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電子回路

ツェナーダイオード定電圧回路シミュレーター

直列抵抗とツェナーダイオードだけで作る、最もシンプルな定電圧回路(シャントレギュレータ)を設計するツールです。入力電圧・ツェナー電圧・直列抵抗・負荷抵抗を変えると、出力電圧・各部の電流・消費電力がリアルタイムで分かり、安定した基準電圧を作れます。

パラメータ設定
入力電圧 V_in
V
レギュレータに供給される変動しうる入力電圧
ツェナー電圧 V_z
V
ツェナーダイオードの定格降伏電圧
直列抵抗 R_s
Ω
入力と出力ノードの間に入れる電流制限抵抗
負荷抵抗 R_L
Ω
出力に並列につながる負荷。小さいほど重負荷
計算結果
出力電圧 V_out (V)
直列抵抗の電流 I_total (mA)
負荷電流 I_load (mA)
ツェナー電流 I_zener (mA)
ツェナー消費電力 P_zener (mW)
レギュレーション判定
ツェナー定電圧回路図 — 電流フローアニメーション

入力 V_in から直列抵抗 R_s を通った全電流が、ノードで負荷電流とツェナー電流に分かれます。ツェナーは余剰電流をグランドへ逃がし、出力を V_z に保ちます。流れる点が各電流の大きさを表します。

出力電圧 V_out vs 入力電圧 V_in
ツェナー電流 I_zener vs 負荷抵抗 R_L
理論・主要公式

$$I_{total}=\frac{V_{in}-V_z}{R_s},\qquad I_{load}=\frac{V_z}{R_L}$$

直列抵抗の電流 I_total と負荷電流 I_load。V_in:入力電圧、V_z:ツェナー電圧、R_s:直列抵抗、R_L:負荷抵抗。

$$I_{zener}=I_{total}-I_{load},\qquad P_{zener}=V_z\cdot I_{zener}$$

ツェナー電流 I_zener とツェナー消費電力 P_zener。ツェナーは余剰電流をシャント(グランドへ放流)して出力を一定に保つ。

$$V_{out}=V_z \quad (I_{zener}\ge I_{z,\min})$$

出力電圧 V_out は、ツェナー電流が最低保持電流 I_z,min(本ツールでは1mA)以上の間だけ V_z に固定される。下回ると降伏を維持できず出力が低下する。

ツェナー定電圧回路とは

🙋
「ツェナーダイオード」って普通のダイオードと何が違うんですか?逆向きに電圧をかけて使うって聞いたんですけど。
🎓
ざっくり言うと、ツェナーは「わざと逆向きで壊れるように作ったダイオード」なんだ。普通のダイオードは逆電圧をかけても電流を流さないけど、ある電圧を超えると突然「降伏(ブレークダウン)」してドッと電流が流れる。ツェナーはこの降伏電圧を狙った値に精密に作り込んであって、しかも降伏中は電流が大きく変わっても電圧がほとんど動かない。この「電圧が動かない」性質が、定電圧回路の主役になるんだよ。
🙋
なるほど。その性質を使うと、どうやって電圧を一定にできるんですか?
🎓
部品は2つだけ。直列抵抗 R_s とツェナーだ。R_s を入力からつないで、その先のノードにツェナーを逆向き(グランド向き)に入れる。負荷もそのノードに並列にぶら下げる。R_s が「変動する高い入力電圧」と「一定の出力」の差を全部受け持って、ツェナーは出力ノードに張り付いて電圧をピン留めする。左のスライダーで入力電圧 V_in を上げ下げしてみて。出力電圧 V_out がツェナー電圧 5.1V から動かないのが見えるはずだ。
🙋
本当だ、V_in を変えても V_out が 5.10V のまま! でも余った電流はどこへ行くんですか?
🎓
そこがツェナーの「シャント(横へ逃がす)」という働きだ。R_s を通った全電流 I_total のうち、負荷が取らなかった分をツェナーが全部グランドへ流してしまう。これが I_zener = I_total − I_load だね。負荷が急に軽くなって電流をあまり取らなくなったら、ツェナーがその余りをそのまま吸収する。入力電圧が上がって電流が増えても、増えた分はやっぱりツェナーが吸う。だからどっちの場合も出力はほとんど動かないんだ。下の「ツェナー電流 vs 負荷抵抗」グラフで R_L を動かすと、その吸収のしかたが見えるよ。
🙋
じゃあ万能ですね!…と思ったんですけど、何か弱点はないんですか?
🎓
大きな弱点が2つある。1つは効率の悪さ。R_s もツェナーも常に電流を流して電力を捨てているし、無負荷のときでもツェナーが全電流を吸って熱にしてしまう。もう1つは設計の難しさで、R_s には相反する条件がある。最悪条件(入力が一番低くて負荷が一番重いとき)でもツェナーに最低保持電流を流せるよう R_s は小さくしたい。でも逆の最悪条件(入力が一番高くて無負荷のとき)でツェナーの定格電力を超えないよう、R_s を小さくしすぎてもいけない。この綱引きの中で R_s を決めるんだ。だからツェナーシャント回路は「基準電圧づくり」や「軽い負荷の電源」には最高だけど、効率や大電流が必要なら3端子レギュレータやスイッチング電源を使うのが定石だよ。
🙋
入力電圧を下げすぎると判定が「レギュレーション喪失」に変わりました。これは何が起きているんですか?
🎓
入力電圧 V_in が下がると I_total が減る。それが負荷電流 I_load より小さくなると、ツェナーに流す余りがなくなって I_zener がゼロ以下になってしまう。そうなるとツェナーは降伏を維持できず、もう電圧をピン留めできない。出力はツェナー電圧 V_z より下に落ちて、ただの抵抗分圧みたいな動きになる。これが「ドロップアウト=レギュレーション喪失」だ。実務では、入力電圧が一番低くなる瞬間でもツェナー電流が保持電流を上回るように R_s を選ぶ。これがツェナー回路設計の一番大事なポイントなんだ。

