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アナログ電子回路シミュレーター

ウィーン橋発振回路 シミュレーター — 正弦波発振の条件

抵抗 R、容量 C、増幅器ゲイン A、電源電圧 V_supply からウィーン橋発振回路の発振周波数 f₀=1/(2πRC)、周波数選択帰還比 β、持続発振条件 A·β=1 をリアルタイムに計算し、回路模式図と出力波形を可視化します。A を 3 より小さくすれば減衰、3 ちょうどで持続正弦波、3 を超えれば飽和(クリッピング)と、3 つのレジームの境界をスライダーで体感しながら、計測機器や信号源で広く使われる低周波 RC 発振器の動作原理を直感的に学べます。

パラメータ設定
抵抗 R
容量 C
nF
電源電圧 V_supply
V
増幅器ゲイン A

既定値は R=10 kΩ、C=100 nF(f₀≒159.2 Hz の低周波 RC 発振器)に ±V_supply=15 V の標準オペアンプ電源、A=3.00 の持続発振点。A を 1→5 にスイープすると、減衰→持続→飽和の3レジームを境界 A=3 を挟んで連続的に観察できます。

計算結果
発振周波数 f₀
f₀ での帰還比 β
必要最小ゲイン A_min
動作モード
ウィーン橋発振回路の模式図

非反転オペアンプ+ウィーン橋(RC 直列 + RC 並列)の構成。R, C, R_f, R_g, V_supply の各素子値を回路図上に表示します。R_g=10 kΩ 固定、R_f=(A-1)·R_g がフィードバック抵抗で、A は反転入力側の抵抗比から決まります。

出力電圧 V_out の時間波形

横軸 時間 t (ms) [0–50]、縦軸 出力電圧 V_out (V)。A=3 で持続正弦波、A<3 で指数減衰、A>3 で振幅増大→±V_supply で頭打ち(クリッピング)。包絡線(赤破線)が成長率 σ=(A·β-1)·π·f₀ の理論挙動。

理論・主要公式

ウィーン橋発振回路の発振周波数・帰還比・持続発振条件は次の式で与えられます。

発振周波数:

$$f_{0} = \frac{1}{2\pi R C}$$

f₀ における周波数選択フィードバック比:

$$\beta(f_{0}) = \frac{1}{3}$$

持続発振条件(バルクハウゼン条件):

$$A \cdot \beta = 1 \;\;\Longrightarrow\;\; A_{\min} = 3$$

$R$ は周波数決定抵抗 [Ω]、$C$ は周波数決定容量 [F]、$A$ は非反転増幅器のゲイン、$\beta$ はウィーン橋帰還回路の伝達比、$V_{\mathrm{supply}}$ は電源電圧 [V]。$A<3$ で減衰、$A=3$ で持続発振、$A>3$ で振幅が飽和して $\pm V_{\mathrm{supply}}$ にクリップします。

