抵抗加熱解析
概要
先生! 今日は抵抗加熱解析の話なんですよね? どんなものなんですか?
理論:電流が熱になり、熱が抵抗を変える
概要
電線の許容電流を解析で確かめたいのですが、抵抗の値は室温のものを入れておけばいいですか?
電流が小さいうちはそれでほぼ合うけど、温度が数十K上がる条件では危ない。銅の抵抗は1 Kあたり約0.39%増えるから、100 K上がれば抵抗は約1.4倍になる。電流が同じなら発熱も1.4倍で、それがまた温度を上げる。電流で熱が出て、熱で抵抗が変わる——この行き来を解くのが電気と熱の連成解析だよ。放熱が弱い場合には、温度が止まらずに上がり続ける『熱暴走』も起こり得る。
ジュール熱と抵抗の温度依存
$\mathbf{J}$ は電流密度、$\sigma$ は導電率、$\rho$ は抵抗率。銅では $\rho_{20}$ = 1.72×10⁻⁸ Ω·m、温度係数 $\alpha_{20}$ = 0.00393 1/K。ニクロムのようなヒーター材は温度係数が小さく、温度が変わっても抵抗がほとんど変わらないように作られている。
電線の熱のつり合い
長さあたりの発熱(左辺)と、表面からの放熱(右辺)のつり合い。$h$ は熱伝達係数、$d$ は線径、$T_a$ は周囲温度。左辺が温度とともに増えるので、右辺の放熱の伸びが追いつかないと、つり合う温度がなくなる。
短時間の大電流(断熱)
短絡のように数秒以内の大電流では、熱が周りへ逃げる前に温度が上がるので、放熱を無視して導体自身の熱容量だけで計算する。$\rho_m$ は密度、$c$ は比熱。
ジュールの測定と電球のフィラメント
1841年、ジュールは電線を水に浸して電流を流し、水の温度上昇から発熱が電流の2乗と抵抗に比例することを示した。のちのエネルギー保存則につながる実験だ。抵抗加熱のいちばん身近な応用は白熱電球で、タングステンのフィラメントは点灯中に2,000 ℃を超え、抵抗は室温の10倍以上になる。電球が切れやすいのはスイッチを入れた瞬間で、冷えたフィラメントの抵抗が小さいため、定格の10倍近い電流が一瞬流れるからだ。温度で抵抗が変わる効果は、ここでも主役になる。
計算例
例1:連成するかしないか
断面積1 mm²(直径1.13 mm)の裸の銅線を25 ℃の静かな空気中に置き、熱伝達係数を20 W/(m²·K)で一定とした場合の定常温度。
| 電流 | 抵抗一定 | 温度依存あり(連成) |
|---|---|---|
| 5 A | 31 ℃ | 31 ℃ |
| 10 A | 50 ℃ | 52 ℃ |
| 15 A | 81 ℃ | 96 ℃ |
| 20 A | 124 ℃ | 185 ℃ |
電流が小さいうちは差がないのに、20 Aでは60 K以上違うんですね。
温度上昇が大きいほど抵抗の増え方も大きくなるからね。このモデル(放熱の係数が一定)では、約32 Aを超えるとつり合う温度がなくなって熱暴走する。実際には温度が上がると対流も放射も強くなるので、ここまで極端にはならないけど、『連成を入れないと高温側で大きく甘く見積もる』という傾向は変わらない。絶縁被覆の許容温度が90〜105 ℃くらいなら、15 Aあたりから連成の有無が判断に効いてくる。
例2:短絡時の温度上昇
| 条件(1 mm²の銅線) | 到達温度(25 ℃から) |
|---|---|
| 100 Aを1秒 | 81 ℃ |
| 200 Aを1秒 | 334 ℃ |
| 100 Aを5秒 | 457 ℃ |
電流が2倍なら発熱は4倍以上(抵抗も増えるため)になる。ブレーカやヒューズは、電線が被覆を傷める温度に達する前に電流を切れるよう、電流と時間の関係から選ぶ。
例3:定電流と定電圧
| 抵抗の増加 | 電流一定の発熱 | 電圧一定の発熱 |
|---|---|---|
| 1.2倍 | 1.20倍 | 0.83倍 |
| 1.4倍 | 1.40倍 | 0.71倍 |
配線やバスバーは電流で決まるので温度が上がるほど発熱が増えるが、電圧をかけるヒーターは温度が上がるほど発熱が減って自然に落ち着く。解析では、電源が電流源か電圧源か、あるいは制御がかかっているかを正しく与えないと、温度の予測が逆向きにずれる。
解析の進め方
手順
- 電流の経路の形状から電流密度の分布を求める(直流・低周波なら電流場の解析)。
- ジュール熱を熱解析に渡し、温度を求める。
- 温度から抵抗率を更新して電流場を解き直し、温度が変わらなくなるまで繰り返す。
- 接触抵抗(端子やボルト締結部)を忘れずに入れる。局所の発熱はここに集中しやすい。
注意点
- 放熱の条件:熱伝達係数は温度と向きで変わる。放射も入れる。束ねた電線は互いに温め合う。
- 高い周波数:交流では表皮効果で電流が表面に集まり、抵抗が直流より大きくなる。
- 材料の上限:被覆・はんだ・樹脂の許容温度を先に確認し、判定基準にする。
「ボルト1本の締め忘れで発火」
配電盤の火災の原因で多いのが、端子のねじの締め付け不足だ。接触面が小さくなると接触抵抗が増え、そこで熱が出る。温まると表面が酸化してさらに抵抗が増え、また温度が上がる——局所の熱暴走だ。電線そのものは許容電流の範囲内でも、端子だけが数百℃になることがある。解析で接触抵抗を無視すると、この一番危ない場所が見えない。点検で赤外線カメラが使われるのは、この局所の発熱を見つけるためだ。
よくある間違い
間違いと対策
| 間違い | 起きること | 対策 |
|---|---|---|
| 抵抗を室温の値で固定 | 高温側を過小評価 | 温度依存を入れて反復 |
| 電流源と電圧源を取り違える | 温度の傾向が逆になる | 電源条件を確認 |
| 接触抵抗を無視 | 端子の過熱を見落とす | 接触部をモデル化 |
| 短絡を定常で評価 | 温度を過小評価 | 断熱の過渡計算 |
| 束ねた電線を単独で評価 | 温度を過小評価 | 束として放熱を評価 |
電線やバスバーの発熱を自分でも計算してみたいです。
なった
詳しく
報告