パラメータ設定
最大電力伝達条件は R_L = R_th + R_w。負荷スイープは R_L を 0.5 Ω から 200 Ω へ自動で動かします。
テブナン等価回路
電圧源 V_th → R_th → R_w(配線) → R_L → GND。電流方向は時計回り、各部に電圧・抵抗・電流を表示
負荷電力曲線 P_L(R_L)
横軸=負荷抵抗 R_L(Ω)/ 縦軸=負荷電力 P_L(W)/ 黄=現在の R_L、破線=最大電力点 R_L=R_th+R_w
理論・主要公式
テブナン等価源 V_th と直列抵抗 R_th + R_w に負荷 R_L を接続した直列回路です。全抵抗を R_total = R_th + R_w + R_L とすると:
負荷電流(オームの法則):
$$I_L = \frac{V_{th}}{R_{th} + R_w + R_L}$$
負荷電圧と負荷電力:
$$V_L = I_L\,R_L,\qquad P_L = I_L^2\,R_L$$
電力効率(負荷側で消費される割合):
$$\eta = \frac{R_L}{R_{th} + R_w + R_L}$$
最大電力伝達条件と最大電力:
$$R_L = R_{th} + R_w,\qquad P_{\max} = \frac{V_{th}^2}{4\,(R_{th}+R_w)}$$
最大電力点では効率はちょうど 50% です。効率を最優先する場合は R_L ≫ R_th + R_w に設定します。
テブナン等価回路 シミュレーターとは
🙋
乾電池って 1.5 V って書いてありますけど、ショートさせると電流が無限に流れちゃう気がして怖いです。実際は何が起きてるんですか?
🎓
いい着眼点だ。理想電圧源なら確かに無限の電流が流れるけど、実際の電池には「内部抵抗」がある。だから乾電池は「1.5 V の理想電圧源 + 内部抵抗 R_th が直列に入った箱」とみなせる。これがまさにテブナン等価回路だ。シミュレーターで V_th=1.5, R_th=0.5 にして R_L をどんどん下げてみて。R_L=0(ショート)でも電流は V_th/R_th=3 A で頭打ちになるだろ。
🙋
なるほど!じゃあ最大電力伝達って何ですか?スマホの充電とかにも関係しますか?
🎓
最大電力伝達は「電源から負荷へ最も多くの電力を渡せる R_L の値」のことで、R_L = R_th のときに最大化される。シミュレーターの電力曲線を見ると、R_L が小さすぎる(ショート気味)と電流は大きいけど V_L が小さい、R_L が大きすぎる(オープン気味)と V_L は大きいけど電流が小さい。ちょうど R_th と等しいときに P_L = I²·R_L のバランスが頂点になるんだ。オーディオアンプの出力段やアンテナのインピーダンス整合で使われる重要な概念だよ。
🙋
配線抵抗 R_w のスライダーは何の意味があるんですか?電源から負荷までの線で抵抗があるってこと?
🎓
その通り。長い電線や細いリード線では無視できない抵抗があり、これが R_w だ。実は R_w は R_th と直列に挿入されるので、見かけ上の内部抵抗は R_th + R_w に増える。最大電力伝達点も R_L = R_th + R_w にシフトするし、効率は η = R_L / (R_th + R_w + R_L) と下がる。シミュレーターで R_w を 0 から 10 へ上げると、電力曲線のピーク位置が右にずれて、最大電力値そのものも下がるのが分かるはず。
🙋
最大電力点では効率がたったの 50% って書いてありますけど、これは効率悪いってことですよね?電力会社の送電網ではどうしてるんですか?
🎓
鋭い。実は用途で使い分けるんだ。電力会社のように「効率最優先」なら R_L ≫ R_th にして η を 95% 以上に引き上げる(送電は高電圧・低電流で R_th 損失を下げる)。一方、オーディオやセンサのように「微弱な信号から最大の電力を取り出したい」なら整合させる。シミュレーターで R_L=5(整合)→ P_L=7.2 W, η=50%、R_L=100(不整合だが効率優先)→ P_L=1.3 W, η≈95% と比べてみて。トレードオフがはっきり分かる。
物理モデルと主要な数式
テブナンの定理は、抵抗・独立電源(電圧源/電流源)からなる任意の線形 2 端子回路を、ある選んだ 2 端子から見ると「開放端電圧 $V_{th}$ と等価内部抵抗 $R_{th}$ の直列接続」に置換できることを保証する強力な定理です。$V_{th}$ は端子を開放したときの電圧、$R_{th}$ は全独立電源を「ゼロ」(電圧源を短絡、電流源を開放)にしたときに端子から見える抵抗として求められます。
負荷 $R_L$ と配線抵抗 $R_w$ を直列に接続した回路では、全抵抗 $R_{total}=R_{th}+R_w+R_L$ に対し、$I_L=V_{th}/R_{total}$ が流れ、負荷電圧は $V_L=I_L R_L$、負荷電力は $P_L=I_L^2 R_L=V_{th}^2 R_L/(R_{th}+R_w+R_L)^2$ となります。$R_L$ による微分 $dP_L/dR_L=0$ を解くと $R_L=R_{th}+R_w$ が得られ、これが最大電力伝達条件です。このとき $P_{\max}=V_{th}^2/(4(R_{th}+R_w))$、効率 $\eta=R_L/(R_{th}+R_w+R_L)$ は 50% となります。
