パラメータ設定
T をスイープ
リセット
既定値は太陽表面相当(T=5800 K、ε=1.0 黒体)に A=1.0 m² の単位面、R=10.0 m の点源近似観測距離。距離 R は放射体寸法より十分大きいときに E = P/(4πR²) の点源近似が成立します。
プランク曲線とピーク波長
横軸 波長 λ (nm) [0–3000]、縦軸 スペクトル放射輝度(相対値)。橙曲線がプランクの法則、黄マーカーがピーク λ_max。淡い色帯は可視光帯(380〜780 nm)。温度 T を上げると曲線は左(短波長)にシフトし高くなる。
T-λ_max 関係(log-log)
横軸 温度 T (K) [100–10000]、縦軸 λ_max (nm) を log-log 表示。青直線はウィーンの変位則 λ_max=b/T(傾き -1)。黄マーカーが現在の動作点 (T, λ_max)。
理論・主要公式
黒体放射のピーク波長と全放射エネルギーは、それぞれウィーンの変位則とステファン・ボルツマン則で記述されます。
ウィーンの変位則:
$$\lambda_{\max}\,T = b,\quad b = 2.898\times10^{-3}\ \mathrm{m\cdot K}$$
ステファン・ボルツマン則(単位面積放射発散度):
$$q = \varepsilon\,\sigma\,T^{4},\quad \sigma = 5.670\times10^{-8}\ \mathrm{W/(m^{2}\cdot K^{4})}$$
全放射力と点源近似での距離 R の放射照度:
$$P = q\,A,\qquad E = \frac{P}{4\pi R^{2}}$$
$T$ は絶対温度 [K]、$\varepsilon$ は放射率(黒体で 1)、$A$ は放射表面積 [m²]、$R$ は観測距離 [m]、$b$ はウィーン変位定数、$\sigma$ はステファン・ボルツマン定数。$\lambda_{\max}$ は温度 $T$ の黒体スペクトルがピークを持つ波長で、温度が高いほど短波長側へシフトします。
ウィーンの変位則 シミュレーターとは
🙋
既定値の T=5800 K で λ_max=500 nm って表示されてます。これって太陽の話ですか?なんで温度だけでピーク波長が決まるんですか?
🎓
いいところに気づいたね。ウィーンの変位則 λ_max·T = b(b=2.898×10⁻³ m·K)は、黒体のスペクトルがピークを持つ波長は温度だけで決まる、という法則だ。プランクの法則を波長で偏微分してゼロと置くと出てくる結果で、サイズや材質には依らない(ただし放射率 ε はスペクトル全体の高さを変える)。太陽表面 5800 K で λ_max≒500 nm(緑色)、白熱電球 2800 K で λ_max≒1035 nm(近赤外)、人体 310 K で λ_max≒9.4 μm(中赤外)とどんどん長波長側にずれる。サーモグラフィが赤外センサで人を見られるのは、人体の λ_max がちょうど赤外領域にあるからだね。
🙋
右の log-log グラフが綺麗な直線ですよね。傾き -1 になるのもこの式から出るんですか?