よくある質問

ツェナーダイオードが逆方向降伏(ブレークダウン)している間、出力電圧はそのツェナー電圧 V_z にほぼ固定されます。直列抵抗 R_s が入力電圧 V_in と出力との差を受け持ち、ツェナーは出力に並列に入って電圧をピン留めします。したがって出力電圧 ≒ V_z です。ただしこれが成り立つのはツェナーに最低保持電流(本ツールでは1mA)以上が流れている間だけで、入力が下がりすぎたり負荷が重すぎたりすると降伏を維持できず出力が V_z より下がります。
直列抵抗には I_total = (V_in − V_z)/R_s の電流が流れます。負荷には I_load = V_z/R_L が流れます。ツェナーが流す電流は、その差分 I_zener = I_total − I_load です。つまりツェナーは「負荷が取らなかった余りの電流」をすべてグランドへ逃がす(シャントする)ことで、出力ノードの電圧を一定に保ちます。負荷電流が増えればツェナー電流はその分減り、負荷が軽くなればツェナーが余剰を吸収します。
直列抵抗 R_s には相反する2つの条件があります。1つ目は「最悪条件で最低でも保持電流を確保すること」。入力電圧が最も低く負荷が最も重いとき、I_zener が保持電流を下回ると出力が崩れるため、R_s は十分小さくする必要があります。2つ目は「ツェナーの定格電力を超えないこと」。入力が最も高く負荷が最も軽い(または無負荷)とき、ツェナーに余剰電流が集中して P_zener が増えるため、R_s を小さくしすぎると定格オーバーになります。両方の最悪条件を満たす範囲で R_s を決めます。
最大の欠点は効率が悪いことです。直列抵抗とツェナーは常に電流を流して電力を消費しており、無負荷でもツェナーが全電流を吸収するため電力が捨てられ続けます。また出力電流を多く取れず、入力電圧の変動範囲が広いと設計が難しくなります。安定した基準電圧づくりや軽負荷の電源には最適ですが、効率や大電流が必要な用途では3端子レギュレータやスイッチング電源を使うのが一般的です。

実世界での応用

基準電圧(リファレンス)の生成:ツェナーシャント回路の最も古典的かつ重要な用途が、安定した基準電圧づくりです。A/Dコンバータやコンパレータ、アナログ回路のバイアス点には「動かない電圧」が必要で、軽負荷であれば直列抵抗1本とツェナー1個で十分な精度の基準が作れます。より高精度が必要な場合は温度補償型ツェナー(バンドギャップ)に置き換えますが、回路トポロジは同じシャント型です。

