三相電力計算シミュレーター 戻る
電気工学

三相電力計算シミュレーター

線間電圧・線電流・力率を設定して有効電力P・無効電力Q・皮相電力Sをリアルタイム計算。フェーザ図と電力三角形を可視化。

回路パラメータ

VL =
V
IL =
A
PF =
計算結果
P (kW)
Q (kVAR)
S (kVA)
C改善 (μF)
電力構成(P / Q / S)
フェーザ図
理論・主要公式

$$P = \sqrt{3} V_L I_L \cos\phi$$

三相有効電力 [W]:$V_L$ 線間電圧 [V]、$I_L$ 線電流 [A]、$\cos\phi$ 力率

$$Q = \sqrt{3} V_L I_L \sin\phi, \quad S = \sqrt{P^2+Q^2}$$

無効電力 [VAr] と皮相電力 [VA]:$\sin\phi = \sqrt{1-\cos^2\phi}$

$$V_{phase} = \frac{V_L}{\sqrt{3}}\ \text{(Y接続)},\quad V_{phase}=V_L\ \text{(△接続)}$$

相電圧と線間電圧の関係:Y接続では $V_{phase}\approx0.577V_L$

三相電力計算シミュレーターとは

🙋
三相電力って、単相の3倍の電力が使えるということですか?計算式も「√3」が付いてて、なんだか難しそう…。
🎓
大まかに言うと、3本の電線で効率よく電力を送る方式だね。確かに√3は三相特有の係数で、これは結線の幾何学的な関係から出てくるんだ。このシミュレーターで、上の「線間電圧」や「線電流」のスライダーを動かしてみて。有効電力Pがリアルタイムで変わるのがわかるよ。工場のモーターなどはほとんどがこの三相で動いているんだ。
🙋
「力率」って何ですか?1.0にすると有効電力が最大になるみたいですが、0.8とかだと減っちゃいますね。もったいない気がする…。
🎓
力率は「どれだけ効率よく仕事(有効電力)をしているか」の指標だよ。1.0が最高で、モーターや変圧器にはコイルが入っているから、どうしても電流の位相が遅れて力率が悪化してしまう。画面右の「フェーザ図」を確認してみて。力率を下げると、電流(I)の矢印が横に寝てくるでしょ? これが無駄な電流(無効電流)の正体で、有効電力Pは減るんだ。実務では力率改善コンデンサを入れて、0.95以上に保つのが一般的だね。
🙋
「Y結線」と「Δ結線」を切り替えても、計算される電力は同じなんですね。じゃあ、どうやって使い分けるんですか?シミュレーターで変えても意味なさそう…。
🎓
いや、そこが大事なポイントだ!シミュレーターは「線間電圧」と「線電流」を同じ値に保ってるから、電力が同じに見えるだけ。実際は、同じ電力でも、Δ結線だと相電流が線電流の $1/\sqrt{3}$ 倍になる。つまり、モーター内部のコイル1本あたりに流れる電流が小さくて済むんだ。逆にY結線は相電圧が低いから絶縁設計が楽、というメリットがある。CAEでモーターの熱解析や損失を評価する時は、この内部の相電流や相電圧が直接の入力になるから、結線方式の理解は特に重要だよ。

物理モデルと主要な数式

三相平衡負荷における有効電力、無効電力、皮相電力の基本計算式です。線間電圧と線電流から直接求めることができます。

$$ \begin{aligned}P &= \sqrt{3}\, V_L \, I_L \, \cos\phi \quad \text{[W]}\\ Q &= \sqrt{3}\, V_L \, I_L \, \sin\phi \quad \text{[var]}\\ S &= \sqrt{3}\, V_L \, I_L \quad \text{[VA]}\end{aligned}$$

$V_L$ : 線間電圧 (V), $I_L$ : 線電流 (A), $\phi$ : 電圧と電流の位相差, $\cos\phi$ : 力率 (PF)。電力三角形の関係 $S^2 = P^2 + Q^2$ が常に成立します。

Y結線とΔ結線における、線間値と相(内部)値の変換関係です。機器の内部設計やCAE解析では相の値が重要になります。

$$ \text{Y結線:}\quad V_L = \sqrt{3}\, V_{ph},\quad I_L = I_{ph}\\ \text{Δ結線:}\quad V_L = V_{ph},\quad I_L = \sqrt{3}\, I_{ph}$$

$V_{ph}$ : 相電圧, $I_{ph}$ : 相電流。係数 $\sqrt{3}$ は、三相の位相が120°ずれていることから生じる幾何学的な関係です。電力$P$はどちらの結線でも $3 V_{ph}I_{ph} \cos\phi$ で計算されます。

