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空調・HVAC

CO₂濃度ベース 必要換気量シミュレーター

人が呼吸で出すCO₂を指標に、部屋に必要な換気量を求めるツールです。在室人数・室容積・目標CO₂濃度を変えると、必要換気量・1人あたり換気量・換気回数ACH・濃度が落ち着くまでの時定数がリアルタイムで分かり、息苦しくない室内環境を設計できます。

パラメータ設定
在室人数 n
同時にその部屋にいる人の数
1人あたりCO₂発生量 g
L/h
安静時で約13、軽作業で約19、運動時は30以上
外気CO₂濃度 C_oa
ppm
郊外で約400、都市部の幹線道路沿いは450超
目標室内CO₂濃度 C_t
ppm
建築基準法の上限は1000ppm
室容積 V
床面積 × 天井高さ。換気回数・時定数に影響
計算結果
必要換気量 Q (m³/h)
1人あたり換気量 (m³/h·人)
換気回数 ACH (回/h)
CO₂発生量 G (L/h)
時定数 τ (min)
1人あたり換気量の判定
室内換気の断面イメージ

在室者が出すCO₂(粒)が室内に拡散し、新鮮外気の流入で押し出されます。右のバーは現在の室内CO₂濃度(緑=1000ppm以下/橙赤=超過)。

必要換気量 Q と目標CO₂濃度の関係
室内CO₂濃度の時間変化 C(t)
理論・主要公式

$$Q=\frac{G}{C_{target}-C_{outdoor}},\qquad G=n\cdot g$$

定常物質収支による必要換気量 Q。G:室内CO₂発生量、n:在室人数、g:1人あたり発生量。濃度は体積分率で扱い、ppm=分率×10⁶。

$$C(t)=C_{oa}+\frac{G}{Q}\left(1-e^{-t/\tau}\right),\qquad \tau=\frac{V}{Q}$$

完全混合を仮定した室内CO₂濃度の過渡応答 C(t) と時定数 τ。V:室容積、Q:換気量。t→∞ で C(t) は目標濃度 C_t に漸近する。

$$\text{ACH}=\frac{Q}{V},\qquad q_{person}=\frac{Q}{n}$$

換気回数 ACH(1時間あたりの空気入替回数)と1人あたり換気量 q_person。建築基準法・ASHRAE 62.1 では 1人あたり概ね 30 m³/h が目安。

CO₂濃度ベースの必要換気量とは

🙋
「換気量を決めるのに、なぜCO₂の濃度を使うんですか?」CO₂って人体に害があるわけじゃないですよね?
🎓
いい質問だね。1000ppm程度のCO₂自体は直接の毒性はほとんどない。でもCO₂は「人がどれだけ呼吸しているか」のとても便利な目印(インジケーター)なんだ。人は呼吸でCO₂を出すと同時に、体臭やウイルスを含む飛沫、湿気も出す。CO₂濃度が高いということは、それらも一緒にこもっているサイン。だから「CO₂が1000ppm以下なら、空気の汚れ全体もだいたい許容範囲」という考え方で換気量を決めるんだ。
🙋
なるほど、CO₂は「空気のよどみ度メーター」なんですね。じゃあ必要な換気量はどうやって計算するんですか?
🎓
ざっくり言うと「入ってくるCO₂と出ていくCO₂が釣り合う点」を探すんだ。部屋の中では人がCO₂を出し続ける。一方で換気すると、室内のCO₂を含んだ空気が外に出て、代わりに外気が入ってくる。この出入りが釣り合った定常状態では、Q=G/(C_t−C_oa) というシンプルな式になる。Gは人が出す総CO₂量、C_tは目標濃度、C_oaは外気濃度。左のスライダーで在室人数を増やすと、必要換気量Qが比例して跳ね上がるのが見えるはずだよ。
🙋
分母の(C_t−C_oa)が気になります。目標を1000から800ppmに下げると、必要換気量はどうなるんですか?
🎓
そこが一番のキモだ。外気が420ppmなら、目標1000ppmのとき許容上昇分は580ppm。これを800ppmに下げると許容分は380ppmに縮む。分母が約2/3になるから、必要換気量Qは約1.5倍に増える。「必要換気量 Q と目標CO₂濃度」のグラフを見ると、目標を厳しくするほどカーブが急に立ち上がるのが分かる。空気質をよくしたいほど、換気のコスト(ファン動力・冷暖房ロス)が跳ね上がる、というトレードオフだね。
🙋
「換気回数ACH」と「時定数τ」というカードもありますね。これは何を見ているんですか?
🎓
ACHは1時間に部屋の空気が何回まるごと入れ替わるか。τ=V/Qは、人が入室してから濃度が落ち着くまでの「立ち上がりの遅さ」を表す。下の「室内CO₂濃度の時間変化」グラフがまさにそれで、最初は急に上がり、τが過ぎると目標との差の63%が埋まり、5τでほぼ定常になる。実務で大事なのは、広い体育館みたいに容積が大きいとτが長くなること。授業開始30分後にやっとCO₂が上限に達する、なんてこともある。だから「定常値」だけでなく「いつそこに着くか」も合わせて見るんだ。
🙋
最後に、計算で出た換気量を実際の設備にどうつなげるんですか?
🎓
出てきたQ[m³/h]が、その部屋に必要な「外気導入量」の目安になる。これを満たすように換気扇や空調機の外気ファンを選定し、給気口・排気口を配置する。注意点として、この計算は「完全混合(部屋全体が均一)」を仮定している。実際は給気口のそばだけ新鮮で、隅はよどむ。だから現場ではCO₂センサーを人の呼吸帯(座った高さ)に置いて実測し、計算値と突き合わせるのが定石だよ。

