電磁成形時の発熱解析

カテゴリ: 連成解析・電磁熱 | 2026-10-01 改稿

理論:短い大電流が表皮の層に残す熱

概要

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電磁成形は10万アンペアもの電流を流すのに、なぜ加工物が溶けないのですか?

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流れる時間がとても短いからだ。コンデンサーにためた電気をコイルに一気に流すと、電流は数十マイクロ秒でピークに達し、1ミリ秒もしないうちに減衰する。電流は加工物とコイルの表皮の層に集中し、そこで抵抗によって熱が出るが、発熱の総量は電流の2乗を時間で積分した値(作用積分)で決まるので、時間が短ければ熱は限られる。この例では加工物の温度上昇は約32 Kにとどまる。ただしコイルは毎回この電流を受けるので、連続して打つと熱がたまっていく。電磁成形の熱の解析は、加工物の性質の変化よりも、コイルを何回、どんな間隔で使えるかを決めるために行うことが多い。

放電の電流と作用積分

$$ I(t) = \frac{V_0}{\omega L}\,e^{-\alpha t}\sin\omega t,\qquad \alpha = \frac{R}{2L},\qquad S = \int_0^\infty I^2\,dt $$

C = 200 μF、V₀ = 10 kV(10 kJ)、L = 2 μH、回路全体の抵抗 R = 10 mΩ(想定)。周波数は7.95 kHz、減衰の時定数は400 μs、最初のピークは92.7 kA、作用積分は1.0×10⁶ A²s。

表皮の層の発熱

$$ q = \rho\,\frac{S}{(l\,\delta)^2},\qquad \delta^2 = \frac{2\rho}{\omega\mu_0}\ \Rightarrow\ q = \frac{\omega\mu_0\,S}{2\,l^2},\qquad \Delta T = \frac{q}{\rho_m c} $$

l はコイルの長さ(20 mm)、δ は浸透深さ、ρ は抵抗率、ρ_m と c は密度と比熱。電流が表皮の層に一様に流れると近似した。体積あたりの発熱 q は抵抗率によらない。

Coffee Break よもやま話

短いパルスで強い磁場を

1920年代、ケンブリッジにいたカピッツァは、コイルに大電流を流して数十テスラの強い磁場を作ろうとした。問題はコイルの発熱と、磁気の力でコイルが壊れることだった。彼は電流を流す時間を1/100秒程度まで短くすることで、コイルが溶ける前に実験を終えるという方法をとった。短いパルスで大電流を流し、熱がたまる前に終える、という考えは、電磁成形のコイルの設計にもそのまま通じている。

計算例

例1:1回の放電での発熱(10 kJ)

部位浸透深さ電流密度のピーク体積あたりの発熱温度上昇1回の発熱量
アルミ管(半径25 mm、厚さ1 mm)0.945 mm4.90×10⁹ A/m²7.84×10⁷ J/m³32.3 K233 J
銅コイル(内半径26 mm)0.736 mm6.29×10⁹ A/m²7.84×10⁷ J/m³22.7 K189 J

蓄えたエネルギー10 kJのうち、加工物とコイルの表皮の層に残る熱は合わせて約0.42 kJ。銅はアルミより体積比熱が大きいので、同じ体積あたりの発熱でも温度上昇は小さい。

例2:連続して打つときのコイルの平均温度

打つ間隔コイルの平均発熱平均の温度上昇(hA = 1 W/K)
60秒3.1 W3.1 K
10秒18.9 W18.9 K
2秒94.3 W94.3 K
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2秒ごとでも平均94 Kなら、室温25℃で約120℃です。銅は溶けないし、大丈夫では?

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銅は大丈夫でも、コイルを支える材料が持たない。電磁成形のコイルは、導体のまわりを樹脂や繊維で固め、毎回の放電で受ける大きな磁気の力(この条件で15 MPa程度)に耐えるようにしている。樹脂は100℃を超えると強度が大きく下がるものが多く、そこに繰り返しの力がかかると、はく離やき裂が進んでコイルが壊れる。しかも平均の温度より、表面の層は毎回さらに約23 K上がるので、最も熱い場所はもっと高い。さらに銅は温度が上がると抵抗が増えて、同じ電圧でも電流と磁気圧が下がり、成形の結果がばらつく。そのため、コイルの中の温度分布を時間を追って解き、冷却の流路や打つ間隔を決める。熱で弱った樹脂に磁気の力がかかる問題なので、電磁・熱・構造を連成させて評価することになる。

モデリングの進め方

  1. コンデンサー・配線・コイルの回路を解き、電流の波形を求める。
  2. 加工物とコイルの渦電流を時間を追って解き、発熱の分布を求める。
  3. 加工物の変形を連成させ、すき間の変化で電流が変わる効果を入れる。
  4. コイルの熱の解析で、繰り返しの放電と冷却を入れて温度を求める。
  5. 樹脂の温度と磁気の力から、コイルの寿命を見積もる。
Coffee Break よもやま話

「午後になると成形が甘くなる」

ある自動車部品の電磁成形ラインで、朝は狙いどおりに管がかしめられるのに、午後になると締め付けが弱くなる不良が出ていた。解析すると、連続運転でコイルの温度が上がり、銅の抵抗が増えて電流のピークが下がり、磁気圧が足りなくなっていた。コイルに冷却水の流路を設け、温度に応じて充電電圧を少し上げる補正を入れると、一日を通して成形の結果がそろった。

よくある間違い

間違いと対策

間違い起きること対策
1回の放電だけで評価コイルの熱の蓄積を見逃す繰り返しを解く
電流を導体全体に一様発熱を過小評価表皮の層を解く
抵抗率を一定にする温まったときの電流を誤る温度の関数で与える
樹脂の強度を室温で評価コイルの寿命を過大評価温度での強度を使う
加工物を静止したまま解く電流と力を誤る変形と連成
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