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環境工学

都市ヒートアイランド (UHI) 強度シミュレーター

都市部の気温が郊外より高くなる「ヒートアイランド現象」の強度 ΔT を、Oke (1973) の人口対数式に、アルベド・不透水率・緑地率・風速の補正項を加えて推定します。クールルーフや緑化など緩和策の効果を、リアルタイムに数値で確認できます。

パラメータ設定
都市人口 P
万人
対象都市の人口。Oke 式は人口対数で UHI を与える
都市域アルベド α_u
アスファルト・コンクリートで 0.10〜0.20。白色屋根は 0.30〜0.40
郊外アルベド α_r
草地・農地・乾燥土で 0.20〜0.30 が標準
不透水率
%
アスファルト・建物屋根など雨水が浸透しない面の比率
緑地率
%
公園・街路樹・屋上緑化など蒸散面の比率
風速 U
m/s
夜間平均風速。5 m/s 以上で UHI はほぼ消失
計算結果
Oke式基準 UHI ΔT_base (K)
アルベド補正 (K)
不透水・緑地補正 (K)
風速補正 (K)
推定 UHI 強度 ΔT (K)
重症度判定
都市・郊外の気温と熱フローの模式図

左:郊外(緑地と蒸散)、右:都市(低アルベドの舗装と建物)。太陽放射→吸収→蓄熱→夜間放出の流れを矢印とパルスで表示。都市側が高温(赤)、郊外側が低温(青)で塗り分けられます。

都市人口 P と UHI 強度の関係(対数軸)
補正項の内訳(基準 / アルベド / 不透水 / 緑地 / 風)
理論・主要公式

$$\Delta T_{UHI,\max} = 2.01\log_{10}(P) - 4.06 + f(\alpha, \text{vegetation}, U)$$

P=都市人口(千人)、α=アルベド差、U=風速。Oke (1973) の基本式に、アルベド差・不透水率・緑地率・風速の補正項を加算した形を用いる。

$$f = \frac{\alpha_r - \alpha_u}{0.05}\cdot 0.5 + \max(0,I-50)\cdot 0.05 - 0.05\,G - 0.4\max(0,U-1)$$

アルベド補正は α 差 0.05 ごとに +0.5 K、不透水率 I は 50% 超過分について +0.05 K/%、緑地率 G は −0.05 K/%、風速 U は 1 m/s 超過分について −0.4 K·s/m。

都市ヒートアイランド (UHI) 強度

🙋
夏に「東京は今夜も熱帯夜」ってニュースで聞きますけど、田舎より都心が暑いのって、本当にそんなに違うんですか?気のせいじゃないですか?
🎓
それがね、気のせいじゃない。気象庁の長期データで見ると、東京の都心は周辺の郊外より夜間気温が平均で 2〜3 K、最大では 5 K 以上も高い日があるんだ。これが「都市ヒートアイランド (UHI)」現象。原因はざっくり言うと、コンクリートやアスファルトが昼に太陽を吸って蓄熱し、夜にじわじわ放出する、建物が風通しを悪くする、エアコンや車から人工排熱が出る、緑や水面が少なくて蒸散による冷却が効かない、の4つだよ。左のスライダーの「都市人口」をいじってみて。100万人と 1000万人で ΔT がどう変わるか見える。
🙋
人口を 100万人から 1000万人にしたら、基準 UHI が 1.97 K から 3.98 K に増えました!倍になってる…これってどんな式なんですか?
🎓
それが有名な Oke の経験式で、ΔT_uhi,max = 2.01·log10(P) − 4.06 という形なんだ。P は人口(千人)で、log10 が入っているのがミソ。人口が 10倍になると UHI が 2 K 上がる、という素直な関係になってる。Oke は1973年にカナダや北米の都市データを統計処理してこの式を作った。50年たった今でも、世界中の都市スケールの UHI 推定の出発点として使われている古典だよ。下のグラフで「対数軸」になっているのを見ると、人口が増えても UHI は青天井ではなくて、緩やかに飽和していくのが分かるはず。
🙋
なるほど!じゃあ、人口は減らせないとして、ΔT を下げるには何ができるんですか?緑を増やすとか?
🎓
いい質問だね。緩和策は大きく3つある。1つめがクールルーフ——黒い屋根を白く塗ったり高反射塗料を使ったりして、都市側のアルベド α_u を 0.15 から 0.30 に上げる。これだけで本ツールの補正で 1.5 K も下がる。2つめが緑地・街路樹——緑地率 G を 15% から 30% にすると蒸散冷却で 0.75 K 下がる。3つめが透水性舗装——不透水率 I を 70% から 50% にすると、雨水浸透と保水冷却で 1.0 K 下がる。これらを組み合わせれば、100万人都市で計算上 3 K 以上の低減が見込めて、これは熱中症リスクを大きく減らす効果がある。
🙋
風はどうですか?「風通しが大事」ってよく聞きますけど。
🎓
風は決定的なんだ。Oke の観測でも、UHI 最大強度は風速 3 m/s 未満のクリアスカイ夜間にだけ発生して、5 m/s を超えるとほぼ消える。だから本ツールの風速補正も 1 m/s を基準に −0.4 K·s/m で線形に効くようにしてある。逆に言うと、ビル風や谷風など都市内に「風の道(ベンチレーション・コリドー)」を確保する都市計画は、緑化と同じくらいインパクトが大きい。東京湾からの海風を内陸に通すために、湾岸エリアでは高層ビル群の向きを調整した事例もあるんだよ。
🙋
最後にひとつ。UHI が 3 K 上がると、人の体にはどれくらい影響あるんですか?
🎓
想像以上に大きいよ。気温が 1 K 上がると、湿度を加味した暑さ指標である WBGT がおよそ 0.7 K 上がる。WBGT 28°C 以上で「厳重警戒」、31°C 以上で「危険」となり、熱中症搬送数は WBGT が 1 K 上がるごとに 1.5〜2倍に跳ね上がる統計がある。だから 3 K の UHI 低減は、単に「涼しい」というレベルではなくて、救急搬送数を半分にできる規模の公衆衛生効果なんだ。本ツールの判定が ΔT > 3 K で「顕著」、>5 K で「深刻」となっているのは、この WBGT 影響を踏まえているからだよ。