よくある質問

定常状態の物質収支から、必要換気量 Q = G / (C_target − C_outdoor) で求めます。G は室内のCO₂発生量、C_target は目標室内CO₂濃度、C_outdoor は外気CO₂濃度で、濃度は体積分率(無次元)で扱います。発生量 G は在室人数 n と1人あたり発生量 g の積です。実務ではppm表記が一般的なので、Q = G[m³/h] / ((C_t − C_oa)[ppm] / 10⁶) と書くと計算しやすくなります。
日本の建築基準法・ビル管理法では室内CO₂濃度の上限を1000ppm(0.1%)としており、これが目標値の標準です。外気はおおむね400〜420ppmなので、許容上昇分は約600ppmになります。会議室や学習空間など集中力が求められる場では800ppm以下を目標にする例もあります。目標濃度を厳しくするほど許容上昇分が小さくなり、必要換気量は急増します。
建築基準法では居室の必要換気量を1人あたり概ね20〜30m³/h、ASHRAE 62.1 ではオフィスで1人あたり約25〜30m³/h(外気量)を目安としています。本ツールでは1人あたり換気量が30m³/h以上を「良好」、20〜30m³/hを「最低基準」、20m³/h未満を「不足」と判定します。CO₂発生量が一定なら、1人あたり換気量は目標濃度と外気濃度の差だけで決まります。
換気回数ACH(Air Changes per Hour)は ACH = Q / V で、1時間に部屋の空気が何回入れ替わるかを示します。時定数 τ = V / Q はその逆数で、濃度が定常値に近づく速さの指標です。τ が経過すると目標との差の約63%が解消され、3τで約95%、5τでほぼ定常に達します。容積の大きい部屋は τ が長く、人が入室してから定常濃度に落ち着くまで時間がかかります。

実世界での応用

オフィス・会議室の空調設計:オフィスビルの空調設計では、在室人数(しばしば床面積あたりの人員密度で算定)から必要外気量を求めます。会議室は短時間に多人数が集まるため人員密度が高く、CO₂濃度が急上昇しやすい代表例です。本ツールで在室人数を会議室相当に上げると、1人あたり換気量がすぐ「最低基準」や「不足」に振れることが体感できます。近年は需要制御換気(DCV)でCO₂センサーの実測値に応じて外気量を絞り、省エネと空気質を両立させる設計が主流です。

学校・教室の換気計画:教室は床面積あたりの児童・生徒数が多く、CO₂濃度が問題になりやすい空間です。文部科学省の学校環境衛生基準も室内CO₂を指標にしています。授業中はCO₂が上昇し続けるため、休み時間の窓開けでリセットする運用と、機械換気の併用が一般的です。容積の大きい体育館は時定数 τ が長く、行事で多人数が入っても濃度の立ち上がりは緩やかですが、その分いったん上がると下がりにくい点に注意が必要です。

