管束の流力振動解析
理論:流れと管の振動が強め合う
概要
シェルアンドチューブ熱交換器の流量を増やす改造を検討しています。管の振動の心配はありますか?
大いにある。管の外側を横切る流れは、管を揺らす力を生む。特に危ないのが流体弾性不安定で、管が振れると周りの流れが変わり、その流れがさらに管を振らせる、という強め合いが起きる。ある流速(限界流速)を超えると急に振幅が大きくなり、管が隣の管やバッフルとこすれて、短期間で穴があくこともある。流量を増やすなら、まず管の固有振動数と限界流速を計算して、余裕があるかを確かめないといけないよ。
管の固有振動数
バッフルで支えられた管を、両端が単純支持のはりとみなした1次の固有振動数。$m$ には管そのもの、中の流体、外の流体が一緒に動く付加質量(係数 $C_m$)を含める。
コナーズの式
$D$ は管の外径、$\zeta$ は減衰比、$K$ は管の配列と流れの向きで決まる定数(設計では2.4〜3程度)。$f_s$ は渦の放出の周波数で、ストローハル数 $St$ は配列によって0.2〜0.5程度。
原子力の熱交換器が教えたこと
1960〜70年代、原子力発電所の蒸気発生器や大型の熱交換器で、運転を始めて間もなく管に穴があく事故が相次いだ。調べると、流れに誘起された振動で管が支えとこすれ合っていた。1970年、コナーズは管列の風洞実験から、管の振動と流れの強め合いで起きる不安定の限界流速の式を示した。その後、限界流速の定数や減衰のデータが積み重ねられ、アメリカの熱交換器の規格(TEMA)やASMEの指針にも振動の評価が取り入れられた。
計算例:バッフル間隔を変える
外径19.05 mm・肉厚1.65 mmの鋼管、管の内外は水、付加質量係数1.5、減衰比1.5%。単位長さの質量は1.33 kg/m(管0.71、中の水0.20、付加質量0.43)。
| バッフル間隔 | 固有振動数 | 限界流速(K = 3.0) | 限界流速(K = 2.4) | 渦の共振の流速 |
|---|---|---|---|---|
| 400 mm | 223 Hz | 7.5 m/s | 6.0 m/s | 12.9 m/s |
| 600 mm | 99 Hz | 3.3 m/s | 2.7 m/s | 5.7 m/s |
| 800 mm | 56 Hz | 1.9 m/s | 1.5 m/s | 3.2 m/s |
すき間の流速が2 m/sなら、600 mmなら大丈夫で、800 mmだと危ないんですね。
そう。固有振動数は間隔の2乗に反比例するから、間隔を少し伸ばしただけで限界流速は大きく下がる。800 mmでは、K = 3でも1.9 m/sで、2 m/sを下回ってしまう。定数 K は実験のばらつきが大きく、設計では2.4程度の安全側の値を使うことも多い。その場合600 mmでも2.7 m/sで、2 m/sに対する余裕は1.35倍しかない。限界流速の計算は、K と減衰の不確かさを考えて、流速に対して十分な余裕(例えば1.3〜2倍程度)を取るのが基本だ。流量を増やす改造なら、入口や出口の近くのように流速が局所的に速くなる場所も確かめよう。
評価の進め方
- 管のすき間の流速の分布を求める(入口・出口・バッフルの切り欠き付近は速い)。
- 支持条件と付加質量を含めて、管の固有振動数を求める。
- 流体弾性不安定の限界流速を、K と減衰の範囲を考えて求める。
- 渦の放出の周波数と音響の固有振動数が、管や胴の固有振動数と重ならないか確かめる。
- 乱流による振幅から、支持部での摩耗の寿命を見積もる。
「入口の数本だけ穴があいた」
熱交換器の流量を増やす改造の後、胴の入口ノズルの真下にある数本の管だけが、1年もしないうちに穴があいた——という例がある。管束全体の平均の流速では限界流速に対して余裕があったが、入口の真下では流れが集中し、局所の流速が平均の2倍近くになっていた。CFDで入口付近の流速の分布を求めると、その数本が限界流速を超えていたことがわかった。入口に衝突板を入れて流れを分散させ、その区間のバッフルの間隔を詰めたところ、損傷は止まった。
よくある間違い
間違いと対策
| 間違い | 起きること | 対策 |
|---|---|---|
| 平均の流速で評価 | 局所の不安定を見落とす | 流速の分布を求める |
| 付加質量を無視 | 固有振動数を過大評価 | 管の内外の流体を含める |
| K を楽観的に | 限界流速を過大評価 | 安全側の値と余裕 |
| 減衰を大きく仮定 | 不安定を見落とす | データに基づく減衰 |
| 音響共鳴を考えない | 大きな騒音・振動 | 胴の音響モードを確認 |
関連する内容も知りたいです。
カルマン渦のシミュレーターと減衰固有振動数の計算で試せるよ。関連する流体構造連成は渦励振、空力弾性とフラッター、流体弾性、水撃が参考になる。
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