NAFEMS LE1: 楕円膜の平面応力ベンチマーク

カテゴリ: V&V・NAFEMSベンチマーク | 2026-10-01 改稿
CAE visualization for nafems le1 theory - technical simulation diagram
NAFEMS LE1: 楕円膜の平面応力

問題:外から引かれる楕円の板

概要

🙋

NAFEMS LE1は有名なベンチマークですが、参照値に合えば検証できたことになるんですか?

🎓

1回合っただけでは足りない。LE1は曲がった形状を要素で近似する力と、内側の楕円の端に集中する応力をとらえる力を試す問題だ。要素を細かくしていったとき、値が参照値の92.7 MPaに落ち着いていくかを見て初めて検証になる。実際に、1次と2次の要素で自分で有限要素法を組んで解き、分割を変えて値がどう動くかを見てみよう。

問題の定義

$$ \text{inner: } \left(\frac{x}{2}\right)^2 + \left(\frac{y}{1}\right)^2 = 1,\qquad \text{outer: } \left(\frac{x}{3.25}\right)^2 + \left(\frac{y}{2.75}\right)^2 = 1 $$

厚さ0.1 m、ヤング率210 GPa、ポアソン比0.3の平面応力。1/4モデルで、x = 0の辺でx方向、y = 0の辺でy方向を固定する。外周に外向きの圧力10 MPa。目標は内側の楕円上の点D(x = 2、y = 0)のσyyで、参照値は92.7 MPa。

自作の有限要素法

$$ \mathbf{K}\mathbf{u} = \mathbf{f},\qquad \mathbf{K} = \sum_e \int_{\Omega_e} \mathbf{B}^T\mathbf{D}\,\mathbf{B}\,t\,d\Omega,\qquad \boldsymbol{\sigma} = \mathbf{D}\,\mathbf{B}\,\mathbf{u}_e $$

内側と外側の楕円を同じ角度のパラメータで分け、その間を直線で結んだ写像メッシュを作った。4節点の1次要素Q4(2×2点ガウス積分)と、8節点の2次要素Q8(3×3点ガウス積分)で解き、点Dの応力は点Dに接する要素の形状関数の微分から直接求めた。

Coffee Break よもやま話

LE1が選ばれた理由

NAFEMSの線形弾性ベンチマークは1980年代後半にまとめられ、LE1はその最初の問題だ。楕円の穴のまわりの応力集中は、形状の曲がりを要素がどれだけ正確に表せるかに敏感で、直線の辺しか持たない要素や、ゆがんだ要素の弱点がはっきり出る。しかも、2つの楕円で囲まれた単純な形なので、どのソフトでも同じ条件を作りやすい。この『単純だが要素の性質が出る』という性格が、長く使われ続けている理由だ。

計算例:分割を変えたときの点Dの応力

分割(周方向×半径方向)Q4(1次)誤差Q8(2次)誤差
6 × 386.09−7.13%90.21−2.69%
12 × 692.82+0.12%93.00+0.32%
24 × 1294.63+2.08%93.05+0.37%
48 × 2494.36+1.79%92.81+0.12%
96 × 4893.73+1.11%92.71+0.01%
192 × 9693.25+0.60%——

応力の単位はMPa、誤差は参照値92.7 MPaに対する値。自由度はQ4の192×96で約3.7万、Q8の96×48で約2.8万。

🙋

Q4の12×6分割はぴったり合っているのに、細かくするとずれていくんですね。

🎓

これが粗いメッシュの『偶然の一致』だ。Q4は直線の辺で曲がった楕円を近似し、要素の中のひずみも単純な形しか表せない。粗い分割では、形状を近似する誤差と、応力を近似する誤差が逆向きに出て、たまたま打ち消しあった。細かくすると形状の誤差が先に小さくなり、応力の誤差が表に出て94.6 MPaまで上がる。そこからは分割とともにゆっくり参照値に戻っていく。Q8は辺が曲がれるので形状を正確に表せ、12×6分割からずっと0.4%以内に収まり、96×48分割で0.01%になった。ベンチマークでは、1つの分割で合ったかではなく、分割を変えたときの値の動きを示すことが大切だ。

ベンチマークの進め方

  1. NAFEMSの指定する粗いメッシュと細かいメッシュの両方で解く。
  2. さらに分割を2倍ずつ変え、値が一方向に落ち着くかを確かめる。
  3. 応力の求め方(節点平均、ガウス点からの外挿、要素の角での直接評価)を記録する。
  4. 曲がった形状には、辺が曲がれる2次要素を使う。
  5. 結果は分割・要素・自由度とともに表にまとめる。
Coffee Break よもやま話

「粗いメッシュで合格、細かくしたら不合格」

あるソフトの社内検証で、LE1を指定の粗いメッシュだけで解いて参照値と1%以内で一致したため合格とした。ところが後に別の担当者が細かいメッシュで解き直すと、2%ずれた。どちらが正しいのか議論になり、分割を何段階も変えて調べた結果、粗いメッシュの一致は誤差の打ち消しあいによる偶然だったとわかった。それ以来、検証では必ず3段階以上の分割で値の動きを示すことにした。

よくある間違い

間違いと対策

間違い起きること対策
1つの分割だけで判断偶然の一致を見逃す3段階以上で確認
圧力の向きを逆にσyyの符号が逆外向きを確認
要素の向きが裏返し剛性の符号が狂うヤコビアンの符号を確認
応力の評価方法が不明比較できない方法を明記
直線要素で曲線を近似収束が遅い2次要素を使う
🙋

関連する内容も知りたいです。

🎓

応力集中ツールで応力集中を試せるよ。関連するページはLE1の検証結果、NAFEMS LE10、NAFEMS T3、GCI(3格子法)、p-リファインメントが参考になる。

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