ウィーン橋発振回路 シミュレーターとは

🙋
既定値で f₀=159.2 Hz って表示されてます。これって R と C だけで決まる発振周波数ですよね?でも自分で組んだ回路ではちゃんと発振しないことが多くて…なんでですか?
🎓
そう、f₀=1/(2πRC) は周波数決定式で、R=10 kΩ、C=100 nF なら確かに 159.2 Hz だ。でも発振が始まるかどうかは別の話で、もう一つ「持続発振条件 A·β=1」を満たす必要がある。ウィーン橋は f₀ で β=1/3 になるから、増幅器ゲイン A をちょうど 3 にしないとループゲインが 1 にならない。ブレッドボードで組むと、A<3 なら立ち上がっても減衰してゼロに収束、A>3 なら急速に振幅が増えて電源電圧 ±V_supply でクリップする。スライダーを動かして A=2.9, 3.0, 3.1 と切り替えれば、3 つのレジームが境界 A=3 を挟んで連続的に変化するのが体感できるよ。
🙋
なるほど A=3 ぴったりで正弦波が持続するんですね。でも実物で A=3.0000... に合わせるなんて無理ゲーじゃないですか?
🎓
いいツッコミ。だから本物のウィーン橋発振器には「振幅安定化回路」が組み込まれている。歴史的に有名なのは Hewlett-Packard の HP200A(同社の創業製品、1939 年)で、白熱電球(小型のタングステンランプ)を R_g として使った。電球は流れる電流が増えると温度が上がり抵抗値が増える「正の温度係数」を持つので、振幅が大きくなると自動的に R_g が増えてゲイン A=1+R_f/R_g が下がる方向に働く。結果、A は平衡点 A=3 に自己安定し、低歪み正弦波が得られる。現代では JFET、可変抵抗 IC、ダイオード+RC で同じことをやる。ウィーン橋発振器が「世界初のオーディオ精密信号源」として計測器の標準になった所以だね。
🙋
右の波形グラフを見ると、A=3.3 にすると振幅がぐんぐん大きくなって、最後は ±15 V でカクッと折れて矩形波っぽくなりますね。これがクリッピングですか?
🎓
そう、それがオペアンプの飽和(クリッピング)。出力電圧は電源電圧 ±V_supply を超えられないから、振幅増大が頭打ちになって正弦波の山と谷が平らに切り取られる。波形は矩形波に近づくが、正確にはバルクハウゼン条件を破った非線形リミットサイクル振動で、周波数成分は基本波 f₀ に加えて 3 倍波、5 倍波(奇数次高調波)が現れる。THD(全高調波歪み率)はゲインを 3 に近づけるほど下がり、計測用信号源としては A=3.001〜3.01 程度の僅かなオーバーゲインに振幅安定化回路を組み合わせて、THD<0.01% を実現する。スライダーで A を 4→5 と上げると、波形が完全に矩形波になる様子が観察できる。
🙋
stat-card に「持続発振」って表示されてます。発振周波数 f₀ を変えるには?オーディオ帯(20 Hz〜20 kHz)の信号発生器作りたいんですけど。
🎓
R を 1〜100 kΩ、C を 1 nF〜1 μF で組み合わせれば、f₀ は約 1.6 Hz〜160 kHz の広範囲をカバーできる。オーディオ帯なら R=10 kΩ 固定、C を 1 nF(15.9 kHz)、10 nF(1.59 kHz)、100 nF(159 Hz)、1 μF(15.9 Hz)と切替えるレンジスイッチで対応。連続可変は 2 連可変抵抗(R と R が同時に動くガングポット)を使うのが伝統。本ツールのスライダーを動かして R と C を変えると f₀ が反比例で変わる様子が確認できる。CR 発振器は LC 発振器より低周波で有利、水晶発振器より広帯域チューニング可能、という棲み分けで現在も信号源・関数発生器の出力段や計測器の校正用基準源として使われ続けているんだ。

物理モデルと主要な数式

ウィーン橋発振回路は、非反転オペアンプ増幅器(ゲイン $A = 1 + R_f/R_g$)の出力を、RC 直列 $Z_s = R + 1/(j\omega C)$ と RC 並列 $Z_p = R/(1+j\omega RC)$ から成る分圧器を通じて正帰還する構成です。

$$\beta(j\omega) = \frac{Z_p}{Z_s + Z_p} = \frac{1}{3 + j\!\left(\omega RC - \dfrac{1}{\omega RC}\right)}$$

虚部がゼロとなる角周波数 $\omega_0 = 1/(RC)$ で $\beta$ は実数 $\beta_0 = 1/3$(位相 0°)となり、これが発振周波数 $f_0 = \omega_0/(2\pi) = 1/(2\pi RC)$ です。発振の必要十分条件はバルクハウゼン条件 $A\cdot\beta = 1$(位相一致 + 振幅一致)で、$\beta_0 = 1/3$ から $A_{\min} = 3$。

線形小信号解析では、$A\cdot\beta > 1$ で振幅が成長率 $\sigma = \pi f_0 (A\beta - 1)$ で指数増加、$A\cdot\beta < 1$ で同様に指数減衰します。$A\cdot\beta = 1$ ちょうどでは振幅一定の正弦波が持続。実機では振幅が大きくなると非線形要素(電球・JFET・ダイオード)でゲインが自動的に下がり、安定したリミットサイクル振動に収束します。$A$ がやや大きい(例:$A = 3.01$)状態で電源投入し、振幅増大→ゲイン自己低下→振幅安定、という負帰還ループで動作するのが実用設計です。

