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交通工学

交通流シミュレーター — LWR 基本図

グリーンシールズ・グリーンバーグ・アンダーウッドの 3 モデルで交通基本図をリアルタイム描画。流量-密度・速度-密度・速度-流量の 3 タブグラフと車両アニメーションで、渋滞発生のメカニズムを直感的に理解できます。

速度-密度モデル
道路パラメータ
自由流速度 uf
km/h
詰まり密度 kj
台/km
現在の交通状態
現在密度 k
台/km
計算結果
最大流量 [台/h]
最適密度 [台/km]
現在速度 [km/h]
現在流量 [台/h]
Qk
流量 q [台/h] vs 密度 k [台/km](● 現在の動作点)
Uk
速度 u [km/h] vs 密度 k [台/km](● 現在の動作点)
Uq
速度 u [km/h] vs 流量 q [台/h](● 現在の動作点)
アニメーション
車両アニメーション(密度が高いほど車間距離が短く速度が低下)
理論・主要公式
u = uf (1 − k/kj)
q = k · u
qmax @ k = kj/2

交通流シミュレーター(LWR基本図)とは

🙋
「LWR基本図」って何ですか?道路の混み具合を図にしたものですか?
🎓
大まかに言うと、交通の「状態」を密度・速度・流量の3つの量で表した関係図だ。密度(混み具合)が増えると速度が落ちて、流量(1時間に通過する台数)がどう変わるかをグラフ化して、今の道路がスムーズなのか、渋滞寸前なのかを一目で判断できる。このシミュレーターで「現在密度 k」スライダーをゆっくり右に動かしてみて。動作点が曲線上を移動して流量が頂点(最大流量)を超えると、流量は下がり始めるのが見えるよ。
🙋
「速度-密度モデル」を切り替えると曲線の形が全然変わりますね。どれが正しいんですか?
🎓
実は「これが絶対」という唯一の正解はないんだ。グリーンシールズの線形モデルは計算が簡単だけど、混んでくる中高密度域では精度が落ちる。グリーンバーグの対数モデルは渋滞状態(高密度)の表現に優れ、アンダーウッドの指数モデルは中低密度の流れに向いている。現場では、その道路の実際の観測データにフィッティングして最適なモデルを選ぶんだ。
🙋
「最大流量」って出てきますけど、これが道路のキャパシティですか?
🎓
その通り!これ以上は理論上流せない、という限界値だ。グリーンシールズモデルでは $q_{max} = u_f k_j / 4$、最適密度は $k_{opt} = k_j / 2$ で求まる。「自由流速度 uf」を80→100 km/hに上げてみて。最大流量がグッと上がるのが見えるよね?これが「速度制限を緩和するとキャパシティが上がる」というシミュレーションだ。逆に「詰まり密度 kj」を下げると(道路幅が狭い)、最大流量も下がる。
🙋
「速度-流量」タブの曲線が面白い形ですね。普通の放物線じゃなくてループみたいになってる。
🎓
鋭い観察!これは交通の「二面性」を示している。同じ流量でも、自由流域(少ない車が速く走る)と渋滞域(多い車がのろのろ走る)の2つの状態が存在するんだ。曲線の上半分が自由流、下半分が渋滞状態に対応している。動作点が曲線の上にある(速い)か下にある(遅い)かで、今の交通状態がわかる。これが交通渋滞の「不安定性」の根源にある構造だよ。
🙋
下のアニメーションで、密度を増やすと車が詰まって遅くなるのがリアルですね。
🎓
そう!アニメーションの車速は計算された「現在速度 u」を使ってリアルタイムで更新している。現実の渋滞でよく見られる「サグ部渋滞」(下り坂から上り坂に変わる箇所での自然渋滞)は、この密度-速度の関係が不安定領域(最適密度付近)にある時に、ほんの少しのブレーキが波として上流に伝播して生まれるんだ。これをショックウェーブ(渋滞波)と呼ぶよ。

実世界での応用

産業での実際の使用例
自動車業界では、ETCゲートの最適配置設計や、自動運転車の車間距離制御アルゴリズム開発において、流量-密度関係をリアルタイムに可視化することで渋滞発生の閾値を特定する用途に活用されています。物流業界では配送ルート計画にLWR基本図の速度-流量グラフを組み込み、ピーク時の配送効率向上に役立てられています。

