NAFEMS T3: 1次元非定常熱伝導

カテゴリ: V&V・NAFEMSベンチマーク | 2026-10-01 改稿
CAE visualization for nafems t3 theory - technical simulation diagram
NAFEMS T3: 2次元定常熱伝導

問題:正弦波で加熱される棒

概要

🙋

NAFEMS T3は熱伝導のベンチマークですよね。単純な1次元の問題で、何を確かめるんですか?

🎓

温度が時間とともに変わる非定常問題で、要素の細かさだけでなく、時間の進め方が正しいかを確かめる問題だ。棒の一端の温度が正弦波で上がって下がり、熱が内部へ遅れて伝わっていく。目標点の温度は、境界の温度がピークを過ぎて下がりはじめたあとの32秒の値なので、時間積分の誤差がそのまま出やすい。厳密解を級数で作り、差分法で要素数と時間刻みを変えて、参照値36.60℃にどう近づくかを見てみよう。

問題の定義

$$ \rho c\,\frac{\partial T}{\partial t} = k\,\frac{\partial^2 T}{\partial x^2},\qquad T(x,0) = 0,\quad T_{hot}(t) = 100\sin\frac{\pi t}{40},\quad T_{cold} = 0 $$

長さ0.1 m、熱伝導率35 W/mK、密度7200 kg/m³、比熱440 J/kgK(熱拡散率1.10×10⁻⁵ m²/s)。0℃に保つ端から0.08 m、つまり加熱側の端から0.02 mの点の、32秒後の温度を求める。参照値は36.60℃。

級数による厳密解

$$ T = T_{hot}(t)\left(1-\frac{\xi}{L}\right) + \sum_{n=1}^{\infty} u_n(t)\sin\frac{n\pi\xi}{L},\qquad \dot u_n + \alpha\left(\frac{n\pi}{L}\right)^2 u_n = -\frac{2}{n\pi}\,\dot T_{hot}(t) $$

$\xi$ は加熱側の端からの距離。境界の温度を直線で分け持たせ、残りを固有関数の級数で表すと、各係数は1階の常微分方程式になって解ける。4000項で36.626℃、8000項でも同じ値だった。

Coffee Break よもやま話

NAFEMSのベンチマーク

NAFEMSは1983年にイギリスで設立された、有限要素法などの解析技術の信頼性を高めるための組織だ。1980年代後半から1990年ごろにかけて、線形弾性(LE)、熱(T)、振動(FV)などの標準ベンチマークをまとめ、どのソフトでも同じ問題を解いて結果を比べられるようにした。多くの商用ソフトの検証マニュアルに、今もこれらの問題と参照値が載っている。T3は、その中で非定常熱伝導の時間積分を確かめる基本問題だ。

計算例:差分法での収束

要素数・時間刻み・時間積分

要素数CN・Δt 2 sCN・Δt 0.5 s後退オイラー・Δt 2 s後退オイラー・Δt 0.5 s
534.8334.8934.2234.73
1035.9035.9635.0935.75
2036.3836.4435.4936.20
4036.5236.5835.6136.33

単位は℃、CNはクランク・ニコルソン法。要素40・CN・Δt 0.05 sでは36.58℃。級数解は36.63℃、参照値は36.60℃。

温度の時間変化

時刻加熱端の温度目標点の温度
8 秒58.8 °C2.8 °C
16 秒95.1 °C14.9 °C
24 秒95.1 °C28.8 °C
32 秒58.8 °C36.6 °C
40 秒0.0 °C33.9 °C
🙋

加熱端の温度は20秒でピークなのに、目標点はまだ上がり続けているんですね。

🎓

熱が0.02 m進むのにかかる時間の目安は、距離の2乗を熱拡散率で割った36秒ほどで、境界の変化の周期(80秒)と同じくらいだ。だから目標点の温度は境界より遅れて変化し、32秒ではまだ上昇中で、境界が0℃に戻る40秒でも34℃ある。この遅れを正しく表すには、時間積分が位相をずらさないことが大切だ。後退オイラー法は数値的な減衰が大きく、変化をなまらせるので、Δt 2 sでは約1℃低く出る。クランク・ニコルソン法は2次精度で、Δt 2 sでもΔt 0.5 sとの差は0.06℃しかない。要素数の影響も大きく、要素5では2℃近く低い。要素40とΔt 0.5 sでようやく参照値との差が0.1%以内に収まる。

ベンチマークの使い方

  1. まず問題の定義(目標点の位置、どちらの端が加熱側か)を正確に読む。
  2. 要素数を2倍ずつ増やし、値の変化から収束の次数を確かめる。
  3. 時間刻みも同様に変え、時間積分の誤差を空間の誤差と分けて評価する。
  4. 使うソフトの既定の時間積分法(後退オイラー、CNなど)を確認する。
  5. 結果は参照値との差だけでなく、要素数・時間刻みと一緒に記録する。
Coffee Break よもやま話

「位置を逆に読んでいた」

あるソフトの検証で、T3を計算したところ、目標点の温度が0.09℃となり、参照値36.60℃と全く合わなかった。ソフトの不具合を疑って調べたが、原因は問題の読み違いだった。『0.08 mの点』を加熱側の端から測っていたのだ。0℃側の端から0.08 m、つまり加熱側から0.02 mの点で評価し直すと36.6℃が得られた。ベンチマークでは、計算より先に問題の定義を正確に読むことが大切だという教訓になった。

よくある間違い

間違いと対策

間違い起きること対策
目標点を逆の端から測る0.09℃など全く違う値定義を確認
時間刻みが大きいピークがなまる刻みを変えて確認
後退オイラーだけで判断約1℃の誤差2次精度の方法も試す
要素が粗い2℃近い誤差要素を2倍ずつ増やす
物性の単位を誤る熱拡散率が桁違いαを計算して確認
🙋

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