MHD流動解析

カテゴリ: 連成解析・電磁-構造 | 2026-10-01 改稿

理論:磁場が流れにかけるブレーキ

概要

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核融合炉で液体金属を冷却に使うと、ポンプの動力が非常に大きくなると聞きました。なぜですか?

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液体金属は電気をよく通すので、強い磁場を横切って流れると、流れと磁場の向きの両方に直角な電流が誘導される。その電流が磁場の中にあるので、ローレンツ力が流れと逆向きに働き、ブレーキになる。ブレーキは流れの速いところほど強いので、流速分布は中央が平らにつぶれ、速度の変化は壁のごく近くの薄い層に押し込められる。この層での摩擦が大きいので、同じ量を流すのに必要な圧力が何百、何千倍にもなる。平行な2枚の板の間の流れ(ハルトマン流)には厳密解があり、この効果の大きさを確かめられる。

ハルトマン数と流速分布

$$ Ha = B\,a\sqrt{\frac{\sigma}{\mu}},\qquad \frac{u(y)}{u(0)} = \frac{\cosh Ha - \cosh(Ha\,y/a)}{\cosh Ha - 1},\qquad \delta_{Ha} = \frac{a}{Ha} $$

y は中心からの距離。壁は電気を通さないとした。δ_Ha は壁のハルトマン層の厚さ。

流量と圧力損失

$$ \frac{\bar u}{\bar u_{Poiseuille}}\Big|_{\Delta p} = \frac{3\,(Ha\coth Ha - 1)}{Ha^2}\ \xrightarrow{Ha \gg 1}\ \frac{3}{Ha} $$

同じ圧力勾配での平均流速の比。逆数が、同じ流量を流すときの圧力損失の増加倍率になる。

Coffee Break よもやま話

ハルトマンの水銀の実験

1937年、デンマークのハルトマンは、水銀を磁場の中の流路に流す実験と理論から、磁場が流れを平らにし抵抗を増やすことを示した。いまハルトマン流、ハルトマン数と呼ばれるのはこの研究による。ほぼ同じ頃、アルヴェーンは導電性の流体と磁場が一緒に運動する波(アルヴェーン波)を予言し、天体のプラズマの研究を開いた。MHDは今では、核融合炉の液体金属ブランケットの設計で欠かせない解析になっている。

計算例

例1:流体と磁場の組み合わせ

条件ハルトマン数ハルトマン層の厚さ圧力損失の増加
水銀・0.1 T・半幅10 mm260.38 mm9.0 倍
水銀・1 T・半幅10 mm2610.038 mm87 倍
PbLi・5 T・半幅50 mm5,0000.010 mm約1,670 倍

例2:ハルトマン数と流速分布の平坦さ

ハルトマン数平均流速/中央の流速中央の95%以上の速さの範囲圧力損失の増加Ha/3
10.67723%1.10.3
100.90070%3.73.3
1000.99097%33.733.3
1,0000.99999.7%334333
🙋

ハルトマン数5,000だと、境界層がたった10 μmなんですね。これを計算で捉えるのは大変そうです。

🎓

大変だ。半幅50 mmの流路で、壁から10 μmの層の中に数点の格子を置く必要があり、格子の幅は中央の何千分の一になる。この層を粗くすると壁での摩擦や電流の流れ方が変わり、圧力損失を大きく誤る。さらに実際の流路は四角い管で、磁場に平行な側壁にはもっと厚い層(厚さはおよそ a/√Ha)ができ、そこで速い流れ(ジェット)が生じることもある。また壁が電気を通すと、電流が壁を通って閉じるので、圧力損失はさらに大きくなる。核融合炉では、これを抑えるために電気を通しにくい層(流路挿入物)を壁に設ける設計が検討されている。数値計算は、まずこのハルトマン流の厳密解と比べて、境界層を正しく解像できているかを確かめるのが基本だ。

解析の進め方

  1. ハルトマン数と相互作用パラメータで、磁場の効果の大きさを見積もる。
  2. ハルトマン層(a/Ha)と側壁層(a/√Ha)を解像する格子を作る。
  3. 電流の保存を満たす解法(電位法など)で誘導電流を求める。
  4. 壁の電気伝導度と厚さを入れ、電流が壁を通る効果を含める。
  5. ハルトマン流などの厳密解で検証してから、実際の形状を計算する。
Coffee Break よもやま話

「格子を細かくしたら圧力損失が倍になった」

ある液体金属の流路の解析で、最初の計算では壁の近くの格子が粗く、ハルトマン層の中に格子点が1つもなかった。その結果は、圧力損失が理論の半分ほどだった。壁に向かって格子を細かくし、ハルトマン層の中に5点以上を置くと、平板部分の圧力損失は厳密解と数%で一致し、全体の圧力損失は最初の計算の約2倍になった。境界層を解像していない計算は、それらしく見えても圧力損失を大きく過小評価する。

よくある間違い

間違いと対策

間違い起きること対策
ハルトマン層を解像しない圧力損失を過小評価層内に数点以上
壁を絶縁とみなす圧力損失を過小評価壁の導電性を入れる
電流保存を満たさない解法非物理的な力保存型の離散化
側壁のジェットを見逃す熱伝達を誤る3次元で解析
通常の乱流モデルを使う磁場による抑制を見逃すMHD対応のモデル
🙋

関連する内容も知りたいです。

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関連するページはローレンツ力、電磁成形、磁気軸受解析、電磁超音波(EMAT)、磁歪が参考になる。

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