。ウェーハの主応力方向 [100] に対するシュミッド因子分布をシミュレーションし、最も活性化しやすいすべり系を特定して引上げ条件 (温度勾配・引上げ速度) を最適化します。本ツールはこの解析の入門として、配向と m の対応を学べます。
マグネシウム合金板材の異方性予測: 軽量化で注目される Mg-Al-Zn 系 (AZ31, AZ91) の HCP 構造では、底面 (0001) すべりの τcrss=0.5〜2 MPa が極めて低く、非底面すべり (角錐面・柱面) は τcrss=30〜80 MPa と桁違いに大きい異方性があります。圧延板材の集合組織 (texture) と引張方向のなす角からシュミッド因子分布を計算し、降伏点伸びや異方性指数 r 値を予測します。本ツールでスライダーを動かすと、わずかな配向変化で σy が桁違いに変わる HCP 特有の挙動を体感できます。
結晶塑性有限要素法 (CPFEM) の入門教材: 近年の高度 CAE である結晶塑性 FEM (CPFEM, ABAQUS UMAT や DAMASK) では、各積分点に多数のすべり系を持たせ、シュミッド因子・分解せん断応力・転位密度発展則を陽に解きます。本ツールは CPFEM 計算の最も基本となる「1 つのすべり系のシュミッド因子と分解せん断応力」をリアルタイムに可視化し、講義・自習教材として CPFEM の物理的基礎の理解を助けます。
よくある誤解と注意点
最も多い誤解が 「シュミッド因子は多結晶材料にもそのまま適用できる」 というものです。Schmid の法則は本来「単結晶の単一すべり系」に対する法則で、多結晶では各結晶粒が異なる方位を持ち、隣接粒との変形整合のため Taylor の多結晶モデル (M=3.06 が典型) や von Mises 5 すべり系基準が必要になります。本ツールの単結晶モデルから「多結晶降伏応力 ≈ M × τcrss」と一段階の換算を経て初めて多結晶材料の予測ができます。多結晶解析には別ツールの結晶塑性 FEM を使ってください。
次に多いのが 「λ + φ = 90° の関係が常に成り立つ」 という思い込みです。λ はすべり方向と引張軸の角度、φ は面法線と引張軸の角度で、すべり方向は面内、面法線は面外なので両者は直交します (cos(λ) と cos(φ) の関係は球面三角法で記述される独立変数)。一般には λ と φ は独立で、λ + φ ≥ 90° (シュバルツの不等式) という拘束を満たす範囲で動きます。本ツールではこの拘束を視覚的に強制していないため、極端な (λ=10°, φ=10°) のような物理的に不可能な組合せも入力できますが、教育目的の感度分析に限定してください。
最後の誤解が 「m が大きい=材料が弱い」と誤読する ことです。正しくは「m が大きい配向では低い軸応力で τcrss に達する」ため、その配向の単結晶が「低い σy で塑性変形する=降伏応力が低い」が、これは「材料が弱い」のではなく「結晶が変形しやすい配向にある」という意味です。実機ではこの幾何効果に加えて、加工硬化 (転位の絡み合い)、析出強化 (粒子による転位ピン止め)、結晶粒微細化 (Hall-Petch) などが τcrss 自体を上昇させます。本ツールの結果は τcrss 一定の仮定下での「配向効果のみ」の表示であることに注意してください。