よくある質問

はい、本シミュレーターでは全て実効値(RMS)で入力してください。最大値(ピーク値)を入力すると計算結果が実際の値と異なりますのでご注意ください。
本シミュレーターでは、力率を正の値で入力すると遅れ力率(誘導性負荷)として扱い、無効電力Qは正の値で表示されます。進み力率(容量性負荷)を計算したい場合は、力率を負の値(例:-0.8)で入力してください。
フェーザ図は電圧と電流の位相差をベクトルで可視化したもので、その角度φが力率角です。電力三角形はこのφを用いて有効電力P(横軸)、無効電力Q(縦軸)、皮相電力S(斜辺)の関係を表し、S²=P²+Q²が常に成立します。
本シミュレーターは三相平衡負荷専用です。単相の場合は、線間電圧と線電流の関係が異なるため、正しい計算結果は得られません。単相計算には別のツールをご利用ください。

実世界での応用

産業用モーター・ポンプ・ファン:工場の主力動力源はほとんどが三相誘導モーターです。CAEを用いてモーターの効率(力率を含む)や発熱を評価し、最適な結線方式(Y-Δ始動等)や保守計画を立てます。シミュレーターで力率を変えた時の無効電力Qの変化は、損失評価に直結します。

電力系統の計画と運用:発電所から需要家までの送配電システムは三相が基本です。系統の電圧安定性や電力損失を解析するため、潮流計算(有効電力P、無効電力Qの流れを求める計算)が行われます。このシミュレーターで学ぶ電力の三角関係は、その基礎となります。

データセンターの電源設計:サーバーラックに給電するためのUPS(無停電電源装置)やPDU(電源分配装置)の容量(皮相電力S)を決定する際、三相入力が用いられます。力率改善機能(PFC)を持つ最新機器の効果を、パラメータを変えて確認できます。

電気自動車(EV)の充電設備:急速充電スタンドでは三相電源を利用して大電力を短時間で供給します。充電器のコンバーター回路設計や、充電時の系統への影響(力率や高調波)をCAEシミュレーションで予測する際の基礎知識として重要です。

よくある誤解と注意点

このシミュレーターを使い始める際、特にCAE初心者が陥りがちなポイントがいくつかあります。まず「線間電圧」の定義。これは文字通り「線と線の間の電圧」で、実測値です。しかし、単相回路の感覚で「対地電圧」と混同したり、Y結線での「相電圧(線と中性点間)」と勘違いしたりしがち。例えば、配電盤の電圧計が表示する400Vは線間電圧です。シミュレーターで「200V」と設定したら、それは既に線間電圧として入力してください。

次に力率の符号。このツールでは力率は0〜1の正の値ですが、実は無効電力Qの「遅れ」と「進み」を区別するため、力率cosφに符号を持たせる(遅れ力率を正、進み力率を負とする)計算体系もあります。コンデンサを接続すると進み力率になるので、無効電力Qの値が負になります。シミュレーターで力率を変えてもQの符号は変わりませんが、実務の計算シートではこの区別が重要です。

最後に「平衡負荷」という大前提。このツールの計算式 $P=\sqrt{3}V_L I_L \cos\phi$ は、三相の負荷が完全に平衡(各相のインピーダンスが等しい)している場合のみ成立します。現実のCAE解析、例えば配電系統の故障解析では、不平衡状態が普通です。その場合は対称座標法など別の手法が必要で、このシミュレーターはあくまで理想的な平衡状態の「基礎」を学ぶものと割り切りましょう。

使い方ガイド

  1. 線間電圧VL(V)を入力します。工業用三相電源は400V、高圧受電は6600Vが標準です
  2. 線電流IL(A)を設定します。例えばモーター負荷で150Aの場合は直接入力してください
  3. 力率PF(0~1)を指定します。遅れ力率0.85のときモーター等の誘導機負荷、進み力率0.95は力率改善後の状態を想定できます
  4. リアルタイムで有効電力P(kW)、無効電力Q(kVAR)、皮相電力S(kVA)が計算され、フェーザ図と電力三角形が更新されます

具体的な計算例

線間電圧400V、線電流200A、力率0.80の三相誘導モーターを想定します。皮相電力S=√3×400×200=138.6kVAとなり、有効電力P=138.6×0.80=110.9kW、無効電力Q=√(138.6²-110.9²)=82.8kVARです。力率を0.95に改善する場合、必要なコンデンサ容量は(82.8-29.1)÷(400²/1000000×100π)≈42.3μFの三相結線で対応できます

実務での注意点

  1. VL=440V以上で計算する場合は接地抵抗の影響を確認してください。配電線損失が無視できない長距離供給では電圧降下補正が必要です
  2. 力率が0.75未満の状況が常態化すれば、電力会社の不力率割増金(約1.5倍)が適用されるため力率改善が経済的です
  3. コンデンサ投入時の突入電流によるサージ電圧は、過電圧リレー設定値の110%以上となる場合があるので段階投入を検討してください
  4. 380V系旧式装置から400V系への置き換え時、モーター定格を確認せず高電圧印加するとトルク増加により過熱リスクが発生します