アダプティブメッシュ(適応的な格子細分化)

カテゴリ: V&V・メッシュ収束 | 2026-10-01 改稿
CAE visualization for adaptive mesh theory - technical simulation diagram
アダプティブメッシュリファインメント(AMR)

理論:誤差の大きい所だけ細かくする

概要

🙋

L字形の部品の入り隅で応力が収束しません。全体を細かくしても変わらないんです。

🎓

入り隅の角は、理想的には応力が無限大になる特異点だ。そういう場所の近くでは解が急に変わるから、全体を一様に細かくしても、誤差のほとんどは角の近くに残り続ける。アダプティブメッシュは、解いた結果から要素ごとの誤差を見積もって、誤差の大きい要素だけを細かくし、解き直すことを繰り返す。要素を大きく増やさずに、全体の誤差を効率よく減らせるんだ。ただ、特異点そのものの応力は、どれだけ細かくしても収束しないことも覚えておこう。

誤差の指標と細分化の規則

$$ \|e\|_E^2 = \sum_K \int_K \left(u' - u_h'\right)^2 dx, \qquad \text{refine } K \text{ if } \eta_K^2 \ge \theta \max_K \eta_K^2 $$

エネルギーノルムの誤差を要素ごとの寄与 $\eta_K$ に分け、最大値の $\theta$ 倍(例では0.5)以上の要素を分割する。実際の解析では厳密解がないので、残差や応力の平滑化の差から $\eta_K$ を推定する。

収束の速さ

$$ u = x^{2/3}:\quad \|e\|_E \propto h^{\,2/3 - 1/2} = h^{1/6} \ \ (\text{uniform}), \qquad \|e\|_E \propto N^{-1} \ \ (\text{adaptive}) $$

解が $x^{2/3}$ のように点で勾配が発散すると、一様な細分化の誤差は要素幅の1/6乗でしか減らない。適応的に細かくすると、滑らかな問題と同じ要素数の−1乗の速さを取り戻せる。

Coffee Break よもやま話

誤差を推定するという発想

有限要素法で解いた結果の誤差を、厳密解を知らずに推定する方法は、1978年にバブシュカとラインボルトが残差に基づく推定を示したのが出発点とされる。1987年にはジェンキーヴィッチとジューが、応力を平滑化した値との差から誤差を推定する実用的な方法を発表し、多くの商用ソフトに取り入れられた。誤差を『見積もれる』ようになったことで、格子を自動で細かくする適応的な解法が可能になった。

計算例:勾配が発散する1次元の問題

区間(0, 1)で解が $u = x^{2/3}$ になる問題を1次要素で解いた(入り隅の角の近くと同じ強さの特異性)。1次元では節点の値が厳密解と一致するので、エネルギーノルムの誤差を要素ごとに正確に計算できる。

一様な細分化相対エネルギー誤差
10要素34.2%
100要素23.3%
1,000要素15.9%
10,000要素10.8%
100,000要素7.4%
適応的な細分化必要な要素数最小の要素
誤差20%112.0×10⁻³
誤差10%181.5×10⁻⁵
誤差5%353.7×10⁻⁹
誤差1%1698.9×10⁻¹⁶
🙋

一様だと10万要素で7.4%なのに、適応的だと35要素で5%なんですね!

🎓

誤差のほとんどが特異点の近くの数個の要素に集まっているからだ。一様に細かくすると、誤差の小さい場所にも要素を大量に使ってしまう。一様で5%にするには、外挿すると約100万要素が要る。ただ、表の右の列を見てほしい。1%の精度のために、特異点の隣の要素は10⁻¹⁵という、計算機の精度の限界に近い大きさになった。実際の構造では、角には小さな丸みがあるから、その丸みを形状に入れて、丸みの寸法まで細かくするほうが現実的だよ。

解析の進め方

  1. 評価したい量(最大応力、変位、反力など)を決め、それに合った誤差の指標を選ぶ。
  2. 粗い格子で解き、誤差の分布を見て、どこが問題かを確かめる。
  3. 細分化の割合(例:最大の半分以上)と、最小要素の大きさの下限を決めて繰り返す。
  4. 特異点では値が収束しないことを確かめ、評価は特異点から離れた場所か、実際の丸みを入れた形状で行う。
  5. 最後に、関心のある量が細分化で変わらなくなったことを確かめる。
Coffee Break よもやま話

「自動で細かくしたら計算が終わらない」

アダプティブメッシュを有効にして応力解析をしたら、細分化が何度も繰り返され、要素数が数百万になっても終わらなかった——という例がある。原因は、荷重を1点の節点に集中させていたことだった。集中荷重の点は特異点で、応力が無限大になるので、誤差の指標がいつまでも大きいままになる。荷重を実際の接触面積に分布させると、細分化は数回で落ち着いた。アダプティブメッシュは、モデルの中の人工的な特異点を正直に指し示してくれる道具でもある。

よくある間違い

間違いと対策

間違い起きること対策
特異点の応力を収束させようとする細分化が終わらない丸みを入れる・離れた点で評価
集中荷重・点拘束人工的な特異点面に分布させる
最小要素の下限なし要素数が爆発下限を設定
誤差の指標が目的と合わない関心の量が改善しない目的に合う指標
一様細分化だけで収束を判断遅い収束を見誤る適応細分化と比べる
🙋

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