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農学・種子発芽

大豆発芽率 温度・水分依存モデル

大豆の出芽は地温・土壌水分・播種深・土壌硬度の組合せで決まります。本ツールは品種別係数と圃場条件から、単一日の発芽率、有効積算温度、累積発芽率、出芽日数、予測収量までを一括計算し、播種計画の意思決定を支援します。

パラメータ設定
品種
日本主力3品種と米国主力品種から選択
地温 T_s
°C
土壌水分
%
容量含水率(20〜35%が最適帯)
播種深さ
cm
標準2〜4cm。深すぎは出芽力低下
土壌硬度
MPa
コーン指数。1MPa超で出芽抵抗
土壌種類
適性係数 ss(壌土=1.0が基準)
経過日数
播種後の経過日数(積算温度に使用)
計算結果
温度係数
水分係数
単一日 発芽率 (%)
積算温度 (°C·day)
累積発芽率 (%)
予測収量 (t/ha)
土壌断面 — 種子・発根・出芽のアニメーション

地温勾配(上層暖/下層冷)と、種子からの発根・出芽の進行を経過日数に応じて描画します。色は累積発芽率を表します。

発芽率 — 地温応答曲線
土壌種類別 発芽率比較
理論・主要公式

$$f_T = \exp\!\left(-\left(\frac{T_s-25}{8}\right)^{2}\right),\qquad f_W = 1-\frac{|W-27.5|}{20}$$

温度係数 f_T(ガウス型、10〜35°Cで有効)と水分係数 f_W(20〜35%で1.0、外側は線形減衰)。

$$G_{day} = 95\,f_T\,f_W\,f_d\,f_c\,s_s,\qquad \Sigma T = d\cdot\max(0,\,T_s-6)$$

単一日発芽率 G_day(%、上限98)と有効積算温度 ΣT(基底温度6°C・day)。f_d 播種深係数、f_c 硬度係数、s_s 土壌適性。

$$G_{cum} = G_{day}\left(1-\exp\!\left(-\frac{\Sigma T}{100}\right)\right),\qquad Y \approx \frac{G_{day}}{100}\cdot 3.0$$