よくある質問

Oke (1973) の経験式 ΔT_uhi,max = 2.01·log10(P) − 4.06 が出発点です。P は都市人口(千人)で、人口が10倍になると UHI 最大強度がおよそ 2 K 上がるという経験則を表しています。本ツールではこれに、アルベド差・不透水率・緑地率・風速の補正項を加算した形 ΔT = ΔT_base + f(α, vegetation, U) を用います。例えば 100万人都市(=1000千人)なら ΔT_base = 2.01×3 − 4.06 = 1.97 K となり、ここから都市側の低アルベドや不透水率が高いほど ΔT が増え、緑地や風が大きいほど下がります。
本ツールの補正項では、都市アルベド α_u を 0.05 上げるごとに UHI が約 0.5 K 下がります。例えば一般的な黒系屋根(α≈0.10)を白色クールルーフ(α≈0.30)に変えると α が 0.20 増えるため、ΔT がおよそ 2.0 K 低下します。実際の都市スケールの観測でも、ロサンゼルスやニューヨークの大規模クールルーフ実験で 1〜3 K の昼間気温低下が報告されており、本ツールの推定値と整合します。ただしクールルーフは冬季の暖房負荷増(ペナルティ)も生むため、緯度ごとに費用便益を確認する必要があります。
本ツールでは緑地率 1% の増加で ΔT が 0.05 K 下がるとモデル化しています。緑地は (1) 蒸散による潜熱フラックスの増加、(2) 樹冠による日射遮蔽、(3) アルベドの相対的増加、の3つで気温を下げます。例えば緑地率を 15% から 30% に上げると ΔT が約 0.75 K 低下します。樹木1本あたりの蒸散量は晴天日で約 100〜400 L/day で、これは家庭用エアコン数台分の冷房能力に相当します。ただし夜間は樹冠が放射冷却を妨げて逆に気温を保つ場合もあり、街路樹の配置と種選定が重要です。
本ツールの風速補正は 1 m/s を超えた分について −0.4 K/(m/s) で効きます。無風時(U=0)は補正がゼロのため、ΔT_base + α・不透水・緑地補正がそのまま発現します。Oke の観測でも、UHI 最大強度は風速 < 3 m/s のクリアスカイ夜間に発生することが知られており、典型的に風速 5 m/s を超えると UHI はほぼ消失します。日本の夏季は太平洋高気圧下で風が弱まる日が多く、これが熱帯夜の発生を後押ししています。都市計画では風の道(ベンチレーション・コリドー)を確保することが熱中症対策の柱になります。

実世界での応用

都市計画・マスタープランの策定:東京・大阪・名古屋などの大都市自治体では、UHI 対策を盛り込んだ「ヒートアイランド対策大綱」を策定しています。本ツールのようなマクロモデルで、緑被率目標(東京都は30%、シンガポールは50%)、屋上緑化義務(東京・福岡)、白色舗装の導入範囲を定量的に評価し、施策ごとの ΔT 低減効果を費用と並べて意思決定します。1 K の冷却で熱中症搬送数が約30%減るとされ、医療費抑制とのトレードオフ計算に直結します。