🎓
そう、まさに λ_max=b/T の両辺の log を取ると log(λ_max) = log(b) − log(T) になり、log-log では傾き -1 の直線になる。スイッチ「T をスイープ」を押して T を 100→10000 K で動かしてみて。黄マーカーがその直線上をぴったり滑っていく。切片 log(b)=−2.54(λ を nm にすると +6.46)も読み取れて、定数 b の値検証にも使える。実験で複数温度の黒体スペクトルを測ってこのプロットに乗せれば、ウィーン定数 b を実験的に決定できる教科書的な手順なんだ。
🙋
プランク曲線の下にある淡い色帯って何ですか?太陽だとちょうどそこにピークがありますね。
🎓
それが可視光帯(380〜780 nm)だ。太陽 5800 K がちょうどここにピークを置く絶妙な温度で、地球上の生命が可視光を主に使う進化的理由とも結び付けて語られる。T=2000 K まで下げてみると、ピークが完全に右(赤外)に逃げて可視光帯に入る成分はほぼ無し。逆に T=10000 K(青色巨星クラス)まで上げると、ピークは紫外側まで突き抜けて可視光帯にあるのは長波長側の裾だけ。白熱電球が黄色っぽく薄暗いのも、太陽より低温でピークが赤外にあって可視光成分が少ないから。LED は逆に可視波長だけを電気励起で出すから効率が圧倒的に高いんだ。
🙋
stat-card に「全放射力 P=64.2 MW」「距離 R=10 m での放射照度 E=51.1 kW/m²」って出てます。これって 1 m² の太陽表面が 10 m 先で kW 級って…とんでもない強さですね。
🎓
そう、ステファン・ボルツマン q=εσT⁴ で温度 4 乗依存だから 5800 K では q=64.2 MW/m²、A=1 m² で全放射力 P=64.2 MW、R=10 m 等方放射点源近似で E=P/(4πR²)=51.1 kW/m² になる。実際の太陽は半径 6.96×10⁸ m の巨大球面でこの q を放射し、地球軌道 R=1.496×10¹¹ m まで距離を伸ばすと E≒1.4 kW/m²(太陽定数)にきれいに対応する。本ツールは点源近似なので R が放射体寸法より十分大きいときに使う前提だが、ε と A のスライダーを組み合わせれば白熱フィラメント、LED 基板、太陽電池モジュール、人体まで同じ枠組みで放射性能を見積もれる。CAE 熱解析の境界条件設定にもそのまま使える基礎式だね。
物理モデルと主要な数式
ウィーンの変位則は、プランクの法則 $B_{\lambda}(\lambda,T) = (2hc^2/\lambda^5) / (\exp(hc/\lambda k_{B}T) - 1)$ を波長について偏微分してゼロと置くことで導かれます。
$$\lambda_{\max}\,T = b,\qquad b = \frac{hc}{k_{B}\,x_{W}} = 2.898\times10^{-3}\ \mathrm{m\cdot K}$$
ここで $x_{W}=4.965114\ldots$ は超越方程式 $x e^{x} - 5(e^{x}-1) = 0$ の数値解で、$h$ はプランク定数、$c$ は光速、$k_{B}$ はボルツマン定数です。同じプランク分布を全波長で積分すると単位面積放射発散度(Stefan-Boltzmann 則)が得られ、$q = \int_{0}^{\infty} \pi B_{\lambda}\,d\lambda = \sigma T^{4}$、$\sigma = 2\pi^{5}k_{B}^{4}/(15h^{3}c^{2}) = 5.670\times10^{-8}\ \mathrm{W/(m^{2}\cdot K^{4})}$。実物体は $\varepsilon\le 1$ の灰色体と近似され、$q = \varepsilon\sigma T^{4}$ となります。
表面積 $A$ をもつ放射体の全放射力は $P = q A$、点源近似で距離 $R$ にある観測点の放射照度(irradiance)は等方放射の球面分布 $E = P/(4\pi R^{2})$ で与えられます。点源近似は $R$ が放射体寸法より十分大きいときに成立し、近距離では形態係数(view factor)を考慮した二面間正味交換式 $Q_{\mathrm{net}} = \varepsilon\sigma A F_{12}(T_{1}^{4}-T_{2}^{4})$ を用います。
本ツールは黒体スペクトルを $u(x)=(1/x^{5})/(\exp(x_{W}/x)-1)$($x=\lambda/\lambda_{\max}$)の自己相似形で描画するため、温度 $T$ を変えると曲線は左右にスケールされるだけで形状は保たれます。これがプランク分布の重要な性質「Wien-Planck similarity」です。
実世界での応用