本ツールは線形成長モデル $v(t) = V_0 \exp(\sigma t)\sin(2\pi f_0 t)$ を描画し、$|v|$ が $V_{\mathrm{supply}}$ に達した時点で電源電圧でクリップさせるという簡易非線形モデルで $A>3$ レジームを近似表示します。

実世界での応用

計測機器の精密低歪み信号源:HP200A(Hewlett-Packard 創業製品、1939 年)以来、ウィーン橋発振器はオーディオ帯の精密正弦波発生源として計測器に広く採用されてきました。タングステン電球を振幅安定化素子に使い、THD<0.01%、周波数安定度<10⁻⁴ を実現。本ツールに既定値 R=10 kΩ、C=100 nF を入れると f₀=159.2 Hz、A=3 で持続発振が確認でき、R を 1 kΩ→100 kΩ、C を 1 nF→1 μF にレンジ切替すれば 1.6 Hz〜160 kHz をカバー、オーディオ帯(20 Hz〜20 kHz)全域の信号発生器が設計可能です。現代の Audio Precision、HP 8903 等の歪み計の出力段にも改良版が現役で使われています。

関数発生器・標準信号発生器:農機の振動試験、自動車 ECU の波形入力、医療用心電図シミュレータ、地震計の校正用基準信号などで、低周波純正弦波が必要な場面に多用されます。LC 発振器は低周波で L が巨大化し非実用的、水晶発振器は周波数固定で連続可変が困難、という制約に対し、ウィーン橋なら R・C の組合せで mHz から MHz まで広帯域チューニング可能。本ツールで R を最大 100 kΩ、C を最大 1 μF にすると f₀=1.59 Hz まで下がり、地震・建築構造物の低周波振動試験帯域もカバーできることが確認できます。

教育用アナログ電子回路実習:大学工学部のアナログ電子回路実験で「オペアンプ+RC 帰還で正弦波を作る」教材として定番。バルクハウゼン条件(位相 0°+ ゲイン 1)の理解、正帰還と負帰還の役割分担、振幅安定化の必要性など、フィードバック制御の基礎概念が一台で学べます。本ツールで A を 2.9→3.0→3.1 と微調整するとレジームが切り替わる様子が即座に観察でき、ブレッドボード実習前後の概念理解補助に最適です。Texas Instruments、Analog Devices のアプリケーションノートでも教材として頻出のトポロジーです。

パワーエレクトロニクス・モータ制御の基準信号:三相インバータの PWM 基準正弦波、サーボモータ位置決め試験用低周波信号、UPS(無停電電源装置)の出力品質試験など、産業用パワエレ機器でも内部基準信号源として組み込まれます。最近はディジタル DDS(Direct Digital Synthesis)に置き換えられつつありますが、アナログのままで超低歪み(THD<0.0005% 級、State-Variable Oscillator 構成)を実現する高級信号源では依然として現役。本ツールで V_supply を 3 V→30 V に振ると出力振幅範囲が比例して変わり、ロジック電源/パワー電源系で同じトポロジーが使える柔軟性も確認できます。

よくある誤解と注意点

最も多い誤解は、「ゲイン A をちょうど 3 に固定すればきれいな正弦波が出る」というものです。実機では A を厳密に 3 に合わせることは不可能で、温度・電源変動・部品許容差で常にゆらぐため、A<3 で停止か A>3 で飽和のどちらかに必ず偏ります。実用設計では A をわずかに 3 超え(例:A=3.01〜3.10)にし、振幅安定化回路(電球、JFET、ダイオード+RC、AGC IC)を組み合わせて自動的に A_平均 を 3 に保つ負帰還ループを構築します。本ツールで A=3.00 ちょうどに合わせると線形理論どおり持続振動になりますが、これは数値計算上の理想状態であり、実機では達成不可能であることに注意。