感染対策・パンデミック後の換気強化:呼吸由来のエアロゾル感染リスクは、室内CO₂濃度と相関することが知られています。CO₂を「他人の呼気をどれだけ吸っているか」の代理指標とみなし、混雑空間では目標を800ppm以下に厳しく設定する運用が広がりました。本ツールで目標濃度を下げると必要換気量が跳ね上がることが分かり、感染対策としての換気強化がいかにコスト増を伴うかを定量的に理解できます。

住宅の24時間換気とシックハウス対策:2003年の建築基準法改正で、住宅には原則として0.5回/h以上の常時換気(24時間換気)が義務化されました。これは主にホルムアルデヒド等のVOC対策ですが、CO₂による在室密度の評価も居住性の指標として有効です。本ツールで小さな室容積・少人数の住宅条件を入力すると、必要換気量と換気回数 ACH の関係を住宅スケールで確認できます。

よくある誤解と注意点

まず最大の誤解が、「完全混合の仮定をそのまま実空間に当てはめる」ことです。本ツールの C(t) や定常濃度は、部屋全体でCO₂濃度が均一だと仮定しています。実際の室内は給気口の近くは新鮮、対角の隅やデスクの陰はよどみがちで、同じ部屋でも数百ppmの差が出ます。換気効率(給気が室内の汚染空気をどれだけ有効に押し出すか)が悪いと、計算上は十分な換気量でも、人がいる場所のCO₂は目標を超えます。給気口・排気口の配置とショートサーキット(給気がそのまま排気に抜ける)の有無を必ず確認してください。

次に、「定常状態だけ見て過渡を無視する」こと。Q = G/(C_t−C_oa) は十分に時間が経った後の値です。しかし人の出入りが激しい会議室や教室では、定常に達する前に人数が変わってしまうことも多くあります。時定数 τ が長い(=容積が大きい、または換気量が小さい)部屋では、入室から30分〜1時間たってもまだ濃度が上昇途中ということが起こります。「定常値が基準内」でも「ピーク時に基準内」とは限らない点に注意し、過渡応答カーブと時定数を合わせて評価してください。

最後に、「換気量を増やせば必ず良い」とは限らないという点。換気量を増やすほどCO₂濃度は下がりますが、外気を取り込む分だけ冷暖房の負荷が増え、ファン動力も増えます。真夏・真冬には換気がエネルギー消費の大きな割合を占めます。だからこそ需要制御換気(DCV)で、人がいないときや少ないときは外気量を絞る制御が重要になります。また、外気そのものがPM2.5や花粉で汚れている地域では、むやみに外気を入れると別の空気質問題を招くため、外気の状態とフィルタ性能も含めて総合的に判断する必要があります。

使い方ガイド

  1. 在室人数(nNum)を入力します。例えば会議室10人、オフィス50人など実際の利用シーンを設定します
  2. 室容積(nRange)をm³単位で指定します。天井高2.7mの20m²室なら54m³となります
  3. 目標CO₂濃度(ctNum)をppm単位で入力します。居住域基準1000ppm、公共施設800ppmが標準値です
  4. シミュレーターが必要換気量Q、換気回数ACH、時定数τを自動計算し、リアルタイムで表示します
  5. 1人あたり換気量が建築基準法の基準値(一般室40m³/h·人以上)に適合しているか判定表示されます

具体的な計算例

50人が利用する300m³のオフィスで目標CO₂濃度1000ppmに設定した場合:人体CO₂発生量G=50人×0.02L/h·人=1.0L/h、換気量Q=(1.0L/h)/(1000-400ppm)×10^6≈1.67m³/h(不足)。実際には屋外空気導入で3000ppmを400ppmに維持する換気設計とし、Qmin=300m³/h×(1000-400)/(外気400-内気1000)×0.3=約150m³/hが必要です。ACH=150/300=0.5回/hで、時定数τ=60分/0.5=120分となり、2時間で目標値に到達します

実務での注意点

  1. オフィス・学校は在室人数が時間帯で大きく変動します。ピーク人数で換気設計し、CO₂センサーの自動制御と組み合わせて過換気を防ぎます
  2. 外気温が-10℃の冬季は導入空気を30℃まで加熱する負荷が発生するため、全熱交換器の導入でコストと省エネを両立させます
  3. 医療施設・実験室など用途により目標CO₂濃度が異なります。手術室は800ppm、負圧隔離病室は700ppmを下限とします
  4. 計算結果のACHが低い場合、既存ダクト径を拡大するか吸込口数を増設して気流短絡を改善し、実効換気を確保します