太陽光・太陽電池の波長設計: 太陽(T≒5800 K)は λ_max≒500 nm にピークを持ち、可視光帯 380〜780 nm に放射エネルギーの約 43% が集中します。本ツールに既定値を入れると q=64.2 MW/m²、A=1 m² で全放射力 P=64.2 MW、地球軌道距離 R=1.496×10¹¹ m まで延ばすと E=1.36 kW/m²(太陽定数)が得られ、シリコン太陽電池(バンドギャップ 1.12 eV、長波長カットオフ 1100 nm)の理論変換効率(Shockley-Queisser 限界 33%)の根拠が直感的に理解できます。タンデム型・ペロブスカイト型太陽電池の波長分割設計にもこの分布が直接効きます。
白熱電球・LED 照明の発光効率: 白熱電球のタングステンフィラメント(T≒2800 K)は λ_max≒1035 nm(近赤外)で、可視光帯にあるのは長波長側の裾のみ、発光効率は 10〜15 lm/W に留まります。本ツールで T を 2800→3300 K に上げると λ_max が 1035→878 nm に短くなり可視光成分が増加しますが、温度上昇で q は 1.94 倍に膨れ寿命が激減(Arrhenius 則)。一方 LED は半導体バンドギャップで決まる狭い波長を直接電気励起するためウィーン分布の制約を受けず、白色 LED は 100 lm/W 超を達成しています。
赤外サーモグラフィ・体温計: 人体(T≒310 K)は λ_max≒9.4 μm(中赤外)にピークを持ち、酸化バナジウム VOx ボロメータや量子型 InSb/HgCdTe 検出器で常温物体の熱画像が撮影できます。本ツールで T を 310 K に設定すると λ_max が図外右に飛ぶことが確認でき(チャートは 0〜3000 nm)、検出器の感度波長帯(8〜14 μm の大気の窓)に合わせた光学系設計が必要になることが分かります。発電所配管・建物の断熱欠陥診断・新型コロナ検温まで応用範囲は広大です。
恒星分類と色温度: 天文学では恒星のスペクトル色から表面温度を逆算します。赤色巨星 Betelgeuse(T≒3500 K、λ_max≒828 nm)、太陽型 G2V(5800 K、500 nm)、白色矮星 Sirius B(25000 K、116 nm)、青色巨星 Rigel(11000 K、263 nm)と λ_max が紫外〜赤外に分布します。本ツールの T を 100〜10000 K でスイープすると、可視光帯にピークを持つ温度範囲が約 3700〜7600 K と狭いことが視覚的に分かり、太陽の特異性が際立ちます。HR 図(Hertzsprung-Russell 図)の横軸は色温度 T、縦軸は光度 σT⁴·4πR_★² に対応し、本ツールで両法則を同時計算できます。
よくある誤解と注意点
最も多い誤解は、「ウィーンの変位則のピーク波長と、周波数表示でのピーク周波数が単純に c=λν で結ばれる」 というものです。実は波長分布 B_λ と周波数分布 B_ν は変数変換 |dλ|=|c/ν²|dν の Jacobian を伴うため、両者のピークは同じ温度でも異なる位置に来ます。波長分布のピークは $\lambda_{\max}T=2898\ \mu\mathrm{m\cdot K}$ で $x_{W}=4.965$、周波数分布のピークは $\nu_{\max}/T=58.79\ \mathrm{GHz/K}$ で $x_{W}'=2.821$。これに対応する波長は $c/\nu_{\max}=5.099\ \mathrm{mm\cdot K}/T$ で、波長ピークの 1.76 倍も大きくなります。論文を読むときは「波長表示か周波数表示か」を必ず確認してください。本ツールは波長表示で統一しています。
次に多いのが、「実物体は黒体ではないのでウィーンの変位則は使えない」 という誤解です。放射率 ε が波長にほぼ依存しない灰色体近似 ($\varepsilon(\lambda)\approx\mathrm{const}$) では、ピーク波長は黒体と同じ b/T で決まります(ε はスペクトル全体の高さを下げるだけ)。一方、放射率が強い波長依存性を持つ「選択放射体」(例:穴ぞうきん型 cavity、フォトニック結晶、二次元材料)では、実効ピーク波長が黒体予測からずれます。本ツールは ε を一定値として扱うため灰色体に適用可能で、選択放射体の解析には B_λ(λ,T)·ε(λ) を波長関数として積分する必要があります。
最後に、「点源近似 E=P/(4πR²) はあらゆる距離で成り立つ」 という思い込みです。本式は放射体寸法 √A が距離 R より十分小さい遠方場で成立し、近距離では形態係数 F が 1/(4πR²) よりはるかに大きくなります。例えば直径 D の球状放射体の表面(R=D/2)では真の F=0.5 で、点源式の予測(=1/(4π·(D/2)²)=1/(πD²))の数倍になり得ます。CAE 熱解析では複数面間の正味放射熱交換 $Q_{\mathrm{net}}=\varepsilon\sigma A F_{12}(T_{1}^{4}-T_{2}^{4})$ を使い、形態係数は幾何積分または閉じた式(直方体・同軸円筒・平行平板)で求めます。本ツールは「太陽-地球」のような遠方場の見積りや、放射体表面での q・P 計算には過不足なく使えます。
よくある質問
ウィーンの変位則とは何ですか?