次に多いのが、「f₀=1/(2πRC) は R と C の許容差にあまり依存しない」という思い込みです。f₀ は R と C の積に反比例するため、R と C の許容差が ±5%、±5% なら f₀ の許容差は約 ±7%(独立 RSS 合成)になります。精密信号源では金属皮膜抵抗(許容差 ±0.1〜1%)と PPS/ポリスチレン/NPO セラミックコンデンサ(許容差 ±1〜5%、温度係数 50 ppm/K 以下)を使い、温度補償回路と組み合わせて f₀ 安定度<10⁻⁴ を実現します。本ツールは公称値で計算するため、実機との比較時はこの許容差が乗ることを念頭に置いてください。

最後に、「ウィーン橋発振器は高周波でも使える」という誤解です。f₀=1/(2πRC) は理論上どこまでも高くできますが、実機ではオペアンプの GBP(利得帯域積)と スルーレートが律速になり、汎用オペアンプ(GBP=1〜10 MHz)では f₀ が数百 kHz を超えると位相遅れで発振条件が崩れます。高周波(>1 MHz)では LC 発振器(コルピッツ、ハートレー)か水晶発振器が定石。ウィーン橋の得意領域は mHz〜100 kHz の低〜中周波領域です。本ツールで C を最小値 1 nF、R を最小値 1 kΩ にすると f₀≒159 kHz が得られ、これが汎用オペアンプ実機での実用上限の目安と一致します。

よくある質問

ウィーン橋発振回路は、RC 直列と RC 並列の組から成る「ウィーン橋」を周波数選択フィードバック網に使い、非反転増幅器(オペアンプ)と組み合わせて正弦波を発振させる代表的な RC 発振器です。発振周波数は f₀=1/(2πRC) で与えられ、その周波数で帰還比 β は 1/3 になります。持続発振の条件はループゲイン A·β=1、すなわち増幅器ゲイン A_min=3。既定値 R=10 kΩ、C=100 nF を入れると f₀≒159.2 Hz が得られ、低周波正弦波信号源として古くから計測機器に使われてきました。
ウィーン橋の帰還回路は、RC 直列インピーダンス Z_s=R+1/(jωC) と RC 並列インピーダンス Z_p=R/(1+jωRC) の分圧 β=Z_p/(Z_s+Z_p) で表されます。これを整理すると β=1/(3+j(ωRC-1/(ωRC))) となり、ω=1/(RC) すなわち f₀=1/(2πRC) で虚部がゼロになり、β=1/3(実数、位相 0)となります。位相条件(一周回って 0°)と振幅条件(A·β=1)が両方満たされる唯一の周波数が f₀ なので、出力にはこの周波数の正弦波だけが残り、自己持続する発振が成立します。
A<3(例:A=2.8)の場合はループゲイン A·β<1 となり、初期擾乱は指数関数的に減衰してやがてゼロに収束し、発振は起きません。A=3 ちょうどでは A·β=1 で振幅は不変のまま正弦波が持続発振します。A>3(例:A=3.3)では A·β>1 となり振幅が指数関数的に増大し、最終的に電源電圧 ±V_supply で頭打ちになって正弦波が矩形波風にクリッピング(飽和)します。実機ではゲインを電源投入直後だけ A>3 に、定常時には A=3 に自動調整する非線形要素(白熱電球フィラメント、ダイオード、JFET 等)を組み込み、安定した低歪み正弦波を得ます。
f₀=1/(2πRC) を見ると、R を大きくしても C を大きくしても f₀ は反比例で下がります。例えば R=10 kΩ、C=10 nF にすると f₀=1/(2π·1e4·1e-8)≒1.592 kHz と既定値の 10 倍になり、R=1 kΩ、C=1 μF にすると f₀≒159.2 Hz のままで電源容量や占有面積だけが変わります。本ツールのスライダーで R を 1〜100 kΩ、C を 1〜1000 nF で動かすと f₀ が 1.6 Hz〜160 kHz の広範囲にスイープでき、オーディオ帯(20 Hz〜20 kHz)の信号発生器設計の感覚がつかめます。実機では R を可変抵抗器、C を切替コンデンサにして連続可変・帯域切替を行います。