抵抗加熱解析

カテゴリ: 連成解析 | 2026-09-30 改稿
Resistive heating FEA visualization: temperature contour in a resistive element, R(T) nonlinear coupling curve, and power dissipation P=I²R
抵抗加熱解析の概念図 — 抵抗体の温度分布、温度依存抵抗R(T)の非線形連成、電力散逸P=I²Rの関係

概要

🙋

先生! 今日は抵抗加熱解析の話なんですよね? どんなものなんですか?


理論:電流が熱になり、熱が抵抗を変える

概要

🙋

電線の許容電流を解析で確かめたいのですが、抵抗の値は室温のものを入れておけばいいですか?

🎓

電流が小さいうちはそれでほぼ合うけど、温度が数十K上がる条件では危ない。銅の抵抗は1 Kあたり約0.39%増えるから、100 K上がれば抵抗は約1.4倍になる。電流が同じなら発熱も1.4倍で、それがまた温度を上げる。電流で熱が出て、熱で抵抗が変わる——この行き来を解くのが電気と熱の連成解析だよ。放熱が弱い場合には、温度が止まらずに上がり続ける『熱暴走』も起こり得る。

ジュール熱と抵抗の温度依存

$$ q = \frac{|\mathbf{J}|^2}{\sigma(T)} = \rho(T)\,|\mathbf{J}|^2, \qquad \rho(T) = \rho_{20}\,[1 + \alpha_{20}(T - 20)] $$

$\mathbf{J}$ は電流密度、$\sigma$ は導電率、$\rho$ は抵抗率。銅では $\rho_{20}$ = 1.72×10⁻⁸ Ω·m、温度係数 $\alpha_{20}$ = 0.00393 1/K。ニクロムのようなヒーター材は温度係数が小さく、温度が変わっても抵抗がほとんど変わらないように作られている。

電線の熱のつり合い

$$ \frac{I^2 \rho(T)}{A} = h\,\pi d\,(T - T_a) $$

長さあたりの発熱(左辺)と、表面からの放熱(右辺)のつり合い。$h$ は熱伝達係数、$d$ は線径、$T_a$ は周囲温度。左辺が温度とともに増えるので、右辺の放熱の伸びが追いつかないと、つり合う温度がなくなる。

短時間の大電流(断熱)

$$ \rho_m c\,\frac{dT}{dt} = \frac{I^2 \rho(T)}{A^2} $$

短絡のように数秒以内の大電流では、熱が周りへ逃げる前に温度が上がるので、放熱を無視して導体自身の熱容量だけで計算する。$\rho_m$ は密度、$c$ は比熱。

Coffee Break よもやま話

ジュールの測定と電球のフィラメント

1841年、ジュールは電線を水に浸して電流を流し、水の温度上昇から発熱が電流の2乗と抵抗に比例することを示した。のちのエネルギー保存則につながる実験だ。抵抗加熱のいちばん身近な応用は白熱電球で、タングステンのフィラメントは点灯中に2,000 ℃を超え、抵抗は室温の10倍以上になる。電球が切れやすいのはスイッチを入れた瞬間で、冷えたフィラメントの抵抗が小さいため、定格の10倍近い電流が一瞬流れるからだ。温度で抵抗が変わる効果は、ここでも主役になる。

計算例

例1:連成するかしないか

断面積1 mm²(直径1.13 mm)の裸の銅線を25 ℃の静かな空気中に置き、熱伝達係数を20 W/(m²·K)で一定とした場合の定常温度。

電流抵抗一定温度依存あり(連成)
5 A31 ℃31 ℃
10 A50 ℃52 ℃
15 A81 ℃96 ℃
20 A124 ℃185 ℃
🙋

電流が小さいうちは差がないのに、20 Aでは60 K以上違うんですね。

🎓

温度上昇が大きいほど抵抗の増え方も大きくなるからね。このモデル(放熱の係数が一定)では、約32 Aを超えるとつり合う温度がなくなって熱暴走する。実際には温度が上がると対流も放射も強くなるので、ここまで極端にはならないけど、『連成を入れないと高温側で大きく甘く見積もる』という傾向は変わらない。絶縁被覆の許容温度が90〜105 ℃くらいなら、15 Aあたりから連成の有無が判断に効いてくる。

例2:短絡時の温度上昇

条件(1 mm²の銅線)到達温度(25 ℃から)
100 Aを1秒81 ℃
200 Aを1秒334 ℃
100 Aを5秒457 ℃

電流が2倍なら発熱は4倍以上(抵抗も増えるため)になる。ブレーカやヒューズは、電線が被覆を傷める温度に達する前に電流を切れるよう、電流と時間の関係から選ぶ。

例3:定電流と定電圧

抵抗の増加電流一定の発熱電圧一定の発熱
1.2倍1.20倍0.83倍
1.4倍1.40倍0.71倍

配線やバスバーは電流で決まるので温度が上がるほど発熱が増えるが、電圧をかけるヒーターは温度が上がるほど発熱が減って自然に落ち着く。解析では、電源が電流源か電圧源か、あるいは制御がかかっているかを正しく与えないと、温度の予測が逆向きにずれる。

解析の進め方

手順

  1. 電流の経路の形状から電流密度の分布を求める(直流・低周波なら電流場の解析)。
  2. ジュール熱を熱解析に渡し、温度を求める。
  3. 温度から抵抗率を更新して電流場を解き直し、温度が変わらなくなるまで繰り返す。
  4. 接触抵抗(端子やボルト締結部)を忘れずに入れる。局所の発熱はここに集中しやすい。

注意点

  • 放熱の条件:熱伝達係数は温度と向きで変わる。放射も入れる。束ねた電線は互いに温め合う。
  • 高い周波数:交流では表皮効果で電流が表面に集まり、抵抗が直流より大きくなる。
  • 材料の上限:被覆・はんだ・樹脂の許容温度を先に確認し、判定基準にする。
Coffee Break よもやま話

「ボルト1本の締め忘れで発火」

配電盤の火災の原因で多いのが、端子のねじの締め付け不足だ。接触面が小さくなると接触抵抗が増え、そこで熱が出る。温まると表面が酸化してさらに抵抗が増え、また温度が上がる——局所の熱暴走だ。電線そのものは許容電流の範囲内でも、端子だけが数百℃になることがある。解析で接触抵抗を無視すると、この一番危ない場所が見えない。点検で赤外線カメラが使われるのは、この局所の発熱を見つけるためだ。

よくある間違い

間違いと対策

間違い起きること対策
抵抗を室温の値で固定高温側を過小評価温度依存を入れて反復
電流源と電圧源を取り違える温度の傾向が逆になる電源条件を確認
接触抵抗を無視端子の過熱を見落とす接触部をモデル化
短絡を定常で評価温度を過小評価断熱の過渡計算
束ねた電線を単独で評価温度を過小評価束として放熱を評価
🙋

電線やバスバーの発熱を自分でも計算してみたいです。

🎓

バスバーの断面計算でバスバーの断面、オームの法則で抵抗と発熱、1次元熱伝導で熱の伝わり方を試せるよ。関連する加熱の方式はジュール加熱、誘導加熱、渦電流加熱、変圧器のホットスポットの記事にまとめてある。

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