累積発芽率 G_cum と予測収量 Y(t/ha)。必要積算温度100°C·day を半減期とする一次の出芽モデル。

大豆発芽率 温度・水分依存 — 圃場立毛予測

🙋
大豆って、田植えと違って「播いたのに出てこない」ことが結構ありますよね。同じ畑で同じ種なのに、年によって立毛率がぜんぜん違うって本当ですか?
🎓
よくある話だね。大豆の出芽は「地温」「水分」「酸素」「土壌の硬さ」の4つで決まるんだけど、特に効くのが地温と水分の組合せ。気温じゃなくて地表5cmの「地温」が25°C前後にいるかどうかが分岐点。それが20°Cを切ると発芽日数が一気に伸びて、その間に水分が抜けたり病害菌に食われたりして立毛が落ちる。同じ品種・同じ畑でも、播種週の地温推移が3°C違うだけで立毛率が20ポイント変わることがあるんだ。
🙋
なるほど。じゃあ早播きすればするほど良いってわけじゃないんですね。左の地温を15°Cまで下げると、温度係数が0.3を切って真っ赤になります。
🎓
そう、寒すぎは大敵。でも逆に遅播きすると今度は梅雨の湛水で酸欠になる。だからこそ「播種週の地温×水分」を予測することが大事で、本ツールはガウス型の温度応答 exp(-((T-25)/8)²) で「最適25°C・幅8°C」を表現している。地温22〜28°Cなら係数0.86以上が出るけど、18°Cや32°Cでは0.5近くまで落ちる。実務的には、播種前1週間の最低地温が15°Cを安定して超えてから播くのがセオリーだね。
🙋
「積算温度」って数字も出てますね。これ何ですか?単純な日数とは別物ですか?
🎓
いい質問。大豆は「基準温度6°Cを超えた分」を毎日足し算した有効積算温度(°C·day)で発育が進むんだ。例えば地温20°Cの日は 20-6=14°C·day。これを7日続ければ98°C·day。大豆の出芽には大体100°C·dayが必要だから、20°C×7日でほぼ出揃う計算になる。逆に地温15°Cなら 9°C·day×7日=63°C·dayしか溜まらず、累積発芽率は半分しか到達しない。本ツールはこれを 1-exp(-ΣT/100) で表していて、播種後の日数を動かすと出芽がそろっていく様子が見えるよ。
🙋
土壌種類でも係数が違うんですね。粘土質が0.8、砂質が0.9というのは意外でした。粘土の方が悪いんですか?
🎓
大豆の出芽には「水持ちが良すぎる」のも不利なんだ。粘土質は保水力が高い反面、降雨後に湛水しやすく酸欠で胚軸が腐る。一方、砂質は乾きやすいけど排水と通気は良好。理想は壌土で、保水と通気のバランスが取れている。泥炭は有機物が多くて団粒構造は良いが、PHが低めで根の伸長が抑えられる。本ツールの係数は壌土=1.0を基準にした相対値で、実圃場の状態(鎮圧度、有機物含有量、PH)で±0.1〜0.2程度ずれるから、自分の畑の傾向を見て補正してね。
🙋
最後に「予測収量」も出てますが、これは発芽率×3 t/haの簡易計算ですよね?実際の収量はもっと色んな要素が絡みそうですが、目安として使えますか?
🎓
そのとおり、ここは「上限収量3 t/ha × 発芽率」のラフな概算で、開花期の水分や病害、収穫時の倒伏は含まれていない。けれど現場では「立毛が悪い圃場で投入肥料を増やしても収量は伸びない」というのが鉄則で、立毛率が収量の天井を決めるんだ。だから播種計画の段階で発芽率の見立てが7割を切ったら、追播・補植・播種条件の見直しを早めに判断する材料として使ってほしい。FEM解析の概算と同じで、桁が合っているかをまずチェックする感覚だね。

よくある質問

大豆の発芽に最も適した地温は概ね25°C前後で、10°Cを下回ると発芽が極端に遅くなり、35°Cを超えると発芽率が急低下します。本ツールでは温度係数を tempFactor = exp(-((T-25)/8)^2) のガウス型応答で表し、10〜35°Cの帯域でのみ実効値を返します。早播きで地温15°C以下の条件では発芽日数が伸び、立毛率も下がるため、播種前1週間の地温推移を確認することが重要です。
大豆の発芽に適した土壌水分は容量含水率で概ね20〜35%の帯域です。下回ると吸水不足で胚軸の伸長が止まり、上回ると酸欠で根腐れや出芽不良を起こします。本ツールでは20〜35%を1.0、外れた領域は中心27.5%からの距離で線形に減衰させています。粘土質土壌で湛水気味の圃場や、砂質で乾きやすい圃場では播種深・鎮圧度で水分挙動を補正します。
大豆は単純な日数ではなく、基準温度(基底温度6°C)を超えた分の温度を日々積算した「有効積算温度」で発育が進みます。本ツールでは播種から出芽までに概ね100°C·day を要すると仮定し、累積発芽率を 1-exp(-ΣT/100) で表現しています。20°Cで7日なら積算98°C·dayとなり、ほぼ出芽がそろう一方、15°Cでは同じ7日でも63°C·dayで、半分程度しか出芽せず後発分が遅れます。
土壌硬度(コーン指数で表す貫入抵抗)が1MPaを超えると、胚軸が地表に押し出す力が足りず、出芽率が著しく低下します。本ツールでは硬度係数を compactionFactor = max(0.3, 1 - max(0,P-1)/4) として、1MPa以下は影響なし、5MPaでは下限0.3まで減衰させています。播種前のロータリー耕や、播種後の鎮圧過多に注意し、特に圃場の轍部分は浅播き+鎮圧弱めに切り替えることで出芽ムラを防げます。

実世界での応用

水田転換畑(湿害が出やすい大豆圃場):排水不良で水分40%を超える条件では、本ツールの水分係数が0.4を切り、発芽率が15〜25%台まで落ちます。明渠・サブソイラによる排水改善と、浅播き(2cm)+鎮圧弱めの組合せで対応します。ツール上で水分パラメータを動かし、最適範囲(20〜35%)に戻すための営農対策(暗渠・畝立て・排水緩衝帯)を定量的に検討できます。