シミュレーターは既定値 $V_{th}=12$ V, $R_{th}=5$ Ω, $R_L=10$ Ω, $R_w=0$ Ω で $I_L=0.800$ A, $V_L=8.000$ V, $P_L=6.40$ W, $\eta=66.7\%$ を出力します。最大電力点 $R_L=5$ Ω では $P_{\max}=12^2/(4\cdot 5)=7.200$ W となり、$R_L$ スライダーを 5 にすると確かにピークに到達することを確認できます。
実世界での応用
オーディオ・パワー段:スピーカーの公称インピーダンス(4 Ω, 8 Ω, 16 Ω)はパワーアンプ出力段の内部抵抗と整合させる目的で設計されています。整合からずれると出力電力が低下し、特定の周波数で歪みやすくなります。真空管アンプの出力トランスは、低インピーダンスのスピーカーと高インピーダンスの真空管プレート回路を整合させる「インピーダンス変換器」として機能します。
RF・アンテナ整合:無線送信機の出力段とアンテナの間に整合回路(L 型、π 型、T 型)を入れ、50 Ω 系統の R_th と任意のアンテナインピーダンスを整合させます。整合がずれると反射波が発生し、SWR(定在波比)が悪化、最悪の場合パワーアンプの故障につながります。
センサ受信回路:圧電センサ、フォトダイオード、サーモパイル等の微弱信号源は、出力インピーダンスが高く、最大電力ではなく最大電圧を取り出すために負荷を非常に大きく取る(OP アンプの高入力インピーダンス)か、ノイズマッチングを行います。微弱信号では効率より SNR が重要です。
バッテリーパックの内部抵抗測定:EV やノート PC のバッテリーは内部抵抗が劣化指標となります。既知の負荷抵抗を瞬間的に接続して電圧降下を測り、$R_{th}=(V_{open}-V_{loaded})/I$ から内部抵抗を推定します。BMS は内部抵抗の上昇からセルの劣化や異常発熱の予兆を検出します。
よくある誤解と注意点
まず多い誤解が、最大電力伝達 = 最大効率と混同すること。最大電力点では効率はちょうど 50% で、残り半分は内部抵抗 R_th で熱になる。電力会社の送電網のように効率最優先の用途では R_L を R_th より遥かに大きく取り、効率を 95% 以上に引き上げる。一方、オーディオやセンサのように微弱信号から最大電力を引き出したい用途では整合させる。シミュレーターで R_L を 5 と 100 にして比較すれば、トレードオフがはっきり分かる。
次に、配線抵抗 R_w を忘れて整合するミス。長距離配線や細いリード線では R_w が R_th と同じオーダーになることがあり、見かけの内部抵抗は R_th + R_w に増える。整合させるべき値も R_L = R_th + R_w にシフトする。電源側で測った V_th が負荷端で「電圧降下」として現れ、信号品質も落ちる。配線抵抗を含めた等価モデルで再評価することが重要だ。
最後に、テブナン等価が周波数依存性を持つことを見落とす落とし穴。実回路にはキャパシタンスやインダクタンスが含まれるため、テブナン「インピーダンス」Z_th は周波数の関数となる。DC や低周波では純抵抗近似が使えるが、RF や高速デジタル信号ではインピーダンス整合を周波数特性込みで設計する必要がある。アンテナの整合回路や PCB のトレース設計はこの典型例だ。
よくある質問
テブナン等価回路は「電圧源 V_th + 直列抵抗 R_th」、ノートン等価回路は「電流源 I_N + 並列抵抗 R_N」で、互いに変換可能です。関係式は $V_{th}=I_N R_N$, $R_{th}=R_N$。電圧源近似が有効な低インピーダンス回路ではテブナン、電流源近似が有効な高インピーダンス回路ではノートンと、回路に応じて使い分けます。トランジスタの小信号モデルやセンサの等価回路では場面に応じて両方を使い分けます。
V_th は端子を開放(何もつながない状態)にして電圧計で測ります。R_th は「短絡電流 I_sc を測って R_th = V_th / I_sc とする方法」か、「既知の負荷抵抗 R_L を接続して負荷電圧 V_L を測り R_th = R_L·(V_th/V_L − 1) とする方法」が一般的です。電池の場合は瞬間的に大電流を流すと劣化するため、後者の負荷法が安全です。シミュレーターでも R_L を様々な値に変えて V_L を読み取れば、内部抵抗 R_th が逆算できます。
最大電力点 R_L = R_th では負荷電力 P_L が最大ですが、同じ電力 P_th = I²·R_th が内部抵抗で熱になります。よって効率は 50%。一方、効率 η = R_L/(R_th+R_L) は R_L を大きくすればするほど 100% に近づきますが、負荷で取り出せる電力 P_L = V_th²·R_L/(R_th+R_L)² は減ります。電力会社は効率最優先で R_L ≫ R_th、オーディオは整合で最大電力、と用途で選びます。両者は同じ式から導かれるトレードオフ関係です。
使えます。ただし抵抗ではなく「インピーダンス Z_th(周波数 ω の関数)」になります。最大電力伝達条件は Z_L = Z_th^* (複素共役整合)となり、R_L = R_th かつ X_L = −X_th と分離して考えます。アンテナの整合回路や RF アンプの出力整合では、L・C を組み合わせた整合回路で周波数特性を整えます。シミュレーターは DC または非常に低周波の純抵抗近似での挙動を示しています。