火災時構造設計(EN 1992-1-2) 戻る
構造解析

火災時構造設計シミュレーター

Eurocode EN 1992-1-2の500°C等温線法を用いて、ISO 834標準火災を受けるコンクリート梁の温度分布と残存耐力を計算します。R30〜R120の耐火等級に対応します。

パラメータ設定
プリセット
250 1/m
大きい(薄肉)ほど速く昇温します
0 mm
0=無保護。厚いほど昇温が遅れ耐火時間↑
0.60
高荷重ほど臨界温度が低く耐火時間↓
ライブ数値(火災進行中)
20
鋼材温度 Ts [°C]
20
火災ガス温度 Tg [°C]
1.00
強度低減係数 ky,θ
550
臨界温度 θcr [°C]
60
耐火時間 [min]
火災下の鋼部材:昇温と強度低下アニメーション
0.0 min
ガス温度 T_g(ISO 834) 鋼材温度 T_s 臨界温度 θ_cr 残存強度 k_y,θ
理論・主要公式

ISO 834 標準火災のガス温度:

$$T_g = 20 + 345\,\log_{10}(8t+1)\quad(t:\text{分})$$

無保護鋼の昇温(EN 1993-1-2):$\Delta T_s = \dfrac{A_m/V}{c_a\rho_a}\,\dot h_{net}\,\Delta t$、ここで $\dot h_{net}=\alpha_c(T_g-T_s)+\Phi\,\varepsilon\,\sigma\big[(T_g+273)^4-(T_s+273)^4\big]$。

臨界温度(利用率 μ0):$\theta_{cr}=39.19\,\ln\!\big[\tfrac{1}{0.9674\,\mu_0^{3.833}}-1\big]+482$

検証例:μ0=0.6 → θcr≈550 °C。t=30分で Tg≈842 °C、t=60分で≈945 °C。被覆を厚くすると Ts の上昇が遅れ耐火時間が延びます。

500℃等温線法とは?

🙋
火災時設計でいう「500℃等温線」とは何ですか?なぜ500℃が重要なのですか?
🎓
Eurocodeで使われる重要な簡略化です。コンクリートは高温になると強度が大きく低下するため、500℃を超えた部分は耐力に寄与しないものとして扱います。500℃等温線は、部材内部で温度が500℃になる境界線です。
🙋
つまり、梁の一部を耐力なしとして扱うのですね。残った有効断面はどう評価しますか?
🎓
火災にさらされた表面から500℃等温線がどこまで進むかを計算し、その内側を有効断面として扱います。「かぶり厚」を増やすと、鉄筋や有効コアが高温から守られやすくなる様子を確認できます。
🙋
R30やR60の耐火等級は、その時間後の状態を確認するという意味ですか?梁幅を広げるとどうなりますか?
🎓
その通りです。R30は標準火災30分後、R60は60分後の性能を確認します。梁幅が大きいほど、同じ侵入深さでも残る有効断面の割合が増えます。「梁幅 b」を動かすと有効幅の変化が分かります。

物理モデルと主要式

この方法の中心は、標準火災時に500℃の温度境界がコンクリート内部へどれだけ進むかを見積もることです。この深さに応じて使用可能な断面が小さくなります。

$$\delta_{500}= a\sqrt{t}\cdot k_c$$

Where:
$\delta_{500}$ = 500℃等温線の侵入深さ (mm)
$a$ = コンクリート種類に応じた係数
$t$ = 火災継続時間 (分)
$k_c$ = 含水状態などの補正係数

侵入深さが分かれば、火災後に残る有効断面寸法と残存耐力を評価できます。

$$b_{eff}= b - 2\delta_{500}$$ $$N_{fi}= f_{ck}\cdot b_{eff}\cdot h_{eff}/\gamma_c$$

Where:
$b_{eff}$ = 火災後の有効幅
$b$ = 元の梁幅
$h_{eff}$ = 有効高さ
$f_{ck}$ = コンクリート圧縮強度
$N_{fi}$ = 火災時の残存軸耐力

実務での使いどころ

高層建物: 避難や消火活動に必要な時間だけ部材が耐力を保てるよう、梁・柱の断面やかぶり厚を検討します。

駐車場: 車両火災を想定し、露出したスラブや梁が急激に崩壊しないよう耐火性能を確認します。

トンネル覆工: 火災時にも覆工が必要時間だけ健全性を保つよう、熱影響を受けた有効断面を評価します。

工場・プラント: 火災リスクのある設備周辺では、支持架構や床組の残存耐力を確認し、連鎖的な崩壊を防ぎます。

よくある誤解と注意点

この結果をそのまま施工図や最終設計に使えるわけではありません。補強筋の配置、継手、かぶり厚、部材端部条件などを含めた詳細設計が別途必要です。

コンクリート強度を上げれば必ず安全、というわけでもありません。高強度コンクリートでは爆裂などのリスクもあり、この簡易モデルだけでは評価できない場合があります。

加熱条件の見落としにも注意してください。片面加熱か四面加熱かで500℃等温線の進み方は変わります。入力条件が実際の火災シナリオに合っているかを確認することが重要です。

使い方ガイド

  1. コンクリート被り厚(cover)をmm単位で入力:耐火時間60分ではC40以上で50mm以上、120分では70mm以上が目安
  2. 梁の断面寸法を入力:幅(width)と高さ(height)をmm単位で設定、ISO 834標準火災曲線に基づき4辺加熱を想定
  3. シミュレータが500℃等温線法によりコンクリート圧縮強度の残存率を計算、EN 1992-1-2附属表3.1の温度依存係数を適用して耐力低下を評価

具体的な計算例

幅300mm×高さ500mmのRC梁、被り厚50mm、120分標準火災(ISO 834)曝露時:本ツールのモデルでは火災面温度は約1050℃に達し、深さ40mmで約640℃、深さ250mm(断面中央)ではほぼ常温(約20℃)まで減衰する。3面加熱の500℃等温線侵入深さδ≈33mmとなり、有効幅b_eff=300−2δ≈234mm・有効高さh_eff≈467mm、断面保持率は約73%。fck=30 MPaの残存軸耐力はN_fi=fck·b_eff·h_eff/γ_c(γ_c=1.5)で評価し、表層の500℃超領域を除いた有効断面で照査する。高強度域では爆裂リスクの別途確認が必要。

実務での注意点

  1. 被り厚は水分蒸発による爆裂防止に不可欠:水セメント比0.60以上の梁ではスパイリング現象による爆裂リスク増大のため、60分耐火で最低60mm確保が建築基準法施行令第121条推奨
  2. 鉄筋降伏点の低下も同時評価が必須:400℃でfyの残存率は90%、600℃で50%に低下するため、軸方向筋の応力計算では温度分布と照合した層別解析を実施
  3. 湿度条件による熱伝導率変化:含水率15%と乾燥状態では熱拡散率が30%異なるため、実火災想定では構造体の初期含水率確認が耐火判定の精度を左右