ウィーンの変位則は、黒体のスペクトル放射輝度がピークになる波長 λ_max と絶対温度 T の積が一定であることを示す法則で、λ_max·T = b、b = 2.898×10⁻³ m·K(Wien displacement constant)と書けます。温度が高いほどピーク波長は短く、可視〜紫外側にシフトします。本ツールに既定値 T=5800 K(太陽表面相当)を入れると λ_max=2.898e-3/5800≒5.0×10⁻⁷ m=500 nm(緑色付近)が得られ、太陽光が可視光帯にピークを持つ理由を直感的に確認できます。
ステファン・ボルツマン則とウィーン変位則はどう違うのですか?
ステファン・ボルツマン則 q = εσT⁴ は黒体(または放射率 ε の灰色体)が単位面積あたり放出する全放射エネルギーフラックスを与え、温度の 4 乗に強く依存します。一方ウィーンの変位則 λ_max·T = b は同じスペクトルの「ピーク波長」を与え、波長分布の形状を決めます。両者はプランクの法則 B_λ(λ,T) を波長で積分すれば σT⁴、波長について偏微分してゼロと置けば b/T と、同一のプランク分布から導かれる相補的な関係です。本ツールは両者を 1 画面で同時に表示します。
距離 R での放射照度 E はどう計算しますか?
全放射力 P = q·A = εσT⁴·A を等方放射する点源と仮定すると、距離 R にある半径 R の球面上で照度が均一に分布し、E = P/(4πR²) と書けます。本ツールに既定値 T=5800 K、ε=1.0、A=1.0 m²、R=10.0 m を入れると q≒6.42×10⁷ W/m²、P≒64.2 MW、E≒51.1 kW/m² が得られます。実際の太陽(半径 6.96×10⁸ m)の表面で q=64.2 MW/m²、地球軌道(R=1.496×10¹¹ m)まで距離を伸ばすと E≒1.4 kW/m²(太陽定数)に対応する考え方です。点源近似は R が放射体寸法より十分大きいときに成立します。
可視光帯にピークを持たせるには温度をいくつにすればよいですか?
可視光帯はおよそ λ=380〜780 nm に対応し、ウィーンの変位則 T = b/λ_max から T=2.898e-3/780e-9≒3715 K(赤端)〜 T=2.898e-3/380e-9≒7626 K(紫端)の範囲となります。白熱電球のフィラメント温度(約 2800 K)では λ_max≒1035 nm(近赤外)と可視外にあるため発光効率が低く、太陽(5800 K)はちょうど可視光中央にピークを置く絶妙な温度です。本ツールで T を 100〜10000 K でスイープすると λ_max と可視光帯(380〜780 nm のハッチング)の関係が一目で分かり、白色 LED や太陽電池の波長設計指針として活用できます。