狭畦密植栽培(70cm→30cm畦間)の播種計画:近年広がる狭畦密植では、立毛率の低下が個体数で吸収できないため、より高い発芽率が要求されます。本ツールで品種別係数と播種深を最適化し、累積発芽率90%超を確保できる条件(地温22°C以上、水分25〜30%、播種深2.5〜3.5cm)に絞り込むことで、播種日の意思決定を支援します。

北米プレーリー州(米イオワ品種)の早播き判断:米国中西部では5月播種が標準ですが、近年の寒春で4月下旬の早播きが増えています。地温が10〜15°Cの範囲では発芽日数が10日以上に伸び、ピシウム等の土壌伝染性病害のリスクが高まります。本ツールで地温×経過日数を動かし、累積発芽率が80%に達する日数を見積もることで、種子処理剤の投資判断に使えます。

営農指導・普及員向けの圃場巡回ツール:JA・農業普及センターの圃場巡回で、播種後3〜10日の出芽不良圃場の原因を即時診断するのに使えます。地温・水分・硬度を入力すると、温度・水分・硬度の3つの係数のうちどれが効いているかが分かり、補植・追播・次作への申し送りを根拠付きで判断できます。

よくある誤解と注意点

最初の落とし穴が、「気温と地温を混同する」こと。本ツールが扱うのは播種深付近(地表下5cm)の地温であり、日中の気温とは2〜5°Cの差があります。特に晴天の春先は、気温が20°Cでも夜明けの地温は10°C台ということが普通にあります。アメダスの気温データではなく、実圃場での地温計測(最も簡単なのは打ち込み式の土壌温度計)を1週間追って、最低・平均・最高地温の3点で評価してください。気温で判断すると早播きの失敗を繰り返します。

次が、「累積発芽率=最終立毛率」と思い込むこと。本ツールの累積発芽率は「実験室条件で出芽したはずの個体の割合」であり、現場ではこの後に鳥害(特にハト・カラスの食害)、土壌病害(リゾクトニア、フザリウム)、雑草競合が重なって、最終的な立毛率はさらに10〜20ポイント下がります。営農の意思決定では「ツールの累積発芽率×0.85」を実圃場の目安にし、種子処理剤・鳥害ネット・除草剤体系で目減りを抑えることを前提に計画します。

最後に、「品種係数は一律で良い」と扱うこと。本ツールでは品種を select で選びますが、内部の係数はあくまで代表値で、実際は同じ品種でも種子ロットの新旧・千粒重・登熟年の天候で発芽勢が変わります。新品種・新ロットを大規模に導入する前には、ペーパータオル法等で発芽勢試験を行い、ツールの予測値を実測の発芽勢で補正してください。発芽勢90%の種子と70%の種子では、同じ条件でも立毛が全く違う結果になります。

使い方ガイド

  1. 土壌温度を℃単位で入力(最適範囲は20~25℃)。15℃以下または30℃以上では発芽が著しく低下します
  2. 土壌含水量を%で設定。飽和含水量の60~80%が発芽に最適で、40%以下では発芽遅延、90%以上では腐敗リスクが増加します
  3. 播種深度(cm)と土壌硬度(MPa)を入力すると、出芽抵抗値が計算され、出芽日数予測に反映されます
  4. シミュレーション実行後、有効積算温度と累積発芽率から最適な播種時期を判定します

具体的な計算例

関東地方の大豆栽培で、土壌温度22℃・含水量70%・播種深度4cm・土壌硬度0.8MPaの条件下では、温度係数0.95・水分係数0.98が算出されます。基礎発芽率75%に両係数を乗じると単一日発芽率69.4%となり、累積発芽率は6日目で90%を超えます。有効積算温度が120~140°C·dayに達した時点で、予測収量は3.2t/haを見込めます(品種:エンレイ、標準窒素施肥150kg/ha換算)。

実務での注意点