ZEB(ネットゼロエネルギービル)設計:建物単体のエネルギー設計でも、敷地周辺の UHI 強度を入力前提として把握しておく必要があります。UHI が 3 K あれば、屋外条件 30°C の設計気温は実質 33°C で設計しなければならず、冷却負荷が 15〜20% 増えます。本ツールで敷地周辺の補正項を確認し、外皮性能(屋上緑化・外装の高反射化)の必要レベルを逆算する用途で使えます。LEED・CASBEE・BREEAM などの環境認証評価でも UHI 緩和スコアが配点項目になっています。

気候変動適応策(CCA)の費用便益分析:IPCC AR6 によれば、世界の都市は今世紀末までに平均で +2〜4 K の追加温暖化を経験する見込みで、UHI と気候変動の合成効果で都心の夏季最高気温は局所的に 45°C 超に達する地域も予測されています。本ツールはマクロな経験式ベースですが、緩和策ごとの ΔT 低減量を概算で提示するため、自治体や保険業界の「シナリオ別損失推定」の前段として有効です。シンガポールの「Cooling Singapore」プロジェクトでは類似の式を都市計画 GIS に組み込み、施策の優先順位を決めています。

学校・教育・市民啓発:UHI は環境教育の典型題材で、児童・生徒が「自分の街の気温データを測ってオケ式と比較する」探究学習が盛んです。本ツールは数式と可視化を同時に提供するため、人口・緑地率・アルベドを変えながら「もし学校の屋根を白く塗ったら、校庭の気温が何度下がるか」を即座に試せます。地理・物理・社会科を横断する STEAM 教材として、自治体や NPO の市民向けワークショップでも使いやすい構成にしてあります。

よくある誤解と注意点

まず最大の落とし穴が、「Oke の経験式の値を実測値と混同する」こと。Oke 式は人口だけから UHI の潜在的な最大値を与えるマクロな統計式で、特定の夜の・特定の場所の気温差を予測する物理モデルではありません。実際の UHI は風向、地形(谷地形は冷気が溜まりやすい)、海風の到達、人工排熱の時空間分布で大きく変動します。本ツールの値も「都市規模に対する典型的な上限の目安」と理解してください。具体的な熱中症リスク評価には、AMeDAS や WRF などのメソスケール気象モデルによる時空間シミュレーションが必要です。

次に、「クールルーフは万能ではない」こと。高反射屋根は夏季の冷房負荷を確実に下げますが、冬季は太陽熱を反射するため暖房負荷が増えます(クーリングペナルティ)。札幌や仙台のような冬の長い地域では、年間正味で省エネにならないケースもあります。緯度・気候帯ごとにライフサイクルでの便益評価が必要で、たとえば LBNL の研究では北緯35°以南で明確にプラス、それより北では建物の断熱性能と冷暖房比で個別判断、とされています。また光害(反射光のまぶしさ)や周辺気温への局所影響(隣家への熱反射)にも配慮が要ります。

最後に、「緑化は植えれば植えるほど良い」と思い込まないこと。緑地は昼の蒸散冷却で UHI を下げますが、樹冠が密集しすぎると夜間は逆に放射冷却を妨げて気温を保つ「夜間ヒートシンク」になります。また蒸発散は湿度を上げるため、WBGT で見ると気温低下と湿度増加が相殺されて体感の改善が小さい場合もあります。樹種選定(落葉樹は冬の日射を通す)、配置(風の道を塞がない)、規模(小さなポケットパークの散在より大きな緑地帯が効果的)が重要で、緑化率という単一指標だけで設計してはいけません。本ツールの線形補正もあくまで一次近似で、最適配置の検討には GIS と微気象モデルの併用が必要です。

使い方ガイド

  1. 人口密度(人/km²)を100~12000の範囲で入力。東京23区は約6000、大阪市は約12000が目安です
  2. 平均アルベド(0.1~0.5)を設定。アスファルト舗装0.15、クールルーフ0.65、草地0.25を参考に調整してください
  3. 不透水率(%)と緑地率(%)を入力し、両者が100%を超えないよう注意。透水性舗装導入で不透水率を5~10%低減できます
  4. 平均風速(m/s)を1~5の範囲で設定。Oke(1973)式にWind Speed補正を加算します
  5. 「計算実行」で都市ヒートアイランド強度ΔTを推定。横浜市の場合:人口密度4500、アルベド0.20、不透水率85%、緑地率12%、風速2.5m/sで約2.8K上昇が目安

具体的な計算例

人口密度8000人/km²、アルベド0.18(標準アスファルト)、不透水率90%、緑地率8%、風速2.0m/sの中核都市を仮定。Oke基準式ΔT_base=0.41×log10(8000)+1.9≒3.1K。アルベド補正で-0.35K(0.18は低いため加算なし)。不透水率90%と緑地8%の組み合わせで+0.6K。風速2.0m/sで-0.2K補正。最終推定UHI強度ΔT≒4.15K。緑地率を20%に増やすと-0.4K削減され3.75Kになります

実務での注意点