デッキチェアを思い浮かべてみて。あの布、ぴんと張ると人が乗れるよね。布は「押す」のは苦手でも「引っ張られる」のはすごく強い。座屈後のウェブも同じで、座屈で波打った板が、パネルの隅から隅へ斜めに走る「引張バンド」に再編される。この対角の引張帯が荷重を支えるんだ。これを「引張場作用(テンションフィールド・アクション)」と呼ぶ。左のツールで τ_cr を超えても Vu がずっと大きいのは、この引張場のおかげなんだ。
中間補剛材(垂直補剛材)は引張場のアンカー(定着点)として働くからです。座屈後のウェブの引張帯は、上下のフランジと両側の補剛材で囲まれたパネルの中で対角に張ります。このとき補剛材はプラットトラスの「束材」のように圧縮を負担します。補剛材間隔 a を狭くすると、せん断座屈係数 kv も引張場の終局強度 Vu も上がるため、桁を効率的に強くできます。これが鋼桁にずらりと補剛材が並ぶ理由です。
まず最大の誤解が、「せん断座屈=ウェブの破壊」だと思い込むことです。τ_cr はあくまで弾性座屈が始まる応力であって、終局強度ではありません。細長いウェブでは τ_cr が降伏応力よりずっと小さく出ますが、座屈後に引張場が立ち上がるため、実際の終局せん断強度 Vu は τ_cr·d·t の2倍以上になることもあります。座屈したからといって即アウトと判断すると、不必要にウェブを厚くして鋼重を増やしてしまいます。逆に、座屈したウェブの斜めのシワを見て「不良だ」と早合点するのも禁物で、設計で後座屈を見込んでいれば波打ち自体は想定内です。
次に、「引張場作用はどのパネルでも無条件に使える」と考えること。引張場は両側のフランジと補剛材がアンカーになって初めて成立します。桁端のパネルは外側に隣のパネルがなく、片側のアンカーが弱いため、多くの設計規準で端パネルには引張場作用を見込まず、座屈応力(Cv のみ)で照査するよう求めています。また、補剛材の間隔が極端に広い(a/d が大きい)場合や、フランジが細く付加曲げに耐えられない場合も、引張場をフルには期待できません。本ツールの Vu は中間パネルでアンカーが健全であることを前提とした概算値です。