研究・教育での活用
交通工学の講義では、学生がグリーンシールズ・グリーンバーグ・アンダーウッドモデルを操作しながら渋滞の物理的メカニズムを直感的に学習できます。研究では交通流の安定性解析や、可変速度制限などの新しい交通制御手法の効果検証にも使用されています。

CAE解析との連携
本シミュレーターは、大規模交通シミュレーション(SUMO・Vissim等)の前段階ツールとして位置付けられます。道路設計コンサルタントが交差点改良案の初期評価に利用し、詳細な3Dシミュレーションに進む前に基本図から渋滞リスクをスクリーニングすることで、計算コストを削減しつつ設計の妥当性を迅速に検証できます。

よくある誤解と注意点

「交通基本図の形状は道路ごとに固定されている」と思いがちですが、実際はパラメータ(自由速度や飽和密度など)の設定次第で曲線が大きく変化します。同一の道路でも時間帯や天候によって実効的なパラメータが変わるため、基本図はあくまで「ある条件下での近似」であり、絶対的な関係ではない点に注意が必要です。

「渋滞は密度が高い領域だけで発生する」と考えられがちですが、LWR理論では同じ密度でも「自由流」と「渋滞流」の二つの状態が存在し得ます。特に速度-密度グラフを見ると、密度が中程度でも速度が急激に低下する遷移領域があり、ここでの小さな外乱が急激な渋滞発生を引き起こすことがあります。

「車両アニメーションがそのまま実際の交通流を再現している」と誤解しがちですが、このシミュレーターは連続体モデルに基づく近似であり、個々のドライバーの反応遅れや車間距離のばらつきなど微視的な挙動は反映されていません。あくまでマクロな傾向を把握するためのツールとして活用してください。

よくある質問

2つの交通状態(密度 $k_1$, 流量 $q_1$ と $k_2$, $q_2$)の境界が伝播する速度はRankine-Hugoniot条件 $w = (q_2 - q_1)/(k_2 - k_1)$ で求まります。通常、渋滞の後端は負の速度(上流方向)で伝播します。グリーンシールズモデルでは最大約 $-u_f/2$ です。
グリーンシールズは計算が簡単で基礎学習向き(高密度域の精度は低い)。グリーンバーグは渋滞域(高密度)の観測データに合いやすいが、低密度での挙動が不自然。アンダーウッドは中低密度での再現性が高い。実際には現地で観測した速度-密度データにフィッティングして最も適合するモデルを選択します。
道路上に設置された超音波センサーやループコイルで車の通過を計測し、5分・15分集計データから流量と密度(または速度)を算出します。基本図の頂点付近のデータ点群を統計的に解析して容量を推定します。一般的な日本の高速道路の容量は2,200〜2,400台/時/車線程度です。
LWRは速度が密度のみの関数(平衡速度-密度関係)を仮定するため、加速・減速の過渡現象や「幽霊渋滞(自発的渋滞)」など不安定現象の一部を再現できません。これらを扱うには加速度項を加えた高次モデル(Payne-Whithamモデル等)が必要です。また、車線変更や料金所など局所的な現象は細胞送信モデル(CTM)やミクロシミュレーションで扱います。
自動運転車は反応時間が人間より短く、車間距離を一定に保てるため、詰まり密度 $k_j$ が大きくなる(より多くの車を流せる)と予測されます。協調走行(プラトーニング)では自由流速度を維持したまま密度を大幅に高められるため、基本図の頂点が右上方向にシフトし、道路容量が大幅に増加すると期待されています。ただし混在期(人間と自動運転が混走)の不安定性が課題です。
同じ流量(例:1500台/h)でも、「少数の車が高速で流れる自由流状態」と「多数の車がのろのろ走る渋滞状態」の2通りの交通状態があるためです。速度-流量曲線上では自由流域(曲線の上側)と渋滞域(下側)に対応します。動作点が自由流側にある時は安定ですが、渋滞側にある時は不安定で、ちょっとした乱れでさらに渋滞が深刻化するリスクがあります。