マイコン・小信号回路への補助電源:消費電流の小さいマイコンやセンサ、オペアンプ1個程度の軽い負荷であれば、ツェナーシャント回路をそのまま電源として使えます。部品点数が少なく安価で、ICの3端子レギュレータが入手できない電圧でも、ツェナー電圧さえ選べば任意の出力が作れる柔軟さがあります。

過電圧保護・電圧クランプ:ツェナーは「規定電圧を超えたら一気に電流を流す」性質を逆に利用して、サージや過電圧から後段回路を守るクランプ素子としても多用されます。信号ラインや電源ラインに並列に入れておけば、定格を超えた瞬間にツェナーが電流を吸い、電圧を頭打ちにします。これも本ツールと同じ「シャント」動作です。

回路設計の学習・概算検討:ツェナー回路は、直流回路のオームの法則とキルヒホッフの電流則を最も素直に体験できる教材です。本ツールのような概算で、入力変動・負荷変動に対するツェナー電流や消費電力の振れ幅を当たりづけし、定格に余裕があるか、ドロップアウトしないかを設計段階で確認できます。SPICEで詳細解析する前のサニティチェックにも有効です。

よくある誤解と注意点

まず最大の誤解が、「出力電圧は常にツェナー電圧に等しい」と思い込むことです。出力が V_z に固定されるのは、ツェナーが降伏を維持できている間、つまりツェナー電流が最低保持電流より大きい間だけです。入力電圧が下がりすぎたり、負荷が重くなって負荷電流が直列抵抗の電流に近づいたりすると、ツェナーに回す余りがなくなり降伏が解けます。こうなると出力は V_z より下に落ち、回路はただの直列抵抗+負荷の分圧として振る舞います。本ツールで入力電圧を下げていくと、出力電圧が V_z から外れて落ちるドロップアウト点が確認できます。

次に、「無負荷なら回路はいちばん楽だ」という思い込み。実は逆で、無負荷こそツェナーにとって最も過酷な条件です。負荷が電流を取らないと、直列抵抗を通った全電流をツェナー1個が引き受けることになり、ツェナー消費電力 P_zener = V_z·I_zener が最大になります。ツェナーの定格電力は、この「入力最大かつ無負荷」という最悪ケースで超えないように選ばなければなりません。逆に保持電流の確保は「入力最小かつ重負荷」で考えます。設計では必ず両方の極端なケースを別々に検討してください。

最後に、「効率を気にせず大電流を取ろうとする」こと。ツェナーシャント回路は本質的に非効率で、直列抵抗とツェナーが常に電力を消費し、無負荷でも電力が捨てられ続けます。出力電流を大きく取ろうとすると直列抵抗を小さくする必要があり、その分だけ無負荷時のツェナー損失が跳ね上がります。数十mAを超える負荷や、電池駆動で効率が重要な用途では、ツェナー単独ではなくエミッタフォロワを足す、あるいは3端子レギュレータやスイッチング電源に切り替えるのが正解です。ツェナーシャント回路は「軽負荷・基準電圧・低コスト」という土俵で使うものだと割り切りましょう。

使い方ガイド

  1. 入力電圧V_inを5~30Vの範囲で設定します。AC電源を整流した直流電圧を想定してください。
  2. ツェナーダイオードの定格電圧V_zを2.7~20Vで選択します。一般的な5.1V、10V、15Vなどの規格品から選定してください。
  3. 直列抵抗R_sを10~1000Ωで入力します。通常は100~470Ωの炭膜抵抗を使用します。
  4. 負荷抵抗R_Lを100Ω~10kΩで設定し、実際の消費回路の抵抗値を指定します。
  5. シミュレーション実行後、出力電圧がツェナー電圧に固定されていることを確認します。

具体的な計算例

入力電圧24V、ツェナー電圧10V、直列抵抗220Ω、負荷抵抗1kΩの場合:直列抵抗を流れる総電流は(24V-10V)÷220Ω=63.6mAです。負荷電流は10V÷1kΩ=10mAなので、ツェナー電流は63.6mA-10mA=53.6mAとなります。ツェナー消費電力は10V×53.6mA=536mWで、0.5W耐圧の素子が必要です。負荷が軽くなり負荷電流が5mAに低下すると、ツェナー電流は58.6mAに増加し、消費電力は586mWに達するため、余裕設計が重要